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工事に伴う消防関係の届出|防火対象物使用開始届と消防用設備等設置届出

更新: 約31分で読めます

店舗の内装工事やオフィスの改装、建物の新築に携わっていると、建築確認や建設業法上の手続とは別に「消防署への届出」を求められる場面が少なくありません。ところがこの消防関係の届出は、根拠が消防法(国の法令)と市町村の火災予防条例(自治体の条例)の二層に分かれており、届出の名称・期限・届出義務者が入り組んでいます。「工事業者が出しておいてくれるはず」と思っていたら実際の届出義務者は入居するテナント自身だった、「建物が完成してから出せばよい」と考えていたら期限は工事着手の10日前だった、というすれ違いは実務でまったく珍しくありません。

本記事では、工事に伴って発生する消防関係の届出を「工事に着手する前」「工事が完了した直後」「使用を開始する前」という時間軸で整理したうえで、代表的な二つ、すなわち防火対象物使用開始届出書消防用設備等設置届出書を中心に、条文・期限・届出義務者・添付書類を一次情報にあたって実務目線で解説します。条番号は消防法・消防法施行令・消防法施行規則、および東京都火災予防条例の規定を確認したうえで記載しています。

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工事に伴う消防関係の届出は「時間軸」で整理する

消防関係の届出でつまずく最大の原因は、届出の種類を名称だけで覚えようとすることにあります。「使用開始届」「着工届」「設置届」「計画届」と似た響きの書類が並ぶため、どれをいつ誰が出すのかが混乱しがちです。実務では、名称ではなく「工事のどの段階で発生する義務か」という時間軸で押さえたほうが確実です。

大まかには、次の三つの段階に分かれます。第一が工事に着手する前の段階で、ここには防火対象物工事等計画届出書、工事整備対象設備等着工届出書、消防用設備等設置計画届出書が入ります。第二が工事が完了した直後の段階で、消防用設備等設置届出書がこれにあたります。第三が建物や区画の使用を開始する前の段階で、防火対象物使用開始届出書と、それに続く消防検査が位置します。さらに使用開始後には、防火管理者の選任届、消防計画の作成届、消防用設備等の点検結果報告といった継続的な義務が発生します。

根拠法令が二層構造になっている

もう一つ理解しておきたいのが、根拠法令の構造です。消防用設備等に関する届出は消防法という国の法律とその政省令に根拠があり、全国共通のルールです。これに対し、防火対象物使用開始届出書や防火対象物工事等計画届出書は市町村が定める火災予防条例に根拠があります。消防事務は市町村が責任を負う仕組みになっているため、条例レベルの届出は自治体ごとに名称・条番号・期限・添付書類が異なり得ます。

したがって、「消防の届出について調べる」ときは、消防法・消防法施行令・消防法施行規則で全国共通部分を押さえたうえで、必ず工事現場を管轄する消防本部・消防署の条例と運用基準を確認するという二段構えが必要です。本記事でも東京都の例を挙げますが、他の自治体では条番号が異なる点にご注意ください。

「防火対象物」と「関係者」という基本用語

条文を読むうえで避けて通れないのが「防火対象物」という用語です。消防法施行令別表第一が用途ごとに区分を定めており、たとえば(一)項イが劇場・映画館・演芸場・観覧場、(三)項ロが飲食店、(四)項が百貨店・マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場、(五)項イが旅館・ホテル・宿泊所、(五)項ロが寄宿舎・下宿・共同住宅、(六)項が病院・診療所・社会福祉施設等、(七)項が学校、(十二)項イが工場又は作業場、(十四)項が倉庫、(十五)項が前各項に該当しない事業場(一般的な事務所等)と整理されています。複数用途が混在する建物は(十六)項の複合用途防火対象物となり、そのうち(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イの用途を一部でも含むものが(十六)項イです。

また消防法第2条第4項は、「関係者」を所有者、管理者又は占有者と定義しています。消防用設備等の設置届の義務者は「防火対象物の関係者」ですから、テナントとして入居する占有者も関係者に含まれます。設置届について、工事業者は法令上の届出義務者ではないという点を最初に押さえておいてください(着工届だけは、後述のとおり工事を行う甲種消防設備士本人が届出義務者です)。

防火対象物使用開始届出書|根拠は消防法ではなく火災予防条例

店舗やオフィスの開設で最も広く関わってくるのが、防火対象物使用開始届出書です。建物または建物の一部をこれから使用しようとする者が、使用を開始する前にその内容を消防署へ届け出るもので、消防機関が「その区画がどのような用途で、どれだけの人が入り、どのような消防用設備等が備わっているか」を把握するための入口となる書類です。

