山林や空き地に大量のごみが捨てられている、解体業者が産業廃棄物を不適正に処分している——こうした不法投棄を見つけたとき、「誰がどうやって責任を追及できるのか」と悩む方は少なくありません。結論から申し上げると、不法投棄は廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第16条が「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と明確に禁じる犯罪であり、行為者だけでなく、その背後にいる法人にも最大3億円という重い罰金を科せる「両罰規定」が用意されています。そして、被害者でない第三者であっても、刑事訴訟法第239条に基づき「何人でも」告発が可能です。本記事では、行政書士の立場から、不法投棄の法的位置づけと、両罰規定を活用した告発の進め方を整理します。
目次
不法投棄を禁じる廃棄物処理法第16条とは
廃棄物処理法第16条は、「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と定めています。ここでいう「何人も」とは、許可業者・一般人を問わずすべての人を指し、「廃棄物」には家庭から出る一般廃棄物と、事業活動から生じる産業廃棄物の双方が含まれます。山中への投棄はもちろん、自社の資材置き場に大量の廃材を放置するような行為も、態様によっては「みだりに捨てた」と評価され得ます。
不法投棄は故意犯であり、「廃棄物であることの認識」と「みだりに捨てる意思」があれば成立します。正規の処理委託を装って実際は山林に捨てさせたようなケースでは、投棄を指示・依頼した側も共犯として責任を問われ得ます。
罰則は「5年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金」
第16条違反の罰則は、第25条第1項第14号に規定されています。5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科です。なお、2025年6月1日に刑法等の改正が施行され、従来の「懲役」「禁錮」は原則として「拘禁刑」に一本化されました。古い記事では「5年以下の懲役」と書かれていることがありますが、現在の正式な刑名は拘禁刑です。
さらに、不法投棄は未遂であっても処罰の対象とされています(第25条第2項)。実際に捨て終える前の段階で摘発されても、罪に問われ得る点は、抑止の観点で重要です。
法人にも責任が及ぶ「両罰規定」(第32条)
不法投棄の実行犯が末端の作業員や下請けであっても、その背後で利益を得ている事業者を放置しては実効性がありません。そこで機能するのが両罰規定です。第32条第1項は、法人の代表者や従業者が、その法人の業務に関して不法投棄(第16条違反)を行った場合、行為者を罰するほか、その法人に対して3億円以下の罰金刑を科すと定めています。
個人の罰金上限が1,000万円であるのに対し、法人にはその30倍にあたる3億円が用意されている点が、両罰規定の最大の特徴です。組織的・営利的な不法投棄に対しては、この規定を意識して告発の対象を「実行犯個人」だけでなく「法人」にも広げて構成することが、実務上きわめて有効です。
| 対象 | 適用条文 | 罰則の上限 |
|---|---|---|
| 個人(行為者) | 第25条第1項第14号(未遂は第25条第2項) | 5年以下の拘禁刑/1,000万円以下の罰金(併科可) |
| 法人(業務に関しての違反) | 第32条第1項(両罰規定) | 3億円以下の罰金 |
告発は「何人でも」できる——告訴との違い
刑事訴訟法第239条第1項は、「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる」と定めています。被害者本人が行う「告訴」と異なり、告発は第三者でも可能です。不法投棄は周辺住民の生活環境や自然環境を害する犯罪であり、直接の被害者を特定しにくいため、目撃した住民や自治会、近隣事業者による告発が現実的な選択肢になります。
- 告訴:犯罪の被害者など、法律で定められた者が処罰を求める意思表示をすること。
- 告発:被害者・告訴権者以外の第三者が、犯罪事実を捜査機関に申告し処罰を求めること。不法投棄では告発が主役になります。
- 被害届:被害の事実を申告するもので、処罰を求める意思表示までは含まれません。
なお、第239条第2項は、公務員が職務上犯罪を知ったときの告発義務を定めています。自治体の環境部局に情報提供すれば、行政が自ら告発に動くこともあり、まずは管轄自治体への通報と並行して進めるのが実務的です。
不法投棄を見つけたらどうする?通報先・告発状提出先と責任追及
