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離婚時の財産分与|対象財産・計算方法・請求の流れ

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「財産分与ではどこまでが対象になるの?」「専業主婦でも半分もらえる?」——離婚を考え始めたとき、お金の問題は避けて通れません。預貯金や不動産、退職金、住宅ローンの残債まで、何が分与の対象になり、どう計算するのかは制度を正しく理解しないと損をする可能性があります。

この記事では、離婚時の財産分与について、対象となる財産・対象外の財産の区別、具体的な計算方法、協議から調停・審判に至るまでの請求手続きの流れを整理しています。2026年4月施行の民法改正で変わる請求期間の延長や2分の1ルールの考え方の明確化についても取り上げていますので、これから離婚を検討される方はぜひ参考にしてください。

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を離婚時に公平に分け合う制度です。分与割合は原則2分の1、対象は預貯金・不動産・退職金・保険解約返戻金など「共有財産」に限られ、婚姻前から持っていた財産や相続で取得した財産は対象外となります。

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財産分与とは?3つの性質と法的根拠

財産分与とは、離婚をした夫婦の一方が他方に対して財産の分与を請求できる制度です(民法第768条)。婚姻中に夫婦が協力して形成・維持した財産を、離婚に際して公平に清算することを目的としています。

財産分与には、以下の3つの性質があるとされています。

種類 内容 具体例
清算的財産分与 婚姻中に築いた共有財産を公平に分配する 預貯金・不動産・退職金を2分の1ずつ分ける
扶養的財産分与 離婚後に経済的に困窮する一方の生活保障 専業主婦が就職するまでの一定期間の生活費
慰謝料的財産分与 離婚原因を作った側が精神的苦痛への損害賠償として財産を多く渡す 不貞行為をした側がその分を上乗せして分与する

実務上最も中心となるのは「清算的財産分与」です。財産の形成に対する夫婦双方の貢献を評価し、婚姻中に共同で築いた財産を公平に分けるという考え方がベースになります。扶養的財産分与や慰謝料的財産分与は、個別の事情に応じて考慮されるものであり、すべてのケースで認められるわけではありません。

財産分与と慰謝料の違い

財産分与と離婚の慰謝料は混同されやすいですが、別々の制度です。財産分与は共有財産の清算であるのに対し、慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償です。財産分与の中に慰謝料的な意味合いを含めて解決することもありますが、法的には別の請求権として扱われます。

財産分与の対象になる財産・ならない財産

財産分与を進めるうえで最初に必要なのが、「何が分与の対象になるのか」を正確に把握することです。対象になる財産を「共有財産」、対象にならない財産を「特有財産」と呼びます。名義がどちらであるかは関係なく、実質的に婚姻中の協力で取得・維持されたかどうかが判断基準となります。

共有財産(分与対象)の具体例

財産の種類 具体例 注意点
預貯金 婚姻中に貯めた銀行預金・定期預金 名義が一方でも婚姻中に形成されたものは対象
不動産 自宅マンション・土地 住宅ローン残高を差し引いた評価額が対象
退職金 将来受け取る退職金のうち婚姻期間に対応する部分 勤続年数のうち婚姻期間の割合で按分
保険の解約返戻金 生命保険・学資保険・養老保険 別居時点の解約返戻金額で評価するのが一般的
有価証券 株式・投資信託・債券 時価での評価が必要
自動車 婚姻中に購入した車 中古車査定額で評価
年金 厚生年金の分割(年金分割制度) 財産分与とは別に年金事務所で手続き
負債 住宅ローン・婚姻共同生活のための借入 婚姻生活に関連する負債はプラスの財産から差し引いて計算

特有財産(分与対象外)とは?

以下の財産は「特有財産」として、原則として財産分与の対象にはなりません。

  • 婚姻前から所有していた預貯金や不動産
  • 親からの相続によって取得した財産
  • 親からの贈与によって取得した財産
  • 別居後に各自が取得した財産

ただし、特有財産であっても、婚姻中に配偶者の協力によってその価値が維持・増加した場合には、増加分が分与対象となるケースがあります。たとえば、婚姻前に購入した不動産の住宅ローンを婚姻中に夫婦の収入で返済していた場合、返済分に相当する価値は共有財産として扱われることがあります。

財産分与の割合はどう決まる?

