建物の外壁工事で歩道側に足場を出す、解体現場の仮囲いを道路境界より外側に張り出す、工事内容を知らせる看板を歩道上に立てる——建設業の現場では、こうした「道路の一部を借りる」場面が日常的に発生します。ところが、この道路の一時的な使用は、単に警察署に道路使用許可を出せば済むものではありません。道路法第32条の道路占用許可という、道路管理者(国・都道府県・市町村)に対する別の許可が必要になります。
現場では「警察に届けたから大丈夫」「以前の現場では要らなかった」といった思い込みから手続が漏れ、着工直前に工程が止まる、あるいは道路管理者から是正指導を受けるといったトラブルが後を絶ちません。道路法上、無許可占用には拘禁刑を含む罰則が定められており、決して軽い話ではないのです。
本記事では、工事用足場・仮囲い・工事看板・朝顔(防護棚)といった建設現場でよく登場する物件を素材に、道路占用許可の法的な位置づけ、許可基準、申請書と添付図面、占用料、許可後の変更・更新・原状回復、そして罰則までを、条文と政令の基準に沿って実務目線で解説します。
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目次
道路占用許可とは|道路法第32条が求める「継続して道路を使用する」許可
道路占用許可の根拠は道路法第32条第1項です。同項は「道路に次の各号のいずれかに掲げる工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合においては、道路管理者の許可を受けなければならない」と定めています。ポイントは「工作物・物件・施設を設ける」ことと「継続して道路を使用する」ことの両方が要件になっている点です。
「道路の占用」という言葉自体も、同条第2項第1号の括弧書きで「道路に前項各号の一に掲げる工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用すること」と定義されています。つまり、通行そのものや一過性の作業ではなく、物を置いて道路の一部を排他的・継続的に使う状態が占用にあたります。
ここでいう「道路」は、道路法第2条第1項により、一般交通の用に供する道で同法第3条各号に掲げるもの(高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道)を指し、トンネル・橋・渡船施設などの一体施設や、当該道路に附属して設けられている道路の附属物も含みます。したがって、私有地内の通路や、道路法の路線認定を受けていないいわゆる私道は、この許可の対象外です。ただし、建築基準法上の道路であっても道路法の道路とは限らないため、境界の判断は現地と道路台帳で確認するほかありません。
許可対象となる7つの類型(道路法第32条第1項各号)
同項各号は、占用許可の対象を次のように列挙しています。
- 第1号 電柱、電線、変圧塔、郵便差出箱、公衆電話所、広告塔その他これらに類する工作物
- 第2号 水管、下水道管、ガス管その他これらに類する物件
- 第3号 鉄道、軌道、自動運行補助施設その他これらに類する施設
- 第4号 歩廊、雪よけその他これらに類する施設
- 第5号 地下街、地下室、通路、浄化槽その他これらに類する施設
- 第6号 露店、商品置場その他これらに類する施設
- 第7号 前各号に掲げるもののほか、道路の構造又は交通に支障を及ぼすおそれのある工作物、物件又は施設で政令で定めるもの
建設現場に関係するのは、主に第7号の受け皿規定です。第7号を受けた道路法施行令第7条が、具体的な物件を列挙しています。
政令が定める「工事用施設」「工事用材料」「看板」
道路法施行令第7条のうち、建設工事で押さえるべきは次の3つです。
- 第1号 看板、標識、旗ざお、パーキング・メーター、幕及びアーチ
- 第4号 工事用板囲、足場、詰所その他の工事用施設
- 第5号 土石、竹木、瓦その他の工事用材料
足場、仮囲い(工事用板囲)、現場事務所としての詰所は第4号の「工事用施設」に、資材や土砂の仮置きは第5号の「工事用材料」に、工事看板は第1号にそれぞれ位置づけられます(現場の幕は、工事用施設と評価されるかどうかで第1号と第4号に分かれます)。いずれも道路法第32条第1項第7号を通じて占用許可の対象となり、無許可で設置すれば違法占用です。
なお、同条第6号には、防火地域内に存する既存建築物を除去して当該防火地域内にこれに代わる建築物として耐火建築物を建築する場合に、当該耐火建築物の工事期間中、当該既存建築物に替えて必要となる仮設店舗その他の仮設建築物が定められており、要件を満たす場合に限り仮設建築物の占用も想定されています。一般的な工事用の仮設ハウスとは要件が異なりますので、混同しないよう注意が必要です。
