相続関連

数次相続の遺産分割協議書の書き方|相次いで相続が発生した場合の対応を解説

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「父の遺産分割が終わらないうちに母も亡くなってしまった」「祖父名義の土地を相続したい」——数次相続は相続関係が重層的になり、協議書の書き方を誤ると後日やり直しを余儀なくされます。2024年4月施行の相続登記義務化により、長年放置されてきた数次相続案件にも期限管理が求められるようになりました。

結論として、数次相続は各相続ごとに相続人・持分を確定したうえで、中間相続人の地位を承継した二次相続人全員が署名押印することにより、事案に応じて一体的又は個別に遺産分割協議書を整えます。中間相続が単独相続である場合に限り、中間省略登記も可能です。再転相続(民法916条)との区別、相次相続控除(相続税法20条)の活用、法定相続情報証明制度の利用が実務上のポイントです。

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数次相続の法的定義(民法887条・889条・896条)

数次相続とは、被相続人の死亡後、その遺産分割協議が完了する前に相続人の一人が死亡し、第二の相続が発生する場合をいいます。同時死亡の推定(民法32条の2)が及ぶ場面とは異なり、複数の相続が時間的に連続して発生する点が特徴です。民法896条により、二次被相続人の権利義務(一次相続で取得した遺産分割前の共有持分を含む)はその相続人(二次相続人)に包括承継されます。代襲相続(民法887条2項・889条2項)とは異なり、一次相続で相続人として確定していた者がその後に死亡する点に違いがあります。

数次相続・代襲相続・再転相続の違い

類型 発生時期 承継者 根拠条文
代襲相続 被相続人の死亡に相続人が死亡 死亡相続人の直系卑属(兄弟姉妹の場合は子のみ) 民法887条2項・889条2項
数次相続 被相続人の死亡、遺産分割完了前に相続人が死亡 死亡相続人(中間相続人)の相続人 民法896条
再転相続 相続人が承認・放棄を決めない熟慮期間内に死亡 死亡相続人の相続人(熟慮期間も承継) 民法916条

再転相続の熟慮期間(3か月)の起算点は、再転相続人が「自己のために相続の開始があったことを知った時」とするのが判例です(最判令和元年8月9日)。数次相続でも、二次相続人が一次相続について承認・放棄を判断する場合、この再転相続の規律が及ぶ場面があります。

数次相続における相続人・持分の確定

数次相続では、第一次相続と第二次相続は別個の相続として扱われます。各相続ごとに相続人の範囲・法定相続分を確定し、それぞれの相続関係を整理したうえで処理します。中間相続人が一次相続で取得した遺産分割前の共有持分を、二次相続人がさらに包括承継する構造となるため、最終的な署名押印者は「二次相続人全員」となります。

具体例:父→母の順で死亡したケース

  • 父(一次被相続人)死亡時の相続人:母・長男・長女(法定相続分は母1/2、長男・長女各1/4)
  • 遺産分割前に母(中間相続人)が死亡:母が承継した1/2の共有持分は、母の相続人(長男・長女)に包括承継
  • 結果として、父の遺産は長男・長女2人で協議し、二次相続協議書として整理

遺産分割協議書の書き方

記載項目 ポイント
見出し 「被相続人○○及び△△の相続に関する遺産分割協議書」と連名で明示(事案により別個作成も可)
被相続人情報 一次・二次それぞれの氏名・死亡年月日・本籍・最後の住所
相続関係 一次相続人として△△が承継し、△△の死亡により二次相続人が承継した旨を明記
遺産の表示 不動産は登記事項証明書どおり、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号
署名押印 二次相続人全員が実印で署名押印、印鑑証明書添付

協議書の記載例(抜粋)

「被相続人甲(令和○年○月○日死亡)の遺産分割協議が未了の間に、その相続人乙(令和○年○月○日死亡)が死亡したため、乙の相続人である丙及び丁が協議のうえ、甲の遺産につき次のとおり分割協議が成立した。」と前文を置き、財産の帰属を明記する形式が一般的です。協議書は事案に応じて一体的に1通で作成する方法と、各相続ごとに別個に作成する方法があります。

中間省略登記の可否

数次相続において、中間の相続が単独相続(相続人が1人)である場合に限り、一次被相続人から最終取得者への直接の相続登記(中間省略登記)が認められます(昭和30年12月16日民事甲2670号通達)。

中間省略登記が可能な例

  • 祖父死亡時の相続人が父1人(祖母・他の子なし)→ 父死亡時の相続人が長男1人 → 祖父から長男へ直接登記可
  • 遺産分割協議により中間相続人が単独相続したと整理される場合も含む

中間省略登記ができない例

  • 祖父死亡時の相続人が祖母・父・叔父の3人 → 父死亡時の相続人が長男 → 祖父から長男への直接登記は不可。祖父→(祖母・父・叔父)→長男 と二段階登記が必要

なお、相続登記の申請代理は司法書士業務(司法書士法3条1項2号)であるため、当所では提携司法書士へお繋ぎいたします。

相続登記義務化(2024年4月施行)と数次相続

令和3年改正の不動産登記法76条の2により、2024年4月1日から相続による所有権移転登記が義務化されました。相続の開始及び所有権の取得を知った日から3年以内に登記申請を行わない場合、10万円以下の過料の対象となります。施行日前に発生した相続も対象で、施行日と相続開始日のいずれか遅い日から3年以内(つまり長年放置していた数次相続案件は2027年3月末までが期限)に登記する必要があります。

