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相続放棄申述書の書き方|家庭裁判所への申立書式と記載例を解説

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「親が亡くなり、相続放棄をしたいが申述書の書き方が分からない」「期限が迫っているのに書式がまったく分からず焦っている」——相続放棄は家庭裁判所への相続放棄申述書の提出によって行います。期限は相続開始を知った時から3か月以内と短く、記載漏れや添付書類の不足があると補正を求められ時間を失います。この記事では、相続放棄申述書の書き方・添付書類・注意点を整理します。

結論として、相続放棄申述書は家庭裁判所所定の書式を用い、(1)申述人の氏名・住所、(2)被相続人の氏名・最後の住所、(3)放棄の理由、(4)相続財産の概要、を記入します。申述書には800円分の収入印紙と連絡用の郵便切手を添え、被相続人の死亡記載のある戸籍謄本・申述人の戸籍謄本等を添付して、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。

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相続放棄申述書の概要

相続放棄の基本

相続放棄は、被相続人の財産(プラス・マイナス両方)を一切相続しないとする家庭裁判所への申述で、民法939条により「相続開始の時に遡って相続人とならなかった」ものとして扱われます。

申述の期限

民法915条1項により、相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に行う必要があります。この期間を「熟慮期間」といいます。期間内に家庭裁判所への申述を行えない事情がある場合、家庭裁判所に「期間伸長の申立て」を行うことで延長が認められるケースがあります。

相続放棄申述書の記入項目

書式の入手

申述書の書式は、裁判所の公式サイトからPDFでダウンロードできるほか、家庭裁判所の窓口でも入手可能です。18歳以上用18歳未満用の2種類があります(2022年4月1日施行の民法改正による成年年齢引下げ後の区分)。

記入項目

記入欄 内容
申述先の家庭裁判所 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
申述年月日 申述書の作成日
申述人の氏名・押印 本人の署名・認印(実印は不要)
添付書類の一覧 戸籍謄本等の枚数を記載
申述人の本籍・住所・生年月日・職業・被相続人との続柄 戸籍謄本の記載と一致させる
法定代理人(未成年者の場合) 親権者または未成年後見人の氏名・住所
被相続人の本籍・最後の住所・氏名・職業・死亡年月日 除籍謄本・住民票除票等を基に記入
放棄の理由 選択肢から該当する項目にチェック(債務超過・生前の関係疎遠等)
相続財産の概要 不動産・預貯金・現金・負債等の概算

放棄の理由(選択肢)

申述書には、放棄の理由として以下のような選択肢が用意されています。

  • 被相続人から生前に受けた贈与等
  • 生活に困窮していない
  • 遺産が少ない
  • 遺産を分散させたくない
  • 債務超過のため
  • その他(自由記載)

添付書類

共通の添付書類

相続放棄申述書には、一般に以下の書類を添付します。

  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票(最後の住所を確認)
  • 申述人の戸籍謄本

なお、被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本や、被相続人の出生から死亡までの戸籍等は、申述人と被相続人との続柄に応じて必要となります。

続柄による追加書類

申述人の立場によって、追加の戸籍が必要となります。裁判所公式の書式に基づく整理は以下のとおりです。

申述人の立場 追加で必要な戸籍等
配偶者・子(第一順位) 基本セットのみで足りる
孫・ひ孫(子の代襲相続人) 被代襲者(親・祖父母)の死亡記載のある戸籍
父母・祖父母(第二順位・直系尊属) 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍。加えて、被相続人の子(及びその代襲者)に死亡している人がいる場合のみ、その者の出生から死亡までのすべての戸籍
兄弟姉妹(第三順位) 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍。被相続人の直系尊属(父母・祖父母等)の死亡記載のある戸籍。さらに、被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その者の出生から死亡までのすべての戸籍
甥姪(兄弟姉妹の代襲相続人) 兄弟姉妹のケースの書類一式に加え、被代襲者(甥姪の親である兄弟姉妹)の死亡記載のある戸籍

