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建設業者の法人成り|個人事業時の許可承継と認可申請の段取り

更新: 約11分で読めます

個人事業主として建設業を営んでこられた方が、事業規模の拡大・人材採用・元請けからの取引条件・社会的信用力の向上といった理由で「そろそろ法人化を」と検討される場面は多くあります。一般的な法人成りでも事業承継・税務・社会保険の論点は複雑ですが、建設業者の場合はさらに「個人事業主として取得した建設業許可をどう承継するか」という業界特有の論点が加わります。令和2年10月施行の改正建設業法により、認可制の地位承継制度が新設され、個人から法人への事業譲渡・新設分割等によって個人時代の許可番号・許可日付・経営事項審査の経審点まで法人に引き継げる道が開かれました。一方で、認可申請の事前審査・添付書類は新規許可と同等以上に重く、申請から認可までの期間中の「許可空白」を避ける段取りが極めて重要です。本記事では、建設業者の法人成りに伴う許可承継・認可申請のスケジュール設計を実務目線で解説します。

本記事の結論:

  • 建設業者の法人成り時の許可取扱いは、認可承継(建設業法17条の2・17条の3)か新規許可取り直しの2択。認可承継なら許可番号・許可日付・経審点・完工高履歴を法人に引き継げる。
  • 認可申請は事前協議必須・標準2〜3か月。個人廃業届と法人新規開始のタイミング設計、社会保険・労災保険の切替、専任技術者・経管の常勤性立証を並走。
  • 令和2年10月施行の改正建設業法で認可制の地位承継が新設され、許可空白を避けつつスムーズな承継が可能に。
  • 当所は建設業×法人設立 LIGHT 88,000円/STANDARD 187,000円/FULL SUPPORT 143,000円+月額顧問(税込)。登記は司法書士、税務は税理士の提携専門家をご紹介します。

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根拠法令

  • 建設業法 第17条の2(事業譲渡・合併・分割の認可)
  • 建設業法 第17条の3(相続の認可)
  • 建設業法 第7条・第15条(許可要件)
  • 建設業法施行令・施行規則(認可申請の様式・添付書類)
  • 会社法 第763条(新設分割計画)
  • 所得税法(個人事業廃業届)/法人税法(法人設立届)

法人成りで建設業許可をどう取り扱うか

選択肢1:認可承継(推奨)

令和2年10月の改正建設業法により、建設業許可は事業譲渡・合併・分割・相続によって法人に承継できる「認可制」となりました。承継のメリットは絶大で、許可番号・許可日付・経営業務管理責任者の経験年数・経営事項審査の経審点・完工高履歴・主任技術者の経験年数まで全て法人に引き継がれます。入札参加資格申請における「許可後○年経過」要件、元請からの評価、銀行融資の信用力など、許可日付が古いことの利益を温存できます。

選択肢2:新規許可取り直し

個人事業を廃業し、法人として新規に建設業許可を取得する方法です。手続自体は単純ですが、許可空白期間(個人廃業から法人許可取得まで)が生じ、その間500万円以上の工事を請け負えない/元請からの新規発注を見送られる/経審点がリセットされる、といった大きなデメリットが伴います。認可承継が制度化された現在、合理的な選択肢ではほぼなくなっています。

選択肢3:個人継続+法人併存(過渡期のみ)

個人事業の建設業許可を残しつつ、法人にも別途新規許可を取得する方法です。経営業務管理責任者・専任技術者の確保が両方で必要になるため、人材的に困難なケースが多く、継続運用は推奨されません。

認可承継の要件と手続

認可承継の3類型

(1)事業譲渡:個人事業主が法人(新設または既存法人)に事業を譲渡する形態。最も柔軟で、譲渡対象資産・負債の選別が可能。

(2)新設分割:個人事業主が会社を新設し、事業の全部または一部を分割により承継させる形態。会社法上は個人を被分割会社とする新設分割は不可なため、実務では事業譲渡型が主流。

(3)相続:個人事業主の死亡により相続人が事業を承継する形態。相続発生から30日以内に認可申請が必要(建設業法17条の3)。

認可申請の事前協議

認可申請は、事業譲渡等の効力発生日の前日までに認可を受ける必要があります。許可行政庁(知事許可なら都道府県、大臣許可なら地方整備局)への事前協議を申請予定の3〜6か月前から開始し、申請書様式・添付書類・スケジュールを詰めます。

