産業廃棄物の収集運搬で「積替え保管」を行うには、廃棄物処理法第14条第1項に基づく「産業廃棄物収集運搬業(積替え保管を含む)」の許可が必要です。これは収集運搬業許可とは別の独立した「施設設置許可」ではなく、収集運搬業許可の一類型として位置づけられます(積替え保管を「除く」許可と「含む」許可の2区分)。
既に「積替え保管を除く」収集運搬業許可を受けている事業者が、積替え保管を追加するように事業範囲を変更する場合は、同法第14条の2の変更許可が必要です。第14条の2は産業廃棄物処理業の「変更許可」を定める規定であり、積替え保管そのものの根拠条文ではない点に注意してください。
本記事では、積替え保管の制度的位置づけ、第14条1項の収集運搬業(積替え保管を含む)許可、第14条の2の変更許可、保管の場所の基準(囲い・掲示板・飛散流出地下浸透悪臭防止等)、保管上限(平均搬出量の7日分)、特別管理産業廃棄物・石綿・水銀・PCB等の品目別取扱い、自治体の事前協議・近隣説明の位置づけまでを、実務目線で解説します。
産廃収集運搬業(積替え保管を含む)の許可申請・変更許可申請をご検討中の事業者さまへ。行政書士法人Treeでは、許可区分の判定、保管の場所の基準への適合確認、自治体との事前協議・近隣説明書類の整備、申請取次までを一括サポートします。
目次
目次
- 積替え保管とは|収集運搬業の中での位置づけ
- 許可の枠組み|第14条1項と第14条の2の関係
- 第15条の産業廃棄物処理施設の設置許可との違い
- 保管の場所の基準(施設要件)
- 保管上限と運用ルール(平均搬出量の7日分)
- 特別管理産業廃棄物・石綿・水銀・PCB の品目別取扱い
- 自治体の事前協議・近隣住民への説明
- 申請手続きと審査の流れ
- 業務範囲|行政書士・環境コンサル・施設設計者の役割
- よくある質問
積替え保管とは|収集運搬業の中での位置づけ
積替え保管とは、排出場所から処分先へ直行せず、産業廃棄物を運搬の途中で積替え保管場所に一時的に集積し、まとめて運搬する形態をいいます。小型の収集車から大型の運搬車両への積替え、複数排出事業者からの廃棄物の集約等により、収集ルートの効率化・運搬コスト削減・温室効果ガス削減に寄与します。
制度上、積替え保管を行う収集運搬は「産業廃棄物収集運搬業(積替え保管を含む)」として、積替え保管を行わない収集運搬「(積替え保管を除く)」とは区別して許可されます。「積替え保管施設の設置許可」という独立の許可制度は、産業廃棄物処理法上は存在しません。積替え保管の場所・施設に関する事項は、収集運搬業(積替え保管を含む)許可の申請の中で審査されます。
許可の枠組み|第14条1項と第14条の2の関係
- 新規に積替え保管を行う場合:廃棄物処理法第14条第1項に基づく「産業廃棄物収集運搬業(積替え保管を含む)」許可を新規取得
- 既存の「積替え保管を除く」許可業者が積替え保管を追加する場合:同法第14条の2に基づく「変更許可」(事業範囲の変更が変更許可事項となる)
- 既存の「積替え保管を含む」許可業者が保管場所を追加・変更する場合:内容に応じて変更許可(第14条の2)または変更届出
- 有効期間:原則5年(優良認定を受けた場合は7年)
第14条の2はあくまで「処理業の変更許可」を定める規定であり、積替え保管それ自体の根拠条文ではありません。第14条1項に基づく許可の「事業範囲」として「積替え保管を含む/除く」が区別され、その区別を変更する局面で第14条の2が登場する、という構造です。
第15条の産業廃棄物処理施設の設置許可との違い
廃棄物処理法第15条の「産業廃棄物処理施設の設置許可」は、焼却施設・破砕施設・最終処分場等、政令で定める一定規模以上の処理施設を設置する場合に必要な許可です(生活環境影響調査、告示・縦覧、利害関係者意見書提出等の手続きが法定)。
積替え保管の場所は、原則としてこの第15条の処理施設には該当しません。したがって積替え保管に伴う場所の整備に第15条の施設設置許可が必要となるわけではありません。ただし、積替え保管に併設して破砕・焼却等の処理工程を導入する場合は、その処理施設について別途第15条許可が問題となることがあります。両者は別制度・別手続きであり、混同を避ける必要があります。