根拠は市町村の火災予防条例にある

この届出について、まず正確に理解しておくべきなのは消防法本体に「防火対象物使用開始届出書」という条文があるわけではないという点です。根拠は市町村(消防本部を置く市町村や一部事務組合)が定める火災予防条例にあります。そのため、「消防法第何条ですか」と聞かれても法律の条文を指し示すことはできず、正しくは「◯◯市火災予防条例第◯条」と答えることになります。

東京都の場合、東京都火災予防条例第56条の2第1項が防火対象物使用開始届出書の根拠であり、東京消防庁は使用を開始する日の7日前までに管轄消防署へ届け出るよう案内しています。様式は東京都火災予防条例施行規則の第3号様式の2(第12条の2関係)です。

届出義務者は「使用しようとする者」であって工事業者ではない

実務で最も誤解が多いのがここです。東京消防庁は、届出者について「実際に使用しようとする方(入居する方、テナントで営業する方)」であり、工事する建築工事業者・消防設備業者・内装工事業者ではないと明示しています。

内装工事を請け負った建設業者が親切心から代わりに届け出るケースは実際にありますが、法令上の義務者はあくまで使用者側です。届出書の内容(用途、収容人員、営業形態、火気使用設備の有無など)は使用者本人でなければ正確に書けない項目が多く、工事業者が想像で埋めると、後の消防検査で実態と相違し是正指導を受けることになります。工事請負契約の段階で「消防への使用開始届は誰が、いつ出すのか」を明確にしておくことが、後のトラブルを防ぐ最も確実な方法です。

届出が必要になる典型的な場面

届出が必要になるのは、新築した建物の使用を開始するとき、既存建物に新たにテナントとして入居するとき、建物や区画の用途を変更するとき、増改築を行ったときなどです。工事を伴わない入居であっても届出は必要である点は特に注意してください。前のテナントが退去した区画にそのままの内装で入居する場合でも、使用者と用途が変わる以上、消防機関にとっては新たな把握対象になります。

なお、さいたま市の例では、市火災予防条例に基づき使用開始の7日前までに各区を管轄する消防署へ届け出ることとされ、新築・増改築・用途変更が対象とされる一方、一般住宅と長屋は対象外とされています。このように対象範囲や除外規定も自治体ごとに設定されているため、必ず管轄消防署の案内で確認してください。

添付書類と届出後の流れ

添付書類は自治体により異なります。東京都の場合、火災予防条例第56条の2第2項が同条例第56条第2項を準用しており、同条例施行規則第12条第2項に定める図書、すなわち防火対象物の概要表、平面図、立面図、断面図、室内仕上表及び建具表等を添付することになります(実務では管轄消防署の運用により案内図や詳細図等を求められることもあります)。内装制限や避難経路の確保状況を図面で確認するためのものですから、設計事務所や施工業者から図面一式を早めに受け取っておく段取りが欠かせません。設計図面は通常、設計事務所や施工業者が作成しますので、届出のスケジュールを組むときは図面の完成時期を起点に逆算するとよいでしょう。設計者側の体制については一級建築士事務所登録の要件|建築士法23条・24条・管理建築士・5年更新・設計等の業務に関する報告書もあわせてご確認ください。

届出後の流れも押さえておきましょう。東京都火災予防条例第56条の2第3項は、指定防火対象物等(消火器具又は自動火災報知設備を消防法令により設置する義務が生じる防火対象物。同条例第56条第1項第1号)を使用しようとする者について、その使用開始前に消防署長の検査を受けなければならないと定めています。店舗や飲食店など集客を伴う用途の多くはこれに該当しますので、「届出を出したら終わり」ではなく、検査を経て初めて使用開始の段取りが整うという感覚を持っておくことが重要です。7日前という期限は、消防機関が書類を審査し検査日程を組むための最低限の日数であり、開店日から逆算してぎりぎりに提出すると、検査日程が確保できず開店が遅れる事態になりかねません。

防火対象物工事等計画届出書|工事に着手する前に出す届出

使用開始届と混同されやすいのが、防火対象物工事等計画届出書です。こちらは工事に着手する前に、これから行う工事の内容を消防署へ届け出るものです。東京都では東京都火災予防条例第56条がその根拠にあたり、東京消防庁は工事を始める7日前までに管轄消防署へ届け出るよう案内しています。

対象となる工事と届出者

東京消防庁が対象として挙げているのは、「間取り」又は「天井高さ」の変更等の改装、およびテナントの入れ替えです。間仕切りを新設して部屋を分割する、天井を張り替えて高さを変える、といった工事は、避難経路や感知器の警戒区域、スプリンクラーヘッドの散水障害に直結するため、事前に消防機関が内容を把握する必要があるわけです。

