SNS・マッチングアプリで知り合った相手から、恋愛感情や親近感を抱かされた後に「投資話」「医療費」「税関手数料」「来日費用」等の名目で金銭を騙し取られる国際ロマンス詐欺(SNS型ロマンス詐欺)の被害が増加しています。警察庁も「SNS型ロマンス詐欺」として注意喚起を強化しています。
本記事の最重要ポイントは、振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結は、弁護士に依頼しなくても、被害者ご本人が警察と振込先の金融機関に連絡することで開始できるという点です。一部の記事で「口座凍結要請は弁護士業務」と書かれることがありますが、金融庁・預金保険機構・全国銀行協会はいずれも被害者本人による連絡を案内しており、弁護士への依頼は必須ではありません。被害発覚から金融機関への連絡までのスピードが、被害回復可能性を大きく左右します。
本記事では、SNS型ロマンス詐欺の手口、相手方の身元偽装、適用罰条(刑法246条詐欺罪を中心とし、組織的犯行には組織的犯罪処罰法による加重)、立証・捜査の課題、振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結・被害回復分配金の手続、暗号資産・国際送金の追跡、警察署長宛て告訴状の整え方を、実務目線で解説します。
国際ロマンス詐欺・SNS型ロマンス詐欺の被害に遭われた方へ。まず警察と振込先金融機関への速やかな連絡が口座凍結・被害回復分配金につながります。行政書士法人Treeでは、警察署長宛て告訴状の作成、事実関係整理書面の作成、送金記録・SNS履歴・相手方アカウント等の証拠保全のご相談を承ります(口座凍結・被害回復分配金の申請は被害者ご本人で実施可能。被害金返還の交渉・民事訴訟は提携弁護士をご紹介します)。
目次
目次
- 国際ロマンス詐欺(SNS型ロマンス詐欺)の典型手口
- 相手方の特徴|身元偽装と組織的犯行
- 適用罰条|刑法246条詐欺罪と組織的犯罪処罰法
- ⭐ 振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結|被害者本人による連絡が基本
- 被害回復分配金の申請(国内預金口座への振込被害)
- 国際送金・暗号資産による送金の追跡
- 立証・捜査の課題と保全すべき資料
- 警察署長宛て告訴状の整え方
- 業務範囲|行政書士・弁護士・警察・金融機関・専門業者
- よくある質問
国際ロマンス詐欺(SNS型ロマンス詐欺)の典型手口
- SNS(Facebook・Instagram・LinkedIn 等)・マッチングアプリでの接触
- 海外在住者(軍人・医師・実業家・エンジニア等)や著名人・専門職を装う
- SNS等で複数回やり取りし、恋愛感情や親近感を抱かせる(短期で進む事案もあれば、数か月〜1年以上かけて構築する事案もある)
- LINE・Telegram・WhatsApp等の外部メッセージアプリへの誘導
- 「投資話」「医療費」「税関手数料」「来日費用」「家族の緊急事態」等の名目での金銭要求
- 暗号資産・海外への国際送金など、追跡や被害回復が困難な方法での送金の指示
- 近年はSNS型投資詐欺と手口が重なる事案も多くみられ、「儲かる投資先を紹介する」という流れで投資詐欺に発展
相手方の特徴|身元偽装と組織的犯行
- 海外在住者・著名人・専門職等を装う身元偽装(写真は他人のものを無断流用)
- 偽プロフィール・複数アカウントの運用
- 外部メッセージアプリへの誘導と、外部アプリ上での会話継続
- 送金先口座の名義と相手方が名乗る氏名の不一致
- 音声通話・ビデオ通話を避ける、または用意された録画を流す
- 多国籍・組織的な犯行が確認される事案あり(個別事案の地域・国籍は事案ごとに異なる)
適用罰条|刑法246条詐欺罪と組織的犯罪処罰法
- 刑法第246条 詐欺罪(10年以下の拘禁刑):国際ロマンス詐欺の中心的な罪名。投資話・医療費・税関手数料・来日費用等の名目で金銭・財物をだまし取る行為
