「就労ビザは持っているが、雇用契約ではなく業務委託契約に切り替えたい」「フリーランスとして複数の会社から仕事を受けたい」「外国人エンジニアに業務委託で開発を依頼したいが、在留資格の面で問題はないか」——こうしたご相談は年々増えています。副業やリモートワークが一般化し、雇用によらない働き方が広がるなかで、在留資格制度がそれにどこまで対応しているのかは、外国人本人にとっても発注する企業にとっても切実な問題です。
結論から申し上げると、業務委託契約であること自体が就労系の在留資格を否定するわけではありません。入管法の条文が求めているのは「本邦の公私の機関との契約」であって、「雇用契約」とは書かれていないからです。ただし、雇用契約であれば自然に満たされていた「継続性」「安定性」「報酬水準」といった要素を、業務委託の場合は申請人と受入れ側が意識的に組み立て、立証しなければならなくなります。ここを軽く見たまま契約形態だけを変えてしまい、在留期間の更新で行き詰まる例は少なくありません。
本記事では、出入国管理及び難民認定法(入管法)の条文と、出入国在留管理庁が公表しているガイドライン・Q&Aという一次情報に沿って、雇用契約以外の形態でどこまでの活動が認められるのかを実務目線で整理します。
在留資格の申請でお困りの方へ。行政書士法人Treeでは、申請取次行政書士が要件の確認・必要書類の作成・出入国在留管理局への申請取次までを一括してサポートします。ご相談は何度でも無料です。
目次
業務委託でも就労ビザは成り立つのか|出発点は入管法の条文
この論点は、感覚や業界の慣行ではなく条文から出発するのが確実です。就労系在留資格のうち最も利用者が多い「技術・人文知識・国際業務」(いわゆる技人国)について、入管法別表第一の二の表は、その下欄に該当する活動を次のように規定しています。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項、芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで及び企業内転勤の項から興行の項までの下欄に掲げる活動を除く。)
ここで注目すべきは、条文が「本邦の公私の機関との契約に基づいて」としか書いていない点です。「雇用契約に基づいて」とも「労働者として」とも書かれていません。同じ構造は「研究」の在留資格の下欄(本邦の公私の機関との契約に基づいて研究を行う業務に従事する活動)にも見られますし、「高度専門職1号イ・ロ」も同様に「本邦の公私の機関との契約に基づいて」という文言を用いています。つまり、条文レベルでは契約類型を雇用に限定していないのです。
「契約」に何が含まれるかは公式ガイドラインに明記されている
では「契約」の範囲はどこまでか。出入国在留管理庁が公表している「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」(平成20年3月策定、最終改定令和8年4月)は、この点を次のように明示しています。
「契約」には、雇用のほか、委任、委託、嘱託等が含まれますが、特定の機関との継続的なものでなければなりません。また、契約に基づく活動は、本邦において適法に行われるものであること、在留活動が継続して行われることが見込まれることが必要です。
さらに、同庁が令和8年7月に公表した「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」でも、Q37として「この『契約』とは雇用契約に限られますか」という問いが正面から立てられ、回答として「ここでいう『契約』には、雇用のほか、委任、委託、委嘱等が含まれます。ただし、特定の機関(複数可)との継続的なものである必要があります」と述べられています。
つまり、業務委託契約や準委任契約であっても、また契約相手が複数であっても、それだけで在留資格該当性が否定されることはない——これが入管庁自身が公表している考え方です。逆に言えば、認められるための条件として「特定の機関との継続的なもの」であることが正面から要求されており、ここが業務委託方式の最大の関門になります。
「本邦の公私の機関」とは誰か|法人だけでなく個人事業主も含まれる
契約の相手方となる「本邦の公私の機関」の範囲についても、前掲のガイドラインが具体的に示しています。
「本邦の公私の機関」には、会社、国、地方公共団体、独立行政法人、公益法人等の法人のほか、任意団体(ただし、契約当事者としての権利能力はありません。)も含まれます。また、本邦に事務所、事業所等を有する外国の国、地方公共団体(地方政府を含む。)、外国の法人等も含まれ、さらに個人であっても、本邦で事務所、事業所等を有する場合は含まれます。
ここから、業務委託・フリーランス型の働き方を考えるうえで重要な帰結が3つ導かれます。
第一に、契約の相手方は株式会社である必要がありません。日本国内に事務所・事業所を有する個人事業主も「本邦の公私の機関」に含まれるため、個人のデザイン事務所やコンサルティング事務所から業務を受託する形でも、条文上の要件を満たし得ます。