届出者は工事業者等に対して工事を依頼した方とされています。つまり施工業者ではなく、発注者(建物所有者やテナント)が届出義務者です。ここでも「工事業者が出すもの」という思い込みが通用しない点に注意してください。

建築確認申請を要する工事では不要になる

実務上重要な例外として、東京消防庁は建築確認申請手続を要する工事の場合は本届出を要しないと案内しています。理由は後述する消防同意の仕組みにあります。建築確認の手続の中で消防長または消防署長の同意を得る過程が組み込まれており、そこで防火に関する審査が行われるため、条例に基づく計画届出を重ねて求める必要がないという整理です。

逆に言えば、建築確認を要しない規模・内容の内装工事こそ、この計画届出の出番ということになります。小規模なテナント改装は建築確認が不要なケースが多く、だからこそ条例で消防機関が内容を把握する仕組みが用意されているのです。内装工事の施工体制については内装仕上工事業の主任技術者|現場専任の基準と兼務特例【令和7年最新】もご参照ください。

工事等計画届と使用開始届は別の届出である

「工事の届出を出したから使用開始の届出は要らない」という誤解も見受けられますが、両者は目的も時期も異なる別個の届出です。工事等計画届は着手前に工事内容を把握するためのもの、使用開始届は使用開始前に使用実態を把握するためのものです。工事を伴う出店では、着手7日前に工事等計画届、使用開始7日前に使用開始届という二つの届出が別々に必要になると理解しておくのが安全です(建築確認を受ける工事では工事等計画届は不要です。消防用設備等の工事を伴う場合は、後述の着工届・設置計画届・設置届が必要になることもあります)。

消防用設備等の「工事前」の届出|着工届と設置計画届

消防用設備等を設置・変更する工事では、防火対象物に関する届出とは別に、設備そのものについての届出が発生します。ここは消防法に基づくものと火災予防条例に基づくものが補完関係に立っており、両者の守備範囲を理解しておくと全体像がすっきりします。

工事整備対象設備等着工届出書(消防法第17条の14)

消防法第17条の14は、次のように定めています。「甲種消防設備士は、第十七条の五の規定に基づく政令で定める工事をしようとするときは、その工事に着手しようとする日の十日前までに、総務省令で定めるところにより、工事整備対象設備等の種類、工事の場所その他必要な事項を消防長又は消防署長に届け出なければならない。」

ここで決定的に重要なのは、届出義務者が「甲種消防設備士」と法律上明記されていることです。建物の所有者でもテナントでも工事会社の代表者でもなく、実際に工事を行う甲種消防設備士本人に課された義務です。したがって、この着工届については、資格者本人が届け出るという法定の枠組みを崩すことはできません。発注者側としては、施工業者に対して「着工の10日前までに着工届が出せる状態か」を工程表段階で確認しておくことが実務上のポイントになります。

届出は、消防法施行規則第33条の18により別記様式第1号の7の工事整備対象設備等着工届出書によって行い、消防用設備等については当該工事の設計に関する図書として平面図、配管及び配線の系統図、計算書の写しを添付します。特殊消防用設備等の場合は、これらに加えて設備等設置維持計画、法第17条の2第3項の評価結果を記載した書面、法第17条の2の2第2項の認定を受けた者であることを証する書類の写しを添付します。

甲種消防設備士でなければ行えない工事(消防法施行令第36条の2)

着工届の対象となる工事の範囲は、消防法施行令第36条の2第1項が定めています。具体的には、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、屋外消火栓設備、自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備、金属製避難はしご(固定式のものに限る)、救助袋、緩降機の設置に係る工事です(このほか、これらに類するものとして消防庁長官が定める、必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等や特殊消防用設備等の工事も含まれます)。

ただし、屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・水噴霧消火設備・屋外消火栓設備については電源、水源及び配管の部分を除き、泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の各消火設備および自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備・消防機関へ通報する火災報知設備については電源の部分を除くと規定されています。電気工事や配管工事の一部が消防設備士の独占範囲から外れているのは、それぞれ電気工事士法や他の法令の規律に服するためです。

また同条第2項は整備についても定めており、第1項各号の設備に加えて消火器漏電火災警報器の整備が消防設備士の業務とされています(屋内消火栓設備の表示灯の交換その他総務省令で定める軽微な整備を除く)。無資格者がこれらの工事・整備を行った場合、消防法第42条第1項第10号により6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が定められています。

消防用設備等設置計画届出書(東京都火災予防条例第58条の2第1項第1号)

