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制限行為能力者がいる遺産分割|未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人と特別代理人/臨時保佐人

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相続人の中に未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人がいる場合、遺産分割協議では誰が本人を代理/同意するのか、利益相反のときに誰の選任が必要なのかを正確に整理する必要があります。代理人や同意権者の手続きを誤った遺産分割協議は、無権代理として無効、または取消しの問題が生じる可能性があります。

本記事では、(1)未成年者の親権者代理と特別代理人(民法826条)、(2)成年被後見人の成年後見人代理と特別代理人(民法860条が826条を準用)、(3)被保佐人と「臨時保佐人」(民法876条の2第3項)、(4)被補助人と「臨時補助人」(民法876条の7第3項)、(5)監督人がいる場合の選任不要の例外、(6)任意後見人と任意後見監督人の役割を、裁判所の運用に即して整理します。

あわせて、特別代理人・臨時保佐人・臨時補助人の選任申立て(家庭裁判所への申立書)は司法書士業務の範囲、選任後の遺産分割協議書の作成・事実関係整理は行政書士業務、という業務範囲の住み分けも明示します。

相続人の中に未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人がいる場合の遺産分割をご検討中の方へ。行政書士法人Treeでは、戸籍収集・相続関係説明図の作成、選任後の遺産分割協議書の作成、事実関係整理書面のサポートを承ります(家庭裁判所への選任申立書類の作成は提携司法書士・弁護士をご紹介します)。

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目次

  1. 制限行為能力者の整理|4類型と関与する者
  2. 未成年者と特別代理人(民法826条1項・2項)
  3. 成年被後見人と特別代理人(民法860条が826条準用)
  4. 被保佐人と「臨時保佐人」(民法876条の2第3項)
  5. 被補助人と「臨時補助人」(民法876条の7第3項)
  6. 監督人がいる場合の例外|選任不要となる場面
  7. 任意後見人と任意後見監督人の役割
  8. 選任申立ての概要(家庭裁判所)
  9. 必要な手続きを欠いた遺産分割協議の効果
  10. 業務範囲|行政書士・司法書士・弁護士の役割分担
  11. よくある質問

制限行為能力者の整理|4類型と関与する者

民法上の制限行為能力者は、未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人の4類型です。遺産分割協議に参加するための関与者は類型ごとに異なります。

類型 本人の関与 代理/同意権者 利益相反時の選任
未成年者 単独不可 親権者(または未成年後見人)が代理 特別代理人(民法826条)
成年被後見人 単独不可 成年後見人が代理 特別代理人(民法860条が826条準用)
被保佐人 本人が同意を得て関与または代理権付与で保佐人が代理 保佐人の同意(民法13条1項6号)/代理権付与審判で代理 臨時保佐人(民法876条の2第3項)
被補助人 本人が同意を得て関与または代理権付与で補助人が代理 同意権・代理権が付与された範囲で補助人が関与 臨時補助人(民法876条の7第3項)

「特別代理人」と「臨時保佐人・臨時補助人」は別名称・別根拠条文の制度です。裁判所も区別して案内しています。

未成年者と特別代理人(民法826条1項・2項)

未成年者は単独で遺産分割協議をすることができないため、通常は親権者が法定代理人として関与します。ただし、次の2類型では特別代理人の選任が必要です。

  • 民法826条1項:親権者と未成年者の利益が相反する場合(親権者も同じ被相続人の相続人であるケースが典型)。未成年者のために特別代理人を家庭裁判所に申し立てる
  • 民法826条2項:親権者が複数の未成年の子を代理する場合、子同士の利益が相反するため、原則として子ごとに別の特別代理人が必要

親権者・未成年後見人が複数いる場合の調整、特別代理人の権限範囲(特定の利益相反行為に限る)など、具体的な選任内容は事案により異なるため、家庭裁判所の運用に従います。

成年被後見人と特別代理人(民法860条が826条準用)

成年被後見人は、成年後見人が法定代理人として遺産分割協議に関与します。成年後見人も同じ被相続人の共同相続人であるなど、成年後見人と本人の利益が相反する場合は、原則として特別代理人の選任が必要です。

根拠条文の整理は以下のとおりです。

  • 民法第860条本文:第826条の規定を成年後見人について準用
  • 民法第826条:利益相反時の特別代理人選任
  • これにより、成年後見人と被後見人の利益相反時は「民法860条が826条を準用する」構造

ただし、後述するとおり成年後見監督人が選任されている場合は特別代理人の選任は不要です(民法860条ただし書・851条4号)。

被保佐人と「臨時保佐人」(民法876条の2第3項)

被保佐人は判断能力が著しく不十分とされた者で、民法13条1項6号により、遺産分割協議には保佐人の同意が必要です。同意を得て本人が遺産分割協議を行うのが原則ですが、保佐人に代理権付与の審判があれば、付与された範囲で保佐人が本人を代理することもできます。