第二に、外国企業の日本拠点も対象になります。外資系企業の日本支店や日本法人と業務委託契約を締結する場合、その拠点が本邦に事務所・事業所を有していれば要件を満たします。
第三に、逆から見ると、日本国内に事務所・事業所を持たない海外企業だけを取引先とする形は、この枠組みに素直には乗りません。海外のクライアントからのみ報酬を得ながら日本に滞在するという形態は、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う」活動という要件との関係で慎重な検討が必要になります。日本に生活の本拠を置きつつ海外案件のみを受託したいというご相談は実際に多いのですが、条文の文言に照らすと収まりにくい領域であり、個別の事情に応じた検討が欠かせません。
契約の法的性質を整理しておく意味
実務では「業務委託契約」という名称の契約書が、中身を見ると請負契約であったり、準委任契約であったり、両者が混在していたりします。入管法上の「委任、委託、嘱託等」に当たるかどうかを検討する前提として、その契約が何を約束するものなのか——仕事の完成を約束するのか、事務の処理を委ねるのか——を整理しておくことは無駄になりません。契約類型ごとの違いについては、委任契約・準委任契約・請負契約の違い|業務委託の法的性質を徹底比較で詳しく解説しています。
業務委託で最大の争点になる「継続性」と「安定性」
ガイドラインとQ&Aが揃って強調しているのが「特定の機関との継続的なもの」という要件です。雇用契約であれば期間の定めのない労働契約が一般的で、継続性は契約書を見れば明らかです。ところが業務委託では、案件ごとの単発契約、3か月更新、成果物単位の発注といった形が珍しくなく、継続性が契約書の文面から読み取れないことがあります。
ガイドラインが求める2つの継続性
ここで求められている継続性は、実は二層構造になっています。ガイドラインの文言を分解すると、次の2つが並んでいることが分かります。
1つは契約そのものの継続性——「特定の機関との継続的なもの」でなければならないという要求です。単発・スポットの発注を繰り返すだけでは、この要件を満たしていると評価されにくくなります。もう1つは在留活動の継続見込み——「在留活動が継続して行われることが見込まれることが必要です」という要求です。これは契約書に書かれた期間だけでなく、在留期間中を通じて技人国に該当する活動を実際に続けられる見通しがあるかを問うものです。
したがって、業務委託方式を選ぶ場合、契約書に期間の定めと更新条項を明記し、業務量・報酬額が安定的に見込まれることを示す資料を整えることが実務上の要になります。契約書の作成そのものは行政書士の業務範囲(権利義務に関する書類の作成)に含まれますので、在留資格の要件を意識した条項設計をあらかじめ検討しておくことが有効です。
3か月以上活動しないと在留資格取消しの対象になり得る
継続性を軽視できない制度的な裏付けが、入管法22条の4に定める在留資格の取消し制度です。同条1項6号は、別表第一の在留資格をもって在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を継続して3月以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く)を、取消事由として掲げています。
また同項5号は、下欄に掲げる活動を行っておらず、かつ他の活動を行い又は行おうとして在留していること(正当な理由がある場合を除く)を取消事由としています。業務委託では、契約が途切れて次の案件が決まるまでの空白期間が生じやすく、この空白が長引けば6号の問題に接近していきます。雇用契約であれば在籍している限り活動は継続していると評価されやすいのに対し、業務委託ではこのリスクを自分で管理しなければならないという構造的な違いがあります。いずれの号にも「正当な理由がある場合を除く」という留保が置かれており、事情によっては取消しに至らないこともありますが、あらかじめ空白を作らない設計をしておくに越したことはありません。この点は技人国ビザの転職手続き|14日以内の届出義務・3か月ルール・就労資格証明書を解説でも取り上げています。
契約形態が変わっても業務内容・学歴の要件は一切緩まない
ここは誤解が非常に多いところです。業務委託だから審査が緩やかになるということはありません。契約形態は在留資格該当性の入口の話であり、その先にある上陸許可基準(基準省令)の要件は雇用契約の場合とまったく同じに適用されます。
学歴要件・実務経験要件
技人国の場合、自然科学又は人文科学の分野に属する技術・知識を必要とする業務に従事するときは、①従事しようとする業務に必要な技術又は知識に関連する科目を専攻して卒業していること、②10年以上の実務経験があること、のいずれかに該当する必要があります。②の実務経験の期間には、大学等において関連科目を専攻した期間も含まれ、また技人国に該当する業務に10年従事したことまで求めるものではなく、関連する業務に従事した期間も含まれるとされています。