法に基づく着工届は甲種消防設備士の工事対象設備をカバーしますが、それ以外の消防用設備等については法律上の事前届出がありません。この隙間を埋めるのが条例に基づく届出です。東京都では東京都火災予防条例第58条の2第1項第1号に基づく消防用設備等(特殊消防用設備等)設置計画届出書があり、東京消防庁は工事に着手しようとする10日前までに管轄消防署へ届け出るよう案内しています。

対象は、甲種消防設備士だけが工事できる消防用設備等以外の消防用設備等を指定防火対象物に設置する工事です。ここでいう指定防火対象物等とは、東京都火災予防条例第56条第1項第1号が定める区分で、消防法施行令第10条第1項各号(消火器具)または同令第21条第1項第1号((十三)項ロを除く)・第3号・第7号(自動火災報知設備)に掲げる防火対象物又はその部分を指します。ただし、消火器具、動力消防ポンプ設備、非常警報器具、誘導標識は本届出の対象から除かれ、工事内容が軽微な場合は省略できることもあるとされています。届出者は、届出内容の工事を依頼した方であり、設計者や工事業者ではありません。

つまり東京都では、甲種消防設備士の工事対象設備は法の着工届(10日前・消防設備士が届出)、それ以外の設備は条例の設置計画届(10日前・発注者が届出)という役割分担で、工事前の事前把握が二本立てで確保されている構図になります。他の自治体では同種の条例規定の有無や内容が異なり得るため、管轄消防署への確認が欠かせません。

消防用設備等設置届出書|消防法第17条の3の2に基づく届出と検査

工事が完了した直後に発生するのが、消防用設備等設置届出書です。これは条例ではなく消防法第17条の3の2という法律に直接の根拠を持つ、全国共通の義務です。

条文の構造

消防法第17条の3の2は、第17条第1項の防火対象物のうち特定防火対象物その他の政令で定めるものの関係者は、設備等技術基準または設備等設置維持計画に従って設置しなければならない消防用設備等または特殊消防用設備等(政令で定めるものを除く)を設置したときは、総務省令で定めるところにより、その旨を消防長又は消防署長に届け出て、検査を受けなければならないと定めています。

「届け出て、検査を受けなければならない」と一体で規定されている点が特徴です。届出と検査は切り離せない一組の義務であり、届出だけ済ませて検査を受けないという選択肢は法律上想定されていません。

届出期限は「工事が完了した日から4日以内」

具体的な手続は消防法施行規則第31条の3が定めています。同条第1項は、検査を受けようとする防火対象物の関係者は、消防用設備等または特殊消防用設備等の設置に係る工事が完了した場合において、その旨を工事が完了した日から4日以内に消防長又は消防署長に別記様式第1号の2の3の届出書により届け出なければならないと規定しています。

この「4日以内」はきわめて短い期限です。着工届が「10日前」という事前の余裕を求めるのに対し、設置届は「完了後4日以内」という事後の即応を求めます。竣工検査、引渡し、鍵の受け渡しといった工程が立て込む時期と重なるため、完了予定日が見えた段階で書類を作り込んでおき、完了と同時に提出できる体制を整えておくのが実務の定石です。

届出・検査の対象となる防火対象物(消防法施行令第35条)

すべての建物が対象になるわけではありません。消防法施行令第35条第1項が対象を四つの号に分けて定めています。

第1号は、面積にかかわらず対象となるグループです。別表第一(二)項ニ(カラオケボックス等)、(五)項イ(旅館・ホテル・宿泊所等)、(六)項イ(1)から(3)まで及びロ(一定の病院・診療所、避難が困難な要介護者等を主として入居させる社会福祉施設等)が該当します。また(六)項ハに掲げる防火対象物のうち利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限り対象となります。さらに(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項の防火対象物で、これらの用途に供される部分が存するものも含まれます。避難に特に配慮を要する用途が、面積を問わず検査対象とされているわけです。

第2号は、延べ面積300平方メートル以上で対象となるグループです。別表第一(一)項、(二)項イからハまで、(三)項、(四)項、(六)項イ(4)・ハ・ニ、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項が該当します(第1号ロ及びハに掲げるものを除く)。飲食店((三)項ロ)や物品販売店舗((四)項)はここに入りますから、300平方メートルという数字が実務上の一つの分水嶺になります。

第3号は、別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ、(十七)項及び(十八)項に掲げる防火対象物で延べ面積300平方メートル以上のもののうち、消防長又は消防署長が火災予防上必要があると認めて指定するものです。共同住宅や事務所、倉庫、工場といったいわゆる非特定防火対象物は、面積要件を満たしていても消防長等の指定があって初めて届出・検査の対象になるという構造です。ここを読み違えて「300平方メートル以上なら必ず必要」と説明してしまう例が見られますが、非特定用途については指定の有無を管轄消防署に確認する必要があります。

