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「殺すぞ」「金を払わないと会社にバラす」——こうした言葉を投げかけられ、恐怖を感じた経験はないでしょうか。脅迫や金銭の要求は、脅迫罪や恐喝罪として刑事告訴の対象になり得ます。しかし、実際に告訴状を作成するとなると、「どの言動が脅迫罪に該当するのか」「恐喝罪との境界線はどこか」「証拠として何を残せばよいのか」と戸惑う方が少なくありません。
脅迫罪・恐喝罪の告訴状では、(1)害悪の告知の具体的内容、(2)金銭等の要求の有無(恐喝罪の場合)、(3)被害者が畏怖した事実——この3点を犯罪事実に明記することが、受理のポイントになります。本記事では、脅迫罪と恐喝罪の構成要件の違いから、告訴状の犯罪事実の記載例、証拠の集め方までを整理します。
「脅迫を受けているが、告訴できるのかわからない」「恐喝されて金銭を渡してしまった」など、お困りの方は行政書士法人Treeにご相談ください。告訴状作成の専門家が被害状況を伺い、対応方針をご提案します。相談は何度でも無料・全国対応です。
目次
脅迫罪と恐喝罪はどう違う?構成要件を比較
脅迫罪と恐喝罪は、どちらも「害悪の告知(脅し)」を手段とする犯罪ですが、構成要件と法定刑に大きな違いがあります。告訴状に記載する罪名を誤ると、告訴事実と適用法条が噛み合わず、受理されない原因にもなりかねません。
| 比較項目 | 脅迫罪(刑法第222条) | 恐喝罪(刑法第249条) |
|---|---|---|
| 行為 | 生命・身体・自由・名誉・財産に対する害悪の告知 | 人を恐喝して財物を交付させる/財産上不法の利益を得る(恐喝の手段は脅迫が主だが暴行も含み得る) |
| 財物の交付 | 不要(脅すだけで成立) | 必要(金品等を実際に交付させた場合に既遂) |
| 法定刑 | 2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 | 10年以下の拘禁刑(罰金刑なし) |
| 未遂 | 規定なし | 未遂も処罰される(刑法第250条) |
| 公訴時効 | 3年 | 7年 |
| 親告罪か | いいえ | いいえ |
2025年6月1日施行の改正刑法により、従来の「懲役」は「拘禁刑」に一本化されています。告訴状に法定刑を記載する場合は、この点に注意してください。
典型的には、害悪の告知だけなら脅迫罪、畏怖させて財物や財産上の利益を得れば恐喝罪、金銭以外の義務なき行為を強制すれば強要罪(刑法第223条)が問題になります。恐喝罪は脅迫罪に比べて格段に重い犯罪であり、罰金刑の規定がなく、拘禁刑のみとされている点が特徴です。
脅迫罪が成立する「害悪の告知」とは
脅迫罪は、生命・身体・自由・名誉・財産の5つの法益に対する害悪の告知によって成立します。告知の方法は口頭に限らず、文書・メール・SNS・電話など、相手に伝わる方法であれば手段を問いません。
| 害悪の対象 | 該当し得る言動の例 |
|---|---|
| 生命 | 「殺すぞ」「命がないぞ」 |
| 身体 | 「殴るぞ」「痛い目に遭わせるぞ」 |
| 自由 | 「帰さないぞ」「子どもを連れ去るぞ」 |
| 名誉 | 「不倫をバラすぞ」「ネットに晒すぞ」 |
| 財産 | 「家を燃やすぞ」「車を壊すぞ」 |
なお、脅迫罪は本人だけでなく親族に対する害悪の告知でも成立します(刑法第222条第2項)。例えば「お前の家族に危害を加えるぞ」といった告知も脅迫罪の対象です。ただし、友人・恋人等の親族以外の第三者に対する害悪の告知では成立しません。
害悪の告知は、告知者自身が実現可能な内容であるか、告知者が実現を左右できると受け手が感じるものでなければなりません。「天罰が下るぞ」のような超自然的な内容は、通常、脅迫罪には該当しないとされています。
なお、「訴えるぞ」「法的手段をとる」といった表現は、正当な権利行使の範囲内であれば脅迫罪には該当しません。ただし、権利行使の範囲を超えて相手を畏怖させる態様での告知は、脅迫罪が成立する可能性があります。
恐喝罪の「財物の交付」とは
恐喝罪が成立するためには、脅迫(または暴行)によって相手を畏怖させ、その畏怖に基づいて財物を交付させる必要があります。「畏怖→交付」の因果関係がポイントです。
- 現金を手渡させた
- 銀行口座に振り込ませた
- 高額な商品を購入させた
- 借用書に署名させた(財産上不法の利益を得た場合=2項恐喝)
脅迫したものの、相手が金品を交付しなかった場合は恐喝未遂となります。恐喝未遂も処罰の対象です(刑法第250条)。
脅迫罪の告訴状はどう書く?犯罪事実の記載例
