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理美容車の8ナンバー登録|施術設備の固定・給排水の構造要件と必要書類

更新: 約32分で読めます

高齢者施設や過疎地域への訪問理美容、イベント出店型のヘアサロン、災害時の避難所支援など、「車の中で髪を切る」ニーズは年々広がっています。こうした車両を運輸支局で登録するとき、車検証の「用途」欄を特種とし、いわゆる8ナンバーを取得する道があります。特種用途自動車には78の車体の形状が定められており、そのひとつが「理容・美容車」です。

ところが、この理容・美容車は実務上とてもつまずきやすい形状です。理由は大きく3つあります。第一に、構造要件そのものは5項目と短いのに、条文の読み方を誤ると設計をやり直すことになる点。第二に、8ナンバーを取るには理容所または美容所として都道府県知事に届出をした者であることを証する書面が不可欠で、車両側の工事だけでは完結しない点。第三に、記事タイトルにも掲げた給排水設備が、実は車両側の構造要件には書かれておらず、理容師法・美容師法側の衛生基準から要求されるという「二本立て」の構造になっている点です。

本記事では、国土交通省の「自動車の用途等の区分について(依命通達)」および「特種用途自動車の構造要件」の原文、理容師法・美容師法とその施行規則、厚生労働省の衛生管理要領、そして自治体が定める移動理容・移動美容の基準まで一次資料にあたり、理美容車を8ナンバーで登録するための構造要件と必要書類を実務目線で整理します。

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理美容車の8ナンバーとは|特種用途自動車の中での位置づけ

自動車検査証には、車名や型式のほかに「用途」が記録されます(道路運送車両法施行規則第35条の3第1項第12号)。この用途は「乗用」「乗合」「貨物」「特種」に区分され、特種と記録された自動車には登録番号標(ナンバープレート)の分類番号として「8」から始まる番号が指定されるため、一般に8ナンバーと呼ばれています。

どの自動車を特種用途自動車として扱うかを定めているのが、自動車局長による「自動車の用途等の区分について(依命通達)」(昭和35年9月6日付け自車第452号。最終改正 平成19年1月4日付け国自技第202号)です。以下、本記事ではこれを「用途区分通達」と呼びます。

特種用途自動車の3つの区分

用途区分通達4-1は、特種用途自動車等を「主たる使用目的が特種である自動車」と定義し、次の3つのすべてを満足するものと定めています。

  • (1) 主たる使用目的遂行に必要な構造及び装置を有し、かつ、4-1-1、4-1-2または4-1-3のいずれか1つに該当すること
  • (2) 最大積載量を有する自動車にあっては、乗車設備と物品積載装置との間に適当な隔壁または保護仕切等を備えたものであること(最大積載量500kg以下で、乗車人員が座席の背あてにより積載物品から保護される構造と認められるものを除く)
  • (3) 一定の型式認証車をベースとした3類型のいずれにも該当しないこと(詳細は後述)

そして4-1-1から4-1-3は、それぞれ次の性格を持つ区分です。

  • 4-1-1 専ら緊急の用に供するための自動車(13形状)……救急車、消防車、警察車など、道路交通法施行令第13条により指定または届出された緊急自動車
  • 4-1-2 法令等で特定される事業を遂行するための自動車(13形状)……使用者の事業が法令等の規定に基づき特定できるもので、その特定した事業を遂行するために専ら使用する自動車
  • 4-1-3 特種な目的に専ら使用するための自動車(15形状+2形状+32形状+3形状の計52形状)……特種な物品運搬、患者・車いす利用者の輸送、特種な作業、キャンプ・宣伝活動のための設備を有する自動車

合計78形状。理容・美容車は、このうち4-1-2に属する13形状のひとつです。4-1-2の13形状は、給水車、医療防疫車、採血車、軌道兼用車、図書館車、郵便車、移動電話車、路上試験車、教習車、霊柩車、広報車、放送中継車、理容・美容車です。

4-1-2に属することが持つ実務上の意味

理容・美容車が4-1-2に属するという事実は、単なる分類上の話ではありません。実務に直結する差が2つあります。

1つ目は面積要件の違いです。4-1-3の自動車には、特種な設備の占有する面積が1平方メートル(軽自動車は0.6平方メートル)以上であること、かつ、その面積が運転者席を除く客室の床面積・物品積載設備の床面積・特種な設備の占有する面積の合計の2分の1を超えること、という定量要件が課されます。キャンピング車の8ナンバーで有名な「2分の1超」のルールがこれです。4-1-2の理容・美容車には、この1平方メートル要件も2分の1超の要件も適用されません。代わりに、後述する「0.5平方メートル以上の作業用床面積」という個別要件が課されます。

2つ目は使用者を証明する書面が必須になることです。4-1-2は「使用者の事業が法令等の規定に基づき特定できるもの」を前提とする区分であるため、車両の造りだけでなく、使用者が誰であるかが判定要素になります。これが後述する「使用者特定書面」です。

特種用途自動車全体の形状一覧と各形状の性格については、8ナンバー特種用途自動車の種類一覧|放送宣伝車・救急車・冷蔵冷凍車の登録要件で整理しています。同じ4-1-2に属する他形状の実務については、移動図書館車の8ナンバー登録|書架構造・床面積要件・自治体導入時の手続採血車・医療防疫車の8ナンバー登録|献血車・検診車の構造要件と保健所連携もあわせてご覧ください。

