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強要罪の告訴状の書き方|構成要件・証拠収集・記載例を解説

更新: 約12分で読めます

「土下座しろ」「辞表を書け」——こうした言葉で行動を強制された経験があるなら、それは刑法223条の強要罪に該当する可能性があります。強要罪は脅迫や暴行を手段として、相手に義務のない行為を無理やりさせたり、正当な権利行使を妨害したりする犯罪です。法定刑は3年以下の拘禁刑(2025年6月1日の刑法改正により「懲役」から変更)で、罰金刑の規定がないことからも、法が重く位置づけている犯罪だといえます。

本記事では、強要罪の構成要件を条文に沿って整理したうえで、告訴状の具体的な書き方・記載例、証拠収集の方法までを解説します。告訴状の作成を検討されている方が、手続きの全体像を把握できる内容です。

「強要の被害に遭ったが、どう対処すればよいかわからない」という方は、行政書士法人Treeにご相談ください。告訴状作成の専門家が、証拠の整理から書面完成まで丁寧にサポートいたします。相談は何度でも無料・全国対応です。

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強要罪(刑法223条)とは?脅迫罪との違いを整理

強要罪の条文と法定刑

強要罪は刑法第223条に規定されています。条文の要旨は次のとおりです。

第223条(強要)
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の拘禁刑に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。

法定刑は3年以下の拘禁刑です。2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」は「拘禁刑」に一本化されました。強要罪には罰金刑の選択肢がなく、起訴されれば拘禁刑か無罪かの二択になる点が特徴です。

脅迫罪(刑法222条)との違いは何か

強要罪と混同されやすいのが脅迫罪です。両者の違いを理解することは、告訴状の罪名選定で重要になります。

比較項目 脅迫罪(222条) 強要罪(223条)
行為の内容 害悪の告知(脅迫)のみ 脅迫又は暴行+義務なき行為の強制 or 権利行使の妨害
法定刑 2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 3年以下の拘禁刑(罰金刑なし)
未遂処罰 なし あり(223条3項)
具体例 「殺すぞ」と言った 「殺すぞ」と言って土下座させた

端的に言えば、脅迫罪は「脅すだけ」、強要罪は「脅して何かをさせる(またはさせない)」犯罪です。脅迫に加えて結果(義務のない行為の実行 or 権利行使の妨害)が発生した場合、より重い強要罪が成立します。なお、脅迫行為があったが結果が発生しなかった場合でも、強要未遂罪(223条3項)として処罰される可能性があります。

脅迫罪・恐喝罪との違いについて、さらに詳しくは「脅迫罪・恐喝罪の告訴状の書き方」で解説しています。

強要罪の構成要件を分解して解説

強要罪の成立には、以下の3つの要素がすべて満たされる必要があります。告訴状を作成する際は、これら各要素に対応する事実を漏れなく記載することが求められます。

要件1:脅迫又は暴行

脅迫とは、被害者本人またはその親族の生命・身体・自由・名誉・財産の5つの法益に対して、害を加える旨を告知する行為です。「害悪の告知」は、相手が畏怖(恐怖)を感じる程度のものであることが必要とされています。

暴行とは、人の身体に対する不法な有形力の行使を指します。殴る・蹴るだけでなく、物を投げつける、胸ぐらをつかむといった行為も暴行に含まれます。

注意すべきは、強要罪の「暴行」には身体的接触を伴わない場合も含まれうる点です。たとえば、被害者の目の前で物を破壊して畏怖させる行為なども、状況次第では暴行と評価されることがあります。

要件2:義務のないことを行わせる or 権利の行使を妨害する

脅迫・暴行の結果として、次のいずれかが生じることが必要です。

  • 義務のないことを行わせる:法律上または契約上の義務がない行為を強制すること。土下座、謝罪文の作成・公開、退職届の提出、借用書への署名などが典型例です。
  • 権利の行使を妨害する:被害者が正当に行使できるはずの権利を行使させないこと。たとえば、告訴の取下げを強制する、退去の自由を妨げるなどが該当します。

「義務のない行為」に該当するかどうかは、社会通念上の妥当性も考慮されます。たとえば、正当な債権回収であっても、その手段として暴行・脅迫を用いれば強要罪が成立しえます。

要件3:脅迫・暴行と結果との因果関係

脅迫・暴行が原因となって、被害者が義務のない行為をした(または権利行使を妨害された)という因果関係が必要です。被害者が脅迫・暴行とは無関係に自発的に行動した場合、強要罪は成立しません。

因果関係の立証では、時間的近接性(脅迫と行為が時間的に近いこと)や状況の一連性が重要な判断要素になります。告訴状でも、脅迫行為と被害者の行動が一連の流れの中で生じたことを具体的に記述する必要があります。