外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務(いわゆる国際業務)の場合は、翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事することに加え、原則として関連業務について3年以上の実務経験が必要です。ただし大学を卒業した者が翻訳・通訳・語学の指導に係る業務に従事する場合は、実務経験は不要とされています。詳しくは技人国ビザの実務経験10年要件|大学・専門学校卒業者の違いと証明資料・不許可対策をご覧ください。
専攻と業務の関連性は業務委託でも問われる
ガイドラインは、大学における専攻科目と従事しようとする業務の関連性については「従来より柔軟に判断」する一方、専修学校については学校教育法124条の目的規定を踏まえ「原則として……相当程度の関連性を必要とします」としています。業務委託であっても、受託する業務の内容が申請人の学歴・経歴と関連していることを示す必要がある点は変わりません。
また、ガイドラインは「求人の際の採用基準に『未経験可、すぐに慣れます。』と記載のあるような業務内容」や、学歴・実務経験の要件を満たしていない日本人従業員が一般的に従事している業務内容は対象とならないと明記しています。業務委託契約書の業務範囲が抽象的すぎたり、専門性の乏しい作業まで幅広く含んでいたりすると、この観点から不利に働きます。関連性の立証については技人国ビザの『業務関連性』審査基準|大学専攻と職務内容の一致をどう立証するかで詳述しています。
2026年4月改定で明確化された言語能力の考え方
令和8年4月のガイドライン改定では、別紙4「翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務に従事する場合の在留資格の明確化について」が加えられました。ここでは、主に言語能力を用いる対人業務等に従事する場合は、申請人がCEFR・B2相当の言語能力を有していることを前提とし、当該言語能力を有していない場合は「一定水準以上の業務」に従事するものとは認められないとされています。
日本語能力についてCEFR・B2相当と評価される具体的な基準として、別紙4は、JLPT・N2以上の取得、BJTビジネス日本語能力テストで400点以上の取得、中長期在留者として20年以上本邦に在留していること、本邦の大学を卒業し又は本邦の高等専門学校若しくは専修学校の専門課程・専攻科を修了していること(原則として専攻科目と業務内容に関連性が認められる場合に限る)、我が国の義務教育を修了し高等学校を卒業していること、のいずれかを挙げています。所属機関がカテゴリー3又は4に該当する場合は、申請時に当該言語能力を証する資料の提出が求められます。業務委託先が小規模な事業者であればカテゴリー4となることが多く、この資料提出が現実に必要になります。この制度変更については技術・人文知識・国際業務ビザに日本語・言語要件追加|2026年4月15日施行の新制度を徹底解説で詳しく解説しています。
報酬は「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」
基準省令は、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることを要件としています。ガイドラインは「報酬」について、「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」をいい、通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものを除く)は含まないと定義しています。
業務委託ではここに固有の難しさがあります。委託料には、雇用であれば会社が負担する社会保険料の事業主負担分や、機材費・通信費といった経費が実質的に織り込まれていることが多く、額面の委託料をそのまま給与と比較すると実質的な水準を見誤ります。同等性を説明する際には、業務の範囲・稼働量・経費負担の所在を整理したうえで示す必要があります。なお、委託料に係る所得税・消費税の取扱いなど税務上の論点は税理士の専管領域ですので、具体的な取扱いは必ず税理士にご確認ください。
複数のクライアントと契約する場合の考え方と届出義務
前述のとおり、入管庁のQ&Aは「特定の機関(複数可)との継続的なもの」と明記しており、契約相手が複数であること自体は許容されています。フリーランスとして3社・4社と並行して取引する形も、理論上は排除されていません。
すべての契約先で在留資格該当性が必要になる
ただし当然のことながら、契約先が複数ある場合、そのすべてにおいて当該在留資格に該当する業務内容である必要があります。この考え方は、労働者派遣に関する入管庁Q&A(A42)が「派遣先が複数ある場合、全ての派遣先において当該在留資格の活動に該当する業務内容である必要があります」と述べていることからも読み取れます。