理容・美容車の構造要件5項目|通達の原文で押さえる

国土交通省が公表している「特種用途自動車の構造要件」のうち、車体の形状「理容・美容車」の欄は、まず対象を次のように定義しています。

すなわち、理容師法または美容師法の規定に基づき、都道府県知事に理容所または美容所として届出をした者が、理容業務または美容業務(以下「理容業務等」)を行うために使用する自動車であって、次の各号に掲げる構造上の要件を満足しているものをいう、とされています。さらに注記として、用途区分通達4-1(3)②の規定は本車体の形状には適用しない、と定められています(この特例の意味は次章で詳述します)。

要件1|理容器具、美容器具、消毒用具等の設備を有すること

第1号は「理容業務等を行うために必要な理容器具、美容器具、消毒用具等の設備を有すること」です。ポイントは「器具」ではなく「設備」と書かれている点にあります。ハサミやクリッパーを工具箱に入れて持ち込むだけでは設備とは言えず、器具を収納・整理し、消毒を行うための造作が車内に構築されている必要があります。

消毒用具については、理容師法施行規則第25条・美容師法施行規則第25条が消毒方法を定めており、煮沸消毒、エタノール水溶液への浸漬、次亜塩素酸ナトリウム水溶液への浸漬、紫外線照射(1平方センチメートル当たり85マイクロワット以上を20分間以上)、80度を超える湿熱への10分間以上の暴露などが列挙されています。どの方法を採るかによって必要な設備(煮沸消毒器、紫外線消毒器、蒸し器、消毒用バット等)と、それに必要な電源・給湯の設計が変わります。車両の架装設計に入る前に、消毒方法をどれで運用するかを先に決めておくと手戻りがありません。

要件2|設置場所は採光、照明及び換気装置を有すること

第2号は「1の設置場所は、採光、照明及び換気装置を有すること」です。理容師法第12条第3号・美容師法第13条第3号が「採光、照明及び換気を充分にすること」を求めていることと対応しており、その車両版といえます。

水準の目安は衛生側の省令が示しています。理容師法施行規則第27条・美容師法施行規則第27条は、作業面の照度を100ルクス以上とすること、所内の空気1リットル中の炭酸ガスの量を5立方センチメートル以下に保つことを定めています。閉め切った車内は炭酸ガスが溜まりやすいため、自然換気に頼らず機械換気設備を設けるのが現実的です。後述する自治体の移動理容・移動美容の基準では、機械換気設備を明示的に求めている例もあります。

要件3|施術用椅子は乗車装置の座席と兼用でないこと

第3号は「理容業務等を受ける者の用に供する椅子を有しており、当該椅子は乗車装置の座席と兼用でないこと」です。これが理容・美容車で最も多い不適合ポイントです。

既存の乗用車やバンの後部座席をそのまま施術用の椅子として使う設計は、この要件に真正面から抵触します。施術用の椅子は、走行中に人が乗るための座席(乗車装置)とは別に、施術専用のものとして独立して設けなければなりません。逆にいえば、施術用椅子は乗車定員には算入されず、走行中はそこに人を乗せられないということでもあります。

設計としては、後部座席を撤去したうえで施術用チェアを新設し、乗車定員を減じる形が一般的です。乗車定員の変更は構造等変更検査の対象事由に含まれます(後述)。

要件4|0.5平方メートル以上の作業用床面積と1,600mmの空間

第4号は「理容業務等を受けるための者の用に供する椅子の付近には、一辺が30cmの正方形を含む0.5平方メートル以上の作業用床面積を有しており、かつ、当該床面から上方1,600mm以上の空間を有すること」です。

2つの数字が組み合わさっている点に注意してください。単に合計面積が0.5平方メートルあればよいのではなく、その中に一辺30cmの正方形が収まる連続した床面が含まれていなければなりません。細長い通路状の空間を寄せ集めて0.5平方メートルを主張することはできない、という趣旨です。

そして上方1,600mm以上の空間。これはベース車両選定を大きく左右します。標準ルーフのバンでは荷室の床から天井までが1,600mmに届かないことが珍しくありません。ハイルーフ仕様、あるいはルーフを架装で嵩上げした車両、キャブオーバートラックにボックスを架装した車両などが候補になります。ベース車両を購入してから測ったら足りなかったという事例は実際に起きるため、内寸の実測は発注前に必ず行ってください。なお、天井の照明器具やダクトが張り出している部分では、その下端までしか空間が確保できていないと判断される可能性があるため、実測は室内の最も低い部分を基準に行ってください。

要件5|物品積載設備を有していないこと

第5号は「物品積載設備を有していないこと」です。国土交通省の「用途区分通達4-1-1、4-1-2及び4-1-3の各自動車の構造要件(共通事項)」1.(4)によれば、物品積載設備とは「運転者席(運転者席と並列の座席を含む。)の後方にある物品積載装置であって、物品の積卸しができる構造のもの」をいいます。荷物を運ぶための荷台・荷室が残っていると、理容・美容車としては認められません。