- 刑法第246条の2 電子計算機使用詐欺罪(10年以下の拘禁刑):被害者のネットバンキング操作を遠隔で行わせるなど、不正送金により財産上の利益を得る行為がある場合に問題となる
- 組織的犯罪処罰法:詐欺が団体の活動として組織的に行われた場合、組織的詐欺として法定刑が加重されます(同法3条1項13号)。また、犯罪収益の隠匿・収受があれば犯罪収益等隠匿罪・収受罪(同法10条・11条)が問題となります
- 不正アクセス禁止法違反:他人のSNSアカウントを乗っ取った場合等、ID・パスワードの不正取得・利用がある場合に問題となります(単なるSNSの偽プロフィール作成・なりすましは、それだけでは不正アクセス禁止法違反に当たりません)
犯罪収益移転防止法は主に事業者(金融機関等)の本人確認義務等を定める法律で、その違反は基本的に事業者の義務違反です。加害者の犯罪収益の隠匿・収受を捉えるのは上記の組織的犯罪処罰法のマネー・ローンダリング罪となります。
⭐ 振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結|被害者本人による連絡が基本
国内の預金口座(普通預金等)に被害金が振り込まれた場合、振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)に基づく口座凍結・被害回復分配金の手続が利用できます。SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺も、預金口座への振込みによる被害であれば同法の対象です。
手続の流れ(被害者本人が動ける)
- 警察への連絡・相談:最寄りの警察署または警察相談ダイヤル(#9110)に連絡し、事案概要・送金記録を共有
- 振込先金融機関への連絡:振込先銀行のカスタマーセンター等に「振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結を求めたい」と連絡。金融機関名・口座番号・名義・振込日時・金額を伝える
- 金融機関による調査・口座凍結:金融機関が相手方口座の取引状況を確認し、犯罪利用が疑われる場合に取引停止(凍結)を実施
- 預金保険機構による公告:口座が凍結されると、預金保険機構のサイトで権利行使の届出について公告される
- 被害回復分配金の申請:被害者が振込先金融機関に対し、所定の様式で申請(添付:被害状況説明書・送金記録・身分証明等)
- 分配金の支払:申請期間終了後、対象被害者間で凍結口座の残高に応じて按分支払
金融庁・預金保険機構・全国銀行協会はいずれも、口座凍結は被害者ご本人が警察・金融機関に直接連絡することで開始できると案内しています。「弁護士に依頼しないと口座凍結できない」は誤解であり、初動を遅らせる原因にもなり得ます。弁護士に交渉・他の法的手段の検討を依頼するメリットはありますが、口座凍結の連絡そのものは被害者本人が動ける手続です。
注意点
- 振り込め詐欺救済法の対象は国内の預金口座への振込被害です。国際送金・暗号資産による送金はこの制度の対象外
- 口座から既に資金が引き出されてしまうと回収困難になるため、気づいた瞬間に警察・金融機関へ連絡することが極めて重要
- 分配金は凍結口座の残高に応じた按分のため、被害額の満額回収を保証するものではない
被害回復分配金の申請(国内預金口座への振込被害)
口座凍結後、預金保険機構のサイトで公告が出され、所定の申請期間内に振込先金融機関に対して被害回復分配金の申請を行います。
- 申請先:被害金が振り込まれた金融機関の本店・支店
- 申請書類:所定の申請書、被害状況の説明書、振込控え・通帳の写し、身分証明書、その他金融機関指定の書類
- 申請期間:金融機関ごとに案内、公告後一定期間
- 注意:申請したからといって被害額が全額返るわけではなく、対象口座の残高に応じた分配となる
国際送金・暗号資産による送金の追跡
