公開日:2026年5月9日
「父が亡くなった翌日、銀行に問い合わせたら口座が凍結されていて、葬儀費用の引き出しができなかった」——相続実務で最も多い相談のひとつが、この銀行預金の凍結トラブルです。預金口座は名義人の死亡を金融機関が知った時点で凍結され、相続手続きが完了するまで一切の入出金ができなくなります。
2019年7月1日に施行された改正民法909条の2により、遺産分割前でも一定額までは相続人が単独で預貯金を払い戻せる「仮払い制度」が創設されました。しかし上限額・必要書類・対象預金など制度の理解が不十分なまま窓口に行き、何度もやり直しになるケースが後を絶ちません。本記事では、銀行預金の相続手続きの全体像、口座凍結への対策、民法909条の2の仮払い制度、そして遺産分割協議書を用いた本来の払戻し手続きまでを実務目線で解説します。
結論:銀行預金の相続は「①口座凍結への対応(仮払い制度の活用)」「②戸籍謄本一式と遺産分割協議書の準備」「③各金融機関ごとの所定様式の提出」の3段階で進めます。戸籍収集と遺産分割協議書作成、金融機関への届出代行は行政書士の業務範囲です。相続税申告は税理士、不動産登記は司法書士、相続放棄や紛争性のある事案は弁護士・司法書士の業務範囲となります。
銀行預金の相続手続きでお困りなら行政書士法人Treeへ
戸籍収集・法定相続情報一覧図の取得・遺産分割協議書の作成・金融機関への払戻し手続き代行までワンストップでサポートします。複数の金融機関に口座が分散している場合や、地方の信用金庫・ネット銀行を含む場合も対応可能です。初回相談は何度でも無料です。
- 戸籍収集サポート:22,000円〜(税込)
- 遺産分割協議書作成:55,000円〜(税込)
- 銀行手続サポート:22,000円〜(税込/1金融機関あたり)
目次
根拠法令
- 民法第896条(相続の一般的効力)
- 民法第898条(共同相続の効力)
- 民法第906条(遺産の分割の基準)
- 民法第909条の2(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
- 家事事件手続法第200条第3項(仮分割の仮処分)
- 戸籍法第10条の2(戸籍謄本等の交付請求)
- 不動産登記法(登記関係の専門業務は司法書士法3条)
- 税理士法第2条(税務代理・税務書類作成・税務相談は税理士独占)
- 弁護士法第72条(紛争性のある法律事務は弁護士独占)
銀行預金の相続手続きの全体像
銀行預金の相続手続きは、おおむね以下の流れで進みます。
- 金融機関への死亡通知(あるいは金融機関が死亡を知った時点で口座凍結)
- 残高証明書・取引履歴の発行依頼(基準日:被相続人の死亡日)
- 必要に応じて民法909条の2の仮払い請求(葬儀費用・当面の生活費等)
- 戸籍謄本一式の収集(被相続人の出生から死亡まで/相続人全員分)
- 法定相続情報一覧図の作成・申出(任意。複数金融機関がある場合に有効)
- 遺言書または遺産分割協議書の作成
- 各金融機関の所定様式に相続人全員が署名・実印押印
- 払戻し(解約)または名義書換
口座が凍結されてから払戻しが完了するまでの目安は、書類が揃ってから2週間〜1ヶ月程度。複数の金融機関がある場合は、戸籍一式の使い回しを工夫することで時間と費用を節約できます。
口座凍結のタイミングと「凍結中にできないこと」
凍結のタイミング
金融機関は名義人の死亡を「知った時点」で口座を凍結します。具体的なきっかけは次のとおりです。
- 遺族からの届出(来店・電話・郵送)
- 新聞のお悔やみ欄や訃報の確認
- 相続人による残高照会・取引照会
- 渉外担当者・支店長等の認知
つまり、家族が連絡しなくても金融機関が独自に死亡を知れば凍結されます。「届出を遅らせれば自由に引き出せる」と考える方がいますが、後日相続人間で「使い込み」が発覚すると、不当利得返還請求や遺産分割協議の難航につながりかねません。
凍結中にできないこと
口座凍結後は、以下の取引が一切できなくなります。
- 出金(窓口・ATM・キャッシュカードいずれも不可)
- 振込(同一名義口座への資金移動も不可)
- 自動引落(公共料金・住宅ローン・クレジットカード・保険料・通信費等)
- カード使用(デビットカード・キャッシュカード・クレジットカードいずれも停止)
特に注意したいのが自動引落です。電気・ガス・水道・固定電話・携帯電話・住宅ローン・賃料等が停止すると、ライフラインが止まったり督促状が届いたりします。凍結と並行して、各支払先への連絡(解約・支払方法変更・名義変更)が必要です。
民法909条の2の仮払い制度(2019年7月1日施行)
