公開日:2026年5月13日
配偶者ビザ(日本人の配偶者等)の更新申請では、婚姻関係の「安定性・継続性」が厳しく審査されます。「離婚調停中だが配偶者ビザを更新したい」「別居しているが婚姻関係はある」――こうした状況での更新可否は、入管庁の運用判断に委ねられる難しい論点です。
本記事の結論:
- 配偶者ビザ更新の安定性審査は、現在の婚姻継続性(同居の有無)、別居中の場合の婚姻継続意思、経済的支援の継続、コミュニケーションの継続、別居理由(DV被害者か有責側か)等を総合判断。
- 離婚協議中・調停中でも更新が認められるケース・不許可となるケースの双方があり、状況の客観的説明と立証資料の精度が結果を左右する。
- 離婚成立後は、配偶者としての活動実態を失うため、定住者等への在留資格変更を速やかに検討。配偶者としての活動を継続して6か月以上行わないで在留している場合は在留資格取消事由(入管法22条の4第1項7号・正当な理由がある場合を除く)に該当し得るため、早期の段取り設計が重要。
- 当所は申請取次行政書士として安定性立証資料の整備・理由書作成・地方出入国在留管理局への取次申請まで対応。離婚調停・離婚訴訟代理は弁護士業務のため、提携弁護士をご紹介します。
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目次
根拠法令
- 出入国管理及び難民認定法 別表第二の上欄「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」(本記事の論点は主に「日本人の配偶者等」)
- 出入国管理及び難民認定法 19条の16第3号(配偶者に関する届出)
- 出入国管理及び難民認定法 22条の4第1項7号(在留資格取消事由・配偶者としての活動を継続して6月以上行わないで在留している場合/正当な理由がある場合を除く)
- 出入国管理及び難民認定法 22条の4第7項(出国準備期間・30日を超えない範囲で指定)
- 出入国管理及び難民認定法 71条の5第3号(配偶者に関する届出義務違反の罰則・20万円以下の罰金)・71条の2(虚偽届出の罰則・1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金)
- 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)10条以下(保護命令)
- ※本記事では主に、在留資格「日本人の配偶者等」、配偶者に関する届出義務、在留資格取消事由を中心に解説します(2024年改正の永住許可制度の適正化〔令和7年6月15日施行〕は本記事の主要論点と直接の関連性は限定的)。
1. 配偶者ビザの基本要件
「日本人の配偶者等」の在留資格は、(1)日本人の配偶者であること、(2)実体を伴う婚姻関係(同居・経済的協力・精神的結びつき等)が認められることが要件です。形式的な婚姻届だけでは認められません。
2. 安定性審査の判断要素
2-1. 同居の有無
原則として同居が前提。別居中の場合は理由・期間・将来の同居予定等を説明する必要があります。
2-2. 経済的支援
- 家計の共有
- 生活費の負担
- 不動産・車両等の共有
2-3. コミュニケーション
- 同居中の日常生活
- 別居中のメッセージ・通話履歴
- 家族交流(子・親族との交流)
2-4. 婚姻継続意思
婚姻継続意思の有無。離婚調停中・別居中であっても、修復協議が続いている、生活費の支援が継続している、夫婦間の連絡が残っているなど、婚姻関係が完全に破綻していない事情を客観資料で説明できる場合には、安定性が認められる余地があります。
3. 別居中・調停中の更新可能性
3-1. 別居理由の整理(入管法22条の4第1項7号「正当な理由」該当性との関係)
| 別居理由 | 更新可能性 | 「正当な理由」該当性 |
|---|---|---|
| 単身赴任・遠隔地勤務 | 高い(経済的支援継続) | 該当しやすい |
| 子の教育上の理由 | 高い | 該当しやすい |
| 家族との同居(介護等) | 中(同居予定の説明必要) | 該当し得る |
| DV被害者として別居 | 中(保護命令等の証拠で説明可能) | 該当しやすい(人道的配慮) |
| 離婚調停中(修復見込みあり) | 低〜中(事案による) | 該当性は事案による |
| 離婚調停中(破綻明確) | 低(次回更新は厳しい) | 該当しにくい |