第4号は、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イの用途に供される部分が避難階以外の階(1階及び2階を除く)に存する防火対象物で、当該階から避難階又は地上に直通する階段が2以上設けられていないもの(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合は1以上)です。いわゆる二方向避難が確保されていない建物を、面積にかかわらず捕捉する規定です。

なお同条第2項により、簡易消火用具及び非常警報器具は届出・検査の対象となる設備から除かれています。

ただし、令第35条の対象外でも、条例で届出・検査が上乗せされている場合があります。東京都では、指定防火対象物等の関係者が法第17条の3の2の届出・検査の対象とならない消防用設備等を設置したときも、工事が完了した日から4日以内の届出と、使用開始前の消防署長の検査が求められています(東京都火災予防条例第58条の3)。延べ面積300平方メートル未満の店舗等でも届出が必要になることがあるため、管轄消防署への確認が欠かせません。

添付書類と検査済証

消防法施行規則第31条の3第1項は添付書類も定めています。消防用設備等の場合は、当該設置に係る消防用設備等に関する図書として平面図配管及び配線の系統図、さらに消防用設備等試験結果報告書です。特殊消防用設備等の場合は、これらに加えて設備等設置維持計画と特殊消防用設備等試験結果報告書を添えます。試験結果報告書の様式は、消防用設備等ごとに消防庁長官が定めるとされています。

届出があると、消防長又は消防署長は遅滞なく、設置された消防用設備等が設備等技術基準または設備等設置維持計画に適合しているかどうかを検査しなければなりません(同条第2項)。検査の結果、適合していると認められたときは、関係者に対して別記様式第1号の2の3の2による検査済証が交付されます(同条第4項)。

この検査済証は、建築基準法上の完了検査済証とはまったく別の書類です。両者を混同したまま「検査済証は取得済み」と説明してしまうと、後の融資審査や賃貸借の場面で話が食い違います。建築の検査済証と消防の検査済証は別物であるという点は、関係者間の認識合わせとして最初に共有しておきたいところです。

検査で指摘を受けやすい場面

消防検査は書類審査ではなく現場での実地確認ですから、図面どおりに施工されていない箇所は指摘を受けます。実務でよく問題になるのは、内装工事で新設した間仕切りによってスプリンクラーヘッドの散水が妨げられる、天井を下げたことで感知器の設置位置や種別が基準に合わなくなる、什器や在庫で誘導灯の視認性が損なわれる、避難経路上に物品が置かれる、といったケースです。

いずれも「設備そのものは適切に設置されているが、内装や使い方によって機能が損なわれている」というパターンです。消防用設備等は設置して終わりではなく、実際の使用状態と一体で評価されるという視点を持っておくと、設計段階から手戻りを減らせます。工事現場の技術者配置については建設業の主任技術者・監理技術者の現場配置|専任が必要なケースと兼任の特例もあわせてご確認ください。

建築基準法・消防同意との関係と用途変更

消防関係の届出は建築の手続と密接に絡み合っています。ここを理解しておくと、なぜ「建築確認を要する工事では条例の計画届が不要」なのかが腑に落ちます。

消防同意(消防法第7条)

消防法第7条第1項は、建築物の新築・増築・改築・移転・修繕・模様替・用途の変更もしくは使用について許可・認可もしくは確認をする権限を有する行政庁もしくはその委任を受けた者、または建築基準法第6条の2第1項の規定による確認を行う指定確認検査機関は、当該建築物の工事施工地又は所在地を管轄する消防長又は消防署長の同意を得なければ、当該許可・認可・確認をすることができないと定めています。

同条第2項は同意の期限も定めており、建築基準法第6条第1項第3号に係る場合は同意を求められた日から3日以内、その他の場合は7日以内に同意を与えて通知しなければならないとされています。同意することができない事由があると認めるときは、これらの期限内にその事由を通知しなければなりません。

つまり建築確認の裏側では、原則として消防機関による防火の審査が組み込まれています(防火地域・準防火地域以外の区域内の住宅(長屋・共同住宅等を除く)などは、同条第1項ただし書により消防同意の対象外です)。だからこそ東京都では、建築確認を受けた工事について条例上の防火対象物工事等計画届出を要しないこととされています(東京都火災予防条例第56条第1項ただし書)。

用途変更と「既存不遡及」の例外

既存建物のテナント入れ替えで最も注意を要するのが用途変更です。消防法第17条の2の5第1項は、技術上の基準が改正された際に現に存する防火対象物の消防用設備等については改正後の規定を適用せず従前の規定によるという、いわゆる既存不遡及の原則を定めています。

