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送出国ベトナムの特定技能|MOC・DOLAB認定送出機関・推薦者表の取得実務

更新: 約26分で読めます

特定技能外国人の受入れを検討する企業から最も多く寄せられる質問のひとつが、「ベトナム人を採用したいが、日本側の在留資格の手続だけでは足りないと聞いた」というものです。実際、ベトナムは特定技能の送出国として最大の規模を持つ一方で、ベトナム政府側の手続を経ていなければ、日本の地方出入国在留管理官署に対する在留諸申請そのものが整わないという特徴があります。その中心にあるのが、日本とベトナムが作成した協力覚書(MOC)と、ベトナム内務省海外労働管理局(DOLAB)が認定する送出機関、そして「推薦者表(特定技能外国人表)」です。

この三つは互いに連動しており、どれかひとつでも欠けると受入れのスケジュールが大きく崩れます。とくに「労働者提供契約の承認を得ないまま人材の紹介を受けてしまった」「推薦者表を取得しないまま在留資格認定証明書の交付申請をしようとした」といったつまずきは、実務でしばしば起こります。本記事では、出入国在留管理庁が公表している一次資料に基づき、ベトナムからの特定技能人材の受入れに必要な手続を、実務目線で整理します。

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ベトナムは特定技能で最大の送出国|数字で見る現状

まず、ベトナムが特定技能制度の中でどれほどの比重を占めているのかを確認します。出入国在留管理庁が公表している「特定技能在留外国人数」(令和7年12月末現在・速報値)によれば、特定技能1号で在留する外国人は全分野合計で382,341人です。このうちベトナム国籍は158,497人で、全体の約41.5%を占めています。

国籍・地域別の内訳を上位から並べると、ベトナムに次いでインドネシアが86,523人、ミャンマーが44,315人、フィリピンが35,521人、中国が21,418人と続きます。ベトナム1か国で2位のインドネシアの1.8倍を超える規模であり、特定技能の受入れ実務を語るうえでベトナム固有の手続を避けて通ることはできません。

ベトナム人材は「技能実習ルート」が中心

同じ統計を取得ルート別に見ると、ベトナムの実務上の特徴がより鮮明になります。ベトナム国籍の特定技能1号158,497人のうち、内訳は次のとおりです。

  • 技能実習ルート:113,009人
  • 試験ルート:45,404人
  • 検定ルート:71人
  • 介護福祉士養成施設修了ルート:4人
  • EPA介護福祉士候補者ルート:9人

技能実習ルートが全体の約7割を占めており、これはすでに日本国内に在留している方が「特定技能」へ在留資格を変更するケースが主流であることを意味します。全分野の総数で見ると試験ルート174,625人・技能実習ルート207,399人と比較的拮抗していますが、ベトナムに限れば技能実習修了者からの移行に大きく偏っています。

この点は後述する手続の選択に直結します。ベトナムから新たに呼び寄せる場合と、日本に在留している方を受け入れる場合とでは、必要となる推薦者表の様式も、承認を行う機関も異なるからです。自社が採用しようとしている人材がどちらに当たるのかを最初に切り分けることが、手続を誤らない第一歩になります。

分野別に見たベトナム人材の分布

同じ統計を特定産業分野別に見ると、ベトナム人材がどの業種に集中しているかがわかります。令和7年12月末現在の特定技能1号について、分野ごとの総数とベトナム国籍の人数は次のとおりです。

特定産業分野 分野計 うちベトナム
飲食料品製造業 93,393人 55,372人
工業製品製造業 56,736人 32,445人
建設 49,323人 30,159人
外食業 43,869人 13,623人
介護 67,871人 10,401人
農業 37,952人 9,789人
ビルクリーニング 8,395人 2,276人
造船・舶用工業 11,204人 1,688人
自動車整備 4,560人 1,661人
漁業 4,590人 572人
宿泊 1,968人 229人
航空 2,260人 199人
自動車運送業 151人 52人
鉄道 54人 20人
木材産業 15人 11人
林業 0人 0人

