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放置車両の撤去・処分手続き|私有地の放置車両への対応方法を解説

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「私有地に見知らぬ車が放置されているが、勝手に撤去してもよいのか」「何か月も動かない車があるが、どこに相談すればいいのかわからない」——私有地に放置された車両への対応に困っている土地所有者は少なくありません。結論から言えば、放置車両を土地所有者が勝手に撤去・処分することは「自力救済の禁止」の原則に反し、違法となるおそれがあります。適法に対処するには、車両の所有者を調査し、内容証明郵便で撤去を催告し、応じなければ裁判手続きを経る必要があります。特に、所有者不明、公示送達、強制執行が関わる場面では、対応の難易度が高くなるため、早めに専門家への相談を検討すべきです。この記事では、私有地の放置車両に対する法的な対応方法を順を追って解説します。

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なぜ放置車両を勝手に撤去してはいけないのか?

日本の法律では、たとえ自分の土地に無断駐車・放置されている車両であっても、土地所有者が自力で撤去・処分することは原則として認められていません。これは、いわゆる「自力救済の禁止」という判例上・法秩序上の原則によるものです。

自力救済の禁止とは?

自力救済とは、権利を侵害された者が裁判所などの公的機関を通さずに、自らの力で権利を回復する行為を指します。日本の法制度では、権利の実現は裁判所の手続きを通じて行うべきとされており、自力救済は原則として禁止されています(最高裁昭和40年12月7日判決参照)。

放置車両を無断で撤去・処分した場合、以下のような法的リスクがあります。

  • 器物損壊罪(刑法261条):車両を損傷・破壊した場合
  • 刑事責任を問われる可能性:無断で車両を持ち去ったり処分したりした場合は、具体的事情に応じて刑事上の問題が生じる可能性
  • 不法行為に基づく損害賠償民法709条):車両の所有者から損害賠償を請求される可能性

そのため、放置車両への対処は法的手続きに則って進める必要があります。

放置車両の所有者を特定する方法は?

対応の第一歩は、車両の所有者を特定することです。ナンバープレートが付いている場合と付いていない場合で調査方法が異なります。

ナンバープレートがある場合:登録事項等証明書の取得

ナンバープレートが確認できる場合は、運輸支局(陸運局)登録事項等証明書を請求することで、車両の所有者・使用者の氏名と住所を確認できます。

請求に必要な情報・書類

必要事項 内容
車両の情報 自動車登録番号(ナンバープレートの番号)または車台番号
請求理由 私有地への放置車両の所有者確認等、具体的な理由を記載
請求者の本人確認書類 運転免許証等
手数料 1件あたり400円(2026年4月1日改定後)
放置の事実を示す資料 放置車両の写真、土地の登記事項証明書や賃貸借契約書など、私有地であることを証明する資料

2007年の制度改正以降、登録事項等証明書の請求には請求理由の記載が必要になり、不正な目的での取得は罰則の対象とされています。放置車両の所有者確認は正当な理由として認められます。

ナンバープレートがない場合

ナンバープレートが外されている場合や車台番号が確認できない場合は、運輸支局での所有者調査が困難です。この場合は以下の方法を検討します。

  • 警察への相談:盗難車両の可能性があるため、まず警察に届け出る
  • 弁護士への相談:弁護士法23条の2に基づく「弁護士会照会」を利用して所有者を調査する方法がある

所有者が判明した場合の対応手順は?

所有者が判明したら、まず任意の撤去を求め、応じなければ法的手続きに進みます。

ステップ1:内容証明郵便で撤去を催告する

所有者に対し、内容証明郵便で車両の撤去を求める通知書を送付します。内容証明郵便は、いつ・どのような内容の文書を誰に送ったかを日本郵便が証明するもので、後の裁判で「通知した事実」を立証するための重要な証拠となります。

撤去催告書の記載例

通知書(記載例)

