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海外居住の相続人がいる相続|相続分・必要書類(サイン証明・在留証明)と遺言の活用

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相続が発生したとき、相続人の中に海外で暮らしている方がいるケースは年々増えています。海外赴任中のご家族、国際結婚で外国に生活の拠点を移した方、留学や移住で長く日本を離れている方など、事情はさまざまです。海外居住の相続人がいると、「遺産分割協議はどう進めればよいのか」「日本にいないと印鑑証明書が取れないが大丈夫か」「そもそもどの国の法律が適用されるのか」といった疑問が次々と生じます。本記事では、海外居住の相続人がいる相続について、相続分の考え方、サイン証明(署名証明)や在留証明といった必要書類、そして遺言を活用した備え方までを整理して解説します。

海外居住の相続人がいても相続分は変わらない

まず押さえておきたいのは、相続人が海外に住んでいるという事実だけで、その方の相続分(法定相続分)が増減することはないという点です。相続分は民法の規定に従って、配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹といった相続人の組み合わせによって定まります。居住地が国内か海外かは、相続分の割合そのものには影響しません。

たとえば被相続人に配偶者と子2人がいる場合、配偶者が2分の1、子がそれぞれ4分の1ずつという法定相続分は、子の一人が海外居住であっても変わりません。海外居住の相続人も、他の相続人と対等な立場で遺産分割協議に参加する権利があります。

注意したいのは、相続人全員で行う遺産分割協議には、海外居住の方も必ず加わる必要があるという点です。一人でも欠けた遺産分割協議は無効となるため、連絡が取りづらい場合でも、所在を確認したうえで協議を進めることが欠かせません。

渉外相続の準拠法|どの国の法律が適用されるか

相続人や被相続人が外国に関わる相続を「渉外相続」と呼びます。ここで重要になるのが「どの国の法律に従って相続を処理するか」という準拠法の問題です。日本では、法の適用に関する通則法(通則法)第36条が「相続は、被相続人の本国法による」と定めています。つまり、相続全体の準拠法は、相続人がどこに住んでいるかではなく、亡くなった方(被相続人)の国籍を基準に決まるのが原則です。

したがって、被相続人が日本国籍であれば、相続人が海外に居住していても、また相続人が外国籍であっても、相続そのものには日本法が適用されるのが基本です。一方、被相続人が外国籍の場合は、その本国法が準拠法となるのが原則で、国によっては不動産と動産で適用法を分ける考え方(相続分割主義)を採るところもあり、取扱いが複雑になります。

なお、遺言については、通則法第37条が遺言の成立および効力を遺言成立当時の遺言者の本国法によると定めるなど、相続の準拠法とは別の規律が設けられています。被相続人が外国籍の渉外相続や、外国に所在する財産が関わる事案では、準拠法の判断そのものに高度な専門的検討が必要です。こうした準拠法の最終的な判断や紛争性のある事案については、弁護士にご相談ください。ここで述べた準拠法の枠組みは、あくまで一般的な情報としての説明です。

海外居住の相続人の必要書類|サイン証明・在留証明

遺産分割協議書を作成する際、日本国内に住む相続人は、実印を押印したうえで印鑑登録証明書を添付するのが通常の取扱いです。ところが、海外に住んでいて日本に住民登録がない方は、日本の市区町村で印鑑登録ができず、印鑑証明書を取得できません。そこで活用するのが、在外公館(日本国大使館・総領事館)が発給する証明書です。

サイン証明(署名証明)は、印鑑証明書に代わるものとして用いられる証明です。申請者の署名(および拇印)が、確かに領事の面前でなされたことを在外公館が証明するもので、形式は次の2種類があります。

  • 形式1(貼付・綴り合わせ型):在外公館が発行する証明書と、領事の面前で署名した私文書(遺産分割協議書など)を綴り合わせ、契印(割り印)をする方式です。どの書類に署名したかが特定されるため証明力が高く、不動産の相続手続きなどで求められることが一般的です。
  • 形式2(単独型):署名のみを単独で証明する方式です。特定の書類との一体性はないため、金融機関の預貯金の解約・名義変更などで用いられることがあります。

遺産分割協議書に添付する場合は、後の手続きで確実に通用するよう、原則として形式1を取得しておくのが安全です。提出先(法務局・金融機関など)によって求められる形式が異なることがあるため、事前に提出先へ確認しておくとよいでしょう。

在留証明は、海外に住む日本国籍の方について、その方が実際にその国・地域に住んでいることを在外公館が証明する書類で、日本の住民票に代わる役割を果たします。相続した不動産の登記などで相続人の現住所を証明する必要がある場面で用いられ、本籍の記載を求められることもあるため、申請にあたっては戸籍に関する書類の準備が必要になる場合があります。