必要書類(標準的な事業譲渡認可)

承継認可申請書、事業譲渡契約書(写し)、譲渡側(個人)の確定申告書直近3期分、譲受側(新設法人)の定款・登記事項証明書・株主名簿、経営業務管理責任者の経験を証する書面(個人時代の確定申告書・工事台帳)、専任技術者の資格証・実務経験証明書、財産的基礎要件(自己資本500万円以上または500万円以上の資金調達能力)の証明書類、社会保険加入を証する書面、欠格事由非該当の誓約書・身分証明書・登記されていないことの証明書など。

法人設立と認可申請のスケジュール設計

3か月前:事前協議・法人設立準備

許可行政庁への事前協議開始。並行して、法人定款の作成・公証役場での認証準備、商号・事業目的(建設業を含む適切な事業目的の記載が必須)、本店所在地・資本金・役員構成の確定。資本金は財産的基礎要件500万円以上を意識した設計が望ましい。

2か月前:法人設立登記

定款認証→出資金払込→設立登記申請(司法書士業務)。登記完了後、法人の登記事項証明書・印鑑証明書を取得。法人設立後すぐに、法人税・消費税・源泉所得税・地方税・社会保険・労働保険の各種開業届出を行います。

1〜2か月前:認可申請

必要書類を揃えて許可行政庁に認可申請を提出。申請受付から認可までの標準処理期間は知事許可で30〜45日、大臣許可で90日程度。事前協議が十分なら一発受理が期待できますが、補正対応も想定してバッファを確保。

効力発生日:事業譲渡実行・許可承継

認可日(または認可で定められた効力発生日)に事業譲渡契約を実行し、個人事業の建設業許可は法人に承継されます。個人は建設業許可廃業届(建設業法12条)を提出。法人の許可番号・許可日付は個人時代のものを承継します。

効力発生日以降:周辺手続

個人事業廃業届(税務署・都道府県)、法人開業届、社会保険・労働保険の切替、屋号付き口座の名義変更、取引先への通知、車両・不動産・リース契約の名義変更、入札参加資格の名義変更、経審の受審スケジュール調整など。

経営業務管理責任者・専任技術者の引継

経営業務管理責任者(建設業法7条1号)

個人事業主本人が法人の常勤役員(取締役)として就任し、経営業務管理責任者の地位を引き継ぐのが最もシンプルです。個人事業主としての経験年数(建設業に関し5年以上の経営経験)は、確定申告書・工事請負契約書・工事台帳で立証します。

専任技術者(建設業法7条2号)

法人の常勤社員(または役員)として配置される技術者です。個人時代に専任技術者であった本人が法人でも常勤すれば継続可能。資格証または実務経験10年(指定学科卒は3年または5年)で立証します。

常勤性の立証

経営業務管理責任者・専任技術者の「常勤性」は、健康保険被保険者証(事業所名記載)、住民票(営業所通勤可能距離)、賃金台帳・出勤簿、雇用契約書等で立証します。複数事業所兼務・他社役員兼務は原則NG。

法人成りに伴う税務・社会保険の論点

個人事業廃業と法人開業の手続

個人事業廃業は、税務署への「個人事業の開業・廃業等届出書」、都道府県への「事業廃止申告書」、所轄官署への必要届出を、廃業日から1か月以内に提出します。法人開業は、税務署への「法人設立届出書」「青色申告承認申請書」「給与支払事務所等の開設届出書」、都道府県・市町村への「法人設立届出書」を、設立日から所定期間内に提出します。

事業譲渡対価の評価

事業譲渡では、譲渡対価の適正性が税務上の重要論点となります。資産・負債の時価評価、のれん(営業権)の評価、機械設備・工事仕掛品・受注残・取引先関係等の無形資産の評価が必要です。低廉譲渡と判定されると、譲渡側に贈与税・所得税、譲受側にみなし受贈益課税のリスクがあります。税理士・公認会計士の関与が必須です。

消費税の取扱い

事業譲渡は消費税の課税取引です。譲渡資産のうち、棚卸資産・建物・機械装置等は課税、土地・有価証券は非課税、売掛金・貸付金は非課税となります。譲渡側・譲受側の双方で消費税の納税・仕入税額控除を整理します。