遺産分割協議が整うまで預貯金が引き出せないと、葬儀費用や当面の生活費に困る相続人が出てきます。この問題に対応するため、改正民法は遺産分割前でも一定額までの単独払戻しを認めました。これが民法909条の2です。
仮払いの上限額
仮払いの上限は、次の2つの基準で算定し、いずれか低い方が適用されます。
- 1金融機関あたり150万円(同一金融機関に複数口座があっても合算で150万円)
- 預貯金額×1/3×法定相続分(口座ごとに計算)
例:被相続人の死亡時残高が銀行Aで900万円、相続人が配偶者と子1人(法定相続分は各1/2)の場合、子の単独払戻し可能額は「900万円×1/3×1/2=150万円」となり、上限の150万円に達します。
逆に、残高が300万円なら「300万円×1/3×1/2=50万円」が上限です。
仮払いの用途(事実上の使い道)
仮払い制度自体に使途制限はありませんが、実務上は次のような用途で活用されます。
- 葬儀費用・法要費用・お布施
- 遺族の当面の生活費
- 公共料金・住宅ローン・賃料の支払い
- 医療費・介護施設利用料の精算
- 遺品整理費用
仮払いを受けた金額は、後の遺産分割でその相続人が取得する財産から控除されます(民法909条の2後段)。事後トラブルを避けるため、領収書や明細を保管し、他の相続人とも情報共有しておくことが大切です。
仮払いの必要書類
金融機関により多少異なりますが、概ね次の書類が求められます。
- 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本(除籍謄本)
- 請求人と被相続人の関係を示す戸籍謄本(相続人であることの証明)
- 請求人の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
- 請求人の印鑑証明書(発行から3ヶ月または6ヶ月以内のもの)
- 金融機関所定の払戻請求書
遺産分割協議書や他の相続人全員の同意書は不要です。これが仮払い制度の大きな利点です。
仮払い制度を超える金額が必要な場合
150万円を超える緊急資金が必要な場合は、家庭裁判所に対して「預貯金債権の仮分割の仮処分」(家事事件手続法200条3項)を申し立てる方法があります。ただしこの手続きは家事審判の付随処分であり、申立書類の作成や裁判所対応は弁護士・司法書士の業務範囲となるため、必要に応じて専門家を紹介します。
通常の相続手続き(凍結解除)の流れと必要書類
必要書類の標準セット
仮払いを使わずに本来の手続きで全額を払い戻す(または相続人名義へ書き換える)場合の必要書類は以下のとおりです。
- 遺言書または遺産分割協議書(自筆証書遺言の場合は原則として家庭裁判所の検認済証明書、公正証書遺言・法務局保管制度利用の自筆証書遺言は検認不要)
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・改製原戸籍)
- 相続人全員の戸籍謄本(被相続人死亡日以降に取得したもの)
- 相続人全員の印鑑証明書(発行から3〜6ヶ月以内)
- 各金融機関の所定様式(相続届・名義変更依頼書等)
- 通帳・キャッシュカード・証書類(紛失している場合は紛失届で代替可)
「出生から死亡まで」の戸籍収集は、転籍や婚姻があると複数の本籍地を辿る必要があり、慣れていないと相当な時間と労力を要します。本籍地が遠隔地の場合は郵送請求が中心となり、1ヶ月以上かかることも珍しくありません。
法定相続情報一覧図の活用
戸籍謄本一式を法務局に提出して認証を受けると、「法定相続情報一覧図の写し」が無料で何通でも交付されます。この一覧図1通で戸籍謄本一式の代わりになるため、複数の金融機関・証券会社・登記手続を並行して進める場合に大幅な時間短縮が可能です。
法定相続情報一覧図の作成・申出は行政書士の業務範囲です。Treeでは戸籍収集とセットでお引き受けしています。
各金融機関の対応の特徴
メガバンク(都市銀行)
三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行・りそな銀行は相続専用窓口(相続事務センター)に集約されており、書類の郵送ベースで進められます。所要期間は書類提出から2〜4週間程度。所定様式は事前にHPからダウンロード可能です。
地方銀行・信用金庫・信用組合
地元密着型の金融機関は、原則として取引店舗での対応となります。相続人または代理人の来店が求められるケースが多く、遠方に住む相続人にとっては負担となります。Treeでは委任状を活用した代理手続きで対応可能です。
ゆうちょ銀行
ゆうちょ銀行は手続きの段取りが独特です。最寄りの郵便局窓口で「相続確認表」を提出し、後日「貯金等相続手続請求書」を受領、それを再度窓口に提出する2段階方式となります。