ベトナム人材は飲食料品製造業・工業製品製造業・建設の3分野で合計118,000人近くに達し、全体の7割以上がこの3分野に集中しています。とりわけ建設では分野全体の約61%、飲食料品製造業では約59%、工業製品製造業では約57%をベトナム国籍が占めており、これらの業種では送出国としてのベトナムへの依存度が極めて高い状態です。

一方、介護分野は分野全体67,871人に対しベトナムは10,401人で、インドネシアやミャンマー、ネパールなどの比重が相対的に高くなっています。自社の分野でどの国籍が主流かを把握しておくと、送出機関の選定や採用チャネルの設計がしやすくなります。

協力覚書(MOC)とDOLAB|ベトナム側の枠組み

出入国在留管理庁は、特定技能外国人の円滑かつ適正な送出し・受入れの確保等のために、送出国との間で協力覚書(MOC:Memorandum of Cooperation)を作成しています。同庁のウェブサイトで公表されている協力覚書の相手国は、フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、スリランカ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インド、マレーシア、ラオス、キルギス、タジキスタンの17か国です(本記事執筆時点)。

ベトナムとの協力覚書は、両国での署名を経て2019年(令和元年)7月1日に東京で交換されました。協力覚書の主眼のひとつは、悪質な仲介事業者を制度から排除することにあります。技能実習制度で長年問題視されてきた、高額な手数料や保証金の徴収といった構造的な問題を繰り返さないため、送出国側の政府が関与する形で送出しの適正性を担保しようという設計です。

2024年3月25日に別添1の様式変更で合意

日越間では、2024年3月25日に協力覚書の別添1(特定技能外国人表)を変更することで合意しています。変更後の様式は英文・和文(仮訳)ともに出入国在留管理庁のウェブサイトで公表されています。実務上は、送出機関や取次者から古い様式の推薦者表が送られてくることがあるため、受け取った書面が現行様式かどうかを確認する習慣を持っておくと安全です。

協力覚書は「日本の法令」ではない点に注意

実務で混乱しやすいのが、協力覚書に基づく手続の法的な位置づけです。協力覚書は日本とベトナムの政府間で作成された文書であり、推薦者表の発行そのものはベトナムの国内制度に基づくベトナム側の手続です。出入国在留管理庁の資料でも、これらは「日本側の手続ではありません」と明示されたうえで、参考として手続の概要が説明されています。

しかし、だからといって軽視してよいわけではありません。2021年2月15日以降、推薦者表は日本の地方出入国在留管理官署に対する在留諸申請の提出書類として位置づけられています。つまり、ベトナム側の手続を完了していなければ、日本側の申請に必要な書類がそろわないという関係になっているのです。

DOLAB(ベトナム内務省海外労働管理局)の役割

DOLAB(Department of Overseas Labour)は、ベトナムから海外へ働きに出る労働者に関する国家管理を担う行政機関です。日本語では「海外労働管理局」と訳されます。送出機関の認定、労働者提供契約の承認、推薦者表の承認といった、特定技能の送出しに関わる中核的な機能を担っています。

出入国在留管理庁が公表している問い合わせ先は次のとおりです。

  • 名称:ベトナム内務省 海外労働管理局(DOLAB)
  • 所在地:41B, Ly Thai To, Hoan Kiem District, Hanoi
  • 電話番号:+84-24-3824-9517(内線512又は503/英語対応可)

所管省庁の名称に注意|「労働・傷病兵・社会省」表記は古い

ここで、情報の鮮度に関わる重要な注意点があります。DOLABはかつて労働・傷病兵・社会省(MOLISA)の下にある機関でしたが、ベトナムの行政機構再編により現在は内務省(Bộ Nội vụ)の所管となっています。ベトナム内務大臣の2025年3月1日付決定119/QĐ-BNVにより、同局の組織が定められています。DOLABの公式ポータルのドメインもmoha.gov.vn(内務省)配下に置かれています。