社会保険の切替

個人事業時代に国民健康保険・国民年金だった代表者・従業員は、法人設立により健康保険・厚生年金保険に強制加入となります(法人は1人法人でも強制適用事業所)。新規適用届・被保険者資格取得届を年金事務所に提出します。

建設業特有の周辺手続

経審の受審スケジュール調整

個人時代に経審を受審していた場合、法人としての初回経審のタイミングを慎重に設計します。決算変更届(事業年度終了後4か月以内)・経営状況分析・経審申請の流れを、法人初年度の決算スケジュールに合わせて組み立てます。

入札参加資格の名義変更

入札参加資格を有していた個人事業から法人への名義変更は、各発注機関(国・都道府県・市町村等)ごとに手続・期限が異なります。発注機関数が多い場合、漏れなく一括処理することが入札継続の鍵となります。

JCIP電子申請の準備

建設業許可・経審の電子申請(JCIP)では、法人の電子証明書(gBizID等)の取得が必要です。設立後速やかに取得手続を進めます。

業務範囲の整理

行政書士業務として可能な範囲:

  • 定款作成(電子定款認証含む)
  • 建設業許可承継認可申請(事業譲渡・新設分割・相続)
  • 建設業新規許可申請(取り直しの場合)
  • 事業譲渡契約書原案の作成
  • 各種事業計画書・事業概要書の作成
  • 許可行政庁との事前協議・補正対応

行政書士の業務範囲外(他士業の業務):

  • 法人設立登記の申請(司法書士業務/司法書士法3条1項1号)
  • 事業譲渡契約に伴う不動産登記・商業登記(司法書士業務)
  • 法人税・消費税・所得税の申告(税理士業務/税理士法2条)
  • 事業譲渡対価の評価・適正性判定(税理士・公認会計士業務)
  • 社会保険・労働保険の手続代理(社会保険労務士業務)

当事務所では、定款作成から建設業許可承継認可申請までを行政書士業務として一貫してご支援します。法人設立登記は提携司法書士、税務・社会保険は提携税理士・社会保険労務士をご紹介する体制で、各士業の業務範囲に沿って連携を進めます。

FAQ|よくあるご質問

Q1. 認可承継だと許可番号は変わりませんか?
A. 原則として個人時代の許可番号・許可日付がそのまま法人に引き継がれます。ただし許可行政庁により運用が異なるため、事前協議で確認します。

Q2. 経審の点数はリセットされますか?
A. 認可承継であれば、個人時代の完工高・経営状況分析・技術者数等が法人に引き継がれ、点数の連続性が保たれます。新規取り直しの場合はリセットされます。

Q3. 入札参加資格はどうなりますか?
A. 認可承継であれば、入札参加資格申請の名義変更手続で対応可能です。発注機関により対応が異なるため、各発注機関への事前確認が必要です。

Q4. 個人事業の借入れは法人に引き継げますか?
A. 銀行との個別交渉次第です。事業譲渡契約に債務承継を盛り込む場合、債権者の同意が必要となります。

Q5. 法人設立から認可までの期間中、工事はどうしますか?
A. 認可効力発生日までは個人事業として工事を請け負い、効力発生日以降は法人として継続します。認可空白を避ける段取りが重要です。

Q6. 資本金はいくらが望ましいですか?
A. 一般建設業の財産的基礎要件500万円以上を満たす設計が望ましく、特定建設業を目指す場合は資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上等の要件を考慮します。

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まとめ

建設業者の法人成りでは、令和2年改正建設業法により制度化された「認可承継」を活用することで、個人時代の許可番号・許可日付・経審点・完工高履歴を法人に引き継ぐことが可能となり、入札参加資格や元請評価への影響を最小化できます。スケジュールは「3か月前:事前協議・法人準備」「2か月前:設立登記」「1〜2か月前:認可申請」「効力発生日:事業譲渡実行」「以降:周辺手続」という設計で、認可空白を避けながら進めます。経営業務管理責任者・専任技術者は法人の常勤役員・社員として継続配置し、健康保険・住民票・賃金台帳・出勤簿で常勤性を立証します。当事務所では建設業特化の法人設立プラン(LIGHT 88,000円/STANDARD 187,000円/FULL SUPPORT 143,000円+月額顧問)と認可承継申請を一気通貫でご支援し、登記・税務・社会保険は提携士業をご紹介する体制で進めます。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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