ところが同条第2項第4号は、この原則を適用しない場合として特定防火対象物を挙げています。特定防火対象物とは、百貨店、旅館、病院、地下街、政令で定める複合用途防火対象物その他多数の者が出入するものとして政令で定めるものであり、具体的には別表第一の(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項、(十六の三)項が該当します。これらの用途では常に現行基準への適合が求められるという、実務上きわめて重い帰結になります。

さらに消防法第17条の3第1項は、防火対象物の用途が変更されたことにより消防用設備等が技術上の基準に適合しないこととなるときは、変更前の基準を適用するとしつつ、第2項第4号で変更後の用途が特定防火対象物の用途である場合にはこの緩和を適用しないと定めています。

したがって、事務所((十五)項)だった区画を飲食店((三)項ロ)に変更する、倉庫((十四)項)を物品販売店舗((四)項)に変更するといったケースでは、変更後が特定用途にあたるため現行基準への適合が必要となり、自動火災報知設備や誘導灯の増設といった追加工事が発生することがあります。物件を決めてから発覚すると設備投資額が大きく変わりますので、契約前の段階で消防用設備等の要否を確認することが決定的に重要です。

建築基準法第87条の用途変更確認申請

用途変更については建築基準法側の手続も検討が必要です。建築基準法第87条により、特殊建築物の用途に変更し、かつ当該用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超える場合には確認申請が必要とされています。この面積要件は平成30年の建築基準法改正(令和元年(2019年)6月25日施行)で100平方メートル超から200平方メートル超に緩和されたもので、古い資料には「100平方メートル」と記載されている場合がありますので注意してください。なお、政令で指定する類似の用途相互間の変更(建築基準法施行令第137条の18)については確認申請が不要とされていますが、用途地域による例外もあるため、具体的な当てはめは特定行政庁や指定確認検査機関に確認してください。

ここで重要なのは、建築基準法上の確認申請が不要であっても、消防法上の設備の遡及適用は別途生じ得るということです。「200平方メートル以下だから確認申請は要らない、だから消防も何もしなくてよい」という理解は誤りです。二つの法律はそれぞれ独立した判断枠組みを持っています。

使用開始後に続く消防関係の義務

届出と検査を終えて営業を開始すれば手続が終わるわけではありません。使用開始後にも継続的な義務が発生します。工事段階で「この建物は将来こういう義務が生じる」と見通しておくと、引渡し後の関係者間の混乱を防げます。

防火管理者の選任届と消防計画(消防法第8条)

消防法第8条第1項は、学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、複合用途防火対象物その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、消防計画の作成、消火・通報・避難の訓練の実施、消防用設備等の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならないと定めています。

選任が必要となる規模は消防法施行令第1条の2第3項第1号が定めており、避難が困難な要介護者等を主として入居させる(六)項ロ等の施設では収容人員10人以上、(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イ・ハ・ニ、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項といった特定用途では収容人員30人以上、(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ、(十七)項といった非特定用途では収容人員50人以上が基準です。

防火管理者を定めたときは、消防法第8条第2項により遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならず、解任したときも同様とされています。また消防法施行規則第3条第1項により、防火管理者は消防計画を作成し、別記様式第1号の2の届出書によりその旨を届け出なければならず、消防計画を変更するときも同様です。

統括防火管理者(消防法第8条の2)

消防法第8条の2第1項は、高さ31メートルを超える建築物(高層建築物)その他政令で定める防火対象物で管理について権原が分かれているもの、または地下街で管理について権原が分かれているもののうち消防長もしくは消防署長が指定するものについて、権原を有する者が協議して統括防火管理者を定めなければならないと規定しています。定めたときは、同条第4項により遅滞なく所轄消防長又は消防署長へ届け出る必要があり、解任時も同様です。

テナントビルのように所有者と各テナントで管理権原が分かれている建物のうち、上記の高層建築物や政令で定める防火対象物(消防法施行令第3条の3。たとえば(十六)項イの複合用途防火対象物で地階を除く階数3以上かつ収容人員30人以上のもの)などに該当するものでは、各テナントの防火管理者とは別に建物全体の統括防火管理者が必要になります。各テナントの防火管理者が作成する消防計画は、統括防火管理者が作成する全体についての消防計画に適合しなければならないとされています(同条第3項)。

消防用設備等の点検と報告(消防法第17条の3の3)

消防法第17条の3の3は、防火対象物の関係者は消防用設備等について定期に点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならないと定めています。政令で定める防火対象物については消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものについては自ら点検することとされています。

点検の周期は消防法施行規則第31条の6第1項により「1年以内で消防庁長官が定める期間ごと」とされ、消防庁告示に基づき機器点検は6か月に1回、総合点検は1年に1回行うものとされています。