ただし例外が明記されています。留意事項として、「理容作業に伴って使用する必要最小限の工具等を積載するための最大積載量500kg以下の装置は、この場合の物品積載設備と見なさない」とされています。施術に使う消耗品や器材を積むための小規模なスペースは許容されるという趣旨です。

なお、最大積載量を有する自動車の場合は用途区分通達4-1(2)により、乗車設備と物品積載装置との間に適当な隔壁または保護仕切等が必要になります(最大積載量500kg以下で、乗車人員が座席の背あてにより積載物品から保護される構造と認められるものを除く)。上記の例外を使う場合は、この点もあわせて確認してください。

施術設備の「固定」はどこまで求められるか

8ナンバー登録で最も争点になりやすいのが、設備の固定方法です。用途区分通達4-1(1)は「主たる使用目的遂行に必要な構造及び装置を有し」と定め、その注7で固定の水準を明確に規定しています。

ボルト、リベット、接着剤または溶接

注7によれば、「主たる使用目的遂行に必要な構造及び装置を有し」とは、車枠または車体に、特種な目的遂行のための設備がボルト、リベット、接着剤または溶接により確実に固定されているものをいいます。

そして、これに続けて明確な否定列挙があります。「蝶ねじ類、テープ類、ロープ類、針金類、その他これらに類するもので取り付けられた設備は、確実に固定されているものに該当しない」。工具を使わずに着脱できる固定方法は、原則として認められないと理解してください。

理美容車で固定対象となるのは、施術用チェア、シャンプー台・洗髪設備、給水タンク・排水タンク、器具収納棚、消毒設備、鏡・カウンター、電源設備(発電機、走行充電システム、蓄電池)などです。これらが走行中の振動や急制動で動かないよう、車体の骨格(車枠・クロスメンバー・補強された床構造)に対して確実に締結されている必要があります。床合板にタッピングビスで留めただけ、といった施工は指摘の対象になり得ます。

指定部品は「特種な目的遂行のための設備」に当たらない

注7には、もうひとつ見落とされやすい規定があります。「自動車部品を装着した場合の構造等変更検査時等における取扱いについて(依命通達)」(平成7年11月16日付け自技第234号、自整第262号)の指定部品は、「特種な目的遂行のための設備」には該当しないものとする、というものです。

つまり、汎用アクセサリーとして指定部品に分類されるものを並べても、それは理容・美容車としての特種な設備には数えられません。理容・美容車の構造要件を満たすための設備は、あくまで理容業務等のために設けられた専用の造作である必要があります。

走行時の安全という観点

固定要件は形式的な審査基準であると同時に、実質的な安全要件でもあります。道路運送車両の保安基準は、車枠及び車体が堅ろうで運行に十分耐えるものであることを求めており、重量物である施術用チェアやシャンプー台、満水時に相当な重量となる給水タンクが車内で移動すれば、乗員に重大な危険を及ぼします。

また、架装によって重量配分が変わると、車両重量・軸重・車両総重量にも影響します。長さ・幅・高さの変更や乗車定員・最大積載量の変更は、いずれも構造等変更検査の対象事由です。架装業者と打ち合わせる段階で、完成後の諸元値の見込みを共有しておくと、検査当日の想定外を減らせます。設備固定と乗車定員変更の考え方は、キッチンカー・移動販売車の構造変更|8ナンバー、設備固定と乗車定員変更を解説でも扱っています。

ベース車両選定の落とし穴|4-1(3)の除外規定と理容・美容車の特例

構造要件を満たす設計ができても、ベース車両の選び方を誤ると、そもそも特種用途自動車になれません。用途区分通達4-1(3)は、次の3類型のいずれかに該当する自動車は特種用途自動車等ではない、と定めています(4-1-1の緊急自動車を除く)。

  • 型式認証等を受けた自動車の用途が乗用自動車であって、車体の形状が箱型または幌型のものであり、かつ、その車枠が改造されていないもの
  • 型式認証等を受けた自動車の用途が貨物自動車であって、その物品積載設備の荷台部分の2分の1を超える部位が、平床荷台、バン型の荷台、ダンプ機能付き荷台、車両運搬用荷台またはコンテナ運搬用荷台であるもの
  • 型式認証等を受けた自動車の用途が貨物自動車であって、セミトレーラをけん引するための連結装置を有するもの

理容・美容車には②が適用されない

ここが理容・美容車の最大の特徴です。構造要件の本文に「用途区分通達4-1(3)②の規定は、本車体の形状には適用しないものとする」と明記されているため、バン型の荷台を持つ貨物自動車をベースにしても、②を理由に排除されることはありません

これは設計上きわめて大きな意味を持ちます。理美容の施術に必要な立ち作業スペース、上方1,600mm以上の空間、給排水タンクの搭載場所を確保しようとすれば、箱型のバン・パネルバンやキャブオーバー型トラックにボックスを架装した車両が最有力候補になります。もし②が適用されていれば、これらの多くが排除されてしまうところでした。

