公開日:2026年5月15日
雇用調整助成金(雇調金)は、景気変動・産業構造変化等による事業活動縮小時に、労働者を解雇せず休業・教育訓練・出向で雇用維持する事業主への助成制度です。コロナ禍での特例措置(最大15,000円/日助成)は段階的に縮小されましたが、依然として通常制度・特例措置として活用される場面があります。
本記事の結論:
- 雇用調整助成金は、休業・教育訓練・出向で雇用維持する事業主への助成制度で、助成率は中小企業2/3・大企業1/2が基本、1人1日あたり上限は8,870円(令和7年8月1日現在。毎年8月1日に雇用保険の基本手当日額の最高額に連動して改定)です。
- 自然災害・感染症・産業構造変化等に応じて、対象地域・期間・要件・助成率・上限額が個別に見直される特例措置が告示される場合があります(常設・全国一律ではない)。
- 流れは事前の休業計画届を労働局に提出→休業実施・賃金支払→支給申請、です。
- 雇用調整助成金の申請書類作成・提出代行は社会保険労務士の独占業務(社労士法2条1項1号・27条)のため、当事務所は申請代行を行わず、提携社労士へのご紹介や周辺の経営計画整理に対応します。一方、ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金等の経済産業省系補助金は当事務所で着手金0円・完全成果報酬型で申請代行に対応します。
助成金関連の情報整理サポート
助成金関連の情報整理について、行政書士法人Treeで対応します。雇用関係助成金(厚生労働省系)の申請書作成・代行は社会保険労務士業務(社労士法第2条第1項各号)です。
目次
根拠法令・制度(2026年5月時点)
- 雇用保険法62条(雇用安定事業)
- 雇用保険法施行規則102条の2・102条の3(雇用調整助成金の支給要件。実体的な支給要件は102条の3)
- 雇用調整助成金支給要領(厚生労働省)
- 雇用調整助成金ガイドブック(厚生労働省・令和7年4月1日現在版)
- 労働基準法26条(休業手当・平均賃金の60%以上)
- 産業雇用安定助成金支給要領(出向支援に特化した別制度)
- 社会保険労務士法2条1項1号(雇用関係助成金申請書類作成は社労士の独占業務)・27条(業務制限)
- 刑法246条(詐欺罪)・雇用保険法62条(不正受給に対する措置)
現在の雇用調整助成金は「通常制度」が基本
新型コロナ特例の緊急対応期間は終了しており、現在の雇用調整助成金は通常制度を基本に、災害等の個別特例を確認する運用です。通常制度では、雇用保険適用事業所が雇用保険被保険者に対して休業・教育訓練・出向を行い、休業手当等を支払った場合に、中小企業2/3・大企業1/2を基本として助成されます。休業等を実施する前の計画届、労使協定、休業手当の支払、支給申請期限の管理が重要です。教育訓練を行う場合は加算対象となることがありますが、通常業務の延長としてのOJT等は対象外となる場合があるため、支給要領で確認します。
1. 雇用調整助成金の基本構造
1-1. 制度の目的
景気変動・産業構造変化等による事業活動縮小時に、事業主が労働者を解雇せず休業・教育訓練・出向によって雇用を維持した場合、休業手当等の一部を助成。雇用維持・失業予防が政策目的。
1-2. 主要な助成対象
- 休業(一時的休業)
- 教育訓練(研修・スキルアップ)
- 出向(在籍出向・グループ会社への出向)
2. 通常制度(コロナ特例終了後)
2-1. 助成率(基本)
| 区分 | 休業手当への助成率 |
|---|---|
| 中小企業 | 2/3 |
| 大企業 | 1/2 |
解雇等を行わない場合の上乗せや特例的な助成率は、特例措置・年度ごとの制度改正により変動するため、最新の支給要領で確認します。
2-1-2. 累計支給日数30日経過後の助成率低減(令和5年4月以降)
令和5年4月以降、累計支給日数が30日に達した判定基礎期間の次の判定基礎期間からは、教育訓練の実施状況に応じて助成率が変動します。
| 教育訓練実施率 | 中小企業 | 大企業 | 教育訓練加算 |
|---|---|---|---|
| 1/10未満 | 1/2 | 1/4 | 1,200円 |
| 1/10以上1/5未満 | 2/3 | 1/2 | 1,200円 |
| 1/5以上 | 2/3 | 1/2 | 1,800円 |
教育訓練を実施しない長期休業は助成率が低減される設計で、教育訓練の活用と職業能力開発を促進する政策意図に基づきます。
2-2. 助成額の算定
- 「平均賃金日額×休業手当支給率(60%以上)×助成率」
- 1人1日あたり上限:8,870円(令和7年8月1日現在。雇用保険の基本手当日額の最高額に連動して毎年8月1日に改定。最新数値は厚生労働省「雇用調整助成金ガイドブック」で確認)