なお、海外居住の相続人が不動産を相続した場合、2024年(令和6年)4月1日から施行された相続登記義務化に注意が必要です。相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならず、正当な理由なく申請を怠った場合は10万円以下の過料の対象となる可能性があります。ただし、相続登記の申請代理は司法書士の職務であり、登記が必要な場合はあらかじめ司法書士に相談することをおすすめします。

サイン証明・在留証明の申請に当たっては、署名証明は領事の面前での署名のため相続人ご本人が在外公館に出向く必要があります。行政書士が業務として対応できるのは、これらの証明書の申請方法に関するご案内、必要書類(戸籍関係書類等)の準備・整備、海外居住相続人を含む遺産分割協議書の文案作成などです。当事務所では、海外との書類のやり取りも見据えた遺産分割協議書の作成をお手伝いしています。

戸籍の収集と2024年の戸籍法改正

相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人全員の現在の戸籍をそろえる必要があります。これにより相続人が誰であるかを確定します。海外居住の相続人がいる場合でも、その方の日本における戸籍をたどる作業は欠かせません。

この戸籍収集について、2024年(令和6年)3月1日に施行された改正戸籍法により、「広域交付」の制度が始まりました。これにより、本籍地が遠方にあっても、最寄りの市区町村の窓口で、本籍地が全国各地にある戸籍をまとめて請求できるようになり、相続に必要な戸籍の収集負担が大きく軽減されました。

ただし、広域交付にはいくつかの制限があります。請求できるのは戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本などに限られ、戸籍の附票や戸籍抄本は対象外です。また、請求できるのは本人・配偶者・直系の親族などに限られ、窓口に本人が出向き、顔写真付きの本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポート等)を提示する必要があります。郵送や代理人による広域交付の請求はできない点にも注意が必要です。海外居住の相続人本人が広域交付を利用するのは難しいため、日本にいるご家族が広域交付を利用するか、あるいは専門家が従来の職務上請求による戸籍収集を行うなど、事案に応じた方法の検討が現実的です。

遺言の活用で海外居住相続人の手続き負担を減らす

海外居住の相続人がいる相続は、サイン証明や在留証明の取得、書類の国際郵送、時差を踏まえた連絡など、どうしても時間と手間がかかります。こうした負担をあらかじめ軽減する有効な手段が、生前の遺言の作成です。

遺言で各財産の承継先を具体的に定めておけば、相続発生後に遺産分割協議そのものを不要にできる場合があります。遺産分割協議が不要になれば、海外居住の相続人がサイン証明を取得して協議書に署名する手続きも省略でき、各種名義変更が円滑に進みやすくなります。とりわけ公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため形式の不備が生じにくく、海外に相続人がいる事案での備えとして適しています。

遺言書の文案づくりや、遺言を前提とした財産の整理に関するご相談は、行政書士がお手伝いできる分野です(詳しくは 遺言書作成サポートのご案内 をご覧ください)。一方で、遺言の有効性をめぐって相続人間に争いがある場合の代理交渉や調停・訴訟は弁護士の職務です。相続税の負担を見据えた財産配分のシミュレーションや申告は税理士、不動産の相続登記は司法書士の職務となりますので、必要に応じてこれらの専門家と連携しながら進めることをおすすめします。

料金・ご相談について

海外居住の相続人がいる相続は、必要書類や手続きの組み立てがご家庭ごとに大きく異なります。当事務所の遺産分割協議書の作成・相続手続きサポートは、ミニマムプラン43,780円税込、スタンダードプラン87,780円税込、すべて丸投げお任せプラン217,800円税込をご用意しています。事案によって最適なプランが異なりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。詳しくは 遺産分割サポートのご案内 をご覧ください。

まとめ

海外居住の相続人がいても法定相続分は変わらず、その方を含めた相続人全員で遺産分割を進める必要があります。日本に住民登録がない相続人は、印鑑証明書に代えて在外公館のサイン証明(署名証明)を用い、必要に応じて在留証明を取得します。被相続人の本国法による相続の準拠法など渉外相続特有の論点があり、戸籍収集は2024年3月の広域交付で負担が軽くなりました。生前に遺言を整えておくことで、海外居住相続人の手続き負担を大きく減らせます。遺産分割協議書や遺言の書類作成は行政書士、紛争は弁護士、相続税は税理士、相続登記は司法書士へと役割を踏まえ、お困りの際はぜひ当事務所までご相談ください。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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