出入国在留管理庁の資料も現在は「ベトナム内務省海外労働管理局(DOLAB)」と表記しています。インターネット上には「労働・傷病兵・社会省海外労働管理局」と記載した解説記事が依然として多く残っていますが、こうした情報は再編前のものです。ベトナム側の制度は日本側以上に更新が速いため、二次情報ではなく出入国在留管理庁の公表資料やDOLABの公式サイトで確認する姿勢が欠かせません。

根拠となるベトナム国内法

ベトナムから海外へ働きに出る労働者に関する基本法は、2020年11月13日に公布され2022年1月1日に施行された法律69/2020/QH14(契約に基づき海外で就労するベトナム人労働者に関する法律)です。これは従前の法律72/2006/QH11に代わるもので、送出しに関する国家管理の強化と違法行為への対応が改正の主眼とされています。送出機関のライセンス、サービス料、労働者との契約といった事項がこの法律を軸に規律されています。

認定送出機関の確認方法|一覧表と「認定喪失・一時停止」リスト

ベトナムから新たに特定技能外国人を受け入れる場合、ベトナムの制度上、受入機関はDOLABから認定された送出機関(認定送出機関)との間で労働者提供契約を締結することが求められます。したがって、取引しようとしている送出機関が本当に認定を受けているかどうかの確認が、実務の出発点になります。

出入国在留管理庁のウェブサイトには、ベトナム政府から提供された認定送出機関の一覧がExcel形式で掲載されています。令和7年11月17日時点の一覧には423の機関が掲載されています。一覧に含まれる主な項目は次のとおりです。

  • 項番・認定日
  • 機関名・機関名(英語)
  • 代表者・所在地・電話番号・FAX・メールアドレス・URL
  • 創立日・担当分野及び業務内容
  • 資本金(VND)・直近の年間売り上げ・常勤職員数
  • 訓練担当者の氏名・役職・連絡先
  • 日本における代表者・住所・連絡先

資本金や常勤職員数、訓練担当者、日本国内の拠点の有無まで記載されているため、単に「認定の有無」を確認するだけでなく、送出機関の規模や体制を比較検討する材料としても使えます。

認定を喪失・一時停止した機関のリストも必ず確認する

見落とされがちですが、出入国在留管理庁は「認定を喪失した又は一時停止されたベトナムの送出機関(特定技能関係)」のリストもPDFで公表しています。2025年11月17日更新時点で35機関が掲載されています。備考欄には、掲載に至った経緯として次のような類型が記載されています。

  • ベトナム側が送出しに関するライセンスを取り消した旨の情報があったもの
  • ベトナム側から送出しに関するライセンスが返却(返納)された旨の連絡があったもの
  • ベトナム側からライセンスが失効した旨の連絡があったもの
  • ベトナム側から、法令に適合しないため削除した旨の連絡があったもの
  • 過去に技能実習の送出機関として認定されていたが、現在は技能実習認定送出機関一覧表から削除されているもの

「以前取引したことがあるから大丈夫」という判断は危険です。認定は取り消され得るものであり、案件ごとに、その時点の最新の一覧と喪失・停止リストの双方を突き合わせて確認するのが安全な進め方です。

一覧は「最新でない可能性がある」という前提で使う

出入国在留管理庁は、掲載している一覧について、相手国からの情報提供の時期の関係で最新の情報を反映していない場合がある旨を注記しています。したがって、一覧に掲載されていることをもって認定が現に有効であると断定することはできません。疑義がある場合には、送出機関自身にライセンスの原本や有効期限を示してもらう、駐日ベトナム大使館労働管理部に確認するなど、裏取りの手段を併用してください。

ベトナムから新たに受け入れる場合の手続の流れ(添付様式1ルート)

ここからは具体的な手続を追います。まず、ベトナムに居住している方を新たに呼び寄せるパターンです。出入国在留管理庁が公表している「手続の流れ」に沿って整理します。

ステップ1:労働者提供契約の締結とDOLABの承認

日本の受入機関は、認定送出機関との間で、募集する業種や募集人数、労働条件等を定めた「労働者提供契約」を締結します。締結後、受入機関は認定送出機関を通じてDOLABに対し労働者提供契約の承認申請を行い、DOLABの承認を得る必要があるとされています。