保佐人と被保佐人の利益が相反する場合(保佐人も共同相続人である場合が典型)は、特別代理人ではなく、「臨時保佐人」を家庭裁判所に申し立てます。臨時保佐人は、当該利益相反行為について同意権者または代理人として関与します。

  • 根拠条文:民法第876条の2第3項
  • 申立先:家庭裁判所
  • 選任後は、本来の保佐人ではなく臨時保佐人が当該利益相反行為に関与

被補助人と「臨時補助人」(民法876条の7第3項)

被補助人は判断能力が不十分とされた者で、補助開始の審判だけでなく、同意権付与または代理権付与の審判があった範囲でのみ補助人が関与します。遺産分割協議について同意権または代理権が付与されているかを必ず確認します。

補助人と被補助人の利益が相反する場合、特別代理人ではなく「臨時補助人」を家庭裁判所に申し立てます。

  • 根拠条文:民法第876条の7第3項
  • 申立先:家庭裁判所
  • 本人について同意権・代理権がそもそも遺産分割協議に付与されているかが前提となる

監督人がいる場合の例外|選任不要となる場面

後見・保佐・補助の各制度には監督人を選任できる仕組みがあり、監督人が利益相反行為について本人を代表・代理することがあります。この場合、特別代理人・臨時保佐人・臨時補助人の選任は不要となります。

  • 成年後見監督人:成年後見人と被後見人の利益相反時は、後見監督人が被後見人を代表(民法851条4号)。したがって特別代理人の選任は不要(民法860条ただし書が826条の準用を排除)
  • 保佐監督人:保佐人と被保佐人の利益相反時は、保佐監督人が本人を代表(民法876条の3第2項が851条4号準用)
  • 補助監督人:補助人と被補助人の利益相反時は、補助監督人が本人を代表(民法876条の8第2項が851条4号準用)
  • 任意後見監督人:後述

監督人が選任されているかどうかは、本人の登記事項証明書(後見登記等)で確認できます。監督人が選任されている事案では、特別代理人・臨時保佐人・臨時補助人の申立てを誤って行わないよう、事前確認が重要です。

任意後見人と任意後見監督人の役割

任意後見契約は、家庭裁判所により任意後見監督人が選任された時から効力を生じます(任意後見契約に関する法律2条1号・4条)。つまり任意後見が発効している場合は、必ず任意後見監督人が存在します。

任意後見人が遺産分割協議を本人に代わって行えるかは、任意後見契約で付与された代理権の範囲によります。財産管理に関する包括的な代理権が付与されている場合は遺産分割協議への参加も含まれることが一般的ですが、契約書の代理権目録で個別に確認します。

任意後見人と本人の利益が相反する場合(任意後見人が共同相続人である等)、任意後見監督人が本人を代理します(任意後見契約に関する法律第7条第1項第4号)。任意後見では監督人が必ず存在するため、この場面で別途特別代理人を選任する必要はありません。

選任申立ての概要(家庭裁判所)

特別代理人・臨時保佐人・臨時補助人の選任は、家庭裁判所への申立て(家事審判事件)として進めます。家庭裁判所への申立書類の作成は司法書士業務(司法書士法3条1項4号)、または弁護士業務であり、行政書士業務の範囲外です。

  • 申立先:本人の住所地(未成年者は本人の住所地、成年被後見人等は後見開始の審判をした)の家庭裁判所
  • 申立人:親権者、後見人・保佐人・補助人、本人の親族その他の利害関係人
  • 申立費用:対象となる本人1人につき収入印紙800円、および連絡用の郵便切手(金額は家庭裁判所により異なる)
  • 添付書類:本人の戸籍謄本、利益相反関係を示す資料、遺産分割協議書案、候補者の住民票・身分証明書等
  • 標準処理期間:1〜2か月程度(家庭裁判所により異なる)

特別代理人等の候補者は、利害関係のない親族や、事案に応じて弁護士・司法書士等の専門職を申立書に記載します。最終的には、家庭裁判所が本人の利益保護の観点から適格性を判断して選任します。候補者として記載した者が当然に選任されるとは限りません。

必要な手続きを欠いた遺産分割協議の効果

特別代理人・臨時保佐人・臨時補助人の選任を受けずに行った利益相反行為(遺産分割協議等)は、無権代理行為として原則無効です(最判昭和46年4月20日等)。本人が成年に達した後、または能力を回復した後に追認すれば有効となる余地はあるものの、追認がなければ無効のままです。

被保佐人・被補助人について同意を欠く場合は、取消しの問題が生じます(民法120条以下)。いずれにしても、後日の権利関係紛争・相続登記の却下・税務処理のやり直し等を防ぐためには、入口で正確な代理/同意権の枠組みを整えて協議することが不可欠です。

