公開日:2026年5月15日
経営事項審査(経審)の総合評定値P点を引き上げる手段として、最も即効性が高いのがW点(社会性等)の加点項目です。W点はP点全体の0.15ウェイトでありながら、加点項目を1つ追加するだけで数十点単位でP点が押し上がる設計のため、入札ランクの境界線にいる企業にとっては差別化要素として機能します。建設業退職金共済(建退共)の加入、雇用保険・健康保険・厚生年金の3保険完備、防災協定の締結、若年技術者の確保、CCUS技能者比率、ISO認証、エコアクション21、女性活躍推進等――項目は多岐にわたりますが、「とりあえず全部加入すればよい」というものでもなく、自社の体制・コスト・継続維持の容易さを見極めて優先順位をつける必要があります。本記事では、W点の評点項目を体系的に整理し、それぞれの加点幅・取得難易度・継続コストを実務目線で解説します。
本記事の結論:
- 経審のW点(社会性等)は労働福祉・営業継続・防災活動・法令遵守・経理・研究開発・建設機械・ISO・技能向上・WLB・CCUS就業履歴蓄積等の評価項目で構成され、項目別評点を所定ウェイトで合算します。
- 雇用保険・健康保険・厚生年金の未加入は大幅減点となるため、加入状況の整備が最優先課題です。
- 建退共加入・防災協定・若年技術者継続育成・CCUS技能者比率は加点効果が大きく、書類整備の優先順位を上げるべき項目です。
- 当事務所は経審申請書類・経営状況分析・確認書類の整備代理を担当し、社会保険手続・労働者名簿等の社労士業務は提携社労士へ連携します。
経営事項審査(経審)申請サポート
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目次
根拠法令
- 建設業法 第27条の23(経営事項審査)
- 建設業法施行規則 第18条の3〜第18条の5(経営事項審査の事項及び基準)
- 「経営事項審査の事務取扱いについて」(国土交通省告示・通達)
- 建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況の評価(CCUS関連通達)
- 中小企業退職金共済法(建退共の根拠法)
- 健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法(社会保険の根拠法)
1. 経審の構造とW点の位置づけ
経営事項審査(経審)の総合評定値P点は、X1・X2・Y・Z・Wの5区分の評点を所定のウェイトで合算して算出されます。
P点計算式
P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W
- X1:完成工事高評点(0.25)
- X2:自己資本額および平均利益額(営業利益+減価償却実施額。いわゆるEBITDAに相当)の評点(0.15)
- Y:経営状況評点(経営状況分析・0.20)
- Z:技術力評点(0.25)
- W:その他社会性等評点(0.15)
W点はP点全体の15%のウェイトを占め、X1・Z・Y・X2と同等のウェイトでP点に直接寄与します。W点の素点は項目別評点を合算したもので、上限値が設定されています。
2. 労働福祉の状況(最重要・未加入は大幅減点)
労働福祉の状況は、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の3保険加入状況、建設業退職金共済(建退共)加入、退職一時金制度・企業年金制度導入、法定外労働災害補償制度加入等で評価されます。
3保険未加入は致命的減点
- 雇用保険未加入:W1のうち労働福祉項目で大幅マイナス(具体的減点幅は告示参照)
- 健康保険未加入:同様に大幅マイナス
- 厚生年金未加入:同様に大幅マイナス
- 適用除外事業所(一部除外)は別評価
2020年10月施行の建設業法改正以降、社会保険未加入企業は許可・更新時の審査対象であり、経審でも厳格化されています。
建退共・退職金制度の加入
- 建設業退職金共済(建退共)への加入:プラス評価
- 中小企業退職金共済(中退共):プラス評価
- 独自の退職一時金制度・企業年金制度:プラス評価
- 法定外労働災害補償制度(業界団体経由が要件):プラス評価
3. 建設業の営業継続の状況
建設業許可取得後の営業継続年数で評価されます。長期間継続して許可を維持していることがプラスに作用し、営業停止・許可取消の処分歴があるとマイナス評価となります。
