解体工事業を営む会社が合併や分社化(会社分割)によって事業を再編する場面では、「これまでの解体工事業登録や建設業許可(解体工事業)はそのまま引き継げるのか」「いったん廃業して取り直す必要があるのか」が大きな関心事になります。許可・登録には空白期間が生じると工事の受注に支障が出るため、再編のスケジュールと許認可手続を一体で設計することが欠かせません。本記事では、解体工事に関わる二つの許認可制度(建設リサイクル法に基づく解体工事業登録と、建設業法に基づく建設業許可の解体工事業)について、合併・分社化時の承継の取扱いを整理します。
目次
解体工事に関わる二つの許認可を整理する
解体工事を業として行う場合の許認可は、請け負う工事の規模によって二つに分かれます。一つは建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)第21条に基づく「解体工事業登録」、もう一つは建設業法に基づく「建設業許可」のうち解体工事業の業種です。
建設業法に基づく土木工事業・建築工事業・解体工事業のいずれかの許可を受けていない事業者が解体工事を行う場合は、元請・下請の別を問わず、工事を施工する区域を管轄する都道府県知事の解体工事業登録を受けなければなりません。一方、1件の請負金額が500万円(税込)以上の解体工事を請け負うには、建設業許可(解体工事業)が必要です。なお、土木工事業・建築工事業・解体工事業の建設業許可を受けている建設業者は、その許可の範囲で解体工事業登録を受ける必要はありません。
事業承継を検討する際は、自社が「登録のみ」「建設業許可あり」のどちらの立場かをまず確認し、それぞれの制度に応じた承継の可否を押さえる必要があります。両者は根拠法も承継のしくみも異なるためです。
建設業許可(解体工事業)の事業承継認可制度
建設業許可については、2020年10月1日施行の改正建設業法によって、事業承継等に係る認可制度が新設されました。これにより、合併・会社分割・事業譲渡については建設業法第17条の2、相続については第17条の3に基づき、あらかじめ(相続の場合は被相続人の死亡後)認可を受けることで、建設業者としての地位を承継できるようになっています。
この制度の導入前は、合併・分割・事業譲渡を行うと、承継元はいったん許可を廃業し、承継先が新規に許可を申請し直す必要がありました。そのため、廃業日から新たな許可日までの間に許可の空白期間が生じ、その間は500万円以上の工事を請け負えないという不利益がありました。認可制度を利用すれば、こうした空白期間を生じさせずに許可を引き継ぐことができます。
承継のかたちによって手続のタイミングが異なる点に注意が必要です。合併・会社分割・事業譲渡については、効力発生日の前にあらかじめ認可を受ける「事前認可」が原則です。相続については、被相続人の死亡後30日以内に認可を申請する必要があります。スケジュールを誤ると認可を受けられず、結局は新規許可を取り直すことになりかねません。
合併・分社化で建設業許可を引き継ぐ際の留意点
合併の場合は、消滅会社が持っていた建設業許可(解体工事業)を存続会社・新設会社が承継できるよう、事前に認可申請を行います。分社化(会社分割)の場合は、建設業法上、分割により建設業の全部を承継させることが前提となるため、承継元が複数の許可業種を有する場合に、解体工事業の許可だけを任意に切り出して承継できるわけではありません。承継対象となる建設業の範囲を確認したうえで、分割被承継法人と分割承継法人が事前に認可を受ける必要があります。いずれも、承継先が建設業許可の要件(経営業務の管理責任者に関する体制、解体工事業の営業所技術者等、財産的基礎、欠格要件に該当しないことなど)を満たしていることが前提となります。
とりわけ解体工事業では、営業所技術者等や、現場に置く技術者の資格・実務経験の確認が重要です。再編によって技術者が承継先に在籍しなくなると、要件を満たせず認可が受けられない事態も起こり得ます。誰がどの会社に所属するかを、再編の設計段階から許可要件と突き合わせて確認しておくことが大切です。
また、元請として受注する工事で、下請に出す金額の合計が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上となる場合には、一般建設業ではなく特定建設業の許可が必要です。この金額基準は令和7年(2025年)2月1日施行の改正で引き上げられたものです。再編後の受注規模によっては、一般から特定への許可区分の見直しが必要になる場合がある点も押さえておきましょう。
解体工事業登録には承継認可制度がない点に注意
注意したいのは、建設リサイクル法に基づく解体工事業登録には、建設業許可のような事業承継認可制度が設けられていないことです。解体工事業登録は有効期間が5年で、技術管理者の選任が要件とされ、登録事項に変更があった場合の変更届や、廃業等の届出義務が定められています。具体的には、登録を受けた個人が死亡したとき、法人が合併により消滅したとき、破産手続開始の決定があったとき、解体工事業を廃止したときなどは、30日以内に廃業等の届出をしなければなりません。
これは裏を返せば、合併で登録会社が消滅したり、分社化で別法人に解体工事部門を移したりした場合、登録上の地位がそのまま自動的に承継されるわけではないということです。承継元は廃業等の届出を行い、承継先となる法人は、必要に応じて改めて解体工事業登録(新規登録)を受ける必要があると考えるのが基本です。建設業許可とは取扱いが異なるため、「許可は認可で引き継げるから登録も同様だろう」と思い込まないことが重要です。
なお、承継先が土木工事業・建築工事業・解体工事業の建設業許可を取得・承継するのであれば、その範囲では解体工事業登録は不要になります。再編後にどの規模の工事を行うのかを踏まえ、登録で足りるのか、建設業許可まで取得・承継すべきなのかを整理することが、手続の重複や空白を避けるポイントになります。
合併・分社化と許認可手続を一体で進めるために
合併・分社化の場面では、商業登記(合併・会社分割の登記)や税務、契約関係など、複数の専門分野が同時に関わります。このうち、商業登記そのものの手続は司法書士、税務は税理士、当事者間に紛争性がある場合は弁護士の領域です。当事務所が行政書士としてお手伝いできるのは、解体工事業登録(建設リサイクル法第21条)の新規登録・変更届・廃業等の届出や、建設業許可(解体工事業)の各種申請・事業承継等の認可申請・変更届といった書類の作成・提出に関する部分です。
許認可は、合併や分割の効力発生日とタイミングを合わせて準備しないと、空白期間や要件不充足による不認可といった問題につながります。再編の計画段階から、登記・税務の専門家と連携しつつ、許認可の要件とスケジュールを早めに確認しておくことをおすすめします。
解体工事業の事業承継に関する手続でお困りの際は、個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。詳しくは建設業許可・解体工事業登録のご相談ページをご覧ください。
まとめ
解体工事に関わる許認可のうち、建設業許可(解体工事業)は、2020年10月施行の建設業法第17条の2・第17条の3に基づく認可を受けることで、合併・分割・事業譲渡・相続の場面でも空白期間なく承継できます。一方、建設リサイクル法第21条の解体工事業登録には承継認可制度がなく、合併消滅や分社化の際は廃業等の届出と承継先での新規登録が原則です。自社が登録のみか許可ありかを確認し、再編の効力発生日と許認可のスケジュールを一体で設計することが、円滑な事業承継の鍵となります。なお、建設業許可の譲渡・承継の手続全般については建設業許可の譲渡・承継ガイドもあわせてご確認ください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。