マンガ・アニメ・ゲームなどの海賊版(違法複製物)を販売する行為は、著作権法第119条などにより刑事罰の対象となる重大な犯罪です。なお、ブランド品のコピー商品については、商標法・意匠法等の知的財産侵害となる場合があり、著作権侵害とは別に検討が必要です。被害に遭った権利者の方が販売者の処罰を求める場合、警察署長宛ての告訴状を提出して捜査の端緒とすることが有力な手段になります。さらに、海外から海賊版が流入しているケースでは税関への輸入差止申立てを併用することで、水際での摘発と刑事手続を組み合わせた多面的な対応が可能です。本記事では、行政書士の立場から、海賊版販売に関する罰則の最新情報、告訴の流れ、税関との連携、そして告訴状作成のポイントを整理して解説します。なお、2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」「禁錮」は原則として「拘禁刑」に一本化されています。
目次
海賊版販売に対する著作権法119条の罰則
著作権法は、海賊版の販売などの権利侵害行為に対して、財産権の侵害としては重い刑事罰を定めています。法定刑を整理すると次のとおりです。
- 第119条第1項:著作権・出版権・著作隣接権を侵害した者は、10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらの併科。海賊版を複製して販売する行為などが典型です。
- 第119条第2項:頒布の目的をもって侵害物品を輸入する行為や、業として侵害物品を頒布・頒布目的で所持する行為など(著作権法第113条のいわゆる「みなし侵害」行為)は、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはこれらの併科。海外から仕入れた海賊版の輸入・流通がこれに含まれます。
- 第119条第3項:私的使用目的であっても、有償著作物等を違法配信と知りながら継続的・反復してダウンロードする行為は、2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはこれらの併科(一定の要件あり)。
さらに、法人の従業者などが業務に関して侵害行為を行った場合、行為者本人が処罰されるほか、その法人に対して3億円以下の罰金が科される両罰規定(第124条)が設けられています。組織的に海賊版を販売している業者に対しては、極めて重い経済的制裁が予定されているということです。
海賊版販売は「非親告罪」になることがある
著作権侵害の罪は、原則として被害者(権利者)の告訴がなければ起訴できない「親告罪」です(第123条第1項)。しかし、TPP関連の法整備に伴う改正(2018年〔平成30年〕12月30日施行)により、次の要件をすべて満たす悪質な海賊版行為は非親告罪とされ、権利者の告訴がなくても起訴できるようになりました(第123条第2項)。
- 侵害者が、対価を得る目的または権利者の利益を害する目的を有していること(目的性)
- 有償著作物等を「原作のまま」公衆譲渡・公衆送信する(またはそのために複製する)侵害であること(原作性)
- 権利者が得られると見込まれる利益を不当に害することとなる場合であること(不当性)
たとえば販売中のマンガや小説を丸ごと複製して販売・配信する行為は、この非親告罪の対象になり得ます。一方で、同人誌やパロディの投稿などは原則として親告罪のままと解されています。もっとも、非親告罪に該当する場合であっても、権利者からの告訴は捜査を促す重要な端緒であることに変わりはありません。被害の実態や損害を最もよく把握しているのは権利者自身であり、整理された資料とともに告訴状を提出することが、迅速な捜査につながります。
海賊版販売を告訴する流れと告訴状の役割
告訴とは、被害者などが捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です。海賊版販売の場合、その申告先は警察署長宛てとなるのが実務上の基本です。告訴状は、捜査機関が事件として受理し捜査を開始するかどうかを判断する重要な書類であり、内容の正確さと証拠の裏づけが問われます。一般的な流れは次のとおりです。
- 証拠の収集・保全:販売ページのスクリーンショット、URL、出品者情報、購入時のやり取り、入手した現物、振込記録など。日時が分かる形で保存します。
- 権利関係の確認:自身が著作権者・出版権者・著作隣接権者であること、または正当な権利を有することを示す資料を整えます。
- 告訴状の作成:いつ・誰が・どのような態様で・どの権利を侵害したのかを、条文に当てはめて具体的に記載します。
- 警察署への相談・提出:管轄の警察署(生活安全・サイバー担当部署など)に事前相談のうえ、告訴状と証拠資料を提出します。
- 捜査・送致:受理後に捜査が進み、検察官に送致されます。
なお、親告罪の場合の告訴は、犯人を知った日から6か月以内に行う必要があります(刑事訴訟法第235条)。侵害者が判明したら、早めに準備を進めることが大切です。
税関の輸入差止申立て・認定手続との連携