実務上の落とし穴はここにあります。労働者提供契約の承認を得る前に人材の募集や選考を先行させてしまうと、後続の手続が滞ることがあります。採用計画のスケジュールを引く際は、この承認に要する期間を必ず織り込んでください。

ステップ2:雇用契約の締結

認定送出機関は、労働者提供契約に基づいた求人情報をもとに人材を募集し、受入機関は送出機関から人材の紹介を受けて、特定技能に係る雇用契約を締結します。この雇用契約は、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)第2条の5第1項の基準に適合するものでなければなりません。

ステップ3:推薦者表(添付様式1)のDOLAB承認

ベトナム国籍の申請者は、認定送出機関を通じ、あらかじめDOLABから推薦者表(協力覚書の添付様式1)の承認を受ける必要があるとされています。推薦者表は、ベトナムの制度上、ベトナム国籍の方が海外での就労についてベトナム側の手続を完了したことをベトナム政府が証明する文書とされています。

受入機関としては、ベトナム国籍の方に対し推薦者表の送付を依頼することになります。原本の郵送に時間がかかることも多いため、在留資格認定証明書の交付申請の予定日から逆算して依頼しておくのが実務的です。

ステップ4:在留資格認定証明書の交付申請

受入機関は、地方出入国在留管理官署に対し、特定技能に係る在留資格認定証明書の交付申請を行います。2021年2月15日以降は、認定送出機関から送付された推薦者表の提出も必要です。なお、在留資格認定証明書交付申請そのものに手数料はかかりません。証明書が交付された後は、雇用契約の相手方に対して原本を送付します。

ステップ5:査証発給申請と入国

来日を希望するベトナム国籍の方は、送付された在留資格認定証明書を在ベトナム日本国大使館に提示のうえ、特定技能に係る査証(ビザ)の発給申請を行います。日本到着時の上陸審査で上陸条件に適合していると認められれば、上陸が許可され「特定技能」の在留資格が付与されます。

あわせて押さえておきたいのが出国前の契約です。出入国在留管理庁のフローチャートには、ベトナム側では出国の少なくとも5日前までに、送出機関と申請人との間で「労働者海外派遣契約」を締結することを求めているとの注記があります。渡航直前になって書類が整っていないという事態を避けるため、送出機関と出国スケジュールを共有しておきましょう。

日本に在留する方を受け入れる場合(添付様式2ルート)

次に、すでに日本に在留しているベトナム国籍の方を特定技能外国人として受け入れるパターンです。ベトナム国籍の特定技能1号の約7割が技能実習ルートであることを踏まえると、実務上はこちらのほうが件数として多くなります。

推薦者表の承認・発行は駐日ベトナム大使館

このルートでは、DOLABではなく駐日ベトナム大使館が推薦者表(協力覚書の添付様式2)の承認・発行を行います。出入国在留管理庁の資料によれば、推薦者表の申請は、申請人本人のほか、特定技能所属機関、職業紹介事業者及び登録支援機関が行うことも可能とされています。受入機関や登録支援機関が窓口となって進められる点は、新規呼び寄せのルートとの大きな違いです。

駐日ベトナム大使館労働管理部の連絡先は次のとおり公表されています。

  • 所在地:〒151-0062 東京都渋谷区元代々木町10-4 WACT代々木上原ビル2階
  • 電話番号:03-3466-4324(日本語対応可)
  • メールアドレス:vnlabor@vnembassy.jp(日本語対応可)

「修了見込み」の記載がある場合の追加書類

推薦者表は、特定技能への移行を希望する技能実習修了見込みの方や、留学中の教育機関を修了(卒業)見込みの方にも発行されます。ベトナム側によれば、この場合、駐日ベトナム大使館による発行の際に、推薦者表上に修了(卒業)見込みである旨が記載されるとのことです。

この記載がある場合の取扱いは、元留学生と元技能実習生で異なります。

  • 元留学生:推薦者表を地方出入国在留管理官署に提出する際、他の必要書類と併せて、留学していた教育機関が発行した教育課程を修了(卒業)したことを証明する文書を提出します。
  • 元技能実習生:基本的に技能実習2号を良好に修了したことに関する書類を提出することとなるため、別途技能実習修了を証明する文書を提出する必要はありません。