また、ガイドラインは活動の該当性判断について「在留期間中の活動を全体として捉えて判断する」としたうえで、技人国に該当すると認められる活動が「活動全体として見ればごく一部であり、その余の部分は……該当するとは認められない、特段の技術又は知識を要しない業務や、反復訓練によって従事可能な業務を行う場合には、『技術・人文知識・国際業務』の在留資格に該当しないと判断されます」と明示しています。複数契約の場合、A社の業務は技人国に該当するがB社の業務は単純作業である、という組み合わせは全体として否定的に評価されるおそれがあります。稼働時間や報酬の比重が単純作業側に偏っていれば、なおさらです。
契約機関に関する届出は14日以内
複数契約や契約の入替えが生じる働き方で、とりわけ見落とされやすいのが届出義務です。入管法19条の16は、中長期在留者について、同条各号に定める事由が生じたときは当該事由が生じた日から14日以内に出入国在留管理庁長官へ届け出なければならないと定めています。
技術・人文知識・国際業務は同条2号に掲げられており、届出事由は「契約の相手方である本邦の公私の機関の名称若しくは所在地の変更若しくはその消滅又は当該機関との契約の終了若しくは新たな契約の締結」です。つまり、業務委託契約を1件終了したときも、新たに1件締結したときも、それぞれ14日以内の届出対象になります。契約の出入りが多いフリーランス型の働き方では、届出の回数も相応に増えるということです。
ガイドラインは在留期間更新等の審査における考慮事項として「入管法に定める届出等の義務を履行していること」を挙げており、19条の7から19条の13まで、19条の15及び19条の16に規定する届出等の履行が必要としています。届出漏れは更新審査で消極的な事情として評価され得ますので、契約の締結・終了のたびに届出を行う運用を定着させておくべきです。届出の全体像は在留カードの届出義務一覧|届出期限と届出方法を解説で確認できます。
偽装請負と評価されないための実態づくり
契約書の名称が「業務委託」であっても、実態として発注者が直接指揮命令を行っていれば、労働関係法令上は労働者派遣(いわゆる偽装請負)と評価される可能性があります。労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分については、昭和61年労働省告示第37号(最終改正・平成24年厚生労働省告示第518号)「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」が判断の枠組みを示しており、契約の形式ではなく実態に即して判断されます。
在留資格の観点からも、この点は無関係ではありません。業務委託を前提に「委任・委託」として申請しながら、実態が指揮命令下の労務提供であれば、申請内容と実態の乖離という問題が生じます。契約形態を選ぶ以上は、その形態にふさわしい実態を伴わせることが大前提です。契約書面の整備についてはフリーランスの業務委託契約書ガイド|保護法対応の必須条項と偽装請負対策もあわせてご参照ください。
自ら事業を経営するなら「経営・管理」|条文上の切り分け
ここで整理しておきたいのが、「業務委託を受ける」ことと「自ら事業を経営する」ことの区別です。この2つは実務上の距離が近く、フリーランスとして規模を拡大していくと境界に接近しますが、入管法上はまったく別の在留資格の問題になります。
技人国の下欄は経営・管理の活動を明文で除外している
冒頭に引用した技人国の規定をもう一度見ると、末尾の括弧書きで「この表の経営・管理の項から教育の項まで及び企業内転勤の項から興行の項までの下欄に掲げる活動を除く」とされています。そして経営・管理の項の下欄は「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」と規定されています。
したがって、自ら事業の経営を行う活動は、条文上、技人国の在留資格には含まれません。クライアント企業から業務を受託して専門的業務に従事するのか、それとも自ら事業を営み経営に従事するのか——この見極めが在留資格選択の分岐点になります。個人事業主として開業届を出していること自体が直ちに問題になるわけではありませんが、活動の実質が事業経営に移行していけば、経営・管理への在留資格変更を検討すべき局面に入ります。
経営・管理は2025年10月16日施行の改正で要件が引き上げられた
なお「経営・管理」については、上陸基準省令等の改正が令和7年10月16日(2025年10月16日)に施行され、要件が大きく変わっています。改正後は、資本金・出資総額の下限が3,000万円以上とされたほか、本邦に居住する常勤職員を1人以上雇用することが必要となり、申請人の経歴要件や日本語能力に関する要件も新たに設けられました。既存の在留者については令和10年(2028年)10月16日までの経過措置が置かれています。
