補助金関連

雇用調整助成金の特例措置|通常制度・コロナ後の運用と申請手続

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雇用調整助成金(雇調金)は、景気変動・産業構造変化等による事業活動縮小時に、労働者を解雇せず休業・教育訓練・出向で雇用維持する事業主への助成制度です。コロナ禍での特例措置(最大15,000円/日助成)は段階的に縮小されましたが、依然として通常制度・特例措置として活用される場面があります。

本記事の結論:

  • 雇用調整助成金には、休業・教育訓練・出向で1人1日約8,490円〜の助成(中小企業2/3)を行う通常制度があります。
  • 自然災害・感染症・産業構造変化等の場面別に各種特例措置が用意されており、要件・助成率・上限額が緩和されます。
  • 流れは事前の休業計画書を労働局に届出→休業実施・賃金支払→支給申請、です。
  • 休業協定書・支給申請書等の労務手続は社会保険労務士の業務範囲で、当事務所は事業計画書の作成・経営判断材料の整理で関与し、申請本体は提携社労士へ連携します。

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根拠法令・制度

  • 雇用保険法 62条(雇用安定事業)
  • 雇用調整助成金支給要領(厚生労働省)
  • 労働基準法 26条(休業手当)

1. 雇用調整助成金の基本構造

1-1. 制度の目的

景気変動・産業構造変化等による事業活動縮小時に、事業主が労働者を解雇せず休業・教育訓練・出向によって雇用を維持した場合、休業手当等の一部を助成。雇用維持・失業予防が政策目的。

1-2. 主要な助成対象

  • 休業(一時的休業)
  • 教育訓練(研修・スキルアップ)
  • 出向(在籍出向・グループ会社への出向)

2. 通常制度(コロナ特例終了後)

2-1. 助成率

区分 休業手当への助成率
中小企業 2/3
大企業 1/2
解雇等を行わない場合(中小) 2/3+加算
解雇等を行わない場合(大) 1/2+加算

2-2. 助成額の算定

  • 「平均賃金日額×休業手当支給率(60%以上)×助成率」
  • 1人1日あたり上限:約8,490円(変動あり)
  • 1人あたり年間支給日数:100日が基本(事業所単位150日)

2-3. 主要要件

  • 事業活動縮小(売上高・生産量等が直近3か月平均で前年同期比10%以上減少)
  • 雇用保険適用事業所
  • 労使協定の締結
  • 休業計画届の事前提出
  • 休業手当支払(労基法26条:平均賃金の60%以上)

3. 教育訓練の特例

3-1. 教育訓練の意義

休業中の労働者に対する教育訓練(研修・スキルアップ)の実施。労働者の能力向上と企業の競争力維持に寄与。

3-2. 助成額

  • 休業手当への助成(通常通り)
  • 教育訓練加算:1人1日あたり1,200円

3-3. 対象訓練

  • 事業所内訓練
  • 事業所外での社外訓練
  • OJT・OFF-JT問わず

4. 出向の特例

4-1. 出向の意義

事業活動縮小時に、自社の労働者を他社(グループ会社等)に在籍出向させ、雇用を維持。出向先での就業による経験・スキル向上にもつながる。

4-2. 助成額

  • 出向元事業主への助成(出向中の労働費用負担)
  • 出向先事業主への助成(受入準備費用等)

4-3. 産業雇用安定助成金

出向に特化した「産業雇用安定助成金」(雇調金とは別制度)も活用可能。出向元・出向先双方に助成。

5. 特例措置(場面別)