①と③は適用される

一方で、除外されているのは②だけであり、①と③はそのまま適用されます

①の意味するところは、型式認証を受けた乗用自動車(用途が「乗用」の車両)で、車体の形状が箱型または幌型であり、車枠を改造していないものは、特種用途自動車に該当しないということです。ワゴンタイプの乗用車を購入し、内装だけ理美容仕様に造作して8ナンバーにする、という発想は、この規定の壁に当たります。ベース車両を検討する際は、まず車検証の用途欄が「乗用」なのか「貨物」なのかを確認してください。

③は、セミトレーラをけん引するための連結装置(第五輪)を有する貨物自動車を排除するものです。理美容車の設計で該当することは通常ありませんが、中古のトラクタヘッドを転用するような場合には注意が必要です。

軽自動車を使う場合

用途区分通達は、軽自動車(二輪自動車を除く)の分類についても同じ枠組みを適用しています。したがって、軽自動車ベースの理容・美容車も制度上は成り立ちます。ただし、上方1,600mm以上の空間と、一辺30cmの正方形を含む0.5平方メートル以上の作業用床面積を軽規格の中で確保するのは容易ではありません。軽トラックの荷台にボックスを架装する構成など、実現方法は限られます。

手続面でも違いがあります。軽自動車の検査・届出は軽自動車検査協会が所管し、保管場所についても自動車の保管場所の確保等に関する法律第5条に基づく届出制(適用地域のみ)となります。登録自動車の車庫証明とは手続が異なる点にご留意ください。車庫証明の一般的な流れは多摩地域の車庫証明|管轄警察署・手数料・軽自動車届出・申請流れを行政書士が解説で整理しています。

給排水設備の要件はどこから来るのか|理容師法・美容師法側の基準

ここで、多くの方が疑問に思う点を整理します。特種用途自動車の構造要件「理容・美容車」の5項目に、給排水設備は書かれていません。第1号から第5号のどこにも、洗髪設備や給水タンク・排水タンクの記載はありません。

にもかかわらず、実際の移動理美容車には必ずといってよいほど給排水設備が搭載されています。その根拠は、車両側ではなく理容師法・美容師法側の衛生基準にあります。

理容師法第12条・美容師法第13条と施行規則第26条

理容師法第12条は、理容所の開設者が講じなければならない措置として、①常に清潔に保つこと、②消毒設備を設けること、③採光、照明及び換気を充分にすること、④その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置、を定めています。美容師法第13条も同一の構造です。

このうち①を具体化しているのが、理容師法施行規則第26条・美容師法施行規則第26条です。清潔保持の措置として、次の3点が定められています。

  • 床及び腰板にはコンクリート、タイル、リノリューム又は板等不浸透性材料を使用すること
  • 洗場は、流水装置とすること
  • ふた付きの汚物箱及び毛髪箱を備えること

「洗場は、流水装置とすること」——これが給排水設備の直接の法令上の根拠です。ためた水を使い回す方式ではなく、流水で洗える設備が必要であり、車内でそれを実現するには給水タンクとポンプ、そして使用済みの水を受ける排水タンクが不可欠になります。

また、床及び腰板の不浸透性材料という要件も、車内の内装仕上げを直接に規律します。カーペットや布張りの内装のままでは基準を満たしません。

厚生労働省の衛生管理要領

より具体的な指針として、「理容所及び美容所における衛生管理要領」(昭和56年6月1日環指第95号 厚生省環境衛生局長通知)があります。その第2「施設及び設備」には、次のような項目が並びます。

  • 施設は、隔壁等により外部と完全に区分されていること
  • 作業場の床及び腰張りは、コンクリート、タイル、リノリウム、板等の不浸透性材料を使用し、清掃が容易に行える構造であること
  • 作業場内に従業者専用の手洗い設備を設けること
  • 作業場内の採光、照明、換気が十分行える構造設備であること(換気には機械的換気設備を設けることが望ましい)
  • 洗場は、流水装置とし、給湯設備を設けること
  • 作業に伴って出る汚物、廃棄物を入れるふた付きの汚物箱又は毛髪箱等を備えること
  • 皮膚に接する器具類を、消毒済みのものと未消毒のものを区別するために必要な収納ケース等を備えること
  • 器具類、布片類及びタオル等を消毒する設備又は器材を備えること

要領は通知であり、それ自体が直接の許認可要件ではありませんが、保健所の指導の拠り所となる文書です。給湯設備まで求められている点、従業者専用の手洗い設備が作業場内に必要とされている点は、車両の設計段階で織り込んでおく必要があります。給湯まで賄うとなると電源容量の設計にも跳ね返ります。

自治体が定める移動理容・移動美容の基準

さらに実務上決定的なのが、自治体ごとの取扱いです。理容師法第12条第4号・美容師法第13条第4号が「都道府県が条例で定める衛生上必要な措置」を掲げているとおり、具体的な構造設備基準は条例等に委ねられており、全国一律ではありません。移動理容所・移動美容所についての明文の基準を設けている自治体もあれば、そうでない自治体もあります。

明文の基準を設けている例として、高知市は「移動理容に係る基準」(平成15年6月6日告示第126号)および「移動美容に係る基準」(同告示第127号)を定めています。高知市の案内によれば、移動理容所・移動美容所はそれぞれ理容師法・美容師法に規定する理容所・美容所として取り扱われ、一車両ごとに使用開始前に開設届を提出し、検査確認を受けなければならないとされています。そのうえで、理容師法第12条・美容師法第13条および市の条例に定める措置のほか、次の措置を講ずる必要があるとされています。