報告の周期は同条第3項が定めており、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物は1年に1回、(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ、(十七)項及び(十八)項に掲げる防火対象物は3年に1回です。特定用途は1年、非特定用途は3年と覚えておくと実務で迷いません。

また同条第3項は、点検結果を維持台帳に記録して保存することも求めています。維持台帳には、設置届(第31条の3第1項)および着工届(第33条の18)に係る書類の写し、検査済証、報告書の写し、消防用設備等の工事・整備等の経過一覧表などを編冊することとされています。工事完了時の書類一式は、そのまま維持台帳の中身になるということです。引渡し時に施工業者から書類を確実に受け取り、散逸させないことが後々の負担を大きく減らします。

防火対象物点検(消防法第8条の2の2)

消防法第8条の2の2第1項は、第8条第1項の防火対象物のうち火災の予防上必要があるものとして政令で定めるものの管理について権原を有する者は、定期に防火対象物点検資格者に点検させ、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならないと定めています。

対象は消防法施行令第4条の2の2が定めており、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物のうち、収容人員が300人以上のもの、またはこれらの用途部分が避難階以外の階(1階及び2階を除く)に存し当該階から避難階もしくは地上に直通する階段が2以上(屋外階段等の場合は1以上)設けられていないものです。点検は消防法施行規則第4条の2の4第1項により1年に1回行うものとされています。

これは消防用設備等の点検(第17条の3の3)とは別の制度で、防火管理業務の実施状況など「運用面」を点検するものです。両者を混同しないよう整理しておいてください。

届出を怠った場合の罰則とリスク

消防関係の届出には罰則が定められています。消防法第44条第8号は、第8条第2項(防火管理者の選任・解任の届出)、第17条の3の2(消防用設備等の設置届出)、第17条の14(工事整備対象設備等の着工届)などの規定による届出を怠つた者を、30万円以下の罰金又は拘留に処すると定めています。

また同条第4号は、第17条の3の2の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者を同じく30万円以下の罰金又は拘留に処するとしています。届出だけでなく、検査を受け入れない行為も処罰対象です。

さらに同条第11号は、第8条の2の2第1項(防火対象物点検)または第17条の3の3(消防用設備等の点検)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者を処罰対象としています。点検報告についてはこの第11号が消防法第45条第3号により両罰規定の対象とされており、行為者だけでなく法人にも罰金刑が科され得ます。

なお、防火対象物使用開始届出書のような条例上の届出にも条例で罰則が置かれていることがあり、東京都火災予防条例は、届出をせずに防火対象物を使用した者等を10万円以下の罰金に処するとしています(同条例第67条の2第4号)。

もっとも、実務上より重いのは刑罰そのものよりも事実上の不利益です。設置届を出さず検査済証を得ていない状態では、消防機関から是正指導を受けるだけでなく、賃貸借契約上の引渡し要件を満たさない、金融機関の融資実行の前提条件を欠く、営業許可等の他法令の手続で書類が揃わない、といった連鎖が起きます。火災が発生した場合には、保険金の支払いや損害賠償責任の判断において不利に働く可能性も否定できません。

加えて、消防法第17条の4第1項は、消防長又は消防署長は消防用設備等が設備等技術基準に従って設置され、又は維持されていないと認めるときは、関係者で権原を有するものに対し、基準に従って設置すべきこと又は維持のため必要な措置をなすべきことを命ずることができると定めています。この命令に違反して消防用設備等を設置しなかった者には、消防法第41条第1項第5号により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金という、より重い罰則が用意されています。

実務の進め方とつまずきやすい点

ここまでの内容を、実際の工事の流れに沿って組み直してみます。

物件契約前に確認しておくこと

最も費用インパクトが大きいのは用途変更に伴う設備の遡及です。前用途と新用途を消防法施行令別表第一の区分に当てはめ、新用途が特定防火対象物にあたるかを確認します。特定用途にあたる場合は既存不遡及の例外となり、現行基準への適合が求められます。建物全体の延べ面積、階数、当該区画の階(避難階か否か)、直通階段の数といった情報も、この段階で押さえておくべき項目です。あわせて建築基準法第87条の用途変更確認申請の要否も検討します。

設計・見積段階で確認しておくこと

工事内容が確定したら、届出の要否と期限を工程表に落とし込みます。建築確認を要するか否かで条例上の工事等計画届の要否が変わり、設置する設備の種類で法の着工届と条例の設置計画届のどちらに乗るかが変わります。着工届は甲種消防設備士が着手10日前まで、条例の設置計画届は発注者が着手10日前まで、条例の工事等計画届は発注者が着手7日前までという期限を、着工日から逆算して押さえます。