3-2. 立証資料
- 住民票(同居・別居の確認)
- 送金履歴・生活費負担資料
- メッセージ・通話履歴のスクリーンショット
- 家族写真・SNS投稿(婚姻継続を示すもの)
- 理由書(別居・調停の経緯と修復可能性)
- 日本人配偶者の身元保証書
別居中・離婚調停中の更新では、日本人配偶者が身元保証人として協力してくれるかが実務上極めて重要です。日本人配偶者が身元保証書の作成に応じない場合、婚姻継続意思や夫婦間の協力関係に疑義が生じやすいため、別居理由・生活状況・今後の方針を理由書で丁寧に説明する必要があります。
4. DV・モラハラ被害者の場合
DV・モラハラ被害から避難するための別居は、人道的配慮が反映されることがあります(入管法22条の4第1項7号の「正当な理由」に該当し得る)。
- 配偶者暴力相談支援センターの相談記録(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律3条)
- 裁判所の保護命令(同法10条以下。接近禁止命令・退去命令・電話等禁止命令等)
- 診断書・医療記録
- シェルター利用記録
離婚予定であれば、配偶者ビザから定住者・他在留資格への変更を検討します。
5. 配偶者に関する届出(入管法19条の16第3号)
以下の在留資格をもつ中長期在留者は、配偶者との離婚または死別があった場合、その事由が生じた日から14日以内に出入国在留管理庁長官(地方出入国在留管理局)に届け出る義務があります。
- 日本人の配偶者等(日本人の配偶者の身分を有する者に限る)
- 永住者の配偶者等(永住者等の配偶者の身分を有する者に限る)
- 家族滞在(配偶者として行う日常的な活動を行うことができる者に係るものに限る)
- 特定活動(別表第一の五の表の下欄ハの配偶者として行う日常的な活動を行うことができる者に係るものに限る)
届出方法は、地方出入国在留管理局の窓口、東京出入国在留管理局への郵送、または出入国在留管理庁電子届出システムでの電子届出のいずれかです。届出を怠ると20万円以下の罰金(入管法71条の5第3号)、虚偽の届出をした場合は1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金(入管法71条の2)が科される可能性があります。
6. 在留資格取消事由(入管法22条の4第1項7号)
「日本人の配偶者等」(日本人の配偶者の身分を有する者に限る。日本人の特別養子・日本人の子として出生した者は除く)または「永住者の配偶者等」(永住者等の配偶者の身分を有する者に限る。永住者等の子として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留している者は除く)の在留資格をもつ者が、配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6月以上行わないで在留している場合(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く)は、在留資格取消事由となります。
DV被害者として別居している場合、単身赴任、子の教育上の理由等は「正当な理由」に該当し得ます。離婚後または別居期間が長期化すると、配偶者ビザの基礎を失うため、6か月を待たず、速やかに他の在留資格への変更を検討します。
7. 離婚後の在留資格変更の選択肢
離婚後の在留資格変更は、主に「定住者」または就労系在留資格への切替えが検討対象となります。永住申請は、標準処理期間が約4か月、実務上は6か月〜1年以上かかるのが通常で、離婚後は配偶者としての活動を継続して6か月以上行わないと在留資格取消事由(入管法22条の4第1項7号)に該当し得るため、そもそも審査が間に合わず、離婚後の在留資格整理手段としては現実的ではありません。永住申請は、配偶者ビザが安定している段階で早めに準備しておくべきもので、離婚が見えてからの選択肢ではありません。
7-1. 定住者への変更
定住者(入管法別表第二)は、「告示定住者」(法務省告示で定型化された類型に該当する者:日系3世、難民等)と「告示外定住者」(告示の類型に該当しないが個別事情で人道的配慮により認められる者)に大別されます。
離婚後の在留資格変更で利用されるのは主に告示外定住者であり、典型的なケースは次のとおりです。
- 日本人の実子(特別養子を含む)を扶養する親権者・監護者として養育する場合