足場・仮囲い・看板・朝顔は道路法上どう扱われるか
次に、現場で頻度の高い4つの物件について、道路法と関連基準の関係を整理します。
外部足場
建物外周に組む外部足場が道路境界線を越えて歩道上や車道上に張り出す場合、その張り出し部分は施行令第7条第4号の工事用施設として占用許可が必要です。足場の脚部が敷地内に収まっていても、ブラケットや壁つなぎ、養生シート、手すりなどが道路の上空にはみ出せば、その上空部分も道路の占用にあたります。後述する道路法施行令第10条第1号ロが「一般工作物等の道路の上空に設けられる部分」について路面からの離隔距離を定めていることからも、上空に物件を設ける行為が占用として規律されていることが分かります。
また、令和元年9月2日国土交通省告示第496号「建設工事公衆災害防止対策要綱」(告示当時の建設業法第25条の27第2項に基づく告示。同条は令和6年法律第49号による改正で構成が変わり、現在は同条第4項が対応する規定です)の建築工事等編第5では、原則として工事範囲を敷地内に収める施工計画の作成及び工法選定を行うこととされています。道路にはみ出す計画は、まず「敷地内で収まらないか」を検討したうえで組み立てる必要があるということです。
仮囲い
仮囲いは施行令第7条第4号の「工事用板囲」に該当します。仮囲いの高さについては、建築基準法施行令第136条の2の20が、木造の建築物で高さ13メートル若しくは軒の高さ9メートルを超えるもの、又は木造以外の建築物で2以上の階数を有するものの建築・修繕・模様替・除却の工事を行う場合に、工事期間中、工事現場の周囲に地盤面から高さ1.8メートル以上の板塀その他これに類する仮囲いを設けることを義務づけています(同等以上の効力を有する他の囲いがある場合等は除く)。
前掲の公衆災害防止対策要綱でも、建築工事等編第21が原則として地盤面から高さ1.8メートル(特に必要がある場合は3メートル)以上の板べい等を設けることとし、土木工事編第29は地上4メートル以上の高さを有する構造物を建設する場合に高さ1.8メートル以上の仮囲いを求めています。なお、金網等透視し得るものを用いた仮囲いにしなければならないとする規定は土木工事編第29第2項に置かれており、建築工事等編第21第2項は仮囲いに設ける出入口について、交通の支障がない箇所への設置、工事に必要がない限りの閉鎖、扉を引戸又は内開きとすることなどを定めています。
工事看板・幕
工事名や施工者名を表示する看板は施行令第7条第1号に該当します。現場に張る幕も同号に列挙されていますが、後述する占用料の別表は第7条第1号の「幕」から「第七条第四号に掲げる工事用施設であるもの」を明示的に除いており、足場に張る養生用の幕のように工事用施設と評価されるものは第4号として扱われます。その別表でも、看板は「一時的に設けるもの」と「その他のもの」で単価が大きく分かれており、工事期間中だけ設置する工事看板は前者として扱われるのが通常です。なお、道路上に設ける看板は道路交通法第77条第1項第2号(道路に石碑、銅像、広告板、アーチその他これらに類する工作物を設けようとする者)にも該当しうるため、警察署長の道路使用許可の要否も併せて確認します。
朝顔(防護棚)・防護構台
落下物防止のために足場から張り出す朝顔(防護棚)は、実務上とくに漏れやすい物件です。公衆災害防止対策要綱の建築工事等編第23第2項は、建築工事等を行う部分からふ角75度を超える範囲又は水平距離5メートル以内の範囲に隣家や一般の交通の用に供されている場所がある場合に防護棚等の設置を求め、地盤面からの高さが10メートル以上の場合は1段以上、20メートル以上の場合は2段以上、最下段は工事を行う部分の下10メートル以内、各防護棚は水平距離で2メートル以上突出させ水平面となす角度を20度以上とする、といった具体的な基準を定めています。
そして同編第24第4項は「施工者は、道路上に防護構台を設置する場合や防護棚を道路上空に設ける場合には、道路管理者及び所轄警察署長の許可を受けるとともに、協議に基づく必要な安全対策を講じなければならない」と明記しています。道路上空に朝顔を出す以上、道路占用許可と道路使用許可の双方が前提になる、ということです。
さらに同編第29(土木工事編では第20)は、工事に伴う倒壊・崩落等によって道路構造の保全や道路の機能の確保に影響を与える可能性がある場合には、道路法第32条に定める道路占用許可を要しない場合であっても、あらかじめ道路管理者に連絡し、指示を受け又は協議により必要な措置を講じなければならないとしています。占用許可が不要なケースでも道路管理者との接触は必要になりうる、という点は覚えておきたいところです。