財産分与の割合は、原則として2分の1です。これは「2分の1ルール」と呼ばれ、家庭裁判所の実務でも広く採用されてきました。2026年4月1日施行の改正民法では、寄与の程度は原則として夫婦対等とされ、この2分の1ルールの考え方が条文上も明確化されています(改正民法第768条第3項)。

専業主婦(主夫)でも2分の1もらえる?

はい、専業主婦(主夫)であっても原則として2分の1の割合で財産分与を受けられます。一方が外で働いて収入を得ている間、もう一方が家事・育児を担って家庭を支えていたことが、財産形成への貢献として等しく評価されるためです。

ただし、夫婦の一方が特殊な資格や技能によって高額の収入を得ていた場合(例:医師や経営者など)には、寄与の程度に差があるとして、2分の1から修正されるケースもあります。もっとも、こうしたケースは例外的であり、通常の離婚では2分の1が基本と考えて差し支えありません。

2026年4月改正で明確化された考慮要素

改正民法第768条第3項では、財産分与の際に考慮すべき要素として以下が明記されました。

  • 婚姻中に取得・維持した財産の額とその寄与の程度
  • 婚姻の期間
  • 婚姻中の生活水準
  • 婚姻中の協力及び扶助の状況
  • 各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入
  • その他一切の事情

これらの要素が法律に明記されたことで、今後は財産分与の判断基準がより明確になることが期待されています。なお、寄与の程度が異なることが明らかでないときは、各当事者の寄与は相等しいものとするという規定も設けられています。

財産分与の計算方法を具体例で解説

財産分与の金額を算出するには、まず共有財産を洗い出し、それぞれの評価額を算定したうえで、プラスの財産からマイナスの財産(負債)を差し引いた純資産を2分の1ずつ分けるのが基本的な流れです。

計算の基本ステップ

財産分与の計算は、以下の手順で進めます。

  1. 共有財産のリストアップ:預貯金・不動産・退職金・保険など、婚姻中に形成された全財産を洗い出す
  2. 各財産の評価額を算定:不動産は実勢価格(時価)を基礎に、不動産業者の査定書や必要に応じて鑑定評価を参考にする。保険は解約返戻金額で評価する
  3. 負債を差し引く:住宅ローンなど婚姻共同生活に必要な負債や、対象財産に対応する負債をプラスの財産から控除する
  4. 純資産を算出:プラスの財産の合計からマイナスの財産を差し引いた金額
  5. 2分の1に分割:純資産を原則として等分する

計算例:預貯金・不動産・退職金があるケース

財産の種類 名義 評価額
預貯金(普通) 500万円
預貯金(普通) 200万円
自宅マンション 3,000万円
住宅ローン残高 -1,800万円
退職金(婚姻期間対応分) 800万円
生命保険(解約返戻金) 100万円
合計 2,800万円

この場合、純資産2,800万円の2分の1である1,400万円がそれぞれの取り分となります。夫名義の財産が多い場合、夫から妻へ差額を支払うことで清算します。

退職金の按分計算はどうする?

退職金の財産分与額は、退職金の総額のうち婚姻期間に対応する部分を按分して算出します。

たとえば、退職金が2,000万円、勤続年数が25年、そのうち婚姻期間が15年の場合は、以下のように計算します。

2,000万円 × 15年 ÷ 25年 = 1,200万円(分与対象額)

この1,200万円を2分の1ずつ分けるため、一方が受け取る金額は600万円です。なお、まだ退職していない場合は、将来確実に退職金を受け取れる見込みがあるかどうかが問題になります。定年までの残年数や勤務先の経営状況なども考慮されることがあります。

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財産分与を請求する手続きの流れ

財産分与は、まず夫婦間の話し合い(協議)で取り決めるのが一般的です。協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判を利用することになります。