保管の場所の基準(施設要件)
収集運搬業(積替え保管を含む)許可では、積替え保管場所が施行規則所定の保管の場所の基準に適合する必要があります。代表的な基準は次のとおりです(廃棄物の性状に応じて求められる措置が異なる点に注意)。
- 周囲に囲い(保管に伴い生ずる積み上げ高さに耐え得る構造)を設けること
- 所定事項を記載した掲示板(種類、管理者氏名連絡先、最大保管量等)を見やすい箇所に設けること
- 飛散・流出・地下浸透・悪臭発散を防止するために必要な措置
- 汚水が生じるおそれがある場合は、排水溝の整備、底面に不浸透性材料の使用
- 火災予防措置(必要に応じて消火設備)
- 害虫・ねずみの発生防止措置
- 性状に変化が生じない期間に限った保管
「囲い・覆い・防水構造」と一律に整理されることもありますが、すべての廃棄物・すべての保管方法で覆いや防水構造が一律に必須というわけではなく、廃棄物の性状(液状・固形、粉じん性の有無、汚水の発生可能性等)に応じた措置として組み立てます。
保管上限と運用ルール(平均搬出量の7日分)
積替え保管はあくまで「積替えのための一時的な保管」に限られ、廃棄物の長期蔵置や事実上の処分前蔵置は認められません。環境省通知に基づき、保管上限量は保管場所における平均的な搬出量の7日分が基準とされています。
運用上は、搬入量・搬出量の帳簿管理、保管期間(搬入から搬出までの期間)の記録、廃棄物の種類別・排出事業者別の管理、マニフェスト(産業廃棄物管理票、電子マニフェスト含む)の適正運用が求められます。自治体によっては、許可条件として個別の保管上限・運用ルールが付加されることもあるため、申請先自治体の手引きで確認してください。
特別管理産業廃棄物・石綿・水銀・PCB の品目別取扱い
取り扱う産業廃棄物の品目によって、別個の許可・基準・表示・容器要件が課されます。
- 特別管理産業廃棄物(感染性廃棄物・廃油(揮発油類)・廃酸・廃アルカリ・PCB廃棄物・特定有害汚泥等):通常の産業廃棄物とは別に「特別管理産業廃棄物収集運搬業(積替え保管を含む)」の許可が必要。保管基準も厳格化(容器、隔離、表示)
- 石綿含有産業廃棄物:飛散防止措置、二重梱包、専用容器・専用シート、表示
- 水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじん等:割れない容器、飛散防止、表示
- PCB廃棄物:JESCOへの処分委託、保管・運搬の特別ルール、保管事業者の届出義務
これらは品目ごとに許可範囲・保管方法・容器・表示・運搬時の取扱いが異なるため、申請にあたり対象品目の整理が出発点となります。
自治体の事前協議・近隣住民への説明
第15条処理施設の設置許可では、生活環境影響調査・告示・縦覧・利害関係者意見書提出が法定されていますが、収集運搬業(積替え保管を含む)許可においては、これと同等の法定縦覧手続きは一律には課されていません。
もっとも、多くの自治体(例:埼玉県、長野県等)では、条例・要綱・事前協議制度に基づき、申請に先立つ周辺住民への事業計画説明、関係書類の提出、地元自治会との協議等を求める運用があります。これは法令上一律の許可要件ではなく自治体運用ですが、許可審査・許可後の運営の円滑化のため、実務上は申請前段階で必ず申請先自治体に確認・対応することが推奨されます。
申請手続きと審査の流れ
- 許可区分の判定(新規/変更許可、積替え保管を含む/除く、特管産廃の要否)
- 積替え保管場所の選定・施設計画の策定(土地の使用権原、用途地域、近隣環境)
- 申請先自治体への事前協議(都道府県・政令市・中核市)
- 事前協議で求められた周辺住民への説明、関係書類の整備
- 申請書・添付書類の作成(事業計画書、施設図面、保管量・搬出計画、欠格事由不該当の宣誓書、財務関係書類、講習修了証等)
- 申請・現地調査・補正対応
- 許可(標準処理期間は自治体により異なるが、新規・変更とも数か月程度)
- 許可後は許可証の備置、変更時の手続き、定期報告(自治体運用による)