- 婚姻期間中の在留実績(一般に3年以上の婚姻実態、または日本での生活基盤)が認められる場合
- DV被害者として人道的配慮が認められる場合
告示外定住者は明文の要件が告示で定型化されていない分、入管庁の個別判断(独立生計の見込み、在留歴、日本社会への定着度、子の養育環境等の総合考慮)に依存します。「離婚=自動的に定住者へ変更可」ではなく、立証資料の精度と理由書の説得力が結果を左右します。
7-2. 就労系在留資格への変更
就労実績・技能・学歴等を満たす場合、「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「経営・管理」等への変更が可能です。離婚後の生活基盤として就労継続が見込める場合は、定住者よりも安定的な選択肢となるため、勤務先・職務内容・学歴/実務経験の整合性を整理した上で並行検討します。
8. 業務範囲の整理
8-1. 行政書士の業務範囲
- 配偶者ビザ更新申請の取次
- 安定性立証資料の整備
- 理由書の作成
- 離婚後の在留資格変更申請
8-2. 業務範囲外(提携専門家を紹介)
- 離婚調停・訴訟の代理 → 弁護士業務(弁護士法72条)
- 離婚に伴う財産分与・慰謝料の金額交渉代理 → 弁護士業務
- 在留資格取消処分に対する不服申立て・取消訴訟・執行停止申立て等の行政事件対応 → 弁護士業務
- 相続税・贈与税の試算・申告 → 税理士業務(税理士法2条)
※ 紛争性のない離婚協議書の作成は行政書士業務範囲内です。当事務所では離婚協議書原案作成までを行政書士業務として承ります。
FAQ|よくあるご質問
Q1. 別居中でも配偶者ビザを更新できますか?
事情によります。経済的支援の継続、別居理由の合理性、婚姻継続意思の有無等が総合判断されます。
Q2. 離婚成立したら配偶者ビザはいつまで使えますか?
在留期間内であれば直ちに在留資格が失効するわけではありません。ただし、離婚から14日以内に配偶者に関する届出(入管法19条の16第3号)を行う必要があり、配偶者としての活動を継続して6か月以上行わないで在留している場合は在留資格取消事由(入管法22条の4第1項7号・正当な理由がある場合を除く)に該当し得ます。そのため、6か月を待たずに、定住者・就労系在留資格等への変更可能性を速やかに検討することが重要です。
Q3. 偽装結婚と疑われないためには?
家計共有・コミュニケーション・家族交流を客観的に示す資料(写真・送金記録・メッセージ等)を整備します。質問書(偽装結婚チェック)への適切な回答も重要。
Q4. DV被害者として別居していますが更新可能ですか?
保護命令・配偶者暴力相談支援センター記録等で人道的事情を立証することで、人道的配慮による更新が認められる余地があります。
Q5. 子がいる場合の更新は有利ですか?
日本人の子がいる場合、子の福祉の観点から在留状況が考慮されるため有利に働く傾向があります。離婚後も定住者への変更が比較的認められやすい。
Q6. 不許可になった場合は?
不許可理由を分析し、追加資料を整えて再申請を検討します。または他の在留資格への変更を検討します。在留資格取消処分を受けた場合は、入管法22条の4第7項により、30日を超えない範囲で出国準備期間が指定されます(虚偽申請等の悪質事案は除く)。実務上、出国準備のための「特定活動」(短期間の在留資格)が付与される運用もあります。
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まとめ
配偶者ビザ更新時の安定性審査は、同居の有無、経済的支援、コミュニケーション、婚姻継続意思、日本人配偶者の身元保証等を総合判断します。離婚調停中・別居中でも、状況により更新が認められる余地はありますが、客観的な立証資料と理由書の整備が鍵です。離婚成立時は14日以内の届出義務(入管法19条の16第3号・違反は20万円以下の罰金)があり、配偶者としての活動を継続して6か月以上行わないと在留資格取消事由(入管法22条の4第1項7号・正当な理由がある場合を除く)に該当し得るため、6か月を待たずに他在留資格への変更を速やかに検討する必要があります。離婚調停・訴訟は弁護士業務、在留資格取消処分に対する不服申立て・取消訴訟も弁護士業務という業際を踏まえ、専門家チームで対応する体制が安心です。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


