離婚関連

DV被害者の住所を知られない離婚協議書づくり|住民票閲覧制限と安全な連絡方法の実務

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配偶者からの暴力(DV)を理由に別居・離婚を考えるとき、多くの方が強く心配されるのが「離婚の話し合いや書面づくりのために、自分の新しい住所を相手へ知られてしまわないか」という点です。離婚協議書は離婚の条件を整理し、後日の紛争を防ぐための大切な書面ですが、その作成過程で連絡先や住所が相手に伝わってしまっては、安全の確保という最優先の目的が損なわれてしまいます。本記事では、DV被害に配慮した離婚協議書の連絡方法の設計や、住民票の閲覧制限(DV等支援措置)の基礎知識を、行政書士の職域の範囲で中立的に整理します。なお、保護命令の申立てや慰謝料・財産分与の金額算定、離婚調停・裁判の代理は弁護士の職務であり、安全に関わる切迫した事情がある場合は警察や配偶者暴力相談支援センター、弁護士へ早めにご相談ください。

離婚協議書とは何か|合意の書面化と公正証書化の意味

離婚協議書とは、協議離婚にあたって夫婦が取り決めた条件を書面にまとめたものです。一般的には、未成年の子がいる場合の親権者、親子交流(従来「面会交流」と呼ばれていた子との交流)、養育費、財産分与、年金分割、慰謝料などの取り決めを記載します。口頭の約束だけでは「言った・言わない」の争いになりやすく、後日のトラブルの火種となります。合意した内容を書面として残すことで、当事者双方が取り決めの内容を確認しやすくなり、後日の紛争予防に役立ちます。

さらに、養育費や慰謝料といった金銭の支払いを確実にしたい場合には、離婚協議書を公正証書(強制執行認諾文言付き)にしておく方法があります。公正証書化しておくと、支払いが滞ったときに改めて裁判を起こさなくても、強制執行の手続に進める可能性が高まります。行政書士は、当事者間で合意した内容を離婚協議書として整え、公証役場での公正証書作成をサポートすることができます。一方で、慰謝料・財産分与の金額そのものの算定や相場の判断、相手方との交渉の代理、調停・裁判の代理は弁護士の職務です。DV事案では交渉や手続の代理が必要になる場面が少なくないため、職域の線引きを意識しながら適切な専門家につなぐことが重要です。

DV被害者が住所を知られないために|情報管理の基本的な考え方

DV被害のある離婚では、別居先や転居先の住所、勤務先、子の通学先などの情報をいかに守るかが、安全確保の出発点になります。離婚協議書を作成する過程では、当事者の住所や連絡先を記載する場面が出てきますが、被害者の側からすると、これらの情報が相手方に渡ること自体が大きなリスクとなります。

そこで、書面の作成に入る前に、まず「どの情報を相手に開示し、どの情報は伏せるのか」を整理しておくことが大切です。たとえば、被害者の現住所をそのまま記載せず、相手方との交渉や連絡が必要な場面では弁護士を窓口にする、支援機関には安全確保や相談支援として関与してもらう、書面の送付先を自宅以外にするといった工夫が考えられます。住所の取扱いは離婚協議書の体裁だけでなく、戸籍・住民票の手続や郵便物の管理とも連動するため、安全面を最優先にしながら全体を設計する視点が欠かせません。

連絡方法の設計|直接連絡を避ける具体的な工夫

DV被害がある場合、当事者同士が直接連絡を取り合う方法は、それ自体が被害者に強い精神的負担を与え、安全上のリスクを高めることがあります。離婚協議の連絡方法を設計するときは、できるだけ直接の接触を避ける形を検討します。具体的には、次のような選択肢が考えられます。

第一に、弁護士などの代理人を窓口にする方法です。交渉や連絡の代理を弁護士に依頼すれば、被害者本人が相手方と直接やり取りをする必要がなくなり、住所や連絡先を相手に伝えずに協議を進められる可能性が高まります。第二に、連絡手段を限定し、書面やメールなど記録が残る方法に統一しておくことです。やり取りの履歴を残しておくことは、後日の紛争予防の観点からも有用です。第三に、書類の受け渡し場所を自宅以外に設定したり、郵便物の転送・受取方法を工夫したりして、生活の拠点が特定されないよう配慮することです。

これらの設計は、被害者の安全と心理的負担の軽減を両立させるためのものです。行政書士は、合意内容を書面化する段階でこうした連絡・送付の取り決めを離婚協議書に反映させるお手伝いができますが、相手方との交渉そのものの代理は弁護士の職務となります。安全に直結する判断が必要な場面では、無理に当事者だけで進めず、弁護士や支援機関の関与を検討してください。

住民基本台帳事務における支援措置|住民票・戸籍の附票の閲覧制限

住所を守るための制度として広く知られているのが、住民基本台帳事務における支援措置(いわゆるDV等支援措置)です。これは、配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者が市区町村に申し出て、支援の必要性が確認された場合に、相手方からの「住民基本台帳の一部の写しの閲覧」「住民票(除票を含む)の写し等の交付」「戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付」の請求・申出を制限する仕組みです。これにより、相手方が住民票などをたどって被害者の新しい住所を把握することを防ぎやすくなります。