ネット銀行
住信SBIネット銀行・楽天銀行・ソニー銀行・auじぶん銀行・PayPay銀行等は、店舗を持たないためすべて郵送・コールセンター対応です。被相続人がネット銀行を利用していた場合、通帳がなく口座の存在自体に家族が気づかないケースもあります。スマートフォンやメール履歴、確定申告書類等から取引銀行を洗い出す作業が必要です。
残高証明書・取引履歴の発行依頼
残高証明書(死亡日基準)
残高証明書は、被相続人の死亡日時点での預金残高を証明する書類です。相続税申告のほか、遺産分割協議の基礎資料として必須です。発行手数料は1通あたり800円〜1,100円程度(金融機関による)。
取引履歴の発行依頼
取引履歴は、生前贈与の有無や名義預金の確認、使途不明金の調査に欠かせません。死亡日から遡って5年〜10年分を取得するのが一般的です。手数料は1ヶ月あたり数百円〜と高額になることもあり、必要範囲を絞り込むことが重要です。
残高証明書・取引履歴の発行は、相続人全員の同意がなくても、相続人の1人から単独で請求できます(最判平成21年1月22日)。
代位請求と委任状による代理請求
遠方の金融機関や複数の金融機関への手続きを、相続人本人が一つひとつ対応するのは大きな負担です。行政書士は委任状を受けて、戸籍収集・法定相続情報一覧図の取得・残高証明書の取得・払戻し手続き等を代理することができます。
委任状には、委任者(相続人)の実印押印と印鑑証明書の添付が必要です。Treeでは委任状の雛形をご用意しており、ご署名・押印いただくだけでお手続きを進められます。
公共料金・自動引落の解約・名義変更
口座凍結に伴い、自動引落も停止します。次のような契約は早期に対応が必要です。
- 電気・ガス・水道(解約または契約者変更)
- 固定電話・インターネット回線・NHK受信料
- 携帯電話(解約またはMNP)
- 住宅ローン(団体信用生命保険による完済の確認)
- クレジットカード(解約と未払金の精算)
- 各種保険料(生命保険・損害保険)
- 新聞・サブスクリプションサービス
これらの契約変更・解約手続きは、行政書士業務として相続関連書類作成と一体でサポート可能です。
ネット銀行・暗号資産口座の特殊性
ネット銀行は通帳がなく、ログインIDやパスワードが分からないと口座の存在確認すら困難です。被相続人の郵便物・メール・ブラウザ履歴・スマートフォンを丁寧に調査する必要があります。
暗号資産(仮想通貨)口座については、各取引所の相続手続きが標準化されておらず、秘密鍵が失われると技術的に資産の移転が不可能になることもあります。生前のうちにエンディングノート等で取引所・口座情報を整理しておくことを強くおすすめします。
相続税申告との連携(税理士業務)
相続財産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える場合、相続税の申告と納税が必要です。申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内。
相続税の試算・申告書の作成・税務相談は税理士の独占業務であり、行政書士は対応できません。Treeでは相続税申告が必要なケースには、提携する税理士をご紹介します。
料金表
| サービス内容 | 料金(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| 戸籍収集サポート | 22,000円〜 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍を収集 |
| 法定相続情報一覧図の作成・申出 | 16,500円〜 | 戸籍収集とセットの場合は割引あり |
| 遺産分割協議書作成 | 55,000円〜 | 相続人数・財産内容に応じて加算 |
| 銀行手続サポート | 22,000円〜 | 1金融機関あたり。複数行は割引あり |
| 相続手続きパッケージ | 個別見積り | 戸籍収集+協議書作成+金融機関手続きをまとめて |
※不動産登記は司法書士業務、相続税申告は税理士業務のため、提携専門家をご紹介します(別途報酬)。
FAQ よくあるご質問
Q1. 親が亡くなった直後、葬儀費用を引き出すために預金口座から現金を下ろしても問題ないですか?
A. キャッシュカードで暗証番号を使って引き出すこと自体は技術的には可能ですが、後日他の相続人から使途を問われた際にトラブルとなるおそれがあります。民法909条の2の仮払い制度を利用するか、相続人全員の同意を得て出金記録を残すことをおすすめします。
Q2. 民法909条の2の仮払いは、どの金融機関でも対応していますか?