特に第三順位の兄弟姉妹・甥姪のケースでは、必要な戸籍が多岐にわたり、収集に時間がかかるため早期着手が必要です。

収入印紙・郵便切手

  • 収入印紙: 800円分(申述書右上の指定位置に貼付。申述人が消印(印鑑押し)はしないこと。裁判所が必要に応じて消印します)
  • 連絡用郵便切手: 申述人1人につき550円程度(2024年10月郵便料金改定後、110円切手×5枚が標準的な内訳)。正確な金額・内訳は管轄裁判所のサイトで確認してください

申述後の流れ

Step 1: 照会書への回答

申述書を提出すると、家庭裁判所から申述人に「照会書」が郵送される場合があります。「相続放棄の意思に間違いないか」「放棄の理由」「財産の処分をしていないか」等の質問が記載されており、回答書に記入して返送します。返送期限や回答方法は家庭裁判所の案内に従って対応します。

Step 2: 相続放棄申述受理

照会書の回答を受けて家庭裁判所が相続放棄の要件を満たすと認めれば、申述受理の審判がなされ、申述人に通知書が届きます。この時点で相続放棄が法的に成立します。

Step 3: 相続放棄申述受理通知書と証明書の違い

申述受理後に家庭裁判所から自動的に送付されるのは「相続放棄申述受理通知書」です。債権者への通知や不動産の名義変更(他の相続人による相続登記)で正式な証明が必要な場合は、別途「相続放棄申述受理証明書」を申請します。

書類 発行方法 用途
相続放棄申述受理通知書 申述受理時に自動的に本人へ送付(1通のみ) 申述人本人向けの確認文書
相続放棄申述受理証明書 申請により何通でも取得可能(1通150円の収入印紙) 債権者への証明、他の相続人による相続登記への添付

債権者からの督促対応は通常、受理通知書の写しで足りることが多いですが、相続登記手続等の正式な場面では証明書の取得が求められます。

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相続放棄申述書で失敗しやすいポイント

申述先の間違い

申述先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。申述人の住所地ではない点に注意が必要です。誤った管轄に提出すると、時間的ロスが生じます。

被相続人との続柄の誤記

続柄は戸籍謄本の記載と一致させる必要があります。「長男」「次男」「養子」「養女」等の正確な記載が求められます。

熟慮期間の起算点の誤解

熟慮期間の起算点は「自己のために相続の開始があったことを知った時」であり、被相続人の死亡日ではありません。遠方の親戚から後日相続について知らされた場合は、その通知時が起算点となり得ます。

財産の処分による単純承認みなし

相続放棄前に相続財産を処分・消費すると、「単純承認」したものとみなされ、相続放棄ができなくなります(民法921条1号)。たとえば、被相続人の預金の引き出し・不動産の売却・動産の廃棄等は注意が必要です。

相続放棄前後に「してはいけない」行為と「してOK」な行為

相続放棄を確実に成立させるためには、相続財産への関与を慎重に判断する必要があります。

🚫 してはいけない行為(単純承認みなし)

  • 被相続人の預貯金を解約・引き出して使用
  • 不動産・自動車・貴金属等の売却・譲渡
  • 被相続人の債務の相続財産からの返済
  • 被相続人名義の株式・投資信託の売却・名義変更
  • 遺産分割協議への参加・合意
  • 経済的価値のある遺品の独占的持ち帰り(隠匿行為)

✅ してOK(単純承認みなしにならない)な行為

行為 取扱い
相続財産から相当範囲の葬儀費用を支出 単純承認に該当しない(大阪高裁平成14年7月3日決定)
経済的価値のない形見分け(古着・位牌等) 単純承認に該当しない(山口地裁徳山支部昭和47年5月13日判決等)
相続財産の保存行為(建物の修繕等) 民法921条1号但書により処分に該当しない
未支給年金・葬祭費・埋葬料の受給 受給権者の固有財産のため相続財産でない
遺族年金の受給 遺族固有の権利のため相続財産でない
死亡保険金(受取人が相続人に指定されている場合) 受取人固有の権利のため相続財産でない
自己の固有財産からの費用支出 相続財産の処分ではない