評点要素
- 建設業の営業年数(許可取得からの年数)
- 民事再生法・会社更生法の適用後の経過年数
- 営業停止処分の有無・処分日数
営業年数は、現在の事業者が許可を継続している期間で測定します。組織再編(合併・事業譲渡)の取扱いは個別判断となるため、行政庁・分析機関に確認が必要です。
4. 防災活動への貢献の状況(防災協定)
地方公共団体・国・公益的団体との防災協定締結は、加点項目の中でも比較的取得が現実的でコストパフォーマンスが高い項目です。
対象となる防災協定
- 地方公共団体(都道府県・市区町村)との災害応援協定
- 地方整備局・河川事務所等との応急対策協定
- 業界団体経由の協定(協会単位での加盟)
協定書の写し(双方押印済)を経審申請時に提出します。協定の対象工種(土木一式・建築一式・とび・土工等)が自社の許可業種と整合している必要があります。協定締結のための要件(過去の災害対応実績・人員・機材保有等)は協定主体ごとに異なります。
5. 法令遵守の状況・建設業の経理の状況
過去5年程度の指示処分・営業停止処分等の有無で評価されます。処分歴があれば大幅減点、なければ加点です。
建設業の経理の状況
- 監査の受審状況(公認会計士監査・税理士監査)
- 登録経理試験(建設業経理士・建設業経理事務士)合格者の数
- 1級建設業経理士/2級建設業経理士/3級・4級の人数別評価
建設業経理士の試験合格者を雇用又は社内育成することで、加点を獲得できます。1級合格者の方が点数寄与は大きく、長期的な人材投資として有効です。
6. 研究開発・建設機械の保有・ISO認証
研究開発の状況
過去2年間の研究開発費の平均額で評価され、計上のためには会計処理として研究開発費を独立計上する必要があります。中小規模の建設業者では実務上活用しづらい項目です。
建設機械の保有状況
所定の建設機械(ショベル系掘削機・ブルドーザー・トラクターショベル・モーターグレーダー・ダンプ車等)の保有台数で評価されます。リース車両は対象外で、自社所有車両のみがカウントされます。
ISO・エコアクション21等
- ISO9001(品質マネジメント):プラス評価
- ISO14001(環境マネジメント):プラス評価
- エコアクション21:環境系の代替評価
- 建設キャリアアップシステム(CCUS):技能者就業履歴の蓄積評価
ISO認証は審査機関選定・初回審査・年次審査でコストがかかるため、入札ランク向上の費用対効果を試算した上で導入判断が必要です。
7. 若年技術者・知識技術技能向上に関する取組
近年強化されているのが若年技術者の継続育成評価です。35歳未満の技術者比率・新規雇用比率に応じて加点されます。
若年技術者比率の評価
- 技術職員(Z点対象)のうち35歳未満の比率15%以上:プラス評価
- 新規若年技術職員の継続的な育成(前年比増加):プラス評価
- 2段階の閾値で評点が変動
知識・技術・技能向上に関する取組(CPD・技能者講習)
- 技術者のCPD(継続的専門能力開発)単位取得
- 技能者の技能講習・能力評価制度の活用
- 事業者全体での年間取得単位の合計値で評価
技術者教育の仕組みを社内整備し、CPD単位を毎年積み上げることで継続的な加点が見込めます。
8. ワーク・ライフ・バランス・CCUS就業履歴蓄積
ワーク・ライフ・バランス(女性活躍推進等)
- えるぼし認定(女性活躍推進法):3段階で評価
- くるみん認定(次世代育成支援対策推進法):認定段階で評価
- ユースエール認定(若者雇用促進法):プラス評価
これらの認定は厚生労働省都道府県労働局への申請で取得します。労務管理体制の整備が前提となるため、社労士との連携が必要なケースが多いです。
CCUS技能者就業履歴の蓄積
建設キャリアアップシステム(CCUS)への技能者カードリーダー設置・登録基幹技能者の活用等により、現場での就業履歴蓄積を行うことで加点を受けられます。元請技能者比率・現場登録率により評価が変動します。
9. 加点項目の優先順位(実務的なロードマップ)
W点の加点項目は多岐にわたるため、自社の規模・体制・コストに応じた優先順位付けが重要です。一般的な実務上の優先順位は以下のとおりです。
第一優先(前提条件・全社対応)
- 雇用保険・健康保険・厚生年金の3保険完備(未加入は致命的減点)