  • 換気上有効な機械換気設備を設けること
  • 飲用に適する水を供給する200リットル以上の容量の給水タンクを設けること
  • 給水タンクと同容量以上の排水タンクを設けること
  • 作業の床を水平に固定するための支柱その他の設備を用意すること

あわせて、営業場所の選定にあたって利用者の安全を十分確保すること、給水タンクを常に清潔に保つこと、排水タンク内の汚水の処理は営業車の保管場所等で適切に行うこと、作業場の床は支柱等で水平に固定すること、理容所確認証・美容所確認証を見やすい場所に掲示することなどが求められています。営業予定地についても、営業開始の日までに営業予定地届により保健所長に届け出る運用です。

これはあくまで高知市の例であり、他の自治体で同じ基準が当然に適用されるわけではありません。給水タンクの容量ひとつとっても、自治体によって考え方は異なり得ます。そもそも移動理容所・移動美容所を理容所・美容所として受け付けるかどうかの運用自体が地域によって分かれ得るため、車両の発注前に、営業拠点を管轄する保健所へ必ず事前相談を行ってください。これが理美容車案件で最も重要な実務上の助言です。

車両構造要件と衛生基準を同時に満たす設計

結果として、理美容車の設計は「運輸支局が見る構造要件」と「保健所が見る衛生基準」の二本立てで進める必要があります。両者は矛盾するものではありませんが、優先順位を誤ると手戻りが生じます。

典型的なのが搭載スペースの取り合いです。給水タンク200リットルと排水タンク200リットルを積めば、それだけで満水時400kg近い重量になり、床面積も相当を占めます。しかし理容・美容車の構造要件は、施術用椅子の付近に一辺30cmの正方形を含む0.5平方メートル以上の作業用床面積と、その上方1,600mm以上の空間を求めます。タンク配置を先に決めてしまうと、作業用床面積が確保できなくなるという事態が起こり得ます。タンクを床下やシャシ側に振り分けるなど、レイアウトの初期段階から両基準を同時に見る必要があります。給排水タンクと構造変更の関係については、業種は異なりますがキッチンカーの8ナンバー登録と営業許可|給排水タンク容量と構造変更の注意点の考え方も参考になります。

理容所・美容所の届出と「使用者特定書面」

理容・美容車が4-1-2の形状である以上、車両の造りだけでは8ナンバーになりません。使用者が理容所または美容所として届出をした者であることを証する書面が必要です。

開設届と検査確認

理容師法第11条第1項は、理容所を開設しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、理容所の位置、構造設備、管理理容師その他の従業者の氏名その他必要な事項をあらかじめ都道府県知事に届け出なければならないと定めています。美容師法第11条第1項も同旨で、美容所の位置等の届出を求めています。届出先は、保健所を設置する市にあっては市長、特別区にあっては区長となります。

さらに、理容師法第11条の2は、届出をした理容所の開設者はその構造設備について都道府県知事の検査を受け、第12条の措置を講ずるに適する旨の確認を受けた後でなければ、これを使用してはならないと定めています。美容師法第12条も同様に、美容所の構造設備について検査を受け確認を受けた後でなければ使用してはならないとしています。

つまり、届出書を出しただけでは足りず、保健所の検査確認を経て初めて使用できるという順序になります。移動理容所・移動美容所を理容所・美容所として扱う自治体では、この検査確認も車両に対して行われることになります。

使用者特定書面が出ないと8ナンバーにならない

国土交通省の「用途区分通達4-1-1、4-1-2及び4-1-3の各自動車の構造要件(共通事項)」は、使用者の事業等を特定するために提出を求める書面を「使用者特定書面」と定義し、その取扱いを定めています。理容・美容車の使用者特定書面は、「理容師法又は美容師法に基づき、都道府県知事に理容所又は美容所として届出をした者であることを証する書面の写し」です。

共通事項は、道路運送車両法第59条の新規検査、第67条の自動車検査証の記載事項の変更および構造等変更検査(車体の形状の変更に係る場合に限る)を行う際に使用者特定書面の提出を求めるとし、提出されない場合には「車体の形状が特定できないため、構造要件に適合するかどうかも判断できないことから、特種用途自動車に該当しない」と明記しています。書面がなければ、どれだけ立派な架装をしても8ナンバーにはなりません。

使用者が変わったときの取扱い

共通事項は、使用者変更のケースについても定めています。道路運送車両法第67条第1項に基づく使用者に係る自動車検査証の記載事項の変更により、新使用者の事業等が旧使用者の事業等と異なることとなった場合には構造要件への適合を判断できないおそれがあるため、使用者の変更申請の際にも使用者特定書面の提出を求め、確認するとされています。

そして、確認の結果、車体の形状が適切でなかった場合または使用者特定書面の提出がない場合には、用途または車体の形状が変更となるものとして、法第67条第3項に基づき構造等変更検査を受けるべきことを命ずると定められています。中古の理容・美容車を、理容所・美容所の届出をしていない者が買い取るケースでは、この規定が働きます。中古車として8ナンバーの理美容車を購入する場合は、名義変更の前に自社が使用者特定書面を用意できるかを必ず確認してください。