- 支給限度日数:1年100日・3年150日(労働者ごとではなく事業所単位での計算)
2-3. 主要要件
- ①雇用保険適用事業所であること
- ②生産量要件:売上高または生産量等の事業活動を示す指標の最近3か月間の月平均値が前年同期と比較して10%以上減少していること
- ③雇用量要件:雇用保険被保険者数及び受け入れている派遣労働者数の最近3か月間の月平均値が前年同期と比較して、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上、中小企業以外の場合は5%を超えてかつ6人以上増加していないこと
- ④労使協定の締結(休業・教育訓練・出向の実施について)
- ⑤休業計画届の事前提出(休業実施前)
- ⑥休業手当支払(労基法26条:平均賃金の60%以上)
- ⑦雇用保険被保険者を対象とした実施であること
- ⑧過去に雇調金の支給を受けたことがある場合、前回の対象期間満了日の翌日から1年を超えていること
3. 教育訓練の特例
3-1. 教育訓練の意義
休業中の労働者に対する教育訓練(研修・スキルアップ)の実施。労働者の能力向上と企業の競争力維持に寄与。
3-2. 助成額
- 休業手当への助成(通常通り)
- 教育訓練加算:1人1日あたり1,200円
3-3. 対象訓練
対象となる教育訓練は、所定労働日に通常業務から離れて行う、職業上必要な知識・技能習得のための訓練です。
- 事業所内訓練(通常業務から離れて行うもの)
- 事業所外での社外訓練
通常業務の延長としてのOJT、法令上義務付けられた研修、通常の社内教育カリキュラム等は対象外となる場合があります。教育訓練加算の対象となるかは、訓練内容・実施時間・実施方法を支給要領で確認する必要があります。
4. 出向の特例
4-1. 出向の意義
事業活動縮小時に、自社の労働者を他社(グループ会社等)に在籍出向させ、雇用を維持。出向先での就業による経験・スキル向上にもつながる。
4-2. 助成額
雇用調整助成金の出向では、出向元事業主が負担する出向中の賃金等の一部が助成対象となります。出向先の受入れや在籍型出向のマッチング、スキルアップを目的とした出向については、産業雇用安定助成金等の別制度も確認します。
4-3. 産業雇用安定助成金
産業雇用安定助成金は、在籍型出向、災害特例、スキルアップ支援等に関する雇用調整助成金とは別の制度です。対象となる出向、助成対象経費、出向元・出向先のどちらが対象となるかはコースごとに異なるため、最新の厚生労働省案内で確認します。
5. 特例措置(場面別)
5-1. 自然災害対応
地震・台風・豪雨等の自然災害については、対象地域・対象期間・要件・助成率・上限額が個別に見直される特例措置が告示される場合があります(生産指標要件の緩和、助成上限額の引上げ等)。常時全国一律で利用できるものではないため、休業等を予定する時点で厚生労働省・労働局の最新情報を確認してください。
5-2. 感染症対応
新型コロナウイルス感染症等の対応で大幅な特例措置が実施されました(雇調金・新型コロナ特例:緊急対応期間令和2年4月1日〜令和4年11月30日に最大15,000円/日)。令和4年12月1日〜令和5年3月31日は経過措置期間(コロナ特例利用事業主に限定)として継続し、令和5年(2023年)4月1日以降は通常制度に完全移行しています。今後も感染症の拡大等により新たな特例措置が告示される可能性があるため、最新の厚生労働省公式情報の確認が推奨されます。
5-3. 産業構造変化対応
EV化等の産業構造変化に伴う事業転換時の特例。経過的な雇用維持支援。
6. 申請の流れ
- 事業活動縮小の確認(売上高・生産量等の減少確認)
- 労使協定の締結
- 休業計画届の作成・労働局への提出
- 休業実施・休業手当支払
- 支給申請書の作成(休業実施月の翌月から2か月以内)
- 労働局審査
- 助成金支給
7. 必要書類
雇用調整助成金では、以下のような書類が必要となります。これらの申請書類の作成・提出代理、休業手当計算、労使協定作成は社会保険労務士業務のため、事業主は社労士または労働局・ハローワークに確認しながら進めます。行政書士が関与する場合は、売上推移・事業計画・資金繰り等の周辺資料整理に限定されます。
7-1. 計画届(社労士業務)
- 休業実施計画届
- 労使協定書
- 事業活動縮小を示す資料(売上推移等)
7-2. 支給申請(社労士業務)
- 支給申請書
- 休業実績一覧表
- 賃金台帳・出勤簿
- 休業手当支払の確認資料
- 労働者ごとの平均賃金算定書類
8. 注意点
8-1. 計画届事前提出が絶対要件
休業実施前に計画届を提出していないと、助成対象外。「先に休業させてから後追いで計画届」では支給対象外。
