結論から言えば、「在宅で簡単に稼げる」と勧誘して高額な教材やパソコン・登録料を購入させる内職商法(業務提供誘引販売取引)は、特定商取引法違反にとどまらず、最初から仕事をあっせんする意思がない、あるいは到底約束した収入が得られない仕組みである場合には刑法上の詐欺罪(刑法246条)に該当しうる類型です。被害者が警察への申告を検討する際には、客観的な事実関係を整理した警察署長宛ての告訴状を作成し、根拠条文と被害の具体性を示すことが出発点となります。行政書士は、警察署長宛ての告訴状・告発状など官公署提出書類の作成を職務として担います。検察庁宛ての告訴状・告発状の作成、提出先の選定助言、受理後の捜査対応、示談交渉、刑事手続の代理は当事務所では行いません。複雑な事案では、書類作成段階から弁護士等の適切な専門家と連携してお手伝いします。
目次
内職商法とは何か――業務提供誘引販売取引(特商法51条)
いわゆる内職商法は、「サイドビジネス商法」とも呼ばれ、特定商取引法(昭和51年法律第57号)第51条が定める「業務提供誘引販売取引」として規制されています。消費者庁の特定商取引法ガイドによれば、この取引は次の3つの要素で構成されます。
- 物品の販売・役務の提供のあっせんの事業であること
- 業務提供利益(あっせんされる仕事で得られると説明される収入)が得られると相手方を誘引すること
- 特定負担(商品購入費・登録料・研修費などの金銭的負担)を伴う取引であること
典型例は、「データ入力の仕事を紹介するので、専用のパソコンソフトや教材を購入してほしい」「資格を取れば在宅添削の仕事を回す」といった勧誘で、先に高額な教材費や機材費を支払わせるものです。仕事の紹介自体が乏しく、約束された収入がほとんど得られないにもかかわらず、負担金だけが残るところに被害の本質があります。
内職商法に適用される特商法上のルール
業務提供誘引販売取引には、消費者保護のための規制が複数定められています。内職商法の被害を検討する際の主な条文は次のとおりです。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第52条 | 不実告知(事実と違うことを告げる行為)、威迫して困惑させる行為などの禁止 |
| 第53条 | 広告における表示義務(商品の種類、特定負担の内容、業務提供条件、事業者情報等) |
| 第54条 | 誇大広告等の禁止(著しく事実に相違する表示、著しく優良・有利と誤認させる表示の禁止) |
| 第55条 | 契約前の概要書面、契約後の契約書面の交付義務 |
| 第58条 | クーリング・オフ(書面受領日から20日以内の契約解除) |
クーリング・オフ期間は、契約書面を受け取った日を1日目として20日以内です。訪問販売等の8日間より長く設定されています。解除の意思表示は書面または電磁的記録によることができます。さらに、契約書面の不交付または記載不備がある場合や、事業者が不実を告げたために誤認した、あるいは威迫により困惑して期間を経過した場合には、20日を経過した後もクーリング・オフが認められうるとされています(特商法58条関係)。これらは民事的な救済(契約からの離脱・支払金の返還)の手段であり、刑事責任の追及とは別の枠組みです。
不実告知への罰則(特商法70条)と詐欺罪(刑法246条)
内職商法の悪質な勧誘は、刑事罰の対象にもなりえます。特定商取引法第70条は、第52条が禁じる不実告知・威迫困惑等の違反行為をした者を「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」に処すると定めています(拘禁刑と罰金は併科されることがあります)。これは特商法上の罰則で、同法違反行為の重大性に応じて適用されるものです。なお、令和7年(2025年)6月1日施行の刑法改正に伴い、本条の罰則も従来の「懲役」から「拘禁刑」へと改められています。
これに加えて、勧誘の時点から仕事をあっせんする意思がない、または説明どおりの収入が構造的に得られないと知りながら教材費等を支払わせた場合には、刑法246条の詐欺罪が問題になります。刑法246条1項は「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の拘禁刑に処する」と規定しています。なお、令和7年(2025年)6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」は「拘禁刑」へと改められました。同条2項は、欺く方法によって財産上不法の利益を得た場合も同様に処罰の対象としています。
詐欺罪の成立には、(1)人を欺く行為、(2)相手方の錯誤、(3)錯誤に基づく財産の交付、(4)財産の移転、という一連のつながりが必要です。「儲かると思ったが儲からなかった」という結果だけでは足りず、勧誘者側が当初から欺く意思(故意)を持っていたことを、勧誘文言・契約書・入金記録・仕事の実態などの客観証拠から示していくことになります。
告訴と告発の違い――内職商法ではどちらを使うか
捜査機関に犯罪事実を申告して処罰を求める手続には、「告訴」と「告発」があります。両者は申告できる人の範囲が異なります。
- 告訴(刑事訴訟法230条):犯罪により害を被った被害者など、告訴権を持つ者が行うもの。内職商法で金銭をだまし取られた本人は告訴ができます。
- 告発(刑事訴訟法239条1項):犯人または被害者以外の者でも、何人でも行うことができるもの。被害者本人でない第三者が悪質商法を申告する場合などに用います。