国際送金(海外銀行口座への送金)や暗号資産(ビットコイン等)による送金は、振り込め詐欺救済法の対象外であり、被害回復は極めて困難です。それでも次の証拠保全・対応が回収可能性を残します。
- 送金先口座・取引所の特定:銀行名・支店名・SWIFTコード、暗号資産取引所名・ウォレットアドレス・トランザクションID
- 取引所への通報:国内外の暗号資産取引所に対し、不正利用疑いの口座・ウォレットの調査依頼
- ブロックチェーン分析:チェイナリシス等の専門業者によるトランザクション追跡(捜査機関と連携することが多い)
- 警察への情報提供:海外捜査共助(ICPO・国家間捜査協定)の対象となる可能性
立証・捜査の課題と保全すべき資料
国際ロマンス詐欺は、加害者の海外所在・身元偽装・SNSの匿名性により、加害者の特定・捜査が困難な類型です。被害者側でできる証拠保全を網羅的に行うことが、後の手続を進めやすくします。
- SNS・マッチングアプリ上のプロフィール(スクリーンショット、URL、アカウントID)
- LINE・Telegram・WhatsApp等のメッセージ履歴の全文(時系列で保存)
- 送金記録(銀行振込控え、国際送金の依頼書、暗号資産送金のトランザクション履歴)
- 相手方の写真・動画・音声データ(無断流用の特定にも利用)
- 金銭要求の名目を示すやり取り(投資の説明、医療費の請求書、税関手数料の架空書類等)
- 被害発生の経緯メモ(出会いの日時、接触手段、関係深化の経緯、初回送金の経緯)
警察署長宛て告訴状の整え方
国際ロマンス詐欺の告訴状は、被害者の住所地または被害発生地の所轄警察署長宛てに作成・提出します。行政書士は告訴状の作成に関与可能ですが、検察庁宛て告訴状の作成は司法書士業務(司法書士法3条1項4号は「裁判所若しくは検察庁に提出する書類」の作成を司法書士の業務と定めています)となります。
- 告訴人(被害者)の氏名・住所・連絡先
- 被告訴人(特定できない場合は「氏名不詳の者」と表記)
- 告訴の趣旨(被告訴人を○○罪で処罰してほしい旨)
- 告訴事実(5W1Hで一連の経緯を時系列・事実ベースで記載)
- 罰条(刑法246条、必要に応じて246条の2・組織的犯罪処罰法)
- 立証資料目録(前述の保全資料一覧)
- 作成日・告訴人署名押印
本記事では誤用リスク・記載精度の問題から告訴状の具体的記載例は掲載していません。事案ごとに被害事実・罰条・立証構造は異なるため、行政書士による事実関係の整理と書面化の支援を受けることをおすすめします。
業務範囲|行政書士・弁護士・警察・金融機関・専門業者
- 行政書士:警察署長宛て告訴状の作成、事実関係整理書面の作成、証拠資料の整理
- 弁護士:被害金返還の交渉・民事訴訟、相手方が特定できた場合の損害賠償請求、刑事手続における代理
- 警察:被害相談、捜査、国際捜査共助の検討
- 振込先金融機関:振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結の調査・実施、被害回復分配金の手続案内(連絡は被害者本人が行う)
- 暗号資産取引所・ブロックチェーン分析専門業者:暗号資産送金の調査・追跡(捜査機関と連携することが多い)
- 国民生活センター:消費生活相談、SNS型詐欺の注意喚起情報
国際ロマンス詐欺の警察署長宛て告訴状作成、事実関係整理書面の作成、証拠保全のご相談は行政書士法人Treeにお任せください。口座凍結・被害回復分配金の申請はまず被害者ご本人が警察・振込先金融機関に連絡することが第一歩です。被害金返還の交渉・民事訴訟は提携弁護士をご紹介します。
よくある質問
Q1. 加害者が海外にいるようですが、告訴できますか?
加害者が海外にいる可能性があっても、日本国内で送金した・国内口座に振り込んだ・国内在住者が被害を受けたなど、日本国内に被害発生や行為の一部がある場合は、警察への相談・告訴を検討できます。 相手方の特定や海外捜査には限界がありますが、送金記録・SNS履歴・相手方アカウント等の資料整理が重要です。
Q2. 口座凍結はできますか? 弁護士に依頼しないとダメですか?
