鉄筋工事業を営むうえで「どこから建設業許可が必要なのか」は、最も多いご相談の一つです。結論から申し上げると、鉄筋工事業は建築一式工事以外の専門工事に区分されるため、工事1件の請負代金の額が500万円(消費税・地方消費税を含む税込)未満であれば「軽微な建設工事」として許可なしで請け負うことができます。逆に、税込で500万円以上となる工事を請け負う場合は、公共・民間を問わず鉄筋工事業の建設業許可が必須です。行政書士の立場から、この500万円基準の正確な判断方法と、見落としやすい合算ルール、軽微な工事の例外について実務に即して解説します。
目次
そもそも「鉄筋工事業」とは何を指すのか
建設業法では建設工事を29業種に区分しており、鉄筋工事業(許可業種の略号は「筋」、業種コード12)はそのうちの一つです。国土交通省の業種区分では、鉄筋工事は「棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事」と定義されています。具体的には次の工事が例示されています。
- 鉄筋加工組立て工事(鉄筋の配筋・組立て)
- 鉄筋継手工事(配筋された鉄筋を接合する工事。ガス圧接継手・溶接継手・機械式継手など)
ご自身の請け負う工事がどの業種に当たるかを正しく特定することは、許可取得の出発点です。鉄筋の組立てと併せて型枠やコンクリート打設まで一括して請け負う場合などは、業種の切り分けが難しくなることがあります。判断に迷う場合は、契約内容(仕様・見積内訳)をもとに整理することが重要です。
許可が必要かどうかの分かれ目「軽微な建設工事」
建設業許可がなくても請け負える工事を「軽微な建設工事」といいます。建築一式工事とそれ以外で基準が異なります。
| 工事の種類 | 軽微な建設工事(許可不要)の基準 |
|---|---|
| 建築一式工事 | 請負代金1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事 |
| 鉄筋工事業など上記以外 | 請負代金が500万円未満(税込)の工事 |
鉄筋工事業は「建築一式工事以外」に該当しますので、判断基準は500万円未満(税込)です。500万円未満であれば許可は不要、500万円以上になる工事を請け負うには許可が必要、というのが大原則です。なお、いずれの金額にも取引に係る消費税および地方消費税の額が含まれます。
500万円以上かどうかは「税込」で判断する
実務で最も注意すべき点が、この500万円は消費税および地方消費税を含んだ税込金額で判定するということです。国土交通省も、金額には消費税等を含む旨を明記しています。
たとえば本体価格(税抜)が460万円の工事は、一見500万円未満に見えます。しかし消費税10%を加えると506万円となり、税込で500万円以上ですので、無許可では請け負えません。「税抜で500万円ぎりぎりに収まっているから大丈夫」という思い込みは、無許可営業という重大な法令違反につながりかねません。見積・契約の段階で必ず税込総額で確認してください。
金額判断で見落としやすい3つの合算ルール
500万円の判断は、単純な1契約の金額だけで決まるわけではありません。次の3点に注意が必要です。
1. 注文者が材料を支給する場合は材料費を含める
注文者(元請等)が材料を提供する場合、請負代金の額にはその材料の市場価格(時価)と運送費を加えた額で500万円未満かどうかを判断します。「材料は支給だから工賃だけで500万円未満」という扱いはできません。
2. 一つの工事を分割契約しても合算して判断する
正当な理由なく一つの工事を意図的に複数の契約に分割しても、各契約の請負代金を合計した額で判断します。500万円以上となる工事を2件に割って許可を回避する、といった手法は認められません。
3. 附帯工事や追加工事も全体で見る
当初の契約後に追加・変更が発生し、合計で税込500万円以上となれば許可が必要です。工事の途中で金額が膨らむケースは珍しくないため、見込み段階から許可取得を検討しておくと安心です。
鉄筋工事業の許可を取得するための主な要件
500万円以上の鉄筋工事を継続的に請け負うなら、建設業許可(鉄筋工事業)の取得が必要です。許可には大きく次の要件があります(建設業許可の取得要件・手続き・費用の全体像はこちら)。
- 経営業務の管理体制:令和2年(2020年)10月施行の改正により、常勤役員等の経験に加え、これを直接補佐する者を置く「組織としての体制」でも要件を満たせるようになりました。
- 営業所技術者等(旧・専任技術者):鉄筋工事業では、1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(躯体)、鉄筋施工技能士などの国家資格・技能検定、または所定の指定学科(建築学・土木工学・機械工学)の卒業と実務経験、もしくは10年以上の実務経験などが基準となります。