令和○年○月○日

〒○○○-○○○○
○○県○○市○○町○丁目○番○号
○○ ○○ 殿

〒○○○-○○○○
○○県○○市○○町○丁目○番○号
通知人 ○○ ○○

放置車両の撤去に関する通知書

通知人は、下記所在地の土地(以下「本件土地」という。)の所有者です。

貴殿が所有する自動車(登録番号:○○○○ ○○○ ○ ○○○○、車名:○○○○、車体の色:○○色)が、令和○年○月頃から本件土地上に放置されております。

本件土地は通知人の所有地であり、貴殿が本件土地を使用する権限はありません。当該車両の放置は通知人の土地所有権を侵害するものです。

つきましては、本書面到達後14日以内に上記車両を撤去してください。上記期限までに撤去がなされない場合は、法的措置を講じますので、あらかじめ申し添えます。

土地の所在:○○県○○市○○町○丁目○番○

以上

ステップ2:撤去に応じない場合は裁判手続きへ

催告期限を過ぎても撤去されない場合は、裁判所に訴訟を提起します。具体的には、土地所有権に基づく妨害排除請求(物権的請求権)として、車両の撤去を求める訴訟を提起します。

訴訟の種類と管轄

訴額 裁判所 手続き
140万円以下 簡易裁判所 通常訴訟
140万円超 地方裁判所 通常訴訟

放置車両の撤去請求は金銭請求ではないため、訴額は土地の利用が妨げられていることによる損害額を基準に算定します。併せて、放置期間中の土地使用料相当額の損害賠償を請求することも検討できます。

ステップ3:判決の確定と強制執行

勝訴判決が確定すれば、それでも所有者が撤去しない場合は強制執行の手続きを取ることができます。車両撤去の強制執行は「代替執行」として行われ、執行官の監督のもと業者が車両を撤去し、その費用は相手方に請求します。

所有者が不明な場合はどう対応する?

登録事項等証明書で判明した住所に通知を送っても届かない場合や、そもそも所有者が特定できない場合の対応方法です。

公示送達を利用した訴訟提起

所有者の所在が不明な場合は、民事訴訟法第110条に基づく公示送達を利用して訴訟を提起することが可能です。公示送達とは、裁判所の掲示板に書類を掲示することで送達があったとみなす制度です。公示送達による訴訟でも、原告側で請求原因や証拠を適切に立証する必要があります。相手方が出頭しない場合でも、自動的に請求が認められるわけではありません。

対応の流れ

  1. 登録事項等証明書等で所有者の住所を調査する
  2. 判明した住所に内容証明郵便を送付する
  3. 宛所不明で返送された場合、住民票の追跡調査を行う
  4. 所在が判明しなければ、公示送達の申立てとともに妨害排除請求訴訟を提起する
  5. 判決確定後、強制執行(代替執行)で車両を撤去する

公道上の放置車両と私有地の放置車両の違い

放置車両への対応方法は、車両が置かれている場所が公道か私有地かで大きく異なります。

比較項目 公道上の放置車両 私有地の放置車両
根拠法令 道路交通法・自動車の保管場所の確保等に関する法律(車庫法) 民法(物権的請求権)
対応の主体 警察・道路管理者 土地所有者(私人)
行政の対応 道路交通法上の違法駐車取締りや道路管理者による対応の対象となる場合がある 原則として行政は介入しない(民事問題として扱われる)
撤去の方法 警察による撤去・移動が可能 裁判所の判決に基づく強制執行が必要
費用負担 行政が負担(車両所有者に求償) 土地所有者が立て替え、車両所有者に請求する

公道上であれば警察に通報することで行政的な対応が期待できますが、私有地の放置車両は民事上の問題として扱われるのが一般的です。ただし、盗難車両や犯罪関与の疑いがある場合、また所有者が判明した場合には警察が確認・指導を行うことがあるため、まず警察に相談することは有用です。

放置車両の対応でよくある不備・失敗|費用・期間の見通しも解説

不備1:証拠を残さずに撤去してしまう

放置状況を写真や動画で記録しないまま対応を進めると、後の裁判で放置の事実や期間を立証できなくなります。放置車両を発見した時点で、日付入りの写真を複数の角度から撮影し、ナンバープレート・車両の状態・放置場所がわかるように記録を残しましょう。

不備2:自力で車両を移動・処分してしまう

前述のとおり、自力救済は原則として違法です。たとえ長期間放置されていても、レッカー業者に依頼して勝手に移動したり、スクラップ業者に引き渡したりすると、土地所有者側が損害賠償責任を負うリスクがあります。

不備3:警察への届出だけで済ませてしまう

私有地の放置車両について警察に相談しても、「民事上の問題」として対応を断られることがほとんどです。警察への届出は盗難車両の確認としては有用ですが、撤去の実現には別途民事上の手続きが必要です。

不備4:内容証明郵便の記載内容が不十分

撤去催告書に車両の特定情報(登録番号・車名・色等)や撤去期限を明記していないと、後の裁判で催告の有効性が争われる可能性があります。通知書には具体的な情報を漏れなく記載しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 私有地に放置された車両を警察に撤去してもらえますか?