予備検査を受ける場合の取扱い

架装メーカーが完成車を予備検査(道路運送車両法第71条)に通してから販売するケースもあります。共通事項は、4-1-2の自動車(緊急自動車を除く)について、予備検査時には所有者からの車体の形状の申請内容により構造上の基準への適合を確認し、第71条第4項による自動車検査証の交付申請時に使用者特定書面の提出を求めるとしています。自動車予備検査証の有効期間は3か月です(同条第3項)。予備検査済みの車両を購入する場合も、結局は購入者側で理容所・美容所の届出が必要になる点は変わりません。

出張理美容との違いを整理する

混同しやすいのが、いわゆる出張理美容との関係です。理容師法第6条の2は「理容師は、理容所以外において、その業をしてはならない」と定め、政令で定める特別の事情がある場合にのみ例外を認めています。美容師法第7条も同様の構造です。

理容師法施行令第4条・美容師法施行令第4条は、その特別の事情を次のとおり定めています。

  • 疾病その他の理由により、理容所(美容所)に来ることができない者に対して理容(美容)を行う場合
  • 婚礼その他の儀式に参列する者に対して、その儀式の直前に理容(美容)を行う場合
  • 前2号のほか、都道府県(保健所を設置する市または特別区にあっては、市または特別区)が条例で定める場合

ここで押さえるべきは、「出張理美容として車で出向く」ことと「車の中を理容所・美容所として届け出る」ことは別の話だという点です。前者は移動手段として車を使うだけであり、8ナンバーの理容・美容車である必要はありません。後者は車両そのものを施設として扱う考え方です。どちらの形態で事業を組み立てるかによって、必要な手続も車両の仕様も変わります。この整理も、保健所への事前相談の重要な論点になります。

登録手続の流れ・必要書類・手数料

ここからは運輸支局での手続を整理します。理美容車の8ナンバー取得には、大きく分けて2つのルートがあります。

ルート1|新規検査・新規登録

新車のシャシに架装業者が理容・美容車としての架装を施し、未登録の状態で新規検査・新規登録を受けるルートです。新規検査(道路運送車両法第59条)の申請は新規登録の申請と同時に行います(同条第2項)。この場合、初めから用途「特種」・車体の形状「理容・美容車」として登録されます。

ルート2|構造等変更検査を伴う変更

すでに登録されている自動車を改造して理容・美容車にするルートです。道路運送車両法第67条第1項は、自動車検査証記録事項について変更があったときは、その事由があった日から15日以内に変更記録を受けなければならないと定めています。

そのうえで、同条第3項は、変更が国土交通省令で定める事由に該当し、保安基準に適合しなくなるおそれがあると認めるときは、構造等変更検査を受けるべきことを命じなければならないとしています。その「国土交通省令で定める事由」は道路運送車両法施行規則第38条第8項に列挙されており、次の事項に係る変更が含まれます。

  • 自動車の長さ、幅または高さ
  • 車体の形状
  • 原動機の型式
  • 燃料の種類
  • 自家用または事業用の別
  • 用途
  • 乗車定員または最大積載量
  • けん引・被けん引に関する事項 ほか

理美容車への改造は、用途と車体の形状が変わり、多くの場合は乗車定員も変わり、ルーフ架装をすれば高さも変わります。構造等変更検査は事実上必須と考えてよいでしょう。検査は運輸支局等に車両を持ち込んで受けます。

必要書類の整理

案件によって差異はありますが、一般的に準備することになる書類は次のとおりです。

  • 使用者特定書面……理容師法または美容師法に基づき都道府県知事に理容所または美容所として届出をした者であることを証する書面の写し(理容・美容車で必須)
  • 自動車検査証(電子車検証。普通自動車は令和5年1月4日から、検査対象軽自動車は令和6年1月から電子化されています)
  • 申請書(OCRシート)、手数料納付書、自動車検査票
  • 点検整備記録簿(提示を求められる場合があります。法第59条第3項)
  • 自動車税・自動車重量税関係の書類
  • 使用者・所有者の住所を証する書面(印鑑登録証明書、登記事項証明書など)、必要に応じて委任状
  • 自動車保管場所証明書(車庫証明)……後述の条件に該当する場合
  • 改造内容を示す資料(改造概要等説明書、架装図面、設備の固定方法がわかる資料、重量計算資料など。求められる範囲は運輸支局・案件により異なります)

特に改造内容を示す資料は、事前に運輸支局の窓口や検査部門へ相談したうえで整えるのが安全です。設備の固定方法(ボルト・リベット・接着剤・溶接のいずれか)、作業用床面積と上方空間の寸法、施術用椅子が乗車装置の座席と兼用でないことが、図面と実車の双方で説明できる状態にしておいてください。

手数料(令和8年4月1日改定後)

登録・検査の法定手数料は令和8年(2026年)4月1日に改定されました。国土交通省が公表する「登録・検査手数料一覧表(令和8年4月1日現在)」によれば、主なものは次のとおりです。