詐欺罪(刑法246条)は親告罪ではないため、告訴がなくても捜査・起訴は可能ですが、被害者本人による告訴は被害事実を直接示す重要な端緒になります。なお、親告罪の場合は告訴期間として「犯人を知った日から6か月」という制限(刑訴法235条本文)がありますが、詐欺罪はこの制限の対象ではありません。一方で、詐欺罪の公訴時効は、刑法246条の法定刑が10年以下の拘禁刑であることを前提に、刑事訴訟法250条2項4号により原則7年です。もっとも、被害から時間が経つほど証拠は散逸するため、早期の証拠保全が実務上は重要です。
内職商法の告訴状に盛り込む要素
告訴状は決まった様式がありませんが、捜査機関が事実関係を把握できるよう、客観的な情報を漏れなく整理することが大切です。内職商法の事案では、次の要素を意識して構成します。
- 当事者の特定:告訴人(被害者)と被告訴人(事業者・勧誘者)の氏名・名称・所在地。法人名と担当者名の双方を記載します。
- 勧誘の経緯:いつ・どこで・どのような媒体(SNS広告、求人サイト、電話等)で勧誘を受け、どのような収入を約束されたか。
- 支払った特定負担:教材費・登録料・機材費などの金額(税込)、支払日、支払方法。
- 説明と実態の乖離:約束された仕事量・収入と、実際にあっせんされた仕事の有無・実態。
- 該当する罪名と条文:刑法246条の詐欺罪、必要に応じて特商法70条違反など。
- 証拠の表示:契約書、概要書面、広告のスクリーンショット、振込明細、メール・メッセージ等。
事実を時系列で並べ、「いつ・誰が・何を告げ・いくら支払わせたか」を具体的な数値で示すと、捜査機関が事案を理解しやすくなります。誇張や推測を交えず、確認できる事実のみを記載することが信頼性につながります。
内職商法の告訴状作成サポート
行政書士法人Treeでは、内職商法・在宅ワーク詐欺の被害に関する警察署長宛ての告訴状・告発状の作成をお手伝いします。お話をうかがって事実関係を時系列に整理し、刑法246条や特定商取引法の該当条文を踏まえた書面に落とし込み、お手元の契約書・広告・入金記録などの証拠を整理してご提示できる形に整えます。検察庁宛ての書類作成や刑事手続の代理に当たる業務は対象外です。
料金は告訴状・告発状の作成 38,280円(税込)〜です(事案の複雑さ・証拠量により変動します)。なお、行政書士が行えるのは、警察署長宛ての告訴状・告発状など官公署提出書類の作成までです。検察庁宛ての告訴状・告発状の作成、提出先の法的判断、受理後の捜査対応、相手方との示談交渉、刑事手続の代理は当事務所では行いません。これらが見込まれる事案では、書類作成の段階から弁護士・司法書士等の適切な専門家と連携してご案内します。サービスの詳細は告訴状・告発状作成サポートのページをご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
内職商法は、特定商取引法第51条の業務提供誘引販売取引として規制され、不実告知や威迫困惑には同法70条で3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金が定められています。勧誘段階から欺く意思があった場合には、刑法246条の詐欺罪(10年以下の拘禁刑)に該当しうる事案です。刑事責任追及の端緒として、客観的事実と証拠を整理した告訴状の作成が重要になります。告訴と告発は申告できる人の範囲が異なるため、被害者本人かどうかで使い分けます。書類作成は行政書士、提出後の対応や交渉・代理は弁護士という職域の違いを踏まえ、必要に応じて専門家と連携しながら進めることをおすすめします。
内職商法の告訴に関するよくある質問
Q:「儲からなかった」というだけで詐欺罪の告訴はできますか。
A:結果として収入が得られなかったというだけでは、詐欺罪の成立は難しい場合があります。詐欺罪(刑法246条)は、勧誘者が当初から人を欺く意思を持っていたことが要件です。勧誘文言・契約内容・仕事の実態などから、欺く意思があったといえる客観的事情を示せるかが分かれ目になります。告訴状作成の段階で、手元の資料を一緒に整理することをおすすめします。
Q:クーリング・オフ期間(20日)が過ぎたら、もう何もできませんか。
A:クーリング・オフは契約からの離脱という民事的な救済で、刑事責任の追及とは別枠組みです。20日を過ぎても、不実告知や威迫により誤認・困惑させられた場合は期間経過後も認められうるほか、詐欺罪に該当する事案であれば告訴は可能です。
Q:被害者本人ではないのですが、悪質な内職商法を通報できますか。
A:被害者本人以外でも、刑事訴訟法239条1項により「何人でも」告発をすることができます。告訴(刑訴法230条)が被害者など告訴権者に限られるのに対し、告発は申告できる人の範囲が広いのが特徴です。第三者として申告する場合は、告発状という形で書面を整えることになります。
Q:告訴状は行政書士に頼めますか。提出も代わりにしてもらえますか。
A:行政書士がお手伝いできるのは、警察署長宛ての告訴状・告発状など官公署提出書類の作成です。当事務所では原則として書類作成までを担い、提出手続そのものは依頼人ご自身で行っていただきます。検察庁宛ての告訴状・告発状作成、提出先の法的判断、受理後の捜査対応・示談交渉・刑事手続の代理は当事務所では行いません。必要な場合は弁護士・司法書士等の適切な専門家との連携をご案内します。
Q:内職商法の告訴状作成の費用はいくらですか。
A:告訴状・告発状の作成は38,280円(税込)〜で、事案の複雑さや証拠の量によって変動します。具体的な金額は、内容をうかがったうえでお見積りします。ご相談は何度でも無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


