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親告罪とは?告訴が必要な犯罪一覧と告訴期間の計算方法

更新: 約11分で読めます

「被害届を出せば警察が動いてくれるはず」と思っていたのに、「この犯罪は親告罪なので告訴がないと捜査できません」と言われた――そんな経験はないでしょうか。親告罪とは、被害者等による告訴がなければ検察官が起訴できない犯罪のことです。名誉毀損罪や器物損壊罪など、日常で遭遇しやすい犯罪の中にも親告罪は多く含まれています。

この記事では、親告罪に該当する犯罪の一覧と、告訴期間(犯人を知った日から6ヶ月)の計算方法、そして近年の法改正で非親告罪化された犯罪について整理します。

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親告罪とは?非親告罪との違い

親告罪とは、刑事訴訟法の規定に基づき、被害者やその法定代理人などの告訴権者による告訴がなければ、検察官が公訴を提起(起訴)できない犯罪類型を指します。各犯罪の規定で「告訴がなければ公訴を提起することができない」と明記されている罪がこれに該当します。

一方、非親告罪は告訴がなくても検察官の判断で起訴できる犯罪です。殺人罪・傷害罪・窃盗罪・詐欺罪など、刑法上の犯罪の多くは非親告罪です。

比較項目 親告罪 非親告罪
起訴の条件 告訴が必須 告訴がなくても起訴可能
告訴期間 犯人を知った日から6ヶ月(刑訴法235条) 制限なし(公訴時効まで)
告訴取消しの効果 起訴不可能になる(再告訴も不可) 起訴の可否に影響しない
該当例 名誉毀損・器物損壊・侮辱・過失傷害など 殺人・傷害・窃盗・強盗・放火など

親告罪が設けられている趣旨は主に3つあります。第一に、被害者のプライバシー保護です。公開の裁判で被害内容が明らかにされることで、かえって被害者が不利益を受ける場合があります。第二に、犯罪が比較的軽微であり、被害者が処罰を望まなければ国家が介入するまでもないと考えられるケースです。第三に、親族間の犯罪では家庭内の問題解決を優先するべきだという配慮です。

親告罪に該当する犯罪一覧

親告罪は、「絶対的親告罪」と「相対的親告罪」の2種類に分けられます。絶対的親告罪はどんな場合でも告訴が必要な犯罪、相対的親告罪は犯人と被害者の間に一定の関係(主に親族関係)がある場合にのみ告訴が必要となる犯罪です。

絶対的親告罪(常に告訴が必要)

罪名 条文 親告罪の根拠
信書開封罪 刑法133条 刑法135条
秘密漏示罪 刑法134条 刑法135条
過失傷害罪 刑法209条 刑法209条2項
未成年者略取・誘拐罪 ※ 刑法224条 刑法229条
名誉毀損罪 刑法230条 刑法232条
侮辱罪 刑法231条 刑法232条
私用文書等毀棄罪 刑法259条 刑法264条
器物損壊罪 刑法261条 刑法264条
信書隠匿罪 刑法263条 刑法264条

※ 未成年者略取・誘拐罪は、営利又は生命若しくは身体に対する加害の目的による場合は非親告罪となります(刑法229条)。

このうち名誉毀損罪・侮辱罪・器物損壊罪は日常生活やビジネスの場面で遭遇する頻度が高い犯罪です。SNS上の誹謗中傷で名誉毀損による告訴を検討している方は、「名誉毀損・侮辱罪の告訴状の書き方」も参考にしてください。

相対的親告罪(親族関係がある場合に告訴が必要)

相対的親告罪は、犯人と被害者の間に親族関係がある場合に特別な扱いを受ける犯罪です(刑法244条、255条)。直系血族・配偶者・同居の親族が犯した場合は刑が免除され(244条1項)、それ以外の親族(非同居の叔父・叔母・甥・姪など)が犯した場合は親告罪となります(244条2項)。赤の他人による同じ犯罪は通常どおり非親告罪として扱われます。