  • 構造等変更検査……普通自動車 2,900円(国 600円+機構 2,300円)、小型自動車 2,800円(国 600円+機構 2,200円)
  • 新規検査(持込検査の場合。OSS申請を除く)……普通自動車 2,900円、小型自動車 2,800円
  • 継続検査(持込検査の場合。OSS申請を除く)……普通自動車 2,600円、小型自動車 2,500円
  • 変更登録……窓口申請 500円、OSS申請 450円
  • 移転登録……窓口申請 700円、OSS申請 600円

このほかに、番号標(ナンバープレート)の交付手数料が別途必要です。金額は地域や標板の種類によって異なります。

車庫証明は必要か

自動車の保管場所の確保等に関する法律第4条第1項は、道路運送車両法第4条の処分(新規登録)、第12条の処分のうち使用の本拠の位置の変更に係るもの、第13条の処分のうち使用の本拠の位置の変更を伴う場合について、保管場所を確保していることを証する書面の提出を求めています。

したがって、すでに登録されている自社の車両を理美容車に改造するだけで、使用の本拠の位置が変わらないのであれば、車庫証明は不要です。一方、新車を新規登録する場合や、車両を購入して使用の本拠の位置が変わる場合には必要になります。軽自動車については同法第5条に基づく保管場所の届出(適用地域のみ)となります。

車検の有効期間と税金の扱い

有効期間は原則2年

8ナンバーの車検が何年になるかは、よく質問をいただく点です。根拠は道路運送車両法第61条と道路運送車両法施行規則第37条にあります。

法第61条第1項は、旅客を運送する自動車運送事業の用に供する自動車、貨物の運送の用に供する自動車、および国土交通省令で定める自家用自動車(検査対象軽自動車以外)は1年、その他の自動車は2年と定めています。ここでいう「国土交通省令で定める自家用自動車」は施行規則第37条第1項が定めており、①乗車定員11人以上の自家用自動車、②専ら幼児の運送を目的とする自家用自動車、③施行規則第31条の3第2号の許可(道路運送法第80条第1項の許可。いわゆる有償貸渡し)に係る自家用自動車の3つです。

理容・美容車は用途が「特種」であり、貨物の運送の用に供する自動車には当たりません。したがって、乗車定員11人以上でなく、有償貸渡しにも該当しないのであれば、有効期間は2年となります。

初回3年の適用については、法第61条第2項第2号が「自家用乗用自動車(人の運送の用に供する自家用自動車であって、国土交通省令で定めるものを除く。)」を対象としており、施行規則第37条第3項第6号は除外されるものとして「広告宣伝用自動車その他特種の用途に供する自家用自動車」を挙げています。理容・美容車はこれに当たるため、新車であっても初回から2年となります。この点はキャンピング車など他の8ナンバー車と同じ考え方です(キャンピングカーの8ナンバー登録|構造変更・構造要件・車検2年・自動車税を解説)。

自動車重量税の考え方

自動車重量税法第7条は、検査自動車を自動車検査証の有効期間ごとに区分したうえで、さらに「乗用自動車」と「それ以外の自動車」等に分けて税率を定めています。乗用自動車は車両重量0.5トンごと、それ以外の自動車は車両総重量1トンごとを単位とする構造です。用途が「特種」となることで適用区分が変わり得るため、改造前後で税額が変動する可能性があります。

自動車税をめぐる2026年の制度変更

自動車関係の地方税は、2026年(令和8年)に大きな変更がありました。自動車税環境性能割および軽自動車税環境性能割は2026年3月31日で廃止され、あわせて「自動車税種別割」は「自動車税」、「軽自動車税種別割」は「軽自動車税」へと名称が戻されました。記事や資料を参照する際は、いつ時点の情報かに注意してください。

8ナンバーの自動車税については、都道府県が税率適用の基準を定めて運用しています。たとえば埼玉県は「特種用途車(8ナンバー)の自動車税税率適用基準表(令和8年4月1日)」を公表しており、車体の形状ごとに、改造後の形状によって税率が決まるものと、改造前の形状等の確認を要するものとに分けています。理容・美容車は後者のグループに位置づけられています。

税率の適用は都道府県ごとの基準に従うため、具体的な税額や税負担がどう変わるかについては、管轄の都道府県税事務所にご確認ください。税務上の取扱いや税額の判断が必要な場合は、税理士にご確認ください。

よくある不適合パターンと実務上のQ&A

不適合になりやすい5つのパターン

1. 施術用椅子が乗車装置の座席と兼用になっている——構造要件第3号に真正面から抵触します。既存の後部座席を回転させて施術椅子として使う設計は認められません。座席を撤去し、施術専用のチェアを別に設けてください。

2. 作業用床面積が足りない、または細切れになっている——0.5平方メートル以上という総面積だけでなく、一辺30cmの正方形を含む連続した床面が必要です。棚やタンクが床面に張り出していると、有効な床面積が想定より小さくなります。

3. 上方空間が1,600mmに届かない——標準ルーフのバンで起きがちです。床の嵩上げ(フロアパネルや配管の敷設)で有効高さが削られるケースもあります。設計値ではなく、完成状態での実測で判断してください。

4. 設備の固定方法が不適切——蝶ねじ、テープ、ロープ、針金、その他これらに類するもので取り付けられた設備は「確実に固定されているもの」に該当しません。工具なしで着脱できる方式は避けてください。