2024年6月27日以降の取扱い|推薦者表が不要となる場合

ここが現在の実務で最も重要な変更点です。出入国在留管理庁は、2024年6月27日以降、当面の間、日本に在留しているベトナム国籍の方からの在留資格変更許可申請について、次のとおり取り扱うとしています。

(1)推薦者表の提出が必要な方

  • 技能実習2号又は3号の修了者(修了見込みの方を含む)
  • 日本国内において少なくとも2年間の課程を修了した留学生(修了見込みの方を含む)

(2)上記(1)以外の方

推薦者表の提出は必要ありません。ただし、「留学」の在留資格の方で(1)に当てはまらない場合については、現在の課程を修了又は修了見込みであることを証明する書類(卒業証明書等)を提出することとされています。

(3)その他

申請後にこれまでの在留状況等を確認されることがあるため、追加の書類を求められた場合には提出が必要です。

この取扱いにより、たとえば「家族滞在」や「技術・人文知識・国際業務」など、技能実習でも2年以上の課程の留学でもない在留資格から特定技能へ変更する方については、推薦者表を用意せずに申請できる場合が出てきました。ただし「当面の間」の取扱いである点には留意が必要です。案件着手時に出入国在留管理庁の最新の公表内容を確認してください。

すでに特定技能で在留している方の転職・更新

日本国内ですでに「特定技能」の在留資格を保持している方については、転職に伴う手続や在留期間更新許可申請の際に、あらためて推薦者表を提出することは求められていません。一方で、特定技能所属機関が変わる場合には、受入れ側・支援側の双方に届出義務が生じます。国内での在留資格変更手続の全体像については、特定技能への在留資格変更手続き|技能実習・留学からの切替方法と必要書類を解説もあわせてご確認ください。

在留資格変更許可申請の手数料

入管手数料は2025年4月1日に改定されています。在留資格変更許可申請および在留期間更新許可申請の手数料は、いずれも許可時に6,000円(オンライン申請の場合は5,500円)です。前述のとおり、在留資格認定証明書交付申請には手数料がかかりません。

費用・保証金と職業紹介|日本側が求める基準

「あっせん」と職業紹介事業の許可

送出機関との関係でまず注意すべき論点が、日本の職業安定法との関係です。出入国在留管理庁のフローチャートには、認定送出機関による求職者の人選を行う行為はあっせんに当たるため、仮にこのような行為を行う場合には、日本国内の職業紹介事業者としての許可を得る必要があるとの注記が置かれています。

実務では、送出機関が候補者の絞り込みまで行い、受入企業は面接するだけという進め方が珍しくありません。しかし、その関与の度合いによっては職業紹介に該当し、許可が必要となる可能性があります。受入機関としては、間に入る事業者が必要な許可を有しているかを確認しておくことが、後々のリスク回避につながります。

また、国内の人材紹介会社を経由する場合も同様に、有料職業紹介事業の許可を受けた事業者かどうかを確認してください。許可の有無は厚生労働省が公表する人材サービス総合サイトで検索できます。

省令第2条が定める受入機関の基準

送出国が絡む受入れで最も慎重に扱うべきなのが、金銭の授受です。特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(平成31年法務省令第5号)第2条第1項は、特定技能所属機関(受入機関)が満たすべき基準を定めています。同項は第1号で労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していることを求め、以下、当該外国人が従事することとされている業務と同種の業務に従事していた労働者を非自発的に離職させていないこと(第2号)、受入機関の責めに帰すべき事由による行方不明者を発生させていないこと(第3号)、欠格事由に該当しないこと(第4号)などを列挙しています。ベトナムからの受入れで特に関係するのは次の各号です。

保証金・違約金に関する規定

同省令第2条第1項第4号リは、特定技能雇用契約の締結の日前5年以内又はその締結の日以後に、出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者に該当しないことを求めており、その具体例として次の行為を挙げています。