「業務委託の受注が増えてきたので法人化しよう」と考える段階では、この改正内容を踏まえた検討が不可欠です。詳細は経営管理ビザの2025年10月16日改正|資本金3,000万円・常勤職員1名・日本語N2・事業計画書専門家確認と2028年10月までの経過措置および経営管理ビザ完全ガイド|取得要件から申請手順までをご覧ください。
「特定活動46号」との違いにも注意
日本の大学等を卒業し高い日本語能力を有する方については、「特定活動」(告示46号・本邦大学等卒業者)という選択肢もあります。入管庁のQ&A(A39)は両者の違いについて、技人国では「一般的なサービス業務や製造業務等が主たる活動となるものは認められません」としたうえで、特定活動46号は本邦の大学等で修得した知識・応用的能力に加え、留学生としての経験を通じて得た高い日本語能力を活用することを要件として、幅広い業務に従事する活動を認めるものだと説明しています。
ただし、この在留資格は法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動を内容とするものであり、指定内容は「指定書」で確認する必要があります。業務委託型の働き方を検討する際にそのまま技人国と同じ発想で流用できるものではありませんので、区別して考えてください。制度の内容は在留資格「特定活動46号」(本邦大学等卒業者)|要件・N1/BJT・技人国との違いを徹底解説で解説しています。
資格外活動許可と「報酬に当たらない活動」の整理
就労系在留資格を持つ方が、本来の活動とは別に副業的に報酬を得たいという場面もあります。ここは入管法19条の構造を正確に押さえる必要があります。
19条1項が禁じていること
入管法19条1項1号は、別表第一の一の表、二の表及び五の表の在留資格をもって在留する者は、次項(資格外活動)の許可を受けて行う場合を除き、当該在留資格に応じこれらの表の下欄に掲げる活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行ってはならないと定めています。技人国はこの二の表に含まれますから、技人国の下欄に該当しない活動で収入を得るには、原則として19条2項の資格外活動許可が必要です。
19条2項は、出入国在留管理庁長官が、当該在留資格に応じ下欄に掲げる活動の遂行を阻害しない範囲内で許可することができ、その際に必要な条件を付することができると定めています。施行規則19条5項1号は、条件を付して新たに許可する活動の内容として「一週について二十八時間以内」の収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を挙げています(風俗営業等に係るものは除かれます)。この週28時間という枠は留学生のアルバイトの文脈で語られることが多いのですが、包括的な資格外活動許可の一般的な枠組みとして定められているものです。制度の詳細は資格外活動許可とは?留学生・家族滞在のアルバイト制限と申請方法を解説をご覧ください。
なお、ガイドラインは在留資格変更・更新の審査における「素行が不良でないこと」の説明として、資格外活動許可の条件に違反して恒常的に1週について28時間を超えてアルバイトに従事しているような場合には、素行が善良であるとはみなされませんと明記しています。条件違反は更新審査に直接響くということです。
そもそも「報酬」に当たらない活動もある
見落とされがちですが、19条1項1号の括弧書きは「報酬」から一定のものを除外しています。施行規則19条の3は、これを受けて次のものを定めています。
第一に、業として行うものではない次の活動に対する謝金、賞金その他の報酬——①講演、講義、討論その他これらに類似する活動、②助言、鑑定その他これらに類似する活動、③小説、論文、絵画、写真、プログラムその他の著作物の制作、④催物への参加、映画又は放送番組への出演その他これらに類似する活動。第二に、親族、友人又は知人の依頼を受けてその者の日常の家事に従事すること(業として従事するものを除く)に対する謝金その他の報酬。第三に、一定の留学生が大学又は高等専門学校との契約に基づいて行う教育又は研究を補助する活動に対する報酬です。
ここで決定的に重要なのは、第一・第二の類型に「業として行うものではない」「業として従事するものを除く」という限定が付いていることです(第三の類型にはこの限定はありません)。単発で依頼を受けた講演の謝金や、業としてではない著作物制作の対価は「報酬」に当たらず、資格外活動許可の問題を生じません。しかし、これを反復継続して業として行えば、この除外規定の枠を外れます。「単発の副業なら大丈夫」という理解は、この「業として行うものではない」という条件を落としてしまうと危険な誤解になります。
発注する企業側の責任|不法就労助長罪と就労資格証明書
ここまで外国人本人の視点で整理してきましたが、業務委託の場合、発注する日本企業側のリスク管理も同じくらい重要です。雇用ではないから在留資格の確認は不要、という発想は誤りです。
不法就労助長罪の構造
