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公務執行妨害罪の告訴状の書き方|構成要件・証拠収集・記載例を解説

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「市役所窓口で職員に暴行を受けた」「警察官の業務を妨害した人を告訴したい」——公務員の職務執行に対する妨害は公務執行妨害罪(刑法95条1項)に該当する可能性があります。ただし、暴行・脅迫を伴わない単なる言動や抗議は犯罪成立の対象外となるため、告訴状を作成する際は構成要件の正確な理解が重要です。この記事では、公務執行妨害罪の構成要件・証拠の集め方・告訴状の記載例を行政書士の視点で解説します。

結論として、公務執行妨害罪は公務員が職務を執行するにあたり暴行または脅迫を加えた者を処罰する犯罪で、3年以下の拘禁刑(2025年6月施行の刑法改正により懲役・禁錮が一本化)または50万円以下の罰金が科されます。被害を受けた公務員は所属組織の指揮系統を通じて告訴するのが一般的ですが、個人として被害届・告訴状を提出することも可能です。

「公務員の職務中に暴行・脅迫を受けたが、告訴状の書き方が分からない」「この行為で本当に公務執行妨害罪が成立するのか不安」「被害届と告訴状のどちらにすべきか迷う」とお悩みの方は、行政書士法人Treeにご相談ください。

相談でチェックできること

  • 暴行・脅迫の構成要件該当性の事前判定
  • 職務執行中か否か(時的要件)の検証
  • 職務の適法性が成立しているかの確認
  • 被害届と告訴状のどちらが適切かの判断
  • 観念的競合となる他の罪名(脅迫罪・傷害罪等)の検討

告訴状の構成要件の整理から証拠書類の整備まで、専門家が対応します。相談は何度でも無料・全国対応です。

【重要】時間が経つほど告訴は不利になります

公訴時効完成前であっても、事件発生から時間が経過すると以下のリスクが生じます。

  • 防犯カメラ映像の上書き・消去(多くは30日〜90日で自動削除)
  • 目撃者の記憶の風化・連絡先の変更
  • 物証(破損物・傷害の痕跡)の散逸
  • 加害者の特定困難化(SNS等のデジタル証拠も時間経過で消去)

被害に遭われた場合は、できる限り早期に告訴状・被害届の提出を検討することをお勧めします。

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公務執行妨害罪の構成要件

条文(刑法95条1項)

刑法95条1項は、「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する」と規定しています。なお、2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」および「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。

構成要件の分析

要件 内容
客体(被害者) 公務員(国家公務員・地方公務員・みなし公務員)
時的要件 公務員が職務を執行するに当たり(職務執行中・直前・執行を終えようとするとき)
行為 暴行または脅迫を加えること
故意 相手が公務員であることの認識、職務執行中であることの認識

「公務員」の範囲

刑法7条1項は「公務員」を「国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員」と定義しており、具体的には以下が含まれます。

  • 国家公務員(警察官・検察官・税務職員・裁判官等)
  • 地方公務員(市区町村役場職員・教員・消防隊員等)
  • 個別法でみなし規定があるいわゆる「みなし公務員」(日本銀行職員・国立大学法人職員等)

一方、外国の公務員は刑法7条1項の「公務員」に含まれません。また、民間警備員や一般の建物管理人も公務員に該当しないため、これらの者への暴行・脅迫は別の犯罪(暴行罪・脅迫罪・威力業務妨害罪等)として処理されます。

「職務を執行するに当たり」の意味

「職務を執行するに当たり」とは、職務行為に時間的・場所的に密接した状況をいうとされます。具体的には、職務を開始する直前職務の途中今まさに職務を終えようとするときが含まれると解されます(職務の開始直前の執務と密接な関連をもつ待機状態も対象)。一方、職務完全終了後の状態や、単なる休憩中・退勤後の状態は対象外です。

また、暴行・脅迫は公務員本人だけでなく、当該公務員の指揮に従い手足となって職務執行に密接不可分な関係で関与する補助者に対するものであっても、公務執行妨害罪が成立し得ます(最高裁判例)。

「暴行・脅迫」の程度

公務執行妨害罪における「暴行」は、公務員の身体に対して直接・間接に不法な有形力を行使する一切の行為を意味し、実際に身体に接触しなくても成立するとされます(広義の暴行)。たとえば、公務員に向かって物を投げる、机を叩いて威嚇する、公務員の座っている椅子を揺さぶる等の行為も暴行とされ得ます(判例)。

「脅迫」は、相手に畏怖の念を生じさせる害悪の告知をいいます。具体的な言葉・態度による威嚇が対象です。

「職務の適法性」(書かれざる構成要件)