道路占用許可と道路使用許可の違い|どの窓口にどう申請するか
建設現場でもっとも誤解が多いのが、この二つの許可の関係です。
| 項目 | 道路占用許可 | 道路使用許可 |
|---|---|---|
| 根拠 | 道路法第32条 | 道路交通法第77条 |
| 許可権者 | 道路管理者(国土交通大臣・都道府県・市町村等) | 所轄警察署長 |
| 目的 | 道路の構造の保全・道路管理 | 道路における危険の防止・交通の安全と円滑 |
| 典型的な対象 | 足場・仮囲い・看板・資材の継続的な設置 | 道路における工事・作業、工作物の設置等 |
道路交通法第77条第1項は、①道路において工事若しくは作業をしようとする者又はその請負人、②道路に石碑、銅像、広告板、アーチその他これらに類する工作物を設けようとする者、③場所を移動しないで道路に露店・屋台店等を出そうとする者、④公安委員会が定めた行為をしようとする者について、所轄警察署長の許可を受けなければならないと定めています。工事用足場を道路上に組む行為は、道路法上は占用、道路交通法上は道路における工事・作業として、それぞれ別個に許可が必要になるのが原則です。
経由申請という便法
この二重手続については、法律側に緩和の仕組みが用意されています。道路法第32条第4項は、占用許可に係る行為が道路交通法第77条第1項の適用を受けるものである場合、占用許可の申請書の提出を所轄警察署長を経由して行うことができるとし、警察署長は速やかにその申請書を道路管理者に送付しなければならないとしています。
逆方向も同じです。道路交通法第78条第2項は、道路使用許可に係る行為が道路法第32条第1項又は第3項の適用を受けるものであるときは、道路使用許可の申請書の提出を道路管理者を経由して行うことができると定めています。どちらの窓口から出しても、他方に回付される建付けになっているわけです。
加えて道路法第32条第5項は、道路管理者が占用許可を与えようとする場合において、当該行為が道路交通法第77条第1項の適用を受けるものであるときは、あらかじめ所轄警察署長に協議しなければならないとしています。行政庁間の協議が前提となるため、片方の窓口で完結すると考えず、両方の審査が通って初めて着工できると理解しておくのが安全です。
なお、道路使用許可については、道路交通法第77条第2項が「現に交通の妨害となるおそれがないと認められるとき」「許可に付された条件に従って行われることにより交通の妨害となるおそれがなくなると認められるとき」「現に交通の妨害となるおそれはあるが公益上又は社会の慣習上やむを得ないものであると認められるとき」のいずれかに該当すれば許可しなければならないと定めており、同条第3項により危険防止等のための条件を付すことができます。また同条第7項は、許可期間が満了したとき等に速やかに工作物の除去その他道路を原状に回復する措置を講じることを義務づけています。
申請先はどこか|道路管理者の見きわめ方
道路占用許可の申請先は「道路管理者」です。道路法第18条第1項は、第12条・第13条第1項等の規定によって道路を管理する者を道路管理者と定義しています。具体的には次のとおりです。
- 一般国道(指定区間内)…国土交通大臣。実務上は各地方整備局の国道事務所・出張所が窓口(道路法第13条第1項)
- 一般国道(指定区間外)…都道府県。ただし指定市の区域内は当該指定市(同法第13条第1項、第17条第1項)
- 都道府県道…都道府県。指定市の区域内は当該指定市(同法第15条、第17条第1項)
- 市町村道…市町村(同法第16条)
同法第17条第2項・第3項により、指定市以外の市が都道府県に協議して同意を得たうえで国道・都道府県道の管理を行う場合や、町村が都道府県道の管理を行う場合もあります。現場の前面道路がどの路線に属し、誰が管理しているのかは、道路管理者の事務所で保管されている道路台帳(同法第28条第1項により道路管理者が調製・保管するもので、道路法施行規則第4条の2により調書及び図面をもって組成されます)で確認するのが確実です。
ひとつの現場が複数の道路に面していると、国道事務所と市の道路管理課の双方に申請する、といった事態も珍しくありません。着工日から逆算した工程を組むうえでは、事前相談の段階で管理者ごとの受付方法・添付図面の要求水準・処理期間を確認しておくことが不可欠です。
許可基準|「道路の敷地外に余地がない」という壁