5-1. 自然災害対応

地震・台風・豪雨等による事業活動縮小時の特例。生産指標要件の緩和、助成上限額の引上げ等。

5-2. 感染症対応

新型コロナウイルス感染症等の対応で大幅な特例措置(雇調金・新型コロナ特例:最大15,000円/日)。2023年4月以降縮小、現在は通常制度に移行。

5-3. 産業構造変化対応

EV化等の産業構造変化に伴う事業転換時の特例。経過的な雇用維持支援。

6. 申請の流れ

  1. 事業活動縮小の確認(売上高・生産量等の減少確認)
  2. 労使協定の締結
  3. 休業計画届の作成・労働局への提出
  4. 休業実施・休業手当支払
  5. 支給申請書の作成(休業実施月の翌月から2か月以内)
  6. 労働局審査
  7. 助成金支給

7. 必要書類

7-1. 計画届

  • 休業実施計画届
  • 労使協定書
  • 事業活動縮小を示す資料(売上推移等)

7-2. 支給申請

  • 支給申請書
  • 休業実績一覧表
  • 賃金台帳・出勤簿
  • 休業手当支払の確認資料
  • 労働者ごとの平均賃金算定書類

8. 注意点

8-1. 計画届事前提出が絶対要件

休業実施前に計画届を提出していないと、助成対象外。「先に休業させてから後追いで計画届」では支給対象外。

8-2. 休業手当の支払が必要

労基法26条に基づき、平均賃金の60%以上の休業手当を労働者に支払うことが要件。支払なき休業は助成対象外。

8-3. 雇用保険被保険者が対象

雇用保険被保険者の労働者のみが助成対象。雇用保険未加入の労働者は対象外。

8-4. 正社員・有期契約・パート問わず

雇用保険被保険者であれば、正社員・有期契約社員・パート・アルバイトも対象。

9. 業務範囲の整理

9-1. 行政書士の業務範囲

  • 休業計画書の作成サポート
  • 事業計画策定支援
  • 申請書類の整備サポート

9-2. 業務範囲外(提携専門家を紹介)

  • 休業手当の計算 → 社会保険労務士業務
  • 就業規則・労使協定の作成 → 社会保険労務士業務
  • 労働局への手続代理 → 社会保険労務士業務
  • 労使紛争・解雇トラブル → 弁護士業務
  • 給与計算・年末調整 → 社会保険労務士・税理士業務

注:雇用調整助成金申請の主要業務(社労士法2条関係)は社会保険労務士業務です。行政書士は計画策定の経営的サポート・周辺業務で関与。

FAQ|よくあるご質問

Q1. コロナ特例の最大15,000円/日はまだ受けられますか?
A. コロナ特例は2023年5月以降段階的に縮小・終了。現在は通常制度の上限約8,490円/日が基本。

Q2. 1人1日いくらの助成が受けられますか?
A. 「平均賃金日額×休業手当支給率×助成率(中小2/3)」で算定。上限約8,490円/日。労働者の平均賃金により変動。

Q3. パート・アルバイトも助成対象ですか?
A. 雇用保険被保険者であれば対象。週20時間以上勤務等の要件を満たすパート・アルバイトも対象。

Q4. 休業計画届はいつまでに提出すればいいですか?
A. 休業実施前に提出が原則。事後提出は認められません。事業活動縮小の見込みが立った段階で速やかに準備。

Q5. 教育訓練を実施した場合の加算はいくらですか?
A. 1人1日あたり1,200円の教育訓練加算。休業手当への助成と併給可能。

Q6. 不正受給したらどうなりますか?
A. 支給決定取消・返還・5年間の不支給措置・事業主名公表。悪質事案は詐欺罪で刑事告訴の可能性。

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まとめ

雇用調整助成金は、事業活動縮小時に労働者を解雇せず休業・教育訓練・出向で雇用維持した事業主への助成制度です。通常制度では中小企業2/3・大企業1/2の助成率、1人1日約8,490円が上限。事前の休業計画届提出と休業手当支払が必須要件。実労務手続は社会保険労務士業務であり、行政書士は計画策定の周辺サポートで関与。労務手続は社会保険労務士業務、紛争解決は弁護士業務という業際を踏まえ、専門家チームで対応します。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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