業務範囲|行政書士・司法書士・弁護士の役割分担

  • 行政書士:戸籍収集・相続関係説明図の作成、選任後の遺産分割協議書の文案作成、事実関係整理書面の作成
  • 司法書士:特別代理人・臨時保佐人・臨時補助人の選任申立書類の作成(家庭裁判所提出書類)、相続登記
  • 弁護士:紛争性のある事案、家事審判・調停の代理、遺産分割審判の代理
  • 税理士:相続税の申告・調整計算

家庭裁判所への申立書類の作成・添付資料整備は行政書士業務の範囲外です。本記事は遺産分割協議書作成・事実関係整理という行政書士業務の観点で整理しており、選任申立書の作成自体は提携司法書士・弁護士のご紹介となります。

制限行為能力者がいる遺産分割をご検討中の方へ。選任申立て(家庭裁判所)は提携司法書士・弁護士をご紹介し、選任後の遺産分割協議書の文案作成・事実関係整理は行政書士法人Treeが担当します。

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よくある質問

Q. 被保佐人と保佐人が利益相反する場合に選任するのは特別代理人ですか.
A. 特別代理人ではなく「臨時保佐人」です(民法876条の2第3項). 同様に被補助人と補助人の利益相反時は「臨時補助人」(民法876条の7第3項)が正確な名称です. 「特別代理人」は未成年者・成年被後見人について用いる名称です.

Q. 成年後見人が共同相続人ですが、必ず特別代理人を選任しなければなりませんか.
A. 原則として必要ですが、成年後見監督人が選任されている場合は、後見監督人が被後見人を代表するため特別代理人の選任は不要です(民法860条ただし書・851条4号).

Q. 任意後見人と本人がともに相続人です. 特別代理人を選任しますか.
A. 不要です. 任意後見が発効している場合は任意後見監督人が必ず存在し、任意後見人と本人の利益相反時は任意後見監督人が本人を代理します(任意後見契約に関する法律7条1項4号).

Q. 未成年の子が複数いる場合の特別代理人はどうなりますか.
A. 親権者と未成年者、または未成年者同士で利益が相反するため、原則として子ごとに別の特別代理人を選任します(民法826条2項).

Q. 申立費用はいくらですか.
A. 対象となる本人1人につき収入印紙800円、および連絡用の郵便切手が必要です. 切手の金額は家庭裁判所により異なります.

Q. 行政書士に特別代理人選任申立てを依頼できますか.
A. 家庭裁判所への申立書類の作成は司法書士業務(または弁護士業務)であり、行政書士業務の範囲外です. 行政書士は、選任後の遺産分割協議書の作成、戸籍収集・相続関係説明図の作成、事実関係整理書面の作成を担当します.

Q. 特別代理人の候補者として誰を挙げますか.
A. 利害関係のない親族や、事案に応じて弁護士・司法書士等の専門職を候補者として申立書に記載します. 家庭裁判所が本人の利益保護の観点から最終的に判断して選任します.

Q. 特別代理人等の選任なしに行った遺産分割協議はどうなりますか.
A. 無権代理行為として原則無効となります. 本人が成年に達した後または能力を回復した後に追認すれば有効となる余地はあります. 被保佐人・被補助人について同意を欠く場合は、取消しの問題が生じます.

まとめ

制限行為能力者がいる遺産分割では、未成年者・成年被後見人について「特別代理人」(民法826条/860条が826条準用)、被保佐人について「臨時保佐人」(民法876条の2第3項)、被補助人について「臨時補助人」(民法876条の7第3項)と、類型ごとに名称・根拠条文が異なります。これらを一括りに「特別代理人」とするのは誤りです。

成年後見監督人・保佐監督人・補助監督人・任意後見監督人が選任されている場合は、監督人が利益相反行為について本人を代表・代理するため、特別代理人・臨時保佐人・臨時補助人の選任は不要となります。後見登記等で監督人の有無を必ず事前確認してください。

必要な代理/同意権の枠組みを欠いた遺産分割協議は、無権代理として無効、または取消しの問題が生じます。入口で正確な手続きの枠組みを整えることが、後日の権利関係紛争・相続登記の却下・税務処理のやり直しを防ぐ最大のポイントです。

家庭裁判所への選任申立書類の作成は司法書士・弁護士業務、選任後の遺産分割協議書の作成・事実関係整理は行政書士業務という業務範囲の住み分けに沿って、適切な専門家と連携して進めてください。

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※ 本記事は執筆時点の法令(民法、任意後見契約に関する法律等)・裁判所の運用に基づき作成しています。個別事案の代理/同意権の枠組み、選任申立ての要否、税務上の取扱いは、事案の事情により異なります。最新情報のご確認と、家庭裁判所への申立てが必要な場面では司法書士・弁護士へのご相談をお願いいたします。

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