8-2. 休業手当の支払が必要
労基法26条に基づき、平均賃金の60%以上の休業手当を労働者に支払うことが要件。支払なき休業は助成対象外。
8-3. 雇用保険被保険者が対象
通常の雇用調整助成金は、雇用保険被保険者が対象です。コロナ特例期には雇用保険被保険者以外を対象とする別制度(緊急雇用安定助成金)が設けられた時期もありましたが、現在の通常制度では対象者を雇用保険被保険者として確認します。
8-4. 正社員・有期契約・パート問わず
雇用保険被保険者であれば、正社員・有期契約社員・パート・アルバイトも対象。
9. 業務範囲の整理
9-1. 行政書士の関与可能な範囲
雇用調整助成金の計画届・支給申請書・休業協定書・休業手当計算・労働局への提出代理は、社会保険労務士の独占業務(社労士法2条1項1号・27条)であり、行政書士は申請代行を行うことができません。当事務所の対応範囲は以下の周辺支援に限定されます。
- 事業活動縮小の経営状況整理(売上推移・資金繰り・事業計画等の周辺資料整理)
- 社会保険労務士へ引き継ぐための事実関係整理
- 補助金・助成金全般の制度比較情報の提供
- 提携社会保険労務士へのご紹介・連携窓口対応
- 経済産業省系補助金(ものづくり・持続化・IT導入・事業再構築等)の申請代行(着手金0円・完全成果報酬型)
9-2. 業務範囲外(提携専門家を紹介)
- 休業手当の計算 → 社会保険労務士業務
- 就業規則・労使協定の作成 → 社会保険労務士業務
- 労働局への手続代理 → 社会保険労務士業務
- 労使紛争・解雇トラブル → 弁護士業務
- 給与計算・年末調整 → 社会保険労務士・税理士業務
注:雇用調整助成金申請の主要業務(社労士法2条関係)は社会保険労務士業務です。行政書士は計画策定の経営的サポート・周辺業務で関与。
FAQ|よくあるご質問
Q1. コロナ特例の最大15,000円/日はまだ受けられますか?
コロナ特例措置は令和5年(2023年)3月31日で経過措置を含め完全終了し、令和5年4月1日以降は通常制度に移行しています。現在の通常制度の上限は1人1日あたり8,870円(令和7年8月1日現在)が基本です。
Q2. 1人1日いくらの助成が受けられますか?
「平均賃金日額×休業手当支給率×助成率(中小2/3・大企業1/2)」で算定します。1人1日あたり上限は8,870円(令和7年8月1日現在、毎年8月1日に改定される雇用保険の基本手当日額の最高額に連動)で、労働者の平均賃金により変動します。
Q3. パート・アルバイトも助成対象ですか?
雇用保険被保険者であれば対象。週20時間以上勤務等の要件を満たすパート・アルバイトも対象。
Q4. 休業計画届はいつまでに提出すればいいですか?
休業実施前に提出が原則。事後提出は認められません。事業活動縮小の見込みが立った段階で速やかに準備。
Q5. 教育訓練を実施した場合の加算はいくらですか?
累計支給日数30日までは1人1日あたり1,200円の教育訓練加算が適用されます。累計支給日数30日経過後は、教育訓練実施率に応じて加算が変動し、教育訓練実施率1/5以上の場合は1,800円(中小企業)の加算となります。休業手当への助成と併給可能です。
Q6. 不正受給したらどうなりますか?
支給決定取消・返還・5年間の不支給措置・事業主名公表。悪質事案は詐欺罪で刑事告訴の可能性。
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助成金関連の情報整理サポート
助成金関連の情報整理について、行政書士法人Treeで対応します。雇用関係助成金(厚生労働省系)の申請書作成・代行は社会保険労務士業務(社労士法第2条第1項各号)です。
まとめ
雇用調整助成金は、事業活動縮小時に労働者を解雇せず休業・教育訓練・出向で雇用維持した事業主への助成制度です。通常制度では中小企業2/3・大企業1/2の助成率、1人1日8,870円(令和7年8月1日現在)が上限。事前の休業計画届提出と休業手当支払が必須要件で、累計支給日数30日経過後は教育訓練実施率に応じて助成率が変動します(令和5年4月以降)。雇調金の申請手続自体は社会保険労務士の独占業務であり、当事務所は提携社労士へのご紹介や事業計画整理等の周辺支援で対応します。一方、ものづくり・小規模事業者持続化・IT導入・事業再構築等の経済産業省系補助金については、行政書士法人Treeが着手金0円・完全成果報酬型・不採択時無料で申請代行に対応していますので、雇用維持と並行した設備投資・販路開拓・IT化等の補助金活用についてもお気軽にご相談ください。
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