相続人が多数で協議が長引く場合は、相続人申告登記(同法76条の3)を3年以内に行えば過料を回避できます。

登録免許税の免税措置(租税特別措置法84条の2の2、2026年3月までは84条の2の3)

数次相続で中間相続人を経て登記する場合、租税特別措置法84条の2の2により、一定要件を満たすと登録免許税が免税されます。

  • 1項:相続により土地の所有権を取得した者が、当該土地の登記をしないで死亡した場合 — 中間相続人を被相続人とする土地の相続登記の登録免許税が免税(令和9年〈2027年〉3月31日まで延長されています)
  • 2項:不動産価額100万円以下の土地の相続登記免税

適用期限・要件は法改正により変動するため、登記時に司法書士・税理士へ最新情報を確認してください。

相続税との関係:相次相続控除(相続税法20条)

10年以内に2回以上の相続が発生した場合、二次相続における相続税から一定額を控除する制度が相次相続控除(相続税法20条)です。

  • ✔ 一次相続で課税された相続税のうち、経過年数1年につき10%を減じた金額を二次相続の相続税から控除
  • ✔ 例:一次相続から3年後に二次相続が発生 → 一次相続税額の70%相当額が控除上限の基礎
  • ✔ 数次相続案件は短期間で相続が連続するため適用余地が大きい

相続税の申告期限は、各相続ごとに被相続人の死亡を知った日から10か月以内です(相続税法27条)。二次相続人が一次相続分の申告期限内に死亡した場合、その者の申告期限は二次相続人の相続人が二次相続発生を知った日から10か月以内に延長されます(同法27条2項)。税務申告の代理は税理士業務であるため、当所では提携税理士へお繋ぎいたします。

法定相続情報証明制度の活用

不動産登記規則247条に基づく法定相続情報証明制度(平成29年5月29日運用開始)を活用すると、戸籍謄本一式に代えて法定相続情報一覧図の写し1通で各種相続手続きを進められます。数次相続では戸籍が膨大になるため、この制度の活用で金融機関・登記所・税務署への提出負担が大幅に軽減されます。

  • ✔ 申出先:被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・不動産所在地のいずれかの登記所
  • ✔ 交付手数料:無料(戸籍謄本等の収集費用は別途)
  • ✔ 数次相続の場合、各相続ごとに一覧図を作成するのが基本

数次相続の戸籍収集の流れ

  1. 一次被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍・改製原戸籍)を収集
  2. 一次相続人全員の現在戸籍を収集
  3. 中間相続人(死亡した一次相続人)の出生から死亡までの戸籍を収集
  4. 二次相続人全員の現在戸籍を収集
  5. 各相続人の住民票・印鑑証明書を収集

本籍地が遠隔地にある場合、郵送請求で1〜2か月かかることもあります。広域交付制度(戸籍法120条の2、令和6年3月施行)を利用すれば、最寄りの市区町村窓口で本籍地外の戸籍も取得可能になりました(一部除外あり)。

よくあるケース

祖父の遺産分割未了で父が死亡し、母と子が祖父の遺産を分割するケース、複数世代にわたり未登記だった田舎の土地を整理するケースが典型です。相続登記義務化により放置していた数次相続案件も早急な対応が求められます。戸籍収集だけで数か月かかることもあり、早期着手が重要です。

よくある質問

Q1. 相続税の申告期限はどうなりますか。

各相続ごとに被相続人の死亡を知った日から10か月以内が原則です。二次相続人が一次相続分の申告期限内に死亡した場合は相続税法27条2項の特則が適用されます。

Q2. 協議書は何通作成しますか。

二次相続人全員が各1通ずつ所持できるよう人数分作成するのが実務です。一体作成・別個作成のいずれの場合も同様です。

Q3. 協議がまとまらない場合は。

家庭裁判所の遺産分割調停・審判になります。調停代理は弁護士業務です。

Q4. 数次相続と再転相続はどう違いますか。

数次相続は遺産分割協議完了前に相続人が死亡したケース、再転相続は熟慮期間(3か月)内に承認・放棄を決めずに相続人が死亡したケースです(民法916条)。再転相続では熟慮期間自体が再転相続人に承継されます。

Q5. 中間省略登記ができないと費用はどう変わりますか。

二段階登記となり、登録免許税が中間相続分・最終取得分でそれぞれかかります。ただし租税特別措置法84条の2の2の免税要件を満たせば中間相続分が免税となる場合があります。

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まとめ

  • 数次相続は相続が連続して発生するケース(民法896条)
  • 各相続ごとに相続人・持分を整理する必要がある
  • 協議書は事案に応じて一体的又は個別に作成
  • 中間相続が単独相続の場合のみ中間省略登記が可能(昭和30年通達)
  • 2024年4月施行の相続登記義務化(不動産登記法76条の2)に注意
  • 登録免許税の免税措置(租特法84条の2の2)の活用検討
  • 相次相続控除(相続税法20条)で二次相続の税負担を軽減
  • 法定相続情報証明制度で戸籍提出負担を軽減
  • 税務・相続放棄の判断は各相続単位で行う

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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