強要罪に該当する具体例

強要罪がどのような場面で成立しうるのか、具体的なケースを整理します。以下はあくまで典型例であり、個別の事案では状況によって判断が異なります。

ケース 脅迫・暴行の態様 強制された行為
土下座の強要 「誠意を見せないと家族にも迷惑がかかるぞ」 公衆の面前での土下座
退職の強要 「辞めなければ不正を公にする」と脅迫 退職届への署名
SNS謝罪の強制 「謝罪文を投稿しないと拡散する」 SNSへの謝罪文投稿
借用書への署名強制 胸ぐらをつかみ「署名しろ」 借用書への署名・押印
告訴取下げの強要 「取り下げないと何をするかわからない」 告訴の取下げ(権利行使の妨害)

上記のうち、SNS上での謝罪文投稿の強制は近年増加している類型です。デジタル上の証拠(メッセージのスクリーンショット等)が残りやすいため、証拠収集がしやすい反面、脅迫がどの程度の畏怖を生じさせたかの評価が争点になることがあります。

強要未遂罪とは

刑法223条3項により、強要罪は未遂も処罰の対象です。つまり、脅迫や暴行を行ったが、被害者が応じなかった(義務のない行為をしなかった・権利行使の妨害に至らなかった)場合でも、犯罪が成立します。脅迫罪には未遂処罰の規定がないため、この点でも強要罪は重い犯罪として位置づけられています。

告訴状の書き方と記載例

告訴状に記載すべき基本項目

強要罪の告訴状には、法定の書式はありませんが、捜査機関が受理しやすい構成として以下の項目を盛り込みます。

  1. 表題:「告訴状」
  2. 宛先:提出先の警察署長または検察官宛
  3. 提出日:作成日を記載
  4. 告訴人の情報:氏名・住所・連絡先・生年月日
  5. 被告訴人の情報:氏名・住所(不明の場合は「氏名不詳」も可)
  6. 告訴の趣旨:「下記の事実につき、被告訴人の処罰を求めるため告訴いたします」
  7. 罰条:刑法第223条第1項(強要罪)
  8. 告訴事実:犯罪事実を5W1Hで具体的に記載
  9. 告訴に至る経緯:背景事情を時系列で説明
  10. 証拠資料の一覧:添付する証拠をリスト化

強要罪の告訴状記載例

以下は強要罪の告訴状における「告訴事実」部分の記載例です。実際の告訴状では、具体的な事実関係に合わせて内容を調整してください。

【告訴事実の記載例】

被告訴人は、令和○年○月○日午後○時頃、東京都○○区○○町○丁目○番○号所在の○○ビル○階の○○事務所において、告訴人に対し、「この件を取引先にばらされたくなかったら、今すぐ謝罪文を書いてSNSに投稿しろ。従わなければお前の家族にも知らせるぞ」と告訴人及び告訴人の親族の名誉に対し害を加える旨を告知して脅迫し、告訴人をしてその場で謝罪文を作成させ、告訴人のSNSアカウントに投稿させ、もって義務のないことを行わせたものである。

上記被告訴人の行為は、刑法第223条第1項(強要罪)に該当するので、被告訴人の厳重な処罰を求めるため、告訴いたします。

告訴事実は、いつ・どこで・誰が・誰に対して・何を(どのような脅迫・暴行を)・どうした(何を強制したか)を具体的に記載することが重要です。構成要件に対応する事実が漏れなく含まれていなければ、捜査機関に犯罪事実として認められにくくなります。

記載で注意すべきポイント

  • 脅迫の内容を具体的に:「脅された」という抽象的表現ではなく、実際に告げられた言葉を可能な限り正確に記載する
  • 結果の明示:義務のない行為を行わされた事実、または権利行使を妨害された事実を明確に書く
  • 因果関係の記述:「〜と告知して脅迫し、告訴人をして〜させた」のように、脅迫と結果の因果関係がわかる文構造にする
  • 親族への脅迫の場合:第2項に該当するため、「告訴人の親族である〇〇の〜に対し害を加える旨を告知して」と記載する
  • 未遂の場合:「〜させようとしたが、告訴人がこれに応じなかったため、その目的を遂げなかったものである」と記載し、罰条を「刑法第223条第3項、第1項(強要未遂罪)」とする

告訴状の記載に不安がある方へ

告訴状は、構成要件に対応した事実を正確に記載する必要があり、記載内容に不備があると受理されないこともあります。行政書士法人Treeでは、告訴状作成の専門家が証拠の整理から書面の完成まで対応いたします。

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強要罪の証拠収集はどう進めるか

告訴状を受理してもらうためには、犯罪事実を裏付ける証拠が不可欠です。強要罪の場合、脅迫・暴行の事実と、それによって義務のない行為を強制されたことの両方を証明する証拠が必要になります。

録音・録画による証拠保全

脅迫や暴行の場面を録音・録画した記録は、最も直接的な証拠です。スマートフォンの録音機能やICレコーダーを利用する方法が一般的です。なお、自分が当事者である会話を無断で録音することは、原則として違法ではないとされています(東京高裁昭和52年7月15日判決等)。

録音データは以下の点に注意して保全しましょう。

  • 原本データを別の媒体にもバックアップする
  • 録音日時・場所を別途メモしておく
  • 内容を文字に起こした「反訳書」を作成すると、捜査機関の確認がスムーズになる

