公開日:2026年5月15日
雇用調整助成金(雇調金)は、景気変動・産業構造変化等による事業活動縮小時に、労働者を解雇せず休業・教育訓練・出向で雇用維持する事業主への助成制度です。コロナ禍での特例措置(最大15,000円/日助成)は段階的に縮小されましたが、依然として通常制度・特例措置として活用される場面があります。
本記事の結論:
- 雇用調整助成金には、休業・教育訓練・出向で1人1日約8,490円〜の助成(中小企業2/3)を行う通常制度があります。
- 自然災害・感染症・産業構造変化等の場面別に各種特例措置が用意されており、要件・助成率・上限額が緩和されます。
- 流れは事前の休業計画書を労働局に届出→休業実施・賃金支払→支給申請、です。
- 休業協定書・支給申請書等の労務手続は社会保険労務士の業務範囲で、当事務所は事業計画書の作成・経営判断材料の整理で関与し、申請本体は提携社労士へ連携します。
目次
根拠法令・制度
- 雇用保険法 62条(雇用安定事業)
- 雇用調整助成金支給要領(厚生労働省)
- 労働基準法 26条(休業手当)
1. 雇用調整助成金の基本構造
1-1. 制度の目的
景気変動・産業構造変化等による事業活動縮小時に、事業主が労働者を解雇せず休業・教育訓練・出向によって雇用を維持した場合、休業手当等の一部を助成。雇用維持・失業予防が政策目的。
1-2. 主要な助成対象
- 休業(一時的休業)
- 教育訓練(研修・スキルアップ)
- 出向(在籍出向・グループ会社への出向)
2. 通常制度(コロナ特例終了後)
2-1. 助成率
| 区分 | 休業手当への助成率 |
|---|---|
| 中小企業 | 2/3 |
| 大企業 | 1/2 |
| 解雇等を行わない場合(中小) | 2/3+加算 |
| 解雇等を行わない場合(大) | 1/2+加算 |
2-2. 助成額の算定
- 「平均賃金日額×休業手当支給率(60%以上)×助成率」
- 1人1日あたり上限:約8,490円(変動あり)
- 1人あたり年間支給日数:100日が基本(事業所単位150日)
2-3. 主要要件
- 事業活動縮小(売上高・生産量等が直近3か月平均で前年同期比10%以上減少)
- 雇用保険適用事業所
- 労使協定の締結
- 休業計画届の事前提出
- 休業手当支払(労基法26条:平均賃金の60%以上)
3. 教育訓練の特例
3-1. 教育訓練の意義
休業中の労働者に対する教育訓練(研修・スキルアップ)の実施。労働者の能力向上と企業の競争力維持に寄与。
3-2. 助成額
- 休業手当への助成(通常通り)
- 教育訓練加算:1人1日あたり1,200円
3-3. 対象訓練
- 事業所内訓練
- 事業所外での社外訓練
- OJT・OFF-JT問わず
4. 出向の特例
4-1. 出向の意義
事業活動縮小時に、自社の労働者を他社(グループ会社等)に在籍出向させ、雇用を維持。出向先での就業による経験・スキル向上にもつながる。
4-2. 助成額
- 出向元事業主への助成(出向中の労働費用負担)
- 出向先事業主への助成(受入準備費用等)
4-3. 産業雇用安定助成金
出向に特化した「産業雇用安定助成金」(雇調金とは別制度)も活用可能。出向元・出向先双方に助成。
5. 特例措置(場面別)
5-1. 自然災害対応
地震・台風・豪雨等による事業活動縮小時の特例。生産指標要件の緩和、助成上限額の引上げ等。
5-2. 感染症対応
新型コロナウイルス感染症等の対応で大幅な特例措置(雇調金・新型コロナ特例:最大15,000円/日)。2023年4月以降縮小、現在は通常制度に移行。
5-3. 産業構造変化対応
EV化等の産業構造変化に伴う事業転換時の特例。経過的な雇用維持支援。
6. 申請の流れ
- 事業活動縮小の確認(売上高・生産量等の減少確認)
- 労使協定の締結
- 休業計画届の作成・労働局への提出
- 休業実施・休業手当支払
- 支給申請書の作成(休業実施月の翌月から2か月以内)
- 労働局審査
- 助成金支給
7. 必要書類
7-1. 計画届
- 休業実施計画届
- 労使協定書
- 事業活動縮小を示す資料(売上推移等)
7-2. 支給申請
- 支給申請書
- 休業実績一覧表
- 賃金台帳・出勤簿
- 休業手当支払の確認資料
- 労働者ごとの平均賃金算定書類
8. 注意点
8-1. 計画届事前提出が絶対要件
休業実施前に計画届を提出していないと、助成対象外。「先に休業させてから後追いで計画届」では支給対象外。
8-2. 休業手当の支払が必要
労基法26条に基づき、平均賃金の60%以上の休業手当を労働者に支払うことが要件。支払なき休業は助成対象外。
8-3. 雇用保険被保険者が対象
雇用保険被保険者の労働者のみが助成対象。雇用保険未加入の労働者は対象外。
8-4. 正社員・有期契約・パート問わず
雇用保険被保険者であれば、正社員・有期契約社員・パート・アルバイトも対象。
9. 業務範囲の整理
9-1. 行政書士の業務範囲
- 休業計画書の作成サポート
- 事業計画策定支援
- 申請書類の整備サポート
9-2. 業務範囲外(提携専門家を紹介)
- 休業手当の計算 → 社会保険労務士業務
- 就業規則・労使協定の作成 → 社会保険労務士業務
- 労働局への手続代理 → 社会保険労務士業務
- 労使紛争・解雇トラブル → 弁護士業務
- 給与計算・年末調整 → 社会保険労務士・税理士業務
注:雇用調整助成金申請の主要業務(社労士法2条関係)は社会保険労務士業務です。行政書士は計画策定の経営的サポート・周辺業務で関与。
FAQ|よくあるご質問
Q1. コロナ特例の最大15,000円/日はまだ受けられますか?
A. コロナ特例は2023年5月以降段階的に縮小・終了。現在は通常制度の上限約8,490円/日が基本。
Q2. 1人1日いくらの助成が受けられますか?
A. 「平均賃金日額×休業手当支給率×助成率(中小2/3)」で算定。上限約8,490円/日。労働者の平均賃金により変動。
Q3. パート・アルバイトも助成対象ですか?
A. 雇用保険被保険者であれば対象。週20時間以上勤務等の要件を満たすパート・アルバイトも対象。
Q4. 休業計画届はいつまでに提出すればいいですか?
A. 休業実施前に提出が原則。事後提出は認められません。事業活動縮小の見込みが立った段階で速やかに準備。
Q5. 教育訓練を実施した場合の加算はいくらですか?
A. 1人1日あたり1,200円の教育訓練加算。休業手当への助成と併給可能。
Q6. 不正受給したらどうなりますか?
A. 支給決定取消・返還・5年間の不支給措置・事業主名公表。悪質事案は詐欺罪で刑事告訴の可能性。
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まとめ
雇用調整助成金は、事業活動縮小時に労働者を解雇せず休業・教育訓練・出向で雇用維持した事業主への助成制度です。通常制度では中小企業2/3・大企業1/2の助成率、1人1日約8,490円が上限。事前の休業計画届提出と休業手当支払が必須要件。実労務手続は社会保険労務士業務であり、行政書士は計画策定の周辺サポートで関与。労務手続は社会保険労務士業務、紛争解決は弁護士業務という業際を踏まえ、専門家チームで対応します。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