  • (7)特定技能雇用契約に基づく当該外国人の本邦における活動に関連して、保証金の徴収若しくは財産の管理又は当該特定技能雇用契約の不履行に係る違約金を定める契約その他不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結する行為
  • (8)外国人若しくはその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該外国人と社会生活において密接な関係を有する者との間で、特定技能雇用契約に基づく当該外国人の本邦における活動に関連して、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産の管理をする者若しくは当該特定技能雇用契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結した者又はこれらの行為をしようとする者からの紹介を受けて、当該外国人と当該特定技能雇用契約を締結する行為

実務上とりわけ重いのが(8)です。受入機関自身が保証金を徴収していなくても、そうした行為をする送出機関から紹介を受けて雇用契約を締結すること自体が問題となり得るという構造だからです。送出機関の選定は、単なる取引先選びではなく、受入機関自身が基準を満たすかどうかに直結する判断だと理解してください。

本人・親族による金銭負担の確認

同省令第2条第1項第6号は、外国人又はその配偶者・親族等が、契約に関連して他の者に保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産の管理をされている場合、又は違約金を定める契約等を締結している場合には、そのことを認識して特定技能雇用契約を締結していないことを求めています。同項第7号は、受入機関自身が他の者との間で違約金契約等を締結していないことを求めています。

ベトナムでは、渡航前に本人が送出機関に対して相応の費用を支払っている例があります。事前ガイダンスや面談の機会を活用し、母国でどのような名目でいくら支払ったのか、保証金や違約金の取り決めがないかを本人から直接聞き取り、記録に残しておくことが望まれます。

支援費用を本人に負担させてはならない

同省令第2条第1項第8号は、特定技能1号の外国人と契約を締結する受入機関について、一号特定技能外国人支援に要する費用を、直接又は間接に当該外国人に負担させないことを求めています。登録支援機関に支払う支援委託費を給与から控除するといった取扱いは認められません。受入れに要する費用の全体像については、特定技能外国人の受入れ費用の全体像|初期費用から月額費用まで整理で整理しています。

なお、これらの費用の会計上・税務上の取扱い(損金算入の可否など)については税理士の業務範囲となりますので、必ず税理士にご確認ください。

報酬の支払方法と記録の保存

金銭に関する基準は保証金だけではありません。同省令第2条第1項第12号は、特定技能雇用契約に基づく外国人の報酬について、当該外国人が指定する金融機関の預貯金口座への振込み、又は現実に支払われた額を確認することができる方法によって支払うことを求めています。口座振込み以外の方法で支払った場合には、出入国在留管理庁長官に対して支払の事実を裏付ける客観的な資料を提出し、確認を受けることとされています。来日直後で口座開設が完了していない時期の給与支払方法は、あらかじめ整理しておきたい論点です。

また同項第5号は、特定技能雇用契約に係る外国人の活動の内容に係る文書を作成し、当該外国人に活動をさせる事業所に契約の終了の日から1年以上備えて置くことを求めています。第11号は特定技能雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていることを、第12号の2は、当該外国人に関し地方公共団体から共生社会の実現のために実施する施策への協力を要請されたときに、必要な協力をすることとしていることを、それぞれ求めています。

受入れ後の支援体制と届出義務

推薦者表を取得し在留資格が下りれば手続が終わるわけではありません。特定技能制度は、受入れ後の支援と届出が制度の柱です。

支援計画の作成と登録支援機関への委託

入管法第2条の5第6項により、特定技能1号の外国人と契約を締結しようとする機関は、一号特定技能外国人支援計画を作成しなければなりません。また、同条第5項は、特定技能所属機関が契約により登録支援機関に適合一号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託する場合には、支援体制に関する基準(同条第3項第2号に係る部分)に適合するものとみなすと定めています。自社に支援体制がない場合に登録支援機関へ全部委託する実務は、この規定に根拠があります。