A. 制度は法律で定められているため、すべての金融機関が対応します。ただし所定様式や手続フローは金融機関ごとに異なります。
Q3. 仮払い制度で受け取ったお金は、後で返さないといけませんか?
A. 返還の必要はありません。ただし、その相続人が遺産分割で取得する財産から控除されます(一部分割を受けたとみなされます)。
Q4. 銀行に死亡を知らせなければ口座は凍結されないのでしょうか?
A. 家族が知らせなくても、新聞のお悔やみ欄や他の経路で金融機関が認知すれば凍結されます。届出を遅らせるメリットは事実上ありません。
Q5. 戸籍謄本は何通必要ですか?
A. 法定相続情報一覧図を活用すれば、原本提出は1セットで済みます。一覧図がない場合は金融機関ごとに原本還付を受けながら使い回す形になります。
Q6. 相続人の1人が遠方に住んでいて窓口に行けません。どうすればよいですか?
A. 委任状(実印押印・印鑑証明書添付)により、行政書士が代理で手続きを進められます。郵送中心の手続きで完結することがほとんどです。
Q7. 相続人の中に行方不明者がいる場合は?
A. 不在者財産管理人の選任申立てや失踪宣告の申立てが必要となり、これは家庭裁判所に対する申立てを伴うため、弁護士・司法書士の業務範囲です。Treeから提携専門家をご紹介します。
Q8. 残高証明書や取引履歴は、相続人の1人だけで請求できますか?
A. はい、相続人の1人から単独で請求できます。他の相続人の同意は不要です。
Q9. 相続放棄を検討中です。預金の払戻しを受けても大丈夫ですか?
A. 仮払いを含む預貯金の払戻しを受けると、単純承認とみなされて相続放棄ができなくなるおそれがあります。相続放棄は弁護士・司法書士の業務範囲となるため、まずは法的判断を専門家に確認してください。Treeから提携専門家をご紹介します。
Q10. 不動産も相続するのですが、登記もお願いできますか?
A. 不動産登記の申請代理は司法書士の独占業務です。Treeでは戸籍収集や遺産分割協議書作成までを担当し、登記申請は提携司法書士にお繋ぎするワンストップ体制でご案内します。
Q11. 相続税の申告も必要そうです。一緒に頼めますか?
A. 相続税の試算・申告書作成・節税相談は税理士の独占業務です。Treeでは相続税申告が必要なケースに提携税理士をご紹介します。なお、相続税の具体的な税額・計算方法・節税策については本記事では解説できません。必ず税理士にご確認ください。
Q12. ネット銀行や暗号資産の口座はどう調べればよいですか?
A. 被相続人のスマートフォン・メール・郵便物・確定申告書・クレジットカード明細等から取引先を洗い出します。ご自身での確認が難しい場合は、ご相談時に調査方針をご提案します。
銀行預金の相続手続きはまず無料相談から
「複数の口座があってどこから手をつければ分からない」「仮払い制度を使いたいが書類が複雑で困っている」「遠方の金融機関に対応する時間がない」——こうしたお悩みを行政書士法人Treeが解消します。戸籍収集・法定相続情報一覧図の取得・遺産分割協議書作成・金融機関への払戻し手続きまでワンストップでお引き受けします。
初回相談は何度でも無料です。お電話・メール・オンライン面談いずれも対応可能です。
関連記事
- 相続手続きの全体の流れと期限|10ヶ月以内にやること一覧
- 遺産分割協議書の作成方法と記載例|不動産・預貯金・有価証券
- 法定相続情報一覧図の作り方と活用法
- 相続のための戸籍収集|出生から死亡までの取得方法
- 相続放棄と遺産分割協議の違い|どちらを選ぶべきか
まとめ
銀行預金の相続手続きは、口座凍結という時間的制約のもとで、戸籍収集・遺産分割協議書作成・各金融機関への届出という複数のタスクを並行して進める必要があります。2019年7月施行の民法909条の2の仮払い制度を上手に活用すれば、葬儀費用や当面の生活費の不安は大きく軽減できます。一方で、150万円という上限や事後の遺産分割での控除といった制度の特性を正しく理解しておくことも大切です。
行政書士法人Treeは、戸籍収集・法定相続情報一覧図の取得・遺産分割協議書の作成・金融機関への払戻し手続き代行までを一貫してサポートします。相続税申告(税理士)、不動産登記(司法書士)、相続放棄や紛争性のある事案(弁護士・司法書士)が必要な場合は、信頼できる提携専門家をご紹介し、お客様の手続き全体がスムーズに進むようお取り次ぎします。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