申請すれば当然に許可が下りるわけではありません。道路法第33条第1項は、道路管理者は、道路の占用が第32条第1項各号のいずれかに該当するものであって道路の敷地外に余地がないためにやむを得ないものであり、かつ、第32条第2項第2号から第7号までに掲げる事項について政令で定める基準に適合する場合に限り許可を与えることができる、と定めています。
前段の「道路の敷地外に余地がない」という要件は、実務上「無余地性」と呼ばれます。敷地内で足場を組めるのに、施工の都合や工費の都合で道路上に出したい、という理由では原則として通りません。敷地形状や建物の位置関係から道路上に出さざるを得ないことを、図面で説明できるかどうかが第一関門です。
占用の期間(施行令第9条)
施行令第9条は、占用の期間(更新する場合の期間を含む)について、水道法による水管、下水道管、鉄道、ガス管、電気事業法による電柱・電線、電気通信事業法による電柱・電線・公衆電話所、石油管などを10年以内とし、その他の工作物・物件・施設は5年以内としています。工事用施設・工事用材料・看板はいずれも「その他」に該当するため5年以内が上限ですが、実際の許可期間は工期に合わせて設定されるのが通常です。
占用の場所(施行令第10条)
工事用施設や看板は、施行令第10条の「一般工作物等」として場所の基準が適用されます。地上に設ける場合、道路の区域内の地面に接する部分は、①法のり面、②側溝上の部分、③路端に近接する部分、④歩道内の車道に近接する部分、⑤種類や道路構造からみて著しい支障を及ぼすおそれのない場合の分離帯・ロータリー等、のいずれかに該当する位置にあることが求められます。
上空については、一般工作物等の道路の上空に設けられる部分(法のり敷、側溝、路端に近接する部分、歩道内の車道に近接する部分、分離帯等の上空にある部分を除く)がある場合、その最下部と路面との距離が4.5メートル(歩道上にあっては2.5メートル)以上であることとされています。朝顔や足場の張り出し高さを検討する際の基本数値です。
さらに、著しい支障を及ぼすおそれのない場合を除き、道路の交差し、接続し、又は屈曲する部分以外の道路の部分であることも要件とされています。交差点付近の占用が厳しく見られるのはこのためです。
構造の基準(施行令第12条)
地上に設ける場合、施行令第12条第1号イは「倒壊、落下、剝離、汚損、火災、荷重、漏水その他の事由により道路の構造又は交通に支障を及ぼすことがないと認められるもの」であることを求めています。足場の壁つなぎ・脚部の滑動防止、養生シートの取付方法、看板の耐風設計などは、この基準を満たすことを説明できる構造でなければなりません。
工事実施の方法(施行令第13条)
施行令第13条は、占用に関する工事の実施方法について次の基準を定めています。
- 占用物件の保持に支障を及ぼさないために必要な措置を講ずること
- 道路を掘削する場合は、溝掘、つぼ掘又は推進工法その他これに準ずる方法によるものとし、えぐり掘の方法によらないこと
- 路面の排水を妨げない措置を講ずること
- 原則として、道路の一方の側は、常に通行することができることとすること
- 工事現場においては、さく又は覆いの設置、夜間における赤色灯又は黄色灯の点灯その他道路の交通の危険防止のために必要な措置を講ずること
- 電線・水管・下水道管・ガス管・石油管が地下に設けられていると認められる場所又はその付近を掘削する工事では、試掘その他の方法により確認した後に実施し、管理者との協議に基づき移設・防護・立会い等の措置を講じ、ガス管・石油管の付近では火気を使用しないこと
工事の時期・道路の復旧方法(施行令第14条・第15条)
工事の時期については、他の占用工事や道路工事の時期を勘案して適当な時期であること、道路の交通に著しく支障を及ぼさない時期であること、特に道路を横断して掘削する工事その他交通を遮断する工事については交通量の最も少ない時間であることが求められます。復旧については、掘削した土砂を埋め戻す場合は層ごとに行い確実に締め固めること、そのまま埋め戻すことが不適当な場合は土砂の補充又は入換えを行うこと等が定められています。
なお、道路管理者は、道路を不経済に損傷し又は交通に著しい支障を及ぼさないために必要があると認めるときは、他の占用工事や道路工事との相互調整のために必要な条件を付すことができます(道路法第34条)。また同法第87条第1項により、道路の構造を保全し、交通の危険を防止し、その他円滑な交通を確保するために必要な条件を付すことができ、同条第2項はその条件が不当な義務を課すこととならないものでなければならないとしています。
申請書の記載事項・添付図面・処理期間
道路法第32条第2項は、許可を受けようとする者が申請書に記載すべき事項として、次の7項目を定めています。