- 誠実性・財産的基礎:請負契約に関する不正・不誠実な行為のおそれがないこと、自己資本500万円以上または500万円以上の資金調達能力など、一定の財産的基礎があること(一般建設業の場合)。
- 欠格要件に該当しないこと。
- 適切な社会保険への加入:上記改正で、健康保険・厚生年金保険・雇用保険への適正加入が許可要件化されています。
どの要件をどの書類で証明するかは事業者ごとに異なり、過去の経験年数や資格の組み合わせを丁寧に整理する必要があります。当事務所では、要件の充足確認から申請書類の作成・提出まで、鉄筋工事業の建設業許可申請を一貫してサポートいたします。なお、許可取得後に必要となる税務・会計の取扱いについては、提携の税理士と連携してご案内いたします。
許可がない・要件判断を誤った場合のリスク
無許可で税込500万円以上の工事を請け負うと、建設業法違反として営業停止や監督処分、罰則の対象となるおそれがあります。また、元請業者の管理体制が厳格化するなか、許可の有無は取引先からの信用にも直結します。「500万円以上の案件を受注できるようにしたい」「将来に備えて許可を取りたい」という段階で、早めに準備を始めることをおすすめします。
鉄筋工事業の建設業許可について、「自社が要件を満たしているか分からない」「500万円基準の判断に不安がある」といったお悩みは、行政書士法人Treeにお気軽にご相談ください。新規申請(知事許可)は110,000円(税込)から、業種追加は55,000円(税込)からお手伝いしており、別途、法定手数料等の実費がかかります。詳しくは建設業許可サポートのご案内をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
鉄筋工事業は建築一式工事以外の専門工事に当たり、工事1件の請負代金が税込500万円未満であれば軽微な建設工事として許可不要、税込500万円以上なら建設業許可が必要です。判断は必ず税込総額で行い、注文者支給材料の時価・運送費、分割契約の合算、追加工事も含めて全体で確認することが重要です。500万円以上の受注を見据えるなら、経営体制・営業所技術者等・社会保険などの要件を早めに整理し、計画的に許可取得を進めましょう。
許可が必要か確認するための実務チェックリスト
- 見積書・注文書・請負契約書の金額が税込500万円以上になっていないか
- 注文者支給材料の市場価格と運送費を加えると税込500万円以上にならないか
- 同一工事を複数契約に分けている場合、合算すると税込500万円以上にならないか
- 追加工事・変更契約を含めた総額が税込500万円以上にならないか
- 鉄筋工事業以外の工事も継続的に請け負う場合、他業種の許可が必要にならないか
鉄筋工事業の建設業許可に関するよくある質問
Q:税抜480万円の鉄筋工事は許可なしで請け負えますか。
A:消費税10%を加えると税込528万円となり500万円以上ですので、原則として建設業許可が必要です。500万円の判断は税込総額で行う点にご注意ください。
Q:注文者から鉄筋材料の支給を受け、工賃だけなら500万円未満です。許可は不要ですか。
A:注文者が材料を提供する場合は、その材料の市場価格と運送費を請負代金に加えて判断します。合計で税込500万円以上になれば許可が必要です。
Q:1件の工事を2つの契約に分ければ、それぞれ500万円未満で許可は不要になりますか。
A:正当な理由のない分割は認められず、各契約の合計額で判断されます。合計が税込500万円以上であれば許可が必要となり、許可回避を目的とした分割は法令違反のおそれがあります。
Q:鉄筋の組立てとガス圧接の両方を行いますが、別々の許可が必要ですか。
A:いずれも鉄筋工事業(鉄筋加工組立て工事・鉄筋継手工事)の範囲ですので、鉄筋工事業の許可一つで対応できます。他業種の工事も継続的に請け負う場合は、業種ごとの許可が必要です。
Q:許可取得にはどのくらいの実務経験や資格が必要ですか。
A:営業所技術者等(旧・専任技術者)は所定の国家資格・技能検定(1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(躯体)、鉄筋施工技能士など)、または指定学科の卒業と実務経験、もしくは10年以上の実務経験などで要件を満たします。経営業務の管理体制や財産的基礎、社会保険加入も求められるため、個別の状況に応じた確認が必要です。具体的な可否は当事務所にご相談ください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。