原則としてできません。私有地の放置車両は民事上の問題として扱われ、警察は「民事不介入」の原則により直接的な撤去対応を行いません。ただし、盗難車両の可能性がある場合は警察が調査に乗り出すことがあるため、まず最寄りの警察署に相談し、盗難届の有無を確認してもらうことは有用です。

Q. 放置車両の撤去にかかる費用は誰が負担しますか?

法的には車両の所有者が負担すべきですが、実際には土地所有者が裁判費用や強制執行費用を立て替えることになるのが一般的です。勝訴判決を得れば、訴訟費用は相手方の負担とする判決が出されますが、車両所有者に支払い能力がない場合は回収が困難になることもあります。訴訟提起前に費用対効果を検討することが重要です。

Q. 放置車両にナンバープレートがない場合はどうすればよいですか?

ナンバープレートがない場合は、車台番号(通常はエンジンルーム内やドアの内側に刻印されています)で調査を試みます。車台番号が確認できれば、運輸支局で登録事項等証明書を請求できる場合があります。車台番号も確認できない場合は、警察に届け出て盗難車両でないかの確認を依頼し、弁護士に相談のうえ対応を検討してください。

Q. 駐車場に長期間放置されたままの契約者の車両はどう対応すべきですか?

駐車場の賃貸借契約がある場合は、まず契約書の条項を確認してください。多くの場合、賃料未払い時の契約解除条項や残置物の処理に関する規定が含まれています。契約解除後も車両が残っている場合は、契約者(車両所有者)に対して内容証明郵便で撤去を催告し、応じなければ裁判手続きに進むことになります。契約関係がある分、所有者の特定は容易ですが、撤去の手続き自体は私有地の放置車両と同様に裁判を経る必要があります。

Q. 放置車両の自動車税は誰が払うのですか?

放置車両が一時抹消登録・永久抹消登録されていない限り、自動車税(種別割)は毎年4月1日時点の所有者に課税され続けます。つまり放置した車両の所有者は、車を放置している間も毎年自動車税を支払い続けなければなりません(支払わなければ滞納となります)。土地所有者からすると、所有者に自動車税の負担が続くことを伝えることが、任意撤去を促す交渉材料になる場合があります。なお、土地所有者が代わりに自動車税を支払う義務は一切ありません

Q. 放置車両を発見してからどのくらいで裁判手続きに進むべきですか?

法律上、裁判手続きに進むまでの待機期間に明確な定めはありません。ただし、内容証明郵便で設定した催告期限(一般的に到達後14日〜30日程度)を経過しても撤去されない場合は、速やかに訴訟提起を検討すべきです。放置期間が長引くほど土地の利用が妨げられ、損害が拡大するためです。

Q. 放置車両の土地使用料相当額の損害賠償はいくら請求できますか?

損害賠償として請求できる土地使用料相当額は、当該土地の近隣の駐車場料金が一つの目安になります。放置が開始された時点から撤去完了までの期間について、月額駐車場料金相当額を損害として請求するのが一般的です。ただし、実際に認められる金額は裁判所の判断によります。

Q. マンションの敷地内に放置車両がある場合、管理組合はどう対応すべきですか?

マンション管理組合が対応する場合も、基本的な流れは同じです。まず車両の所有者を調査し、区分所有者であれば管理規約に基づく対応を求め、外部の者であれば内容証明郵便で撤去を催告します。管理規約に放置車両の処理に関する規定がある場合は、その手続きに従います。規約に定めがない場合でも、自力救済は禁止されるため、最終的には裁判手続きが必要です。

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行政書士法人Treeでは、放置車両の撤去催告に必要な内容証明郵便の作成・送付から所有者調査のサポートまで承っております。内容証明郵便の作成は10,780円/件(税込)〜で対応しています(ミニマムプラン。事案に応じてスタンダード15,000円・フルサポート14,850円/件の各プランがあります)。まずはお気軽にご相談ください。相談は何度でも無料・全国対応です。

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※本記事は2026年4月時点の法令に基づき、細心の注意を払って作成しておりますが、一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案については専門家にご相談ください。
著者: 代表行政書士 櫻井勇輝 / 行政書士法人Tree

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