- 道路の占用の目的
- 道路の占用の期間
- 道路の占用の場所
- 工作物、物件又は施設の構造
- 工事実施の方法
- 工事の時期
- 道路の復旧方法
申請書の様式は、道路法施行規則第4条の3第1項により別記様式第5と定められています。同条第2項は、占用の期間が満了した場合にこれを更新しようとするときは、道路管理者が別に定める様式によることができるとしています。実際、多くの自治体が更新用の簡易様式を用意しています。
添付図面
国土交通省の道路占用許可手続の案内では、添付書類は占用物件の種類に応じて異なるとしたうえで、看板・日除け・足場などについて位置図・平面図・断面図が例示されています。関東地方整備局東京国道事務所は、申請書の作成上の注意点とあわせて位置図・平面図・横断図・縦断図・構造図の記載例を公開しています。
実務では、次の3点が特に重要です。
- 位置図…現場の位置を周辺地図上で示す図面。路線名・起点からの距離など、道路管理者が対象箇所を特定できる情報を落とし込む
- 平面図…真上から見た占用の状況。歩道幅員、車道幅員、占用部分の寸法を記入し、占用面積とその計算式を明示する。占用料の算定根拠になるため、ここが曖昧だと差し戻される
- 断面図(横断図)…足場や朝顔を側面から見た図。路面からの高さ(前述の4.5メートル・2.5メートル)や張り出し寸法を示す
加えて、施工者が誰か、工期はいつからいつまでか、道路使用許可の申請予定はどうなっているか、といった点も審査の前提になります。図面の縮尺や記載事項は道路管理者ごとに運用が異なりますので、事前相談で確認するのが結局は近道です。
処理期間と電子申請
処理期間は道路管理者ごとに異なります。たとえば東京都建設局は、道路占用許可の標準処理期間を本受付後、閉庁日を除き18日間としています。工程表を組む際には、この期間に加えて事前相談・図面修正・道路使用許可の審査期間を見込む必要があります。着工日の直前に申請を出すという段取りでは、まず間に合いません。
国が管理する直轄国道については、国土交通省の「道路占用システム」によるオンライン申請が利用できます。申請書及び添付書類の作成・提出のほか、廃止・名称変更・住所変更・着手届・完了届といった各種届出、進捗状況の確認、許可書のダウンロードにも対応しています。対象となる道路の範囲や取扱物件には制限がありますので、利用前にシステムの案内で確認してください。
占用料はいくらか|条例と政令で決まる仕組み
道路法第39条第1項は、道路管理者は道路の占用につき占用料を徴収することができると定めています。ただし、国の行う事業及び地方公共団体の行う事業で地方財政法第6条に規定する公営企業以外のものに係る場合は徴収しないとされています。
そして同条第2項により、占用料の額及び徴収方法は道路管理者である地方公共団体の条例(指定区間内の国道にあっては政令)で定められます。つまり、都道府県道・市町村道の占用料は各自治体の条例を見なければ分かりません。ここは「相場」で語れない部分です。
指定区間内の国道の占用料(施行令別表)
指定区間内の国道については、施行令第19条及び別表に単価が定められています。所在地は土地の平均価格に応じて第一級地から第五級地に区分され(別表備考2)、建設工事に関係する主な単価は次のとおりです。
| 占用物件 | 単位 | 第一級地 | 第二級地 | 第三級地 | 第四級地 | 第五級地 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 工事用施設(施行令第7条第4号)・工事用材料(同条第5号) | 占用面積1平方メートルにつき1月 | 3,300円 | 540円 | 190円 | 90円 | 58円 |
| 看板(アーチであるものを除く/一時的に設けるもの) | 表示面積1平方メートルにつき1月 | 3,300円 | 540円 | 190円 | 90円 | 58円 |
| 看板(アーチであるものを除く/その他のもの) | 表示面積1平方メートルにつき1年 | 33,000円 | 5,400円 | 1,900円 | 900円 | 580円 |
| 仮設建築物(施行令第7条第6号)・同条第7号の施設 | 占用面積1平方メートルにつき1月 | 390円 | 170円 | 120円 | 100円 | 94円 |
足場や仮囲いは工事用施設として面積・月単位で課され、工事看板は「一時的に設けるもの」として同じ単価水準になります。恒常的な看板(その他のもの)は年単位で桁違いに高くなる点に注意してください。なお、表示面積とは広告塔又は看板の表示部分の面積をいい(別表備考6)、面積・長さに0.01平方メートル・0.01メートル未満の端数があるときはその端数を切り捨てて計算します(同備考8)。