脅迫罪の犯罪事実には、「誰が、いつ、どこで、どのような害悪の告知を行い、被害者を畏怖させたか」を具体的に記載します。害悪の告知内容は、可能な限り発言そのままを「」で引用してください。
犯罪事実の記載例(口頭での脅迫)
被告訴人は、令和○年○月○日午後○時頃、東京都○○区○○町○丁目○番○号所在の告訴人方前路上において、告訴人に対し、「殺すぞ。お前の家がどこか知っているからな」と申し向け、もって告訴人の生命・身体に危害を加える旨を告知して脅迫したものである。
犯罪事実の記載例(SNS・メッセージでの脅迫)
被告訴人は、令和○年○月○日午後○時○分頃、通信アプリ「LINE」を使用して、告訴人に対し、「お前の不倫の証拠を会社に送りつけてやる」との文言を送信し、もって告訴人の名誉に危害を加える旨を告知して脅迫したものである。
脅迫行為が複数回に及ぶ場合
脅迫が一度きりではなく、繰り返し行われている場合は、代表的な行為を具体的に記載したうえで、「その他、同年○月○日から同年○月○日までの間、同様の害悪の告知を多数回にわたり繰り返した」と包括的に記載する方法があります。全ての行為を逐一記載する必要はありませんが、日時・内容が特定できるものは個別に記載した方が受理されやすくなります。
恐喝罪の告訴状はどう書く?犯罪事実の記載例
恐喝罪の犯罪事実では、脅迫罪の記載要素に加え、「その結果、被害者が畏怖し、財物を交付した」という因果の流れを記載する必要があります。
犯罪事実の記載例(金銭の恐喝)
被告訴人は、令和○年○月○日午後○時頃、○○県○○市○○町○丁目○番○号所在の被告訴人方において、告訴人に対し、電話で「100万円を払わなければ、お前の会社に○○の件をバラす。払わないなら覚悟しろ」と申し向けて脅迫し、告訴人をしてその旨畏怖させ、よって、同月○日、告訴人をして○○銀行○○支店の被告訴人名義の普通預金口座(口座番号○○○○○○○)に現金100万円を振り込ませ、もって財物を交付させたものである。
犯罪事実の記載例(恐喝未遂)
被告訴人は、令和○年○月○日午後○時頃、告訴人に対し、通信アプリ「LINE」で「50万円を明日中に振り込め。さもなければ殴りに行く」との文言を送信して脅迫し、告訴人から金員を喝取しようとしたが、告訴人がこれに応じなかったため、その目的を遂げなかったものである。
恐喝罪の犯罪事実では、「脅迫の内容→畏怖→財物の交付(または未遂)」という三段階の因果関係を明確に書くことが求められます。交付した金額、振込先口座、交付日時などの具体的事実を盛り込むほど、告訴事実の特定性が高まります。
「脅迫・恐喝の被害を受けたが、どう告訴すればよいかわからない」方へ
行政書士法人Treeでは、被害状況を丁寧にヒアリングし、受理されやすい告訴状を作成いたします。
- ✔ 害悪の告知内容を正確に記載した告訴状を作成
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脅迫罪・恐喝罪で有効な証拠の集め方
脅迫罪・恐喝罪は「言葉による犯罪」であるため、害悪の告知内容を証明する証拠の確保が告訴の成否を左右します。物的証拠が残りにくい犯罪類型だからこそ、意識的な証拠保全が重要です。
脅迫・恐喝で有効な証拠一覧
| 証拠の種類 | 具体例 | 保全のポイント |
|---|---|---|
| メッセージ記録 | LINE・メール・SMS・SNSのDM | スクリーンショットを撮影し、送信者・日時が表示された状態で保存する |
| 通話録音 | 電話での脅迫の録音データ | スマートフォンの録音アプリ等で録音。当事者の一方が自ら録音する場合、相手方に告知せずに行った録音であっても、判例上、証拠能力が否定されるわけではない |
| 手紙・文書 | 脅迫内容が記載された手紙・FAX | 原本を保管し、コピーを告訴状に添付する |
| 振込記録 | 恐喝に応じて振り込んだ際の明細 | 銀行の振込明細書・通帳の写し |
| 目撃者の証言 | 脅迫現場に居合わせた第三者 | 氏名・連絡先を記録し、告訴状に記載する |
| 防犯カメラ映像 | 対面での脅迫が記録された映像 | 施設管理者に映像保存を依頼する(上書きされる前に対応) |
証拠がない場合でも告訴はできるのか
証拠が十分に揃っていなくても、告訴状の提出自体は可能です。ただし、脅迫罪・恐喝罪は「言った・言わない」の争いになりやすく、客観的な証拠がないと受理が難しくなる傾向があります。今後も脅迫が継続する可能性がある場合は、録音アプリを常に起動できる状態にしておく、メッセージでのやり取りに誘導するなど、証拠を意識的に残す工夫が求められます。
脅迫罪・恐喝罪の告訴で注意すべきポイント
脅迫罪の公訴時効は3年と短い
脅迫罪の公訴時効は3年です。恐喝罪は7年ですが、脅迫罪は時効が短いため、脅迫行為があった場合は早めの対応が必要です。時効の起算点は犯罪行為の終了時であり、継続的な脅迫の場合は最後の脅迫行為の時点から起算されます。