入管法73条の2第1項は、①事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者、②外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者、③業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は②の行為に関しあっせんした者について、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めています。入管庁のQ&A(A42)も、派遣先で在留資格に該当しない業務に従事させた場合について、この条文を引用して不法就労助長罪に該当し得ると明記しています。
特に注意すべきは同条2項です。1項各号に該当する行為をした者は、当該外国人の活動が在留資格に応じた活動に属しない報酬を受ける活動であること等を知らないことを理由として処罰を免れることができないとされ、「ただし、過失のないときは、この限りでない」という但書が置かれています。つまり、知らなかったというだけでは免責されず、確認を怠っていれば過失があったと評価され得る構造です。業務委託先の在留カードを確認していなかった、就労可能な範囲を確かめないまま発注していた、という状態は、この「過失」の評価に直結します。
なお、令和6年法律第60号による改正でこの罰則は引き上げられることが決まっていますが、同法の施行日は令和9年(2027年)4月1日とされており、本記事執筆時点では改正前の法定刑が適用されます。制度の全体像は不法就労助長罪とは?改正入管法の罰則強化と企業が取るべき5つの対策で解説しています。
発注側が押さえておくべき確認事項
入管庁のQ&A(A1)は、外国人を雇用するに当たってまず在留カード等によって在留資格・在留期限及び就労制限の有無を確認するよう求めています。業務委託の場合も、確認すべき対象は同じです。在留カードの表面で在留資格と在留期間満了日を確認し、就労制限の有無の欄を見て、必要に応じて裏面の資格外活動許可欄も確認します。そのうえで、委託しようとする業務内容がその在留資格に該当するかを検討します。
また、業務委託でフリーランスに発注する場合には、入管法とは別に、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法/令和5年法律第25号、令和6年11月1日施行)に基づく取引条件の明示義務等が課される場合があります。在留資格の確認と契約書面の整備は、別々の話ではなく一体で設計すべき事項です。
就労資格証明書という確認手段
「この業務は自分(あるいは委託先)の在留資格で行えるのか」を事前に確認したい場面で使えるのが就労資格証明書です。入管法19条の2第1項は、出入国在留管理庁長官は、本邦に在留する外国人から申請があったときは、法務省令で定めるところにより、その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を証明する文書を交付することができると定めています。入管庁のQ&A(A3)も、採用後に従事させる業務がその方の在留資格で行うことのできる活動に該当するかを確認する方法として、この交付申請を案内しています。
交付手数料は、2025年4月1日の改定により、窓口申請2,000円・オンライン申請1,600円となりました(改定前は1,200円)。同じ改定で、在留資格変更許可申請と在留期間更新許可申請の手数料はいずれも窓口6,000円・オンライン5,500円に、永住許可は10,000円に改定されています。なお在留資格認定証明書交付申請に手数料はかかりません。
あわせて押さえておきたいのが、同条2項が「何人も、外国人を雇用する等に際し、その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動が明らかな場合に、当該外国人が前項の文書を提示し又は提出しないことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない」と定めている点です。就労資格証明書はあくまで確認手段であって、その不提出を理由に取引上不利に扱うことは法が禁じています。取得方法と活用法は就労資格証明書の取得方法と活用法|転職時の在留資格確認手続きを解説で解説しています。
業務委託型で在留資格を維持するための実務ポイント
ここまでの内容を、申請・更新の実務に落とし込むと、次のような整理になります。
契約書の設計。期間の定めと更新条項を置き、契約が単発でないことを文面から読み取れるようにします。業務範囲を具体的に記載し、その内容が在留資格の下欄に該当する専門的業務であることが分かる書き方にします。報酬額・支払時期・経費負担の所在を明記し、報酬水準の同等性を説明できる状態にしておきます。指揮命令関係を前提としない業務遂行の在り方を条項に反映させることも、契約形態と実態を一致させるうえで重要です。
継続性の疎明資料。契約書だけでなく、過去の取引実績、請求書・入金記録、今後の受注見込みを示す資料など、活動が継続して行われることが見込まれることを裏づける材料を揃えます。契約先が複数ある場合は、そのすべてについて業務内容と報酬を整理し、全体として技人国に該当する活動が中心であることを示せるようにします。