手続の流れとしては、原則として、はじめに警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等の相談機関にDV等の被害を相談し、その後、住民票のある市区町村や戸籍の附票のある市区町村に「住民基本台帳事務における支援措置申出書」を提出して申し出ます。申出を受けた市区町村は、相談機関の意見を聴くなどして支援の必要性を確認します。支援措置の実施期間は決定した日から1年間で、延長を希望する場合は、実施期間満了日の1か月前から満了日までに延長の申出を行います(延長の取扱いは市区町村により案内が異なる場合があります)。

支援措置はあくまで住民基本台帳事務における閲覧・交付を制限する制度であり、相手方への接近そのものを禁止するものではありません。制度の詳細や必要書類は市区町村ごとに案内が異なることがあるため、お住まいの市区町村や相談機関、総務省の公式情報をご確認ください。本記事では一般的な情報として中立に整理しており、個別の申出の可否や進め方は、相談機関や弁護士、各市区町村の窓口にご相談いただくことをお勧めします。

2026年4月施行の改正と離婚協議書づくりの留意点

離婚をめぐる法制度は近年大きく見直されています。2026年4月1日に施行された改正民法では、離婚後の共同親権が導入され、父母が協議離婚をする際に、親権を父母双方とするか一方のみとするかを選べるようになりました。共同親権を定めたからといって子が両親の家を行き来して暮らすことを意味するわけではなく、具体的な養育の取り決めは子の利益を基準に判断されます。あわせて、父母が養育費の取り決めをしないまま離婚した場合などに一定額を請求できる法定養育費の制度や、安全に配慮した親子交流に関する規律も整備されました。さらに、離婚後の財産分与を請求できる期間(除斥期間)が、2026年4月1日以降に離婚した場合について原則2年から5年に延長され、夫婦間でした契約を婚姻中に取り消すことができるとしていた民法754条が削除されています。

これらの改正は、離婚協議書に記載する親権・親子交流・養育費・財産分与の取り決め方にも影響します。とりわけDV事案では、共同親権や親子交流の取り決めが被害者と子の安全に直結するため、安全への配慮を前提にした慎重な検討が求められます。親権をどう定めるか、親子交流を実施するか否か・どのような方法で行うかといった判断は、子の利益と被害者の安全を踏まえた高度な検討が必要であり、争いがある場合や安全上の懸念がある場合は弁護士へご相談ください。行政書士は、当事者間で合意が整った内容を最新の制度に沿って離婚協議書へ正確に反映させ、必要に応じて公正証書化をサポートします。

専門家の役割分担|行政書士・弁護士・裁判所

DV被害者の離婚では、複数の専門家や機関が役割を分担します。行政書士は、当事者間で合意した離婚の条件を離婚協議書として書面化し、公正証書作成のサポートを行います。連絡方法や送付先の取り決めを書面に反映させることもできます。一方、相手方との交渉や離婚調停・離婚裁判の代理、慰謝料・財産分与の金額の算定や相場の判断は弁護士の職務です。

また、保護命令(接近禁止命令や退去等命令など)は、被害者の申立てにより地方裁判所が加害者に対して発する命令であり、その申立てや手続は裁判所での手続として行われます。保護命令に関する判断や申立ては弁護士へ、安全に関わる切迫した事情がある場合は警察や配偶者暴力相談支援センターへご相談ください。住民票の閲覧制限などの支援措置は市区町村の窓口が担います。それぞれの制度や手続には根拠となる法令や所管が異なるため、ご自身の状況に応じて適切な窓口を選び、必要なときは複数の専門家・機関を組み合わせて利用することが、安全と権利の両立につながります。

当事務所では、離婚協議書の作成や公正証書化のサポートを行っています。DV被害に配慮した連絡方法の設計を含め、書面づくりについてお悩みの方は、個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。なお、相手方との交渉・調停・裁判の代理や保護命令の申立て、慰謝料・財産分与の金額算定は弁護士の職務となりますので、必要に応じて適切な専門家をご案内します。詳しくはこちらをご覧ください。

まとめ

DV被害のある離婚では、まず安全の確保を最優先に、住所や連絡先をどう守るかを設計したうえで、離婚協議書づくりを進めることが大切です。連絡方法は直接の接触を避ける形を検討し、住民基本台帳事務における支援措置によって住民票や戸籍の附票の閲覧・交付を制限する方法もあります。2026年4月施行の改正民法では共同親権や法定養育費、財産分与の請求期間の延長などが導入され、離婚協議書の取り決め方にも影響しています。行政書士は合意内容の書面化と公正証書化サポートを、弁護士は交渉・調停・裁判の代理や金額の判断・保護命令申立てを、裁判所は保護命令を、市区町村は支援措置を担うという役割分担を踏まえ、安心して相談できる窓口から一歩を踏み出してください。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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