メール・LINE等のメッセージ

脅迫がメールやLINE、SNSのダイレクトメッセージ等で行われた場合、そのスクリーンショットが有力な証拠になります。保存時の注意点は次のとおりです。

  • 送信者のアカウント名・IDが表示された状態でスクリーンショットを撮影する
  • 前後のメッセージも含めて文脈がわかるように保存する
  • 日時が表示されている状態で保存する
  • データが消去される前に速やかに保全する(相手がメッセージを削除する場合があるため)

目撃証言・診断書等

暴行を伴う強要の場合は、目撃者の証言も重要な証拠になります。目撃者がいる場合は、氏名・連絡先を確認しておくことが望ましいです。また、暴行によって負傷した場合は、速やかに医療機関を受診し、診断書を取得してください。

証拠の集め方について、より詳しくは「告訴状提出に必要な証拠の集め方」をご覧ください。

告訴状提出時によくある不備と失敗

告訴状を作成・提出する際に、よくある不備や見落としを整理します。これらを事前に把握しておくことで、受理の確率を高めることができます。

罪名・罰条の選択ミス

脅迫罪と強要罪を混同して罰条を誤記するケースがあります。脅迫はされたが実際に行為を強制されていない場合は脅迫罪(222条)、義務のない行為を強制された場合は強要罪(223条)です。事実関係を正確に把握し、適切な罪名を選択することが前提になります。

告訴事実の抽象的すぎる記載

「脅迫された」「強要された」という結論だけでは、捜査機関が犯罪事実を特定できません。日時・場所・脅迫の具体的な言葉・強制された行為の内容を具体的に記載する必要があります。特に、脅迫の言葉は可能な限りそのまま(直接話法で)記載することが推奨されます。

証拠の不十分さ

告訴状に証拠を一切添付せずに提出すると、受理されにくくなります。前述の証拠収集方法を参考に、できる限り証拠を揃えて添付しましょう。完全な立証は捜査機関の役割ですが、告訴の段階で犯罪の蓋然性を示す資料があることで、受理がスムーズになります。

公訴時効の見落とし

強要罪の公訴時効は3年です(刑事訴訟法第250条第2項第6号)。時効は犯罪行為が終わった時点から進行するため、強要行為の日から3年を経過すると公訴提起ができなくなります。告訴は公訴時効の期間内に行う必要がありますので、被害に遭ったら早めに行動することが重要です。なお、強要罪は非親告罪であるため、告訴期間(親告罪における6か月制限)の適用はありません。

よくある質問

Q. 強要罪と恐喝罪の違いは?

強要罪(刑法223条)は脅迫・暴行により義務のないことを行わせる犯罪であるのに対し、恐喝罪(刑法249条)は脅迫・暴行により財物の交付または財産上の利益を得る犯罪です。金銭や財産の取得を目的とする場合は恐喝罪、それ以外の行為の強制であれば強要罪に該当します。恐喝罪の法定刑は10年以下の拘禁刑と、強要罪より重くなっています。

Q. 強要未遂でも告訴状を出せるのか?

出せます。刑法223条3項により未遂も処罰対象です。脅迫や暴行を受けたものの被害者が応じなかった場合でも、強要未遂罪として告訴状を提出できます。告訴事実には「目的を遂げなかった」旨を明記し、罰条は「刑法第223条第3項、第1項」と記載してください。

Q. 強要罪の公訴時効は何年?

強要罪の公訴時効は3年です。時効の起算点は犯罪行為が終了した時点です。継続的な強要の場合は、最後の強要行為が終了した時点から起算されます。時効が迫っている場合は、早急に告訴状を準備してください。

Q. 録音した音声は証拠として使えるのか?

自分が当事者である会話を録音したものは、原則として証拠として利用可能です。ただし、録音の態様が著しく反社会的な方法(盗聴器の設置等)による場合は証拠能力が否定される可能性があります。スマートフォンやICレコーダーで自分が参加している会話を録音する行為は、一般的に問題ないとされています。

Q. 告訴状は警察と検察のどちらに提出すべきか?

法律上は警察署(司法警察員)と検察庁(検察官)のいずれにも提出可能です(刑事訴訟法第241条第1項)。実務上は、最寄りの警察署に提出するケースが多いですが、事案の内容や状況に応じて検察庁への提出が適切な場合もあります。

まとめ

強要罪は、脅迫又は暴行を手段として義務のない行為を強制する、あるいは権利行使を妨害する犯罪です。告訴状を作成する際は、構成要件(脅迫・暴行 → 義務なき行為の強制 or 権利行使の妨害 → 因果関係)に対応する事実を具体的に記載し、録音・スクリーンショット等の証拠を添付することが受理への近道です。

以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 法定刑は3年以下の拘禁刑(罰金刑なし)、未遂も処罰対象
  • 告訴事実は5W1Hで具体的に、脅迫の言葉は直接話法で記載
  • 証拠(録音・メッセージ・診断書等)を可能な限り収集してから提出
  • 公訴時効は3年、被害に遭ったら早めに行動する

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