刑法95条1項の条文には明記されていませんが、判例・通説は職務の適法性を公務執行妨害罪の成立要件として要求しています。違法な職務執行は保護に値しないため、適法な職務でなければ公務執行妨害罪は成立しません。職務の適法性は、(1)抽象的職務権限に属すること、(2)具体的職務権限に属すること、(3)重要な手続・方式を履践していることの3要件で判断されます。

告訴状を作成する際は、妨害を受けた職務が適法な職務執行であったことを具体的事実で示すことが重要です(例:警察官の場合は正当な職務質問や適法な逮捕手続き等)。

暴行・脅迫に該当する具体的判例

公務執行妨害罪の「暴行」該当性について、判例は以下のような行為を含むと判断しています。

  • 公務員の座っている椅子を揺さぶる行為(判例)
  • 警察官が押収した証拠物(覚せい剤注射液入りアンプル)を足で踏みつけて破壊する行為(最高裁決定昭和34年8月27日)
  • 警察官が押収した煙草を街路上に投げ捨てて公務執行を不能ならしめる行為(判例)
  • 公務員の指揮下で職務執行を補助する者への暴行(職務執行に密接不可分の関係にある場合)

単に「大声を出す」「抗議する」等は原則として暴行・脅迫に該当しませんが、上記のように物理的に職務を妨害する有形力の行使は広く暴行として認定されます。

被害届と告訴状の使い分け

公務執行妨害罪は非親告罪のため、告訴がなくても警察は捜査・立件できます。そのため、実務では以下の使い分けがあります。

  • 被害届(比較的軽い事案・警察の初動促進を目的とする場合):書面で被害の事実を通報するもの。処罰意思は必ずしも要求されない。警察受理のハードルが低い。
  • 告訴状(悪質・重大な事案・明確な処罰意思を示したい場合):犯人の処罰を求める明確な意思表示を含む。捜査機関に対する処罰意思の強い表明となり、不起訴率が下がる傾向。

被害の重大性や処罰意思の強さに応じて、どちらを選択するか検討が必要です。

公務執行妨害罪と関連犯罪との違い

犯罪名 対象 行為 法定刑
公務執行妨害罪(刑法95条1項) 公務員(職務執行中) 暴行・脅迫 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
威力業務妨害罪(刑法234条) 民間の業務 威力による業務妨害 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
偽計業務妨害罪(刑法233条) 民間・公務両方 虚偽の風説の流布・偽計による業務妨害 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
職務強要罪(加重公務執行妨害罪・刑法95条2項) 公務員 処分をさせる/させない目的、または辞職させる目的の暴行・脅迫 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

公務員の業務を偽計で妨害した場合は、公務執行妨害罪(暴行・脅迫が要件)ではなく偽計業務妨害罪(刑法233条)の適用が問題となります。

公務執行妨害罪の告訴状の記載事項

告訴状には、以下の事項を記載するのが標準的です。

  1. 宛先: 管轄警察署長または検察庁検事正
  2. 告訴人の氏名・住所・連絡先(被害を受けた公務員の氏名と所属。組織として告訴する場合は組織名と代表者名も)
  3. 被告訴人(加害者)の氏名・住所等(判明している範囲で。不明な場合は「氏名不詳」でも可)
  4. 告訴の趣旨: 「被告訴人を刑法95条1項の罪で告訴し、厳重な処罰を求める」
  5. 告訴事実: 犯行日時・場所・行為態様・行為と職務との関連性を具体的に記載
  6. 告訴に至る経緯
  7. 添付書類の一覧
  8. 作成年月日と告訴人の署名押印

告訴事実の記載例(一部)

告訴人は、〇〇市役所〇〇課の職員として勤務する公務員(地方公務員法上の地方公務員)である。

2026年〇月〇日午前〇時〇〇分ころ、告訴人は〇〇市役所1階住民課窓口において、申請者対応の職務を執行していたところ、被告訴人は窓口カウンター越しに告訴人に対し、「ふざけるな、殺すぞ」と怒鳴りつけ、持参していた書類ファイルを告訴人の顔面付近に向けて投げつけた。

被告訴人の上記行為は、適法な職務執行中の公務員である告訴人に対して加えられた暴行および脅迫であり、刑法95条1項の公務執行妨害罪に該当する。

添付書類チェックリスト

告訴状には、以下のような添付書類を整備するのが一般的です。

  • 犯行現場の図面(市役所等の見取図)
  • 犯行当時の状況を示す写真・動画
  • 防犯カメラ映像のデータ
  • 音声録音データ
  • 目撃者の陳述書
  • 医師の傷害診断書(暴行による怪我がある場合)
  • 被害品の写真(破損した書類・備品等)
  • 業務日誌・インシデントレポートの写し
  • 告訴人の身分証明書の写し