- 建設業退職金共済(建退共)または中小企業退職金共済の加入
- 法定外労働災害補償制度(業界団体経由)の加入
第二優先(中コストで取得可能)
- 地方公共団体との防災協定締結
- 建設業経理士(1級・2級)の社内育成
- 若年技術者継続採用と育成計画の策定
- CCUS事業者登録・現場カードリーダー設置
第三優先(高コスト・体制構築が必要)
- ISO9001・14001認証取得(または代替のエコアクション21)
- えるぼし認定・くるみん認定・ユースエール認定
- 建設機械の自社所有化(リースでは加点対象外)
- 研究開発費の独立計上と社内研究体制
P点の境界線まで残り何点必要かを試算したうえで、最も費用対効果の高い項目から順に着手するのが合理的です。経審スタンダード・入札ワンストップでは、現状P点と目標P点の差から逆算したW点改善策を整理してご提案します。
業務範囲の整理
行政書士の業務範囲
- 経営事項審査申請書類の作成・提出代行
- 決算変更届の作成・提出代行
- W点加点項目の整理・該当性精査
- 建設業許可関連各種変更届
- 入札参加資格申請書類の作成
業務範囲外(連携先専門家)
- 経営状況分析の解析・財務改善助言(税理士・中小企業診断士)
- 労働保険・社会保険の新規適用・算定基礎届(社労士)
- えるぼし・くるみん・ユースエール認定取得サポート(社労士)
- ISO9001・14001の構築・認証取得(認証コンサルタント)
- 建退共加入手続(建退共支部・本人手続)
- 税務書類作成・税額計算(税理士)
FAQ|よくあるご質問
Q1. W点の加点項目で最もコストパフォーマンスが高いのはどれですか。
A. 個社の状況によりますが、防災協定締結・建退共加入・若年技術者の継続採用は比較的低コストで加点が得やすい項目です。3保険完備は前提条件として最優先です。
Q2. ISO認証の取得費用に対して経審の点数効果は十分ですか。
A. 入札ランクが境界線にある場合は効果が大きい一方、初回審査・年次審査のコストが継続的にかかります。費用対効果はP点目標値とランク基準次第です。
Q3. 防災協定はどこと締結すればよいですか。
A. 営業エリアの市区町村・都道府県・地方整備局が一般的です。協定主体ごとに締結要件が異なるため、業界団体経由の協定参加も選択肢です。
Q4. 若年技術者比率は技能者と技術者どちらでカウントしますか。
A. Z点で評価される技術職員(建設業法上の技術者・主任技術者・監理技術者の有資格者)の人数を母数として、35歳未満比率を判定します。
Q5. CCUS就業履歴蓄積の評価はどのように測定されますか。
A. 事業者の現場でのカードリーダー設置率・元請技能者の現場登録率等から算定されます。技能者数の絶対値ではなく就業履歴の蓄積率が評価対象です。
Q6. 建設業経理士の合格者数を増やすにはどうすればよいですか。
A. 社内研修と試験受験の継続が中心です。1級・2級は税理士監修の対策講座が市販教材で揃っており、毎年数名ずつ合格者を増やすロードマップが現実的です。
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まとめ
経営事項審査のW点(社会性等)は、P点全体の0.15ウェイトを占める評点で、加点項目の積み上げによりP点の境界線突破に直結する重要要素です。雇用保険・健康保険・厚生年金の3保険完備が大前提であり、未加入は大幅減点となります。建退共加入・防災協定締結・若年技術者継続育成・CCUS就業履歴蓄積・建設業経理士育成は、比較的取得が現実的でコストパフォーマンスが高い加点項目として実務上の効果が大きい項目です。ISO9001・14001、えるぼし・くるみん認定等は、認証取得・維持コストとP点向上効果のトレードオフを試算した上で導入判断します。W点はP点全体の構成要素のうち最も即効性のある領域で、X1(完成工事高)・Z(技術力)の積み上げに時間がかかる中堅企業にとっては、W点最適化が入札ランク向上への近道となります。経審申請書類の作成・W点加点項目の整理・決算変更届は行政書士業務として対応可能です。社会保険手続・人事認定取得は社労士、ISO認証は認証コンサルタント、税務処理は税理士をご活用ください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