届出の管理。契約の終了・新規締結のたびに、14日以内の契約機関に関する届出を行います。契約の入替えが多いほど届出件数は増えますので、締結・終了の記録と届出の記録を対にして管理する仕組みを作っておくと、更新時に慌てずに済みます。
空白期間を作らない設計。3か月以上活動を行わない状態を避けるため、契約更新のタイミングを前倒しで管理します。案件の切れ目が読める段階で次の契約の目処を立てておくことが、結果的に在留資格の安定につながります。
所属機関のカテゴリー確認。提出資料は所属機関のカテゴリー(1〜4)によって異なり、規模が大きいほど簡略化されます。カテゴリー2は前年分の給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人などが該当し、カテゴリー4はカテゴリー1〜3のいずれにも該当しない団体・個人です。業務委託先が小規模事業者である場合はカテゴリー4となることが多く、提出資料は相応に厚くなります。区分の詳細は技人国ビザのカテゴリー1〜4区分の判定方法|2026年対応・必要書類の違いを解説をご覧ください。
在留資格の申請でお困りの方へ。行政書士法人Treeでは、申請取次行政書士が要件の確認・必要書類の作成・出入国在留管理局への申請取次までを一括してサポートします。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
就労系在留資格が求めているのは「本邦の公私の機関との契約」であって、雇用契約に限られません。出入国在留管理庁のガイドラインは「契約」に雇用のほか委任、委託、嘱託等が含まれるとし、令和8年7月のQ&Aも「特定の機関(複数可)との継続的なものである必要があります」と明記しています。業務委託やフリーランスという形態それ自体が、就労ビザを否定する理由にはなりません。
他方で、認められるための条件として「特定の機関との継続的なもの」であること、そして在留活動が継続して行われる見込みがあることが正面から要求されています。単発・スポットの受注を積み重ねるだけの形は、この要件との関係で弱くなります。入管法22条の4第1項6号が、下欄の活動を継続して3か月以上行わないでいることを取消事由として掲げていることも、継続性を軽視できない制度的な理由です。
契約形態を変えても、学歴・実務経験・業務内容・報酬水準といった基準省令上の要件はまったく緩みません。むしろ、専門的業務に該当することや報酬が日本人と同等額以上であることを、雇用契約書という分かりやすい資料なしに説明しなければならないぶん、立証の負担は重くなります。2026年4月改定で明確化されたCEFR・B2相当の言語能力の考え方も、対人業務に従事する場合には併せて確認が必要です。
そして、契約の終了や新規締結のたびに14日以内の契約機関に関する届出が必要になる点、発注する企業側にも不法就労助長罪という重い責任があり、知らなかったというだけでは免責されない構造になっている点は、双方が共有しておくべき事項です。自ら事業の経営を行う段階に進むのであれば、条文上それは「経営・管理」の領域であり、2025年10月16日施行の改正後の要件を踏まえた検討が必要になります。
行政書士法人Treeでは、在留資格に関する要件の確認、出入国在留管理局に提出する申請書類の作成、申請取次、および業務委託契約書をはじめとする権利義務に関する書類の作成を行っています。雇用以外の形で働きたい、あるいは外国人に業務を委託したいという段階で、契約の設計と在留資格の要件を同時に検討しておくことが、後の更新でつまずかないための最も確実な方法です。
関連記事
- 技術・人文知識・国際業務ビザの要件と申請手続き|不許可パターンと対策
- 技人国ビザの転職手続き|14日以内の届出義務・3か月ルール・就労資格証明書を解説
- 就労資格証明書の取得方法と活用法|転職時の在留資格確認手続きを解説
- 資格外活動許可とは?留学生・家族滞在のアルバイト制限と申請方法を解説
- 不法就労助長罪とは?改正入管法の罰則強化と企業が取るべき5つの対策
- 在留カードの届出義務一覧|届出期限と届出方法を解説
- 在留資格「特定活動46号」(本邦大学等卒業者)|要件・N1/BJT・技人国との違いを徹底解説
- 技術・人文知識・国際業務ビザに日本語・言語要件追加|2026年4月15日施行の新制度を徹底解説
- 技人国ビザのカテゴリー1〜4区分の判定方法|2026年対応・必要書類の違いを解説
- 経営管理ビザの2025年10月16日改正|資本金3,000万円・常勤職員1名・日本語N2・事業計画書専門家確認と2028年10月までの経過措置
- 委任契約・準委任契約・請負契約の違い|業務委託の法的性質を徹底比較
- フリーランスの業務委託契約書ガイド|保護法対応の必須条項と偽装請負対策
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