施行令第19条第1項は、算出した額が100円に満たない場合は100円とし、占用期間が翌年度以降にわたる場合は各年度分を合計する旨を定めています。同条第2項は、占用の期間が1月未満のものについて、消費税及び地方消費税に相当する額を加えた額とする旨を規定しています。占用料の会計処理や消費税の取扱いに関する具体的な判断は税務の領域ですので、必ず税理士にご確認ください。
納付と滞納
施行令第19条の2は、指定区間内の国道の占用料について、許可等の日から1月以内に納入告知書により一括して徴収し、占用期間が翌年度以降にわたる場合は翌年度以降の占用料を毎年度4月30日までに徴収するとしています。既に納めた占用料は原則として返還されません(道路管理者が道路法第71条第2項により許可を取り消した場合の超過分を除く)。
また道路法第73条は、占用料等を納付しない者に対して督促状により納付期限を指定して督促すること、条例(政令)の定めにより手数料及び年14.5パーセントの割合を乗じて計算した額を超えない範囲内の延滞金を徴収できること、督促後も納付がなければ国税滞納処分の例により徴収できることを定めています。徴収権は5年間行使しないと時効により消滅します(同条第4項)。
許可後の実務|変更・更新・原状回復・監督処分と罰則
変更したいとき
道路法第32条第3項は、許可を受けた者(道路占用者)が第2項各号の事項を変更しようとする場合、その変更が道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のないと認められる軽易なもので政令で定めるものである場合を除き、あらかじめ道路管理者の許可を受けなければならないと定めています。工期の延長、足場の張り出し範囲の変更、看板の面積変更などは、原則として変更許可の対象です。
ここでいう「軽易なもの」は施行令第8条に限定列挙されており、①占用物件の構造の変更であって重量の著しい増加を伴わないもの、②道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のない物件の占用物件に対する添加であって当該道路占用者が占用の目的に附随して行うもの、の2つのみです。範囲は極めて狭いと理解しておくべきでしょう。
期間が満了するとき
工期が延び、占用期間が満了する場合は更新手続が必要です。更新後の期間についても施行令第9条の上限(工事用施設等は5年以内)が適用されます。更新申請の様式は、施行規則第4条の3第2項により道路管理者が別に定める様式によることができるとされているため、管理者ごとの様式に従います。満了後に無許可のまま物件を置き続ければ違法占用ですので、工期変更が見えた時点で早めに動くことが肝心です。
撤去と原状回復
道路法第40条第1項は、道路占用者は、占用の期間が満了した場合又は占用を廃止した場合においては、占用物件を除却し、道路を原状に回復しなければならないとしています(原状に回復することが不適当な場合を除く)。同条第2項により、道路管理者は原状回復又は代替措置について必要な指示をすることができます。道路交通法の側でも、第77条第7項が許可期間満了時等の原状回復措置を義務づけています。
監督処分
道路法第71条第1項は、法令・命令の規定やこれらに基づく処分に違反している者、許可に付した条件に違反している者、偽りその他不正な手段により許可等を受けた者に対して、許可の取消し・効力停止・条件変更のほか、行為若しくは工事の中止、工作物の改築・移転・除却、損害予防施設の設置、道路の原状回復を命ずることができると定めています。
また同条第2項は、①道路に関する工事のためやむを得ない必要が生じた場合、②道路の構造又は交通に著しい支障が生じた場合、③その他道路の管理上の事由以外の事由に基づく公益上やむを得ない必要が生じた場合にも、同様の処分・措置命令ができるとしています。この②③による処分で通常受けるべき損失については、同法第72条第1項により道路管理者が補償することとされています。
さらに同法第37条第1項は、交通が著しくふくそうする道路や幅員が著しく狭い道路について車両の能率的な運行を図るために特に必要と認める場合等に、区域を指定して道路の占用を禁止し、又は制限することができると定めています。都市部の幹線道路沿いでは、この禁止・制限区域の指定により、そもそも占用が認められないケースがあります。
罰則
無許可占用等に対する罰則は次のとおりです。
- 道路法第102条第1号…第32条第1項に違反して道路を占用したとき。1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