罪名 条文 親告罪の根拠
窃盗罪 刑法235条 刑法244条2項
不動産侵奪罪 刑法235条の2 刑法244条2項
詐欺罪 刑法246条 刑法251条・244条2項
電子計算機使用詐欺罪 刑法246条の2 刑法251条・244条2項
背任罪 刑法247条 刑法251条・244条2項
準詐欺罪 刑法248条 刑法251条・244条2項
恐喝罪 刑法249条 刑法251条・244条2項
横領罪 刑法252条 刑法255条・244条2項
業務上横領罪 刑法253条 刑法255条・244条2項
遺失物等横領罪 刑法254条 刑法255条・244条2項

たとえば、職場の同僚に会社の金を横領された場合は非親告罪ですが、同居の親族による横領は相対的親告罪となり告訴が必要です。横領事件での告訴を検討している方は「横領・業務上横領の告訴状の書き方」をご覧ください。

特別法上の親告罪

刑法以外の特別法にも親告罪は存在します。代表的なものは以下のとおりです。

  • 著作権法違反(著作権法123条):著作権・著作隣接権の侵害は原則として親告罪。ただし、2018年のTPP整備法により、商業的規模の海賊版など一部の類型は非親告罪化
  • 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ防止法)違反(同法3条):私事性的画像の公表は親告罪
  • 不正競争防止法違反の一部(同法21条5項):ただし営業秘密侵害罪は2015年改正で非親告罪化済み。現在親告罪として残るのは限定的な類型のみ

告訴期間は「犯人を知った日から6ヶ月」

親告罪の告訴には期間制限があります。刑事訴訟法第235条第1項は、「親告罪の告訴は、犯人を知った日から六箇月を経過したときは、これをすることができない」と定めています。この期間を過ぎると、有効な告訴ができなくなり、親告罪である以上、犯人の処罰は不可能になります。

「犯人を知った日」の意味

起算点となる「犯人を知った日」とは、告訴権者が犯人の氏名・住所などの詳細を把握した日ではなく、犯人が誰であるかを他の者と区別して特定・識別できる程度に認識した日を指します。犯人の顔を見て「あの人が犯人だ」と認識した時点で告訴期間が進行するため、氏名が判明するのを待っていると期間を過ぎてしまうおそれがあります。

期間の計算方法

告訴期間の計算は刑事訴訟法第55条に基づき、以下のルールで行われます。

  • 初日不算入:犯人を知った日は算入されず、翌日から起算
  • 暦に従って計算:月単位で計算するため、「3月15日に犯人を知った」場合は9月15日が満了日
  • 末日が休日の場合:末日が土日祝日に当たるときは、翌平日まで期間が延長

6ヶ月という期間は、民事の時効期間と比べると非常に短いものです。被害に遭い犯人が分かった段階で、できるだけ早く告訴の準備を始めることが重要です。

告訴期間の例外

刑事訴訟法第235条ただし書きにより、外国の君主・大統領・外国の使節に対する名誉毀損罪・侮辱罪について、外国の代表者や使節が行う告訴には6ヶ月の期間制限が適用されません。これは外交上の配慮に基づく例外規定です。

また、告訴権者が複数いる場合、刑事訴訟法第236条により、一人の告訴期間が過ぎても他の告訴権者の期間には影響しません。各自が独立した6ヶ月の期間を持ちます。

告訴期間が迫っている場合は早めに相談を

告訴期間の6ヶ月は短く、告訴状の作成・提出には一定の時間がかかります。行政書士法人Treeでは、犯罪事実の整理から告訴状の作成まで迅速に対応いたします。

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法改正で非親告罪化された犯罪

かつては親告罪だったものが、法改正により非親告罪に変更された犯罪もあります。特に重要なのは性犯罪に関する改正です。

2017年(平成29年)刑法改正

2017年7月13日施行の刑法改正により、以下の性犯罪が親告罪から非親告罪に変更されました。

  • 強制わいせつ罪(旧刑法176条)
  • 準強制わいせつ罪(旧刑法178条1項)
  • 強制性交等罪(旧強姦罪、旧刑法177条)
  • 準強制性交等罪(旧刑法178条2項)
  • これらの未遂罪

この改正以前は、被害者が告訴しなければ加害者を起訴できないという状況がありました。しかし、被害者の精神的負担が極めて大きいこと、告訴の有無で処罰が左右されるべきではないという議論を経て、非親告罪化が実現しました。