ただし、社会通念上相当な範囲を超える高額な葬儀経済的価値のある遺品の持ち帰りは単純承認みなしとなる可能性があります。判断に迷う場合は専門家への相談が推奨されます。

よくある質問

Q. 相続放棄の期限を過ぎてしまった場合、救済手段はありますか?

熟慮期間経過後の相続放棄は原則として認められませんが、最高裁昭和59年4月27日判決により、以下の要件を満たす場合は、その事実を知った時から3か月以内の申述が認められる余地があります。

  • 被相続人に相続財産が全くないと信じており、またはプラスの財産しかないと信じていたこと
  • そのように信じたことに相当の理由があること
  • 3か月の熟慮期間内に相続放棄をしなかったのが、上記の理由によること

具体的には、「被相続人と疎遠で財産関係を把握していなかった」「債権者から突然督促状が届いて初めて借金の存在を知った」等のケースが該当する可能性があります。期限経過後の申述は事情説明書(上申書)を別途添付する必要があり、個別の救済可否は弁護士にご相談ください。

Q. 相続放棄の申述書の記入で押印は実印が必要ですか?

申述書への押印は認印で足ります。通常、相続放棄申述書の提出に実印や印鑑登録証明書は不要です。ただし、申述人が未成年者・成年被後見人である場合や、事案によって追加資料を求められることがあるため、管轄裁判所に事前確認すると安心です。

Q. 相続放棄をした後、次の順位の相続人にはどのように知らせればよいですか?

法律上の通知義務はありませんが、次順位相続人が知らずに債務を承継してしまうのを防ぐため、相続放棄申述受理通知書の写しを送付する等の配慮が推奨されます。

Q. 未成年者が相続放棄をする場合の手続きは?

未成年者は自ら申述できないため、親権者(法定代理人)が代理して申述します。ただし、親権者自身も相続人であって利益相反に該当する場合は、特別代理人の選任が必要です。

Q. 相続放棄した後、他の相続人と利害関係が生じることはありますか?

放棄した後は法律上、相続人ではなかったものとして扱われるため、他の相続人の遺産分割協議には参加できません。ただし、相続財産を現に占有している場合の保存義務(2023年改正民法940条1項)は残るため、次の相続人または相続財産清算人に引き継ぐまで管理を続ける必要があります。

Q. 相続放棄した場合、相続登記義務化(2024年4月1日施行)の対象になりますか?

対象外です。2024年4月1日施行の相続登記義務化(相続不動産取得を知った日から3年以内の登記、違反時10万円以下の過料)は、相続人として不動産を取得した者が対象です。相続放棄により最初から相続人でなかったものとして扱われるため、放棄者は相続登記義務を負いません。

ただし、他の相続人(次順位の相続人を含む)は登記義務を負うため、次順位の相続人に相続放棄の事実を伝えて登記を促すことが、相続財産の管理責任を回避する上でも重要です。

まとめ

  • 相続放棄申述書は家庭裁判所の所定様式で、被相続人の最後の住所地管轄の家庭裁判所に提出
  • 期限は相続開始を知った時から3か月以内(熟慮期間)
  • 収入印紙800円、連絡用郵便切手、申述人・被相続人の戸籍謄本等が必要
  • 照会書回答→申述受理の流れで成立し、受理証明書で債権者に証明
  • 相続財産を処分すると単純承認みなしで放棄不能になるため注意

相続放棄の全体像は「相続の特殊ケース完全ガイド|代襲相続・数次相続・相続放棄」、限定承認との違いは「相続放棄と限定承認の違いとは?」もご参照ください。

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※ 本記事の内容は2026年4月時点の民法・家事事件手続法に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言ではありません。なお、相続放棄申述書の作成および家庭裁判所への申立て代理は、司法書士法・弁護士法に基づき司法書士・弁護士の業務範囲とされています。行政書士は申述に必要な戸籍収集等の周辺サポートを行うことができます。熟慮期間経過後の救済可否・訴訟対応は弁護士にご相談ください。

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