- 道路法第102条第2号…第37条第1項による禁止又は制限に違反して道路を占用したとき。1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
- 道路法第103条第1号…第32条第3項に違反して(無許可で変更して)道路を占用したとき。6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金
- 道路法第104条第7号…第71条第1項又は第2項による道路管理者の命令に違反したとき。100万円以下の罰金
- 道路交通法第119条第2項第7号…第77条第1項(道路使用許可)に違反したとき。3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金
- 道路交通法第119条第2項第8号…道路使用許可に付され又は変更された条件に違反したとき。同上
- 道路交通法第120条第2項第5号…第77条第7項(原状回復措置)に違反したとき。5万円以下の罰金
加えて道路交通法第81条第1項は、無許可で工作物等を設置し又は工事等を行った者等に対し、警察署長が除却・移転・改修・工事の中止その他必要な措置を命ずることができると定めています。さらに同条第2項は、これらの者の氏名及び住所を知ることができないために命令ができないときは、警察署長が自ら当該措置をとることができるとしています。この場合の除却・保管・売却・公示等に要した費用は、工作物等の返還を受けるべき占有者等の負担とされます(同条第7項)。「黙って置いておけば済む」という発想が通用しない構造になっているわけです。
あわせて確認したい隣接手続
足場の計画届(労働安全衛生法第88条第1項)
道路占用許可とは別に、足場については労働基準監督署への計画の届出が必要になる場合があります。労働安全衛生法第88条第1項は、厚生労働省令で定める機械等を設置・移転・主要構造部分の変更をしようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の30日前までに労働基準監督署長に届け出なければならないと定めています。
労働安全衛生規則第85条は、この機械等を別表第7の上欄に掲げるものとし、別表第7の12の項が「足場(つり足場、張出し足場以外の足場にあっては、高さが10メートル以上の構造のものに限る。)」を挙げています。ただし同条ただし書第2号により、架設通路又は足場で組立てから解体までの期間が60日未満のものは除かれます。届出は労働安全衛生規則第86条第1項により様式第20号の届書に、設置箇所・種類及び用途・構造、材質及び主要寸法を記載した書面と組立図・配置図を添えて所轄労働基準監督署長に提出します。
なお、別表第7の11の項は「架設通路(高さ及び長さがそれぞれ10メートル以上のものに限る。)」を掲げており、こちらも同様の届出対象です。他方、労働安全衛生法第88条第4項及び労働安全衛生規則第92条の2第1項により、資格を有する者を計画作成に参画させなければならないのは別表第7の10の項(支柱の高さが3.5メートル以上の型枠支保工)と12の項(足場)の設置等の工事に限られており、架設通路は参画者を要する工事には含まれていません。
屋外広告物条例
道路上に看板を設置する場合、道路占用許可・道路使用許可に加えて、屋外広告物法に基づく自治体の条例による規制がかかることがあります。屋外広告物法第2条第1項は、常時又は一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるもので、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの等を「屋外広告物」と定義しています。
同法第3条は都道府県が条例で禁止地域・禁止物件を定めることができるとし、同法第4条は条例で許可制を定めることができるとし、同法第5条は形状・面積・色彩・意匠その他の表示の方法の基準等を条例で定めることができるとしています。したがって、規制内容も許可の要否も設置地の条例次第です。景観地区・風致地区や文化財の周辺などでは、そもそも表示が禁止されている場合もあります。設置前に、当該地を所管する自治体の屋外広告物担当部署に確認してください。
道路管理者以外の者が行う工事の承認(道路法第24条)