強要罪との区別
脅迫や暴行を手段として、義務のないことを強制した場合は強要罪(刑法第223条、3年以下の拘禁刑)が成立します。「土下座しろ」「謝罪文を書け」のように、金銭以外の行為を強制された場合は、脅迫罪ではなく強要罪に該当する可能性があります。告訴状に記載する罪名の選定には注意が必要です。
告訴状の提出先
告訴は法律上、検察官または司法警察員に対して行います(刑事訴訟法第241条)。実務上は被害発生地を管轄する警察署に提出するのが一般的ですが、検察庁に直接提出することもできます。SNSやメッセージアプリを通じた脅迫の場合は、被害者の住所地を管轄する警察署でも受理される場合があります。告訴状が受理されない場合の対処法については「告訴状が受理されない5つの理由と対策」で解説しています。
民事上の損害賠償との関係
脅迫・恐喝の被害者は、刑事告訴とは別に、民法上の不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償請求を行うことも可能です。恐喝により交付した金銭の返還請求や、精神的苦痛に対する慰謝料請求がこれに該当します。ただし、民事上の請求は弁護士の業務領域であり、行政書士が対応できるのは告訴状の書類作成までです。
よくある質問
Q. 「訴えるぞ」と言われました。これは脅迫罪になりますか?
正当な権利行使の範囲内であれば、「訴える」「法的手段をとる」という発言は脅迫罪には該当しません。しかし、権利行使の範囲を逸脱し、社会通念上許容されない態様で告知された場合(例:大声で繰り返し威圧する、他の脅迫的言動と併せて告知するなど)は、脅迫罪が成立する余地があるとする判例もあります。
Q. 脅迫・恐喝の相手が特定できない場合も告訴できますか?
被告訴人が特定できない場合でも、「氏名不詳」として告訴状を提出できます。SNS上のアカウントやメールアドレス、電話番号などの情報があれば、捜査機関が特定に向けた捜査を行います。ただし、ネット上の匿名相手を特定するための発信者情報開示請求は裁判手続きが必要であり、弁護士の対応が求められます。
Q. 恐喝に応じて金銭を渡してしまいました。取り返せますか?
恐喝によって交付した金銭は、民事上の不法行為または不当利得として返還請求が可能です。ただし、返還請求は民事訴訟の問題であり、弁護士に依頼する必要があります。刑事告訴(告訴状の提出)は犯人の処罰を求める手続きであり、金銭の回収を直接的に実現するものではない点にご注意ください。
Q. 職場の上司からのパワハラは脅迫罪になりますか?
上司の言動が、生命・身体・自由・名誉・財産に対する害悪の告知に該当し、受け手を畏怖させるものであれば、脅迫罪が成立する可能性はあります。ただし、業務上の指導・注意との境界は判断が難しいケースも多く、具体的な言動の内容、態様、頻度、文脈を踏まえた総合的な判断が必要です。パワハラ被害の相談は、労働基準監督署や各都道府県の労働局の相談窓口も利用できます。
まとめ
- 脅迫罪(刑法第222条)は害悪の告知のみで成立。法定刑は2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金
- 恐喝罪(刑法第249条)は脅迫に加えて財物の交付が必要。法定刑は10年以下の拘禁刑(罰金刑なし)
- 告訴状には害悪の告知内容を「」で正確に引用し、脅迫の日時・場所・方法を具体的に記載する
- メッセージのスクリーンショット・通話録音・振込記録など、客観的な証拠の確保が告訴の成否を左右する
- 脅迫罪の公訴時効は3年と短い。脅迫を受けたら早めの対応を
脅迫罪・恐喝罪の告訴状作成は行政書士法人Treeにお任せください
| サービス | 料金 |
|---|---|
| 告訴状作成 | 34,800円(税抜)〜 |
- ✔ 害悪の告知内容を正確に記載した告訴状を作成
- ✔ メッセージ記録・録音データ等の証拠を体系的に整理
- ✔ 受理されやすい書面構成
- ✔ 相談は何度でも無料・全国対応
脅迫・恐喝被害の告訴でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。被害状況を丁寧にヒアリングし、最適な対応方針をご提案いたします。
※ 2026年4月時点の刑法・刑事訴訟法に基づく解説です。告訴・告発の受理判断は捜査機関の裁量による部分があります。具体的な事案は弁護士にもご相談ください。
※ 記事の内容には細心の注意を払っておりますが、万が一誤りがございましたらご指摘いただけますと幸いです。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。