Step 1:共有財産の洗い出しと評価

最初に、婚姻中に形成した財産をすべてリストアップし、それぞれの評価額を確認します。預貯金は通帳の残高、不動産は実勢価格(時価)をベースに不動産業者の査定書や必要に応じて鑑定評価を参考にし、保険は解約返戻金の額を保険会社に問い合わせるなどの方法で調べます。

財産の基準時は「別居時点」とするのが実務上の一般的な取扱いです。別居から離婚までの間に預貯金が増減した場合でも、別居時点の残高が評価の基準となります。

Step 2:夫婦間の協議

共有財産を把握したら、分け方について夫婦で話し合います。合意ができた場合は、取り決めた内容を離婚協議書にまとめます。金額・支払期日が特定された金銭支払条項がある場合は、強制執行認諾文言を付けた公正証書にしておくと、相手が支払わない場合に裁判をせずに強制執行が可能になります。

Step 3:調停の申立て

協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に財産分与請求調停を申し立てることができます。離婚と同時に決める場合は離婚調停のなかで財産分与も話し合うことが可能です。すでに離婚が成立している場合は、離婚後に改めて財産分与請求の調停を申し立てます。

調停では、調停委員が双方の事情を聴き取り、財産の範囲・評価額・分割方法について合意形成を支援します。

Step 4:審判・訴訟

調停でも合意に至らない場合は、自動的に審判手続きに移行し、裁判官が分与の内容を決定します。離婚そのものが争われている場合は、離婚訴訟のなかで財産分与も併せて判断されます。

2026年4月施行の民法改正で財産分与はどう変わる?

2024年5月に成立した民法等の改正法(法務省:民法等の一部を改正する法律について)が2026年4月1日に施行されます。財産分与に関する主な変更点は以下の4つです。

改正項目 改正前 改正後(2026年4月1日〜)
請求期間 離婚後2年以内 離婚後5年以内
分与割合 実務慣行で2分の1 寄与の程度は原則夫婦対等と明確化(2分の1ルールの考え方を条文に反映)
考慮要素 「一切の事情」のみ 婚姻期間・生活水準・年齢・収入等を具体的に列挙
財産情報の開示 規定なし 家庭裁判所が情報開示を命令可能(違反は10万円以下の過料)

請求期間の延長が持つ意味

従来は離婚後2年以内に財産分与を請求しなければならなかったため、DV被害者や育児に追われている方が期限内に手続きを進められないケースがありました。5年への延長により、離婚後に生活を立て直してから請求する余裕が生まれます。

ただし、請求を後回しにすると、相手が財産を処分してしまうリスクもあります。請求期間が延びたからといって手続きを先延ばしにするのではなく、離婚時に可能な限り取り決めておくのが賢明です。

財産情報の開示命令とは?

改正後は、家庭裁判所の調停・審判において、裁判所が当事者に対し財産に関する情報の開示を命じることができるようになります。正当な理由なく情報を開示しなかった場合や、虚偽の情報を開示した場合には、10万円以下の過料に処される可能性があります。

これまでは、相手が財産を隠していても調査が難しいという問題がありましたが、この制度により、財産隠しに対する一定の抑止効果が期待されています。

財産分与の手続きでよくある失敗と注意点

財産分与をめぐるトラブルは、事前の準備不足や制度への誤解から生じることが少なくありません。以下は、手続きの際に注意すべきポイントです。

財産の洗い出しが不十分なまま合意してしまう

相手が申告していない財産(別口座の預貯金、へそくり、仮想通貨など)がある可能性を見落としたまま合意すると、後から追加請求が難しくなります。合意前に、通帳のコピー・金融機関への残高照会・保険証券の確認など、できる限りの調査をしておくことが重要です。

不動産の評価方法で揉める

不動産の評価額には、固定資産税評価額・路線価・不動産業者の査定額・不動産鑑定士による鑑定額など複数の基準があり、どれを採用するかで金額に大きな差が出ます。双方が納得できる評価方法について事前に合意しておくか、複数の査定を取ったうえで折衷する方法が考えられます。

住宅ローンの取扱いを曖昧にしてしまう

住宅ローンが残っている不動産の財産分与は特に複雑です。ローン名義人の変更は金融機関が原則として認めないため、「誰が住み続けるのか」「ローンを誰が支払うのか」「連帯保証人の解除は可能か」を事前に確認・交渉する必要があります。離婚と住宅ローンの問題は別記事で詳しく解説しています。