登録支援機関の登録は入管法第19条の23第1項に基づくもので、5年ごとに更新を受けなければ効力を失います(同条第2項)。委託先を選ぶ際は、登録の有効期間が案件の期間をカバーしているかも確認しておきましょう。支援計画の中身については特定技能1号の支援計画とは?義務的支援10項目と登録支援機関への委託を解説を、登録支援機関と監理団体の役割の違いについては登録支援機関と監理団体の違い|技能実習と特定技能の支援体制を比較をご覧ください。

支援体制に関する省令上の基準

自社で支援を行う場合、前掲省令第2条第2項が定める支援体制の基準を満たす必要があります。主な内容は次のとおりです。

  • 役員又は職員の中から支援責任者及び事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること。その前提として、過去2年間に一定の在留資格をもって在留する中長期在留者の受入れ・管理を適正に行った実績があること(イ)、又は役員・職員のうちに過去2年間に同様の中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を有する者がいること(ロ)などのいずれかに該当する必要があります(第1号)
  • 支援を、当該外国人が十分に理解することができる言語によって行うことができる体制を有していること(第2号)
  • 支援の状況に係る文書を作成し、支援を行う事業所に契約の終了の日から1年以上備えて置くこととしていること(第3号)
  • 支援責任者及び支援担当者が、外国人を監督する立場にない者その他中立な実施を行うことができる立場の者であること(第4号)
  • 支援責任者又は支援担当者が、外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること(第6号)

ベトナム人材の受入れでは、第2号の言語要件が実務上の分岐点になります。ベトナム語で対応できる人員を自社で確保できるかどうかが、自社支援と登録支援機関への委託を選ぶ判断材料のひとつになります。

特定技能所属機関の届出義務

入管法第19条の18は、特定技能所属機関に対して出入国在留管理庁長官への届出義務を課しています。同条第1項では、特定技能雇用契約の変更・終了・新たな締結、支援計画の変更、支援委託契約の締結・変更・終了などがあったときの届出を、同条第2項では受け入れている特定技能外国人の氏名や活動の内容、支援計画の実施状況などの届出を定めています。

これらの届出は期限管理が要となります。随時届出の期限については特定技能の随時届出一覧|契約変更・支援計画変更・受入れ困難・支援実施困難時の14日ルールで整理していますので、社内の管理体制づくりの参考にしてください。

2026年4月1日の分野拡大と育成就労を見据えて

ベトナムからの受入れを検討するうえで、制度全体の動きも押さえておく必要があります。

特定産業分野は19分野に

出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野等を定める省令(平成31年法務省令第6号)は、令和8年3月31日法務省令第22号により改正され、令和8年(2026年)4月1日から特定産業分野は19分野となりました。従前の16分野に加え、リネンサプライ分野、物流倉庫分野、資源循環分野が追加されています。ただし、この3分野は分野別運用方針や告示で定める基準・運用要領の整備が順次進められている段階にあります。該当分野での受入れを検討する場合は、所管省庁が公表する運用要領や技能試験の実施状況を必ず確認してください。

現行の19分野は、介護、ビルクリーニング、リネンサプライ、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業、資源循環です。

なお、特定技能2号での受入れ対象は11分野で、介護、リネンサプライ、自動車運送業、鉄道、物流倉庫、林業、木材産業、資源循環を除く分野が対象です。2号への移行を前提にキャリアパスを設計する場合は、この点を採用計画の段階で確認しておく必要があります。詳細は特定技能2号とは?対象分野・在留期間・1号との違いを行政書士が解説をご参照ください。

育成就労制度は2027年施行予定

技能実習制度に代わる育成就労制度は2027年の施行が予定されています。ベトナムからの人材受入れは技能実習ルートへの依存度が高いため、制度の移行は送出しの実務にも影響が及ぶ可能性があります。送出機関に対する規制の方向性については、育成就労の送出機関規制|手数料上限・契約書様式・二国間取決めの強化で整理しています。

試験ルートの比重が高まる可能性

ベトナムの特定技能1号のうち試験ルートは45,404人にとどまり、技能実習ルートの半分以下です。しかし全分野の総数では試験ルートが174,625人と技能実習ルートに迫っており、他国では試験ルートが主流の国もあります。制度の移行期には、技能実習修了者の流入に頼らない採用チャネルの確保が課題となります。分野別の試験制度については特定技能の技能試験ガイド|分野別試験・日本語試験・免除条件を解説で解説しています。