海賊版が海外から日本に持ち込まれているケースでは、刑事告訴と並行して税関の水際取締りを活用できます。著作権・著作隣接権を侵害する物品は、「輸入してはならない貨物」に位置づけられており(関税法)、税関で発見されると認定手続を経て没収・廃棄の対象となります。さらに、知的財産侵害物品を輸入する行為自体が関税法上の罰則(関税法第109条。10年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金など)の対象です。
権利者が活用できる主な制度は次のとおりです。
- 輸入差止申立て:自己の権利を侵害する貨物が輸入されるおそれがある場合、税関長に対して差止め・認定手続を執るよう申し立てる制度です。あらかじめ申立てを受理しておくことで、該当貨物が現れた際に税関が機動的に対応できます。
- 認定手続:侵害の疑いがある貨物が発見されると、権利者・輸入者の双方に通知され、証拠・意見を提出して侵害該当性が判断されます。
税関での摘発記録や認定結果は、刑事告訴を裏づける有力な証拠になり得ます。逆に、刑事捜査で判明した輸入ルートの情報を税関の取締りに生かすこともできます。水際(税関)と刑事手続(告訴・捜査)を組み合わせることで、海賊版の流通を上流と下流の両面から抑え込むことが可能です。
行政書士ができること・他士業との連携
当事務所では、行政書士の職域である事実証明に関する書類の作成として、警察署長宛ての告訴状や、事実関係を整理した報告書・陳述書、証拠説明資料などの作成をサポートします。海賊版販売は事実関係や証拠が複雑になりがちですが、時系列・侵害態様・関係する条文を整理し、捜査機関に事案の実態が伝わりやすい形で書類を組み立てることが、告訴に向けた準備のポイントです。
一方で、次の領域は他の専門家と連携してサポートします。
- 侵害者に対する損害賠償請求・差止請求・示談交渉や訴訟の代理、賠償額の見通しなどの法律判断は弁護士に相談・連携します。
- 侵害により得た所得の申告・税務処理に関する事項は税理士に確認・連携します。
- 権利者側の法人登記など登記手続が必要な場合は司法書士に相談・連携します。
海賊版対策に役立つ関連手続として、内容証明郵便によるご案内もあわせてご検討いただけます。
海賊版販売の被害に遭われた方、警察署長宛ての告訴状作成や税関手続についてお悩みの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。証拠の整理と行政書士の職域内での告訴状作成までサポートし、税関への輸入差止申立てや侵害判断を伴う事項については、弁護士・弁理士等の専門家と連携いたします。告訴状作成のご相談はこちらのページから承ります。告訴状作成のスタンダードプランは38,280円(税込)、お急ぎの特急プランは49,280円(税込)です。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
海賊版の販売は、著作権法第119条により最高で10年以下の拘禁刑・1000万円以下の罰金(法人は最高3億円の罰金)が科される重い犯罪です。販売中の作品を原作のまま複製・販売・配信する悪質な行為は非親告罪となり得ますが、権利者からの告訴は依然として捜査の重要な端緒です。警察署長宛ての告訴状の提出に加え、海外流入のケースでは税関の輸入差止申立て・認定手続を併用することで、水際と刑事手続の両面から効果的に対応できます。証拠の保全を急ぎ、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
海賊版販売の告訴に関するよくある質問
Q:海賊版を販売されました。すぐに刑事告訴できますか。
A:まずは販売ページ・出品者情報・現物・取引記録などの証拠を保全し、自身が権利者であることを示す資料を整えることが先決です。親告罪の場合、告訴は犯人を知った日から6か月以内に行う必要があるため、証拠が整い次第、早めに警察への相談・告訴状の提出を進めることをおすすめします。
Q:海賊版販売はすべて非親告罪になるのですか。
A:いいえ。非親告罪となるのは、対価を得る目的などがあり、有償著作物等を「原作のまま」販売・配信する一定の悪質な行為などに限られます。それ以外は原則として親告罪のままで、権利者の告訴が起訴の要件となります。いずれにせよ告訴は捜査を促す重要な端緒です。
Q:海外から仕入れた海賊版にはどう対応すればよいですか。
A:刑事告訴と並行して、税関への輸入差止申立てを行うことが有効です。著作権侵害物品は輸入してはならない貨物として認定手続・没収の対象となり、輸入行為自体も関税法上の罰則の対象です。税関の摘発記録は刑事告訴の証拠としても活用できます。
Q:告訴後に損害賠償や示談交渉もしたいのですが。
A:損害賠償請求や示談交渉、賠償額の算定といった法律判断・代理は弁護士の業務です。当事務所では告訴状などの事実証明に関する書類の作成を行い、賠償・交渉が必要な場面では弁護士と連携してサポートいたします。
Q:行政書士に告訴状の作成を頼めるのですか。
A:はい。警察署長宛ての告訴状は、事実証明に関する書類として行政書士が作成をお手伝いできます。事実関係や証拠を整理し、犯罪事実として捜査機関に伝わりやすい書類づくりをサポートします。侵害成否に関する高度な法律判断や、交渉・訴訟の代理が必要な場合は弁護士と連携します。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