現場への乗入口を作るために歩道の縁石を切り下げる、といった道路そのものに手を加える工事は、占用ではなく道路法第24条の承認工事にあたります。同条は、道路管理者以外の者は、道路に関する工事の設計及び実施計画について道路管理者の承認を受けて道路に関する工事又は道路の維持を行うことができると定めています(政令で定める軽易な維持は承認不要)。占用許可の申請と混同されやすいポイントですので、工事内容を切り分けて整理してください。
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現場でつまずきやすい7つのポイント
最後に、実務で頻出する誤解と対処を整理します。
①「敷地内に足場を組むから占用は不要」と考えてしまう——脚部が敷地内でも、養生シート・手すり・ブラケット・朝顔が道路の上空にはみ出せば占用です。上空も道路の区域に含まれるという前提で、断面図を書いて確認してください。
②道路使用許可だけ取って着工する——道路交通法第77条と道路法第32条は目的も許可権者も別です。道路法第32条第4項・道路交通法第78条第2項の経由申請を使えば窓口はまとめられますが、審査自体は二本立てです。
③無余地性の説明を用意していない——道路法第33条第1項の「道路の敷地外に余地がないためにやむを得ない」は形式要件ではありません。敷地条件・建物形状・施工方法から道路上に出さざるを得ない理由を、平面図で示せるようにしておきます。
④占用面積の計算が図面に書かれていない——占用料は面積が算定基礎です。平面図に寸法と計算式を明記していないと、ほぼ確実に補正を求められます。
⑤工期延長時の変更許可・更新を失念する——道路法第32条第3項の変更許可の対象は広く、施行令第8条の「軽易な変更」は2類型しかありません。工期が動いたら、まず占用の期間を確認する習慣をつけてください。
⑥撤去後の原状回復と完了報告を放置する——道路法第40条第1項の原状回復義務は明文です。多くの道路管理者が完了届の提出を求めており、直轄国道では道路占用システムから届出ができます。
⑦処理期間を見込まずに工程を組む——標準処理期間の例として東京都建設局は閉庁日を除き18日間としています。ここに事前相談・図面修正・警察署の審査が乗ります。逆算すれば、着工の1か月以上前から動き出すのが現実的です。
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まとめ
工事用足場・仮囲い・工事看板・朝顔は、いずれも道路法第32条の道路占用許可の対象です。足場・仮囲い(工事用板囲)・詰所は道路法施行令第7条第4号の工事用施設、資材の仮置きは同条第5号の工事用材料、看板は同条第1号(工事用施設と評価される幕は第4号)として、それぞれ道路法第32条第1項第7号を通じて許可対象になります。脚部が敷地内でも上空にはみ出せば占用である、という理解が出発点です。
道路占用許可と道路使用許可は別物です。前者は道路管理者、後者は所轄警察署長が許可権者で、目的も異なります。道路法第32条第4項と道路交通法第78条第2項の経由申請により窓口は一本化できますが、審査は二本立てで進みます。道路法第32条第5項により道路管理者から警察署長への協議も予定されており、両方の審査が通って初めて着工できると考えるべきです。
許可の可否を左右するのは、道路法第33条第1項の「道路の敷地外に余地がない」という無余地性と、政令の基準への適合です。占用期間は工事用施設なら施行令第9条により5年以内、場所は施行令第10条で上空4.5メートル(歩道上2.5メートル)以上の離隔などが求められ、構造は施行令第12条、工事実施の方法は施行令第13条、時期と復旧方法は同第14条・第15条が基準を定めています。図面はこれらを説明するための道具です。
許可後の管理も法律上の義務です。工期延長や範囲変更は道路法第32条第3項の変更許可、期間満了時は更新、撤去時は同法第40条の原状回復。占用料は同法第39条第2項により条例(指定区間内国道は政令)で定められ、滞納すれば同法第73条により年14.5パーセントを超えない範囲の延滞金と国税滞納処分の例による徴収が待っています。無許可占用は同法第102条第1号により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
行政書士は、官公署に提出する書類の作成及び提出手続の代理を業とする国家資格者です。道路占用許可申請書、道路使用許可申請書、道路法第24条の承認申請書といった官公署提出書類の作成と提出代行は、行政書士業務の中核にあたります。建設業許可の取得・更新、決算変更届、各種変更届とあわせて、現場の許認可まわりを一体で整理したい場合には、お早めにご相談ください。
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