実務でつまずきやすいポイント

最後に、ベトナム案件で相談を受けることの多い論点を整理します。

氏名・生年月日の表記ゆれ

推薦者表、旅券、雇用契約書、在留カードなどの間で、氏名のローマ字表記や生年月日が一致しているかを必ず突合してください。ベトナム人の氏名は姓・ミドルネーム・名の構成が日本の様式と噛み合わないことがあり、書類ごとに順序が入れ替わっているケースが見られます。表記が一致しない場合、審査の過程で照会を受け、結果として処理期間が延びる要因になります。

送出機関が一覧に見当たらない

取引しようとしている送出機関が認定送出機関の一覧に見当たらない場合、名称の英語表記や略称の違いで検索に引っかかっていないだけということもあります。一覧には「機関名」と「機関名(英語)」の双方が収録されているため、両方で確認してください。それでも見当たらない場合や、喪失・停止リストに掲載されている場合には、取引そのものを再検討すべきです。

ルートの取り違え

添付様式1と添付様式2は、対象となる場面も承認機関も異なります。ベトナムから新たに呼び寄せるなら様式1をDOLABが、日本に在留する方の在留資格変更なら様式2を駐日ベトナム大使館が扱います。いったん日本に帰国した元技能実習生を呼び戻す場合は前者に、日本に在留したまま特定技能へ移行する場合は後者に当たります。本人が現在どこにいるのかを起点に判断すると誤りが減ります。

スケジュールの逆算不足

ベトナムからの新規受入れでは、労働者提供契約の承認、推薦者表の承認、在留資格認定証明書の交付、査証の発給、出国前の労働者海外派遣契約の締結と、複数の手続が直列でつながります。いずれかが遅れれば全体が後ろ倒しになります。入社希望日から逆算した工程表を作り、送出機関と共有しておくことをおすすめします。

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まとめ

ベトナムは特定技能1号で158,497人(令和7年12月末現在・速報値)を占める最大の送出国であり、全体382,341人の約41.5%に上ります。うち技能実習ルートが113,009人と約7割を占めるため、実務では日本国内での在留資格変更のパターンが中心になります。自社の採用対象がどちらのルートに当たるかを最初に切り分けることが、手続を誤らない前提条件です。

手続の骨格は、日越の協力覚書(2019年7月1日交換)を土台に、認定送出機関との労働者提供契約DOLABまたは駐日ベトナム大使館による推薦者表の承認日本側の在留諸申請という三層構造になっています。ベトナムから新規に呼び寄せる場合は添付様式1をDOLABが、日本に在留する方の在留資格変更では添付様式2を駐日ベトナム大使館が扱う点が分岐となります。

現在の実務で最も影響が大きいのは、2024年6月27日以降の取扱いです。技能実習2号・3号の修了者(見込みを含む)と、日本国内で少なくとも2年間の課程を修了した留学生(見込みを含む)は推薦者表の提出が必要ですが、それ以外の方は提出が不要とされています。ただし「当面の間」の取扱いであり、案件ごとに出入国在留管理庁の最新の公表内容を確認する必要があります。

送出機関の選定は、単なる取引先選びではありません。省令第2条第1項第4号リ(8)は、保証金の徴収等を行う者からの紹介を受けて特定技能雇用契約を締結する行為を問題としており、送出機関の適正性が受入機関自身の基準適合性に直結します。認定送出機関の一覧(令和7年11月17日時点で423機関)と、認定を喪失・一時停止した機関のリスト(2025年11月17日更新時点で35機関)の双方を、案件ごとに確認してください。

行政書士法人Treeでは、特定技能に関する在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請等の申請取次一号特定技能外国人支援計画の作成入管法第19条の18に基づく各種届出書類の作成といった、官公署に提出する書類の作成と手続を承っています。ベトナムからの受入れは、ベトナム側の手続と日本側の申請が連動するぶん工程が長くなります。スケジュールに不安がある段階からご相談ください。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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