告訴に必要な証拠

客観的証拠

  • 監視カメラ・防犯カメラの映像(市役所・警察署等の施設カメラ)
  • 被害時の音声記録(ICレコーダー・スマートフォンの録音)
  • 破損した物品の写真(投げつけられた書類・破壊された備品等)
  • 暴行により生じた怪我の診断書(医師の傷害診断書)

人的証拠

  • 現場に居合わせた同僚職員・来庁者の目撃証言
  • 被害者本人の被害状況報告書
  • 事案直後に作成された業務日誌・インシデントレポート

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公務執行妨害罪の公訴時効

公務執行妨害罪の公訴時効は3年です(刑事訴訟法250条2項第5号。長期5年未満の拘禁刑若しくは罰金に当たる罪の公訴時効として規定)。犯罪行為が終わった時から(刑事訴訟法253条1項)3年を経過すると、公訴提起ができなくなります。なお、犯人が国外にいる期間や、犯人が逃げ隠れているために有効に起訴状の謄本の送達等ができない期間は、公訴時効の進行は停止します(刑事訴訟法255条1項)。告訴は時効完成前の早い段階で行うのが望ましく、証拠保全の観点からも迅速な対応が必要です。

よくある質問

Q. 大声で怒鳴っただけでも公務執行妨害罪になりますか?

単なる大声での抗議だけでは通常「暴行・脅迫」に該当しないため、公務執行妨害罪にはなりません。ただし、「殺すぞ」等の害悪告知を伴う言動は脅迫に該当する可能性があります。また、著しい騒音で業務を物理的に妨害した場合は威力業務妨害罪(刑法234条)の対象となり得ます。

Q. 市役所で職員に暴行を加えた犯人を、職員個人ではなく市が告訴できますか?

告訴権者は原則として被害者本人(または法定代理人)です(刑事訴訟法230条)。公務執行妨害罪の保護法益は公務そのものであり、公務員個人の身体・精神ではないとされるため、公務員個人の告訴権については学説上議論があります。実務上は以下の対応が一般的です。

  • 職員個人が暴行等を受けた場合:被害届を提出(告訴権者性の議論を避けられる)
  • 組織として対応する場合:組織の長名義で告発(刑事訴訟法239条。公務員が職務中に犯罪があると考えるときは告発義務がある点も重要)

公務執行妨害罪は非親告罪のため、告訴がなくても警察・検察は独自に捜査・起訴できますので、まずは被害届または告発の提出から始めるのが実務的です。

Q. 犯人の氏名・住所が不明でも告訴状は出せますか?

犯人不特定でも「犯人不詳」として告訴状を提出できます。警察の捜査により犯人が特定された段階で、告訴状の補充や起訴処分の判断が行われます。

Q. 公務執行妨害罪は親告罪ですか?

公務執行妨害罪は非親告罪です。告訴がなくても警察・検察は独自に捜査・起訴できます。ただし、被害者・被害組織からの告訴があると捜査が進展しやすくなる傾向があります。

Q. 公務員に対する脅迫は「脅迫罪」(刑法222条)とどちらで処理されますか?

職務執行中の公務員に対する脅迫は、公務執行妨害罪(刑法95条1項)と脅迫罪(刑法222条)の両方が成立し、観念的競合(刑法54条1項前段)の関係となります。観念的競合の場合、裁判所は両罪の中で最も重い刑に従って処断します。

脅迫罪の法定刑(2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)より公務執行妨害罪の法定刑(3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)の方が重いため、実務上は公務執行妨害罪の刑で処理されます。同様に、公務員への暴行により傷害を負わせた場合は、公務執行妨害罪と傷害罪(15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)の観念的競合となり、傷害罪の刑で処理されます。

まとめ

  • 公務執行妨害罪は刑法95条1項に定める犯罪で、公務員の職務執行中への暴行・脅迫が要件
  • 法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(2025年6月刑法改正後)
  • 単なる抗議・大声では成立せず、暴行または脅迫の行為が必要
  • 告訴状には職務執行中の具体的な暴行・脅迫行為を明記
  • 公訴時効は3年(刑事訴訟法250条2項第5号)のため、速やかな告訴と証拠保全が重要

威力業務妨害罪の告訴状については「威力業務妨害罪の告訴状の書き方」、傷害罪との違いは「傷害罪の告訴状の書き方|暴行罪との違いと証拠の集め方」をご参照ください。

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※ 本記事の内容は2026年4月時点の刑法・刑事訴訟法に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言ではありません。具体的な訴訟対応は弁護士にご相談ください。

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