2023年(令和5年)刑法改正

さらに2023年7月13日施行の改正では、上記の犯罪類型が以下のとおり再編されています。

  • 強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪 → 不同意わいせつ罪(刑法176条)
  • 強制性交等罪・準強制性交等罪 → 不同意性交等罪(刑法177条)

いずれも非親告罪であり、告訴がなくても検察官が起訴できます。

2025年(令和7年)刑法改正による刑種の変更

2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されました。これは刑の種類に関する変更であり、親告罪・非親告罪の区分や告訴期間に影響を与えるものではありません。

親告罪で告訴する際の注意点

親告罪の被害に遭った場合、以下のポイントに注意して対応することが大切です。

告訴期間の管理を徹底する

6ヶ月の告訴期間はあっという間に過ぎます。犯人が特定できた段階で日付を記録し、告訴状の準備を並行して進めましょう。告訴状の作成には証拠の整理や犯罪事実の特定が必要であり、一般的に数週間から1ヶ月程度かかることがあります。期限ぎりぎりでの対応は避けるべきです。

告訴の取消しは慎重に判断する

親告罪では、告訴を取り消すと検察官は起訴できなくなり、さらに同一事実について再度の告訴ができなくなります(刑事訴訟法237条2項)。示談交渉の中で告訴の取消しを求められることがありますが、安易に取り消すと後から後悔しても取り返しがつきません。告訴の取消しについては「告訴の取消し(取下げ)の方法と注意点」で詳しく解説しています。

被害届だけでは不十分

被害届は犯罪事実の届出にすぎず、処罰を求める意思表示を含みません。親告罪の場合、被害届を出しただけでは起訴の要件を満たさないため、必ず告訴状の提出が必要です。告訴状と被害届の違いを正しく理解しておくことが重要です。

よくある質問

Q. 非親告罪でも告訴はできますか?

できます。非親告罪でも被害者は告訴を行うことが可能であり、捜査機関に対して処罰を求める意思表示として有効です。告訴があれば捜査が本格化するきっかけになるため、非親告罪であっても告訴状を提出する意義は大きいものです。

Q. 犯人が分からない場合、告訴期間はどうなりますか?

告訴期間は「犯人を知った日」から進行するため、犯人が不明のままであれば6ヶ月の期間は開始しません。ただし、犯罪自体の公訴時効は進行しているため、公訴時効が完成するまでに告訴を行う必要があります。犯人が判明しないまま公訴時効を迎えた場合は、告訴の有無にかかわらず処罰はできません。

Q. 告訴期間を過ぎてしまった場合、何か方法はありますか?

親告罪の告訴期間を過ぎた場合、刑事上の処罰を求めることは原則としてできません。ただし、民事上の損害賠償請求は刑事の告訴期間とは別の時効(不法行為の消滅時効)が適用されるため、被害の回復を民事訴訟で求める道は残されている場合があります。

Q. 親告罪で告訴した後の流れは?

告訴状が受理されると、捜査機関が捜査を開始し、証拠収集や被疑者の取調べが行われます。捜査が完了すると事件は検察庁に送致され、検察官が起訴するかどうかを判断します。告訴後の詳しい流れについては「告訴状の提出から捜査開始までの流れ」をご覧ください。

Q. 器物損壊罪(親告罪)の告訴期間は?

器物損壊罪も親告罪であるため、告訴期間は他の親告罪と同様に犯人を知った日から6ヶ月です。車や自転車を壊された、ペットを傷つけられたなどのケースでは、犯人が判明した時点から期間のカウントが始まります。

まとめ

親告罪の要点を整理します。

  • 親告罪は被害者等の告訴がなければ起訴できない犯罪。名誉毀損・侮辱・器物損壊・信書開封・過失傷害などが該当
  • 相対的親告罪は親族間の窃盗・詐欺・横領など。赤の他人が犯人なら非親告罪
  • 告訴期間は犯人を知った日から6ヶ月。初日不算入で翌日から起算
  • 2017年以降の法改正により、性犯罪(不同意わいせつ罪・不同意性交等罪)は非親告罪化済み
  • 告訴を取り消すと再告訴は不可。取消しは慎重に判断すること

親告罪では告訴期間の6ヶ月を過ぎると刑事処罰の道が閉ざされてしまいます。被害に遭ったら早めに行動を起こし、告訴状の準備に着手することが大切です。

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