振込先が国内の銀行口座であれば、振り込め詐欺救済法に基づき、被害者ご本人が警察と振込先の金融機関に連絡・届出をすることで、金融機関が口座を凍結します. 弁護士への依頼は必須ではありません。 早期に連絡するほど口座に残高が残っている可能性が高く、被害回復分配金を受けられる見込みも高まります。
Q3. 被害回復分配金はいくらもらえますか?
凍結口座の残高に応じて、被害者間で按分されます。 被害額の満額が戻る保証はなく、口座から既に資金が引き出されていれば回収困難です。 気づいた瞬間に金融機関へ連絡することが極めて重要です。
Q4. 国際送金や暗号資産で送金してしまった場合は?
振り込め詐欺救済法の対象外で、回収は極めて困難になります。 それでも送金先口座(銀行名・SWIFTコード)や暗号資産取引所・ウォレットアドレス・トランザクションID等を保全しておくと、警察捜査やブロックチェーン分析につながる可能性があります。
Q5. 中心となる罪名は何ですか?
刑法第246条詐欺罪が中心です。 組織的犯行であれば組織的犯罪処罰法による組織的詐欺の加重、被害者のネットバンキングを遠隔操作した不正送金があれば刑法第246条の2電子計算機使用詐欺罪が問題となります。
Q6. SNSで偽プロフィールを使われたら不正アクセス禁止法違反ですか?
単なる偽プロフィール作成・なりすましだけでは、不正アクセス禁止法違反には当たりません。 同法は他人のID・パスワード等の識別符号を不正利用したログイン等を処罰する法律で、SNSで別人を装うこと自体は規律対象ではありません。 他人のSNSアカウントを乗っ取った場合は同法違反となり得ます。
Q7. 告訴状はどこに提出しますか?
被害者の住所地または被害発生地の所轄警察署長宛てに提出するのが一般的です。 検察庁宛て告訴状の作成は司法書士業務であり、行政書士業務の範囲外です。
Q8. 警察相談と国民生活センター相談、どちらを先にすべきですか?
振込被害があれば、まず警察と振込先金融機関への連絡を最優先してください。 その後、国民生活センターへの相談、行政書士・弁護士への相談を並行して進めるのが一般的な流れです。
まとめ
国際ロマンス詐欺・SNS型ロマンス詐欺の被害発生時に最も重要なのは、振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結を、被害者ご本人が警察と振込先金融機関に連絡することで速やかに開始することです。「口座凍結要請は弁護士業務」という一律の説明は誤解であり、初動を遅らせる原因となります。金融庁・預金保険機構・全国銀行協会いずれも被害者本人による連絡を案内しています。気づいた瞬間に金融機関へ連絡することが、回収可能性を大きく左右します。
適用罰条の中心は刑法第246条詐欺罪で、組織的犯行には組織的犯罪処罰法による組織的詐欺の加重、被害者口座からの不正送金があれば刑法246条の2電子計算機使用詐欺罪が問題となります。単なるSNS偽プロフィール・なりすましは不正アクセス禁止法違反には当たらず、犯罪収益移転防止法は事業者の本人確認義務の規定であり加害者の罰条としては不適切です。
振り込め詐欺救済法の対象は国内預金口座への振込被害に限られ、国際送金・暗号資産による送金は対象外で回収は極めて困難ですが、送金先口座・取引所・ウォレットアドレス・トランザクションID等の早期保全により、警察捜査・ブロックチェーン分析につながる可能性があります。
警察署長宛て告訴状の作成、事実関係整理書面の作成、証拠保全は行政書士法人Treeにご相談ください。被害金返還の交渉・民事訴訟は提携弁護士をご紹介します。検察庁宛て告訴状の作成は司法書士業務のため取り扱っていません。
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※ 本記事は執筆時点の法令(刑法、組織的犯罪処罰法、振り込め詐欺救済法、不正アクセス禁止法等)・警察庁・金融庁・預金保険機構・全国銀行協会の公表情報・運用実務に基づき作成しています。口座凍結・被害回復分配金の手続の詳細は金融機関により異なる場合があるため、最新情報のご確認と専門家・公的機関へのご相談をお願いいたします。