告発は、書面(告発状)または口頭で、検察官または司法警察員に対して行います(刑事訴訟法第241条)。書面で行う場合、不法投棄の告発状は管轄の警察署長宛てに作成・提出するのが一般的です。受理されれば、捜査機関による捜査が開始されます。具体的な進め方は次のとおりです。
- 証拠の保全:投棄の日時・場所・物の種類・量、車両やナンバー、関与者の様子などを、写真や記録で残します。
- 事実の整理:いつ・どこで・誰が・何を・どのように捨てたかを時系列で整理します。
- 告発状の作成:犯罪事実を特定し、適用法条(廃棄物処理法第16条・第25条、両罰規定としての第32条)を示して構成します。
- 自治体への通報の併用:環境部局に通報すると、行政が現地調査や措置命令(生活環境の保全上の支障除去・発生防止)を発する端緒にもなります。
不法投棄では、刑事責任とは別に行政上の責任も生じます。都道府県知事等は、生活環境の保全上の支障が生じ、または生ずるおそれがある場合に、投棄者等に対し措置命令を発し、支障の除去・発生防止のために必要な措置を求めることができます。また、産業廃棄物については、適正処理を委託したはずの排出事業者にも責任が及ぶ場合があり、マニフェスト(産業廃棄物管理票)制度の不備や委託基準違反が問われることもあります。公訴時効は、法定刑(長期5年の拘禁刑)に対応して原則5年です(刑事訴訟法第250条)。早めの対応が肝心です。
なお、相手方への損害賠償や撤去費用の請求といった民事上の請求や、紛争相手との交渉・訴訟は弁護士の職務領域です。当事務所が民事請求・交渉の代理や、紛争相手に対する請求文案の作成を行うものではなく、必要に応じて提携する弁護士と連携するサポートに限定されます。
当事務所のサポート(告発状の作成)
不法投棄の告発で最初の関門となるのが、事実を正確に特定し、適用法条を示した告発状の作成です。書類の体裁や事実の構成が不十分だと、受理に至らないこともあります。行政書士法人Treeでは、お話を丁寧にうかがったうえで、警察署長宛ての告発状(事実証明に関する書類)の作成を行います。料金はスタンダードプラン38,280円(税込)、お急ぎの場合はお急ぎ特急プラン49,280円(税込)をご用意しています。捜査・逮捕・起訴の判断は捜査機関が行うものですが、入口の書類を整えることが第一歩です。ご相談は何度でも無料です。まずは告訴・告発のサポートページをご覧ください。書類作成については内容証明など書面作成のページもあわせてご参照ください。
まとめ
不法投棄は廃棄物処理法第16条が禁じる犯罪で、行為者個人には5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(第25条、未遂も処罰)、業務に関して行われた場合は法人に最大3億円の罰金(第32条の両罰規定)が科され得ます。告発は刑事訴訟法第239条により第三者でも可能で、警察署長宛ての告発状提出と自治体への通報を併用するのが実務的です。証拠の保全と正確な書類作成が、責任追及の出発点となります。
不法投棄の告発に関するよくある質問
Q:被害者でない近所の住民でも告発できますか。
A:できます。刑事訴訟法第239条第1項は「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる」と定めており、被害者本人に限られる告訴と異なり、第三者である住民や自治会も告発が可能です。
Q:投棄したのは下請け業者ですが、元請けの会社の責任は問えますか。
A:両罰規定(第32条)により、その法人の業務に関して従業者等が不法投棄を行った場合、行為者だけでなく法人にも最大3億円以下の罰金が科され得ます。告発状では行為者と法人の双方を視野に入れて事実を構成することが有効です。具体的な該当性の判断は事案によります。
Q:告発と一緒に、撤去費用や損害の賠償も求められますか。
A:撤去費用や損害賠償の請求、相手方との交渉は弁護士の職務領域です。当事務所は告発状などの書類作成を行い、賠償や交渉が必要な場面では提携する弁護士と連携してサポートします。行政の措置命令による原状回復は、自治体への通報も端緒となります。
Q:告発できる期限(時効)はありますか。
A:不法投棄の法定刑(長期5年の拘禁刑)に対応し、公訴時効は原則として5年です。時間が経つほど証拠の保全が難しくなりますので、できるだけ早い段階でのご相談をおすすめします。
Q:告発状を出せば必ず捜査されますか。
A:告発が受理されれば捜査の端緒となりますが、捜査・逮捕・起訴を行うかどうかの判断は捜査機関に委ねられます。受理に至るよう、事実を具体的に特定し、適用法条を明示した書類を整えることが重要です。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。