5. 使用者特定書面が用意できない——理容所・美容所としての届出をしていない事業者が名義人になると、そもそも理容・美容車として判定できません。法人名義にするか個人名義にするかを含め、届出の名義と車両の使用者を一致させる設計を、着手前に決めておく必要があります。

Q. 保健所と運輸支局、どちらを先に進めるべきですか

実務上は保健所への事前相談を先行させるのが安全です。移動理容所・移動美容所の取扱いや構造設備基準は自治体ごとに異なり、そもそも受け付けるかどうかの運用も一律ではありません。運輸支局での8ナンバー取得には理容所・美容所の届出をした者であることを証する書面が必要ですから、保健所側の見通しが立たないまま架装を発注すると、車両が完成しても登録できないという最悪の事態になり得ます。

Q. 既存の店舗を持っている理容師です。店舗の届出書類を使えますか

構造要件の文言は「都道府県知事に理容所又は美容所として届出をした者が…使用する自動車」であり、使用者特定書面も「届出をした者であることを証する書面の写し」と規定されています。ただし、車両内で施術を行うこと自体が適法かどうかは、理容師法第6条の2・美容師法第7条と施行令第4条、および自治体の条例・基準の問題です。書面の使い方を含め、必ず管轄の保健所に確認してください。

Q. 8ナンバーにしなくても移動理美容はできますか

理容師法施行令第4条・美容師法施行令第4条が定める特別の事情に当たる場合の出張理美容は、車両の用途区分とは別の問題です。車を移動手段として使い、施術は訪問先で行う形態であれば、8ナンバーの理容・美容車である必要はありません。車内を施設として使うのか、移動手段として使うのかで、必要な手続がまったく変わります。

Q. 中古の理容・美容車を購入する場合の注意点は

使用者の変更申請の際にも使用者特定書面の提出が求められ、提出がない場合や車体の形状が適切でない場合には、構造等変更検査を受けるべきことを命じられます。購入前に、自社が使用者特定書面を用意できるかを確認してください。あわせて、前オーナーが行った架装が現行の構造要件に適合しているか(特に施術用椅子の兼用、作業用床面積、固定方法)も点検が必要です。

Q. 一度8ナンバーにしたら、後から用途を戻せますか

用途および車体の形状の変更は、道路運送車両法施行規則第38条第8項が定める構造等変更検査の対象事由です。設備を撤去して用途を戻す場合も、改めて検査を受けることになります。なお、検査時にだけ設備を装着し、直後に取り外して使用する行為は、用途区分通達の平成13年改正の主文でも不正使用として問題視されており、行ってはなりません。

Q. 教習車のように使用者変更の特例はありますか

共通事項3.(2)は、4-1-2のうち車体の形状が「教習車又は路上試験車」である場合について、使用者のみの変更に伴う一定の用途・車体の形状の変更を構造等変更検査の対象外として扱う特例を設けています。この特例は教習車・路上試験車に限られ、理容・美容車には適用されません(教習車の実務は教習車の8ナンバー登録|補助ブレーキ装着・指定自動車教習所の車両基準をご覧ください)。

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まとめ

理美容車の8ナンバーは、用途区分通達4-1-2「法令等で特定される事業を遂行するための自動車」に属する13形状のひとつです。キャンピング車などが属する4-1-3と異なり、特種な設備の占有面積1平方メートル以上・2分の1超という要件は課されません。代わりに、理容・美容車固有の5項目の構造要件を満たす必要があります。

構造要件の核心は、施術用椅子が乗車装置の座席と兼用でないこと、そして椅子の付近に一辺30cmの正方形を含む0.5平方メートル以上の作業用床面積と、その床面から上方1,600mm以上の空間があることです。設備の固定はボルト、リベット、接着剤または溶接により行い、蝶ねじ・テープ・ロープ・針金の類は認められません。物品積載設備を持たないことも要件ですが、最大積載量500kg以下の工具等積載装置は例外とされています。

ベース車両の選定では、用途区分通達4-1(3)の除外規定が決定的です。理容・美容車には②(貨物自動車のバン型荷台等)が適用されない特例があるためバン型ベースを選べますが、①(乗用自動車で箱型・幌型・車枠未改造)と③(セミトレーラけん引装置付き)は適用されます。乗用登録のワゴンを内装だけ改造して8ナンバーにする発想は成立しません。

そして、記事タイトルに掲げた給排水の要件は、車両側ではなく理容師法・美容師法側から来ます。理容師法施行規則第26条・美容師法施行規則第26条は「洗場は、流水装置とすること」「床及び腰板には不浸透性材料を使用すること」を定め、衛生管理要領はさらに給湯設備や従業者専用の手洗い設備を求めています。移動理容所・移動美容所の具体的な構造設備基準は自治体ごとに異なるため、架装を発注する前に、必ず管轄の保健所へ事前相談を行ってください

手続面では、用途と車体の形状の変更に伴う構造等変更検査(道路運送車両法第67条第3項、施行規則第38条第8項)が必要となり、さらに使用者特定書面——理容所または美容所として届出をした者であることを証する書面の写し——が提出できなければ、特種用途自動車として認められません。行政書士法人Treeでは、運輸支局への提出書類の作成と提出代行、車庫証明の申請、名義変更などの自動車手続に対応しています。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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