この段階で管轄消防署に事前相談を入れておくと、後の手戻りが大きく減ります。条例の運用や指定の有無は自治体ごとに幅がありますから、「条文を読んだうえで管轄署に確認する」という順序が最も効率的です。なお、消防施設工事などを請け負う側の建設業許可の要否(請負金額の区分)については建設業許可が必要になる金額基準|建築一式は1,500万円以上、それ以外は500万円以上で原則必要もご参照ください。

工事完了から使用開始までの詰め

ここが最も時間的余裕がない局面です。設置届は工事完了日から4日以内、使用開始届は使用開始の7日前までという二つの期限が、竣工前後の短い期間に重なります。開店日を先に決めてから逆算すると、使用開始届の提出(使用開始7日前まで)、設置届の提出(工事完了後4日以内)、消防検査の日程調整、指摘事項の是正という工程を短期間に重ねて回さなければならなくなり、指摘が一つ出ただけで開店日がずれます。

現実的な対処は、開店日から逆算して2週間から3週間程度の余裕を工程に組み込むこと、図面等の添付書類を工事完了前に準備し、試験結果報告書は試験の実施後すぐにまとめられるよう段取りしておくこと、そして使用開始届の届出義務者であるテナント側が自ら記載内容を確認しておくことです。

役割分担を契約段階で明文化する

繰り返しになりますが、消防関係の届出は届出義務者が書類ごとに異なります。設置届は関係者(所有者・管理者・占有者)、着工届は甲種消防設備士本人、条例の工事等計画届と設置計画届は工事を依頼した者、使用開始届は実際に使用しようとする者です。この分担が曖昧なまま工事が進むと、「相手が出していると思っていた」という理由で期限を徒過します。

工事請負契約書や仕様書の段階で、どの届出を誰が作成し、法定の届出者名義での提出を誰が段取りするのか、必要な図面や試験結果報告書を誰がいつまでに用意するのかを明記しておくことをおすすめします。契約書の記載事項については建設工事請負契約書の特約条項|令和6年改正対応・建設業法19条の記載事項とトラブル予防もあわせてご確認ください。

資格者の領域と書類作成の領域を区別する

最後に、業務の切り分けについて触れておきます。消防用設備等の工事・整備のうち消防法施行令第36条の2に定めるものは消防設備士の独占業務であり、着工届の届出義務者も消防法第17条の14により甲種消防設備士本人と法定されています。設計図書や試験結果報告書の作成も、それぞれ建築士・消防設備士等の有資格者の領域です。

他方、消防署という官公署に提出する書類の作成は、行政書士法第1条の3第1項が定める行政書士の業務範囲に含まれ、提出手続の代理は同法第1条の4第1項第1号に根拠があります。ただし同法第1条の3第2項により、他の法律で制限されている業務は行うことができません。資格者でなければ行えない技術的行為と、書類の作成・提出という手続的行為は明確に区別して考える必要があります。

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まとめ

工事に伴う消防関係の届出は、根拠法令が消防法と市町村の火災予防条例の二層に分かれている点を押さえることが出発点です。消防用設備等設置届出書は消防法第17条の3の2に基づく全国共通の義務ですが、防火対象物使用開始届出書や防火対象物工事等計画届出書は市町村の条例に根拠があり、条番号・名称・期限・添付書類が自治体ごとに異なります。条文で全体像をつかんだうえで、必ず管轄消防署に確認する順序が確実です。

期限は書類ごとにばらばらで、しかも短いものが多いのが特徴です。着工届は甲種消防設備士が工事着手の10日前まで(消防法第17条の14)、設置届は関係者が工事完了日から4日以内(消防法施行規則第31条の3第1項)、東京都では防火対象物工事等計画届が着手7日前まで、使用開始届が使用開始7日前までとされています。開店日から逆算した工程管理を怠ると、消防検査の日程が確保できず開業が遅れます。

届出義務者が書類ごとに異なることも、実務で最も事故が起きやすい論点です。設置届は防火対象物の関係者(所有者・管理者・占有者)、着工届は甲種消防設備士本人、条例に基づく計画届は工事を依頼した発注者、使用開始届は実際に使用しようとする者であり、着工届以外は、いずれも「工事業者が出すもの」ではありません。契約段階で分担を明文化しておくことが最善の予防策です。

既存建物のテナント入れ替えでは、用途変更に伴う消防用設備等の遡及に最大の注意を払ってください。消防法第17条の2の5第2項第4号および第17条の3第2項第4号により、特定防火対象物については既存不遡及の緩和が適用されず、現行基準への適合が求められます。建築基準法第87条の確認申請が不要な規模であっても、消防法上の設備の追加が必要になることがあり、物件契約前の確認が費用面での分かれ目になります。

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※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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