業務範囲|行政書士・環境コンサル・施設設計者の役割
- 行政書士:積替え保管を含む収集運搬業の新規許可申請・第14条の2変更許可申請、事前協議・近隣説明関連書類の整備
- 環境コンサルタント:生活環境影響評価(必要時)、保管場所の環境配慮計画
- 施設設計者・施工業者:囲い・掲示板・排水溝・不浸透性床面等の施設整備
- 税理士:法人税・固定資産税・登録免許税の取扱い
- 弁護士:近隣との紛争性のある事案、許可取消等を巡る対応
産廃収集運搬業(積替え保管を含む)許可・第14条の2変更許可の申請をご検討中の事業者さまへ。許可区分の判定から事前協議・申請取次までを一括サポートします。
よくある質問
Q. 積替え保管を行うには、収集運搬業許可とは別に「施設設置許可」が必要ですか.
A. いいえ. 積替え保管は「産業廃棄物収集運搬業(積替え保管を含む)」という収集運搬業許可の一類型として位置づけられており、収集運搬業許可とは別個の施設設置許可制度は廃棄物処理法上ありません. 第15条の処理施設の設置許可は、焼却・破砕等の処理施設に係る別制度です.
Q. 「積替え保管を除く」許可を持っていますが、積替え保管を始めるにはどうしますか.
A. 廃棄物処理法第14条の2に基づく変更許可(事業範囲の変更)が必要です. 単なる届出ではなく、許可審査を経る手続きです.
Q. 第14条の2は積替え保管の根拠条文ですか.
A. いいえ. 第14条の2は「産業廃棄物処理業の変更許可」を定める一般規定であり、積替え保管それ自体の根拠条文ではありません. 積替え保管を含む収集運搬業の許可の根拠は第14条第1項です.
Q. 積替え保管の上限量はありますか.
A. 環境省通知に基づき、保管場所における平均的な搬出量の7日分が基準とされています. 自治体の許可条件で個別の上限が付されることもあります.
Q. 積替え保管場所への近隣住民説明は必須ですか.
A. 法令上、収集運搬業(積替え保管を含む)許可に法定の縦覧・告示手続きは一律には課されていません. もっとも、多くの自治体が条例・要綱・事前協議制度で近隣説明を求めており、実務上は必ず申請先自治体の運用を確認します.
Q. 感染性廃棄物の積替え保管も同じ許可で行えますか.
A. いいえ. 感染性廃棄物は特別管理産業廃棄物であり、「特別管理産業廃棄物収集運搬業(積替え保管を含む)」という別の許可が必要です. 容器・表示・隔離等の保管基準もより厳格になります.
Q. 他社の廃棄物も積替え保管できますか.
A. 許可を受けた産業廃棄物の種類、積替え保管場所、保管上限量、委託契約、マニフェスト運用等の範囲内であれば可能です. 許可外の品目や許可を受けていない場所での保管はできません.
Q. 積替え保管あり許可となし許可では何が違いますか.
A. 積替え保管あり許可では、積替え保管場所の所在地・構造・保管品目・保管上限量・搬出入計画等が追加で審査対象となるため、なし許可よりも事前協議・施設図面・周辺環境への配慮等の確認事項が多くなります.
まとめ
産業廃棄物の積替え保管を行うには、廃棄物処理法第14条第1項に基づく「産業廃棄物収集運搬業(積替え保管を含む)」許可が必要です。これは収集運搬業許可とは別個の許可ではなく、その一類型として位置づけられており、「積替え保管施設の設置許可」という独立の制度は存在しません。
既に「積替え保管を除く」許可を取得している事業者が積替え保管を追加する場合は、第14条の2の変更許可が必要です。第14条の2は「処理業の変更許可」を定める一般規定であり、積替え保管そのものの根拠条文ではない点に注意してください。第15条の産業廃棄物処理施設の設置許可は焼却・破砕等に係る別制度で、積替え保管の場所はこれに該当しません。
保管の場所の基準は、囲い・掲示板、飛散・流出・地下浸透・悪臭防止措置、汚水対策(排水溝・不浸透性床面)、火災予防、害虫対策、性状に変化が生じない期間に限った保管等で構成され、廃棄物の性状に応じて求められる措置が異なります。保管上限は平均搬出量の7日分が基準です。特別管理産業廃棄物・石綿含有・水銀使用製品・PCB等は品目ごとに許可・基準・容器・表示の取扱いが異なります。
近隣住民への説明・縦覧は法令上一律の許可要件ではなく、多くの自治体が条例・要綱・事前協議制度に基づく運用として求めています。実務上は申請前段階で必ず申請先自治体に確認し、事前協議と関係書類の整備を進めてください。
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※ 本記事は執筆時点の法令(廃棄物の処理及び清掃に関する法律、同施行規則、環境省通知等)・各都道府県の運用に基づき作成しています。個別の許可区分・保管上限・事前協議の要否は、申請先自治体の手引きや事前相談で必ずご確認ください。