離婚協議書を作成せずに口約束で済ませる

財産分与の取り決めを口約束だけで終わらせると、離婚後に「そんな約束はしていない」と相手に否認されるリスクがあります。取り決めた内容は必ず離婚協議書や公正証書に書面化してください。特に金額・支払期日を特定した金銭支払条項がある場合は、強制執行認諾文言付き公正証書にしておくことで、不払い時に裁判なしで強制執行しやすくなります。

よくある質問

Q. 離婚後でも財産分与は請求できますか?

はい、離婚後でも財産分与の請求は可能です。ただし、請求できる期間には制限があります。2026年3月31日までに離婚した場合は離婚後2年以内、2026年4月1日以降に離婚した場合は離婚後5年以内に家庭裁判所に調停または審判を申し立てる必要があります。この期間を過ぎると、原則として財産分与を請求する権利が消滅します。

Q. 相手が財産を隠している場合はどうすればいいですか?

まずは、婚姻中に把握している情報(通帳・証券口座・保険証券・不動産の登記情報など)をもとに調査を進めます。協議で相手が財産を開示しない場合は、家庭裁判所の調停・審判手続きの中で、裁判所を通じて金融機関等への調査嘱託を求めることが可能です。2026年4月以降は、裁判所が当事者に財産情報の開示を命じることもできるようになります。

Q. 借金も財産分与の対象になりますか?

婚姻共同生活のために負った借金(住宅ローン・生活費のための借入など)や、対象財産に対応する負債は、財産分与において考慮されるのが一般的です。プラスの財産からこうした負債を差し引いた純資産を分割するのが基本的な考え方です。ただし、ギャンブルや個人的な浪費による借金は、共有の負債とは認められず、その借金を負った本人が負担するのが通常です。

Q. 年金は財産分与で分けられますか?

厚生年金については「年金分割制度」によって分割が可能ですが、これは財産分与とは別の手続きです。現時点の日本年金機構の案内では、離婚後2年以内に年金事務所で手続きを行う必要があるとされています。「合意分割」と「3号分割」の2種類があり、3号分割は相手方の同意がなくても請求できます。なお、財産分与の請求期間延長に合わせて年金分割の請求期間も見直される法改正が成立しており、施行時期によっては今後変更される可能性があります。国民年金は分割の対象外です。

Q. 財産分与に税金はかかりますか?

財産を受け取る側には、原則として贈与税はかかりません。財産分与は贈与ではなく夫婦の共有財産の清算だからです。ただし、分与された財産の額が不相当に過大である場合や、贈与税・相続税の回避を目的とした財産分与と認められる場合には、例外的に贈与税が課されることがあります。また、不動産を分与する側には譲渡所得税がかかる場合がある点にも注意が必要です。

Q. 財産分与の話し合いがまとまらないときは?

まずは家庭裁判所に財産分与請求調停を申し立てます。調停では調停委員が間に入って話し合いを進めます。調停でも合意に至らなければ、自動的に審判に移行し、裁判官が財産分与の内容を決定します。調停の申立てにかかる費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手代です。

まとめ

離婚時の財産分与は、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を公平に分ける制度です。要点を整理します。

  • 対象:預貯金・不動産・退職金・保険解約返戻金など婚姻中に形成された「共有財産」。相続・贈与で取得した「特有財産」は対象外
  • 割合:原則2分の1。専業主婦(主夫)であっても同様
  • 請求期間:2026年4月1日以降の離婚は5年以内(それ以前の離婚は2年以内)
  • 手続き:協議 → 調停 → 審判の順で進む。取り決めは離婚協議書・公正証書で書面化するのが原則
  • 2026年改正:2分の1ルールの考え方の明確化、考慮要素の具体化、財産情報の開示命令が新設

財産分与の内容を口約束だけで済ませると、離婚後のトラブルにつながります。取り決めた内容を離婚協議書や公正証書に記載し、法的に有効な形で残しておくことが大切です。

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。

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