2027年(令和9年)4月1日の施行が決まった「育成就労制度」は、長年にわたり国内外から課題を指摘されてきた技能実習制度を発展的に解消し、新たに設けられる在留資格・受入れの仕組みです。なぜ技能実習が見直されることになったのか、誰がどのような議論を経て新制度を形づくったのか――。本記事では、2023年(令和5年)11月の有識者会議「最終報告書」から、2024年(令和6年)6月の改正法公布、そして2027年(令和9年)4月の施行決定に至るまでの創設経緯を、出入国在留管理庁・厚生労働省・国会で公表された一次情報に基づいて時系列で整理します。受入れを検討する企業・監理団体の皆さまが、制度の「これまで」と「これから」を正確に理解するための一助となれば幸いです。
目次
1. 見直しの出発点|技能実習制度が抱えていた構造的課題
技能実習制度は、開発途上国への技能移転による「国際貢献」を目的として設けられた制度でした。しかし実態としては、人手不足分野における労働力の確保手段として機能している面が大きく、制度の「目的」と「実態」が乖離しているとの指摘が長年続いてきました。
具体的には、次のような課題が繰り返し問題提起されてきました。
- 制度の建前(国際貢献)と実態(人材確保)の乖離
- 原則として認められていなかった「転籍(転職)」の制限により、不当な扱いを受けても職場を変えにくく、失踪・人権侵害を生みやすい構造
- 来日にあたって母国の送出機関等に多額の手数料・借金を負う事例
- 監理団体や受入れ機関による不適正な取扱い
こうした課題を背景に、制度を抜本的に見直すための検討の場が政府に設けられることになりました。
2. 有識者会議の設置と最終報告書(2023年11月30日)
政府は「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」を設置し、2022年(令和4年)12月から計16回にわたって議論を重ねました。この会議は出入国在留管理庁が事務局を担い、労働法・移民政策・産業界・地方自治体などの有識者が参加しています。
そして2023年(令和5年)11月30日、同会議は「最終報告書」を法務大臣に提出しました。最終報告書では、見直しの方向性として大きく次のような柱が示されています。
- 技能実習制度を発展的に解消し、人材の「確保」と「育成」を目的とする新たな制度(後の育成就労制度)へ転換すること
- 新制度では、原則3年間の就労を通じて「特定技能1号」の水準の人材を育成することを目指すこと
- これまで厳しく制限されてきた本人意向による転籍について、一定の要件のもとで認める方向で見直すこと
- 監理団体・送出機関・受入れ機関の適正化と、外国人本人の保護・支援体制の強化
この最終報告書が、その後の法改正の土台(グランドデザイン)となりました。
3. 改正法の成立・公布(2024年6月21日/令和6年法律第60号)
最終報告書を受け、政府は関係法律の改正案を国会に提出。審議を経て、2024年(令和6年)6月21日に「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号)が公布されました。
この改正により、主に次の事項が法定されました。
- 新たな在留資格「育成就労」の創設
- 技能実習制度の発展的解消(技能実習に代わる育成就労制度への移行)
- 育成就労計画の認定制度、および監理・支援を行う者の許可制度の整備
- これらの事務を担う「外国人育成就労機構」の設置に関する規定
- 特定技能制度の適正化に関する規定
公布の時点では、施行期日は「公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、具体的な施行日は後の政令に委ねられていました。
4. 施行日の確定(2027年4月1日/令和7年政令第340号)
その後、2025年(令和7年)10月1日に「施行期日を定める政令」(令和7年政令第340号)が官報に公布され、改正法(育成就労制度関係)の施行日が2027年(令和9年)4月1日と正式に確定しました(一部の規定を除く)。
これにより、制度の主要なスケジュールは次のように整理できます。
- 2022年(令和4年)12月 ― 有識者会議が議論を開始(計16回)
- 2023年(令和5年)11月30日 ― 最終報告書を法務大臣に提出
- 2024年(令和6年)6月21日 ― 改正法公布(令和6年法律第60号)
- 2025年(令和7年)10月1日 ― 施行期日を定める政令公布(令和7年政令第340号)
- 2027年(令和9年)4月1日 ― 育成就労制度 施行(一部の規定を除く)
※ 施行に向けては、制度概要・関係省令・運用要領・Q&A・分野別の上乗せ基準告示などが順次公表・更新されています。最新の状況は出入国在留管理庁の公表資料をご確認ください。
5. 技能実習制度から育成就労制度への変更点|制度名称・枠組みと正式名称を押さえる
育成就労制度の創設にあわせて、関係する制度・機関の名称や枠組みが変わります。実務上、旧制度との混同を避けるためにも、正式名称を正確に押さえておくことが重要です。
- 制度:技能実習制度 → 育成就労制度(技能実習制度を発展的に解消)
- 在留資格:技能実習 → 育成就労(新たな在留資格として創設)
- 監理を担う団体:監理団体 → 監理支援機関(許可制)
- 所管機関:外国人技能実習機構(OTIT) → 外国人育成就労機構
育成就労制度では、受入れ対象となる「育成就労産業分野」において、原則3年間の就労を通じて特定技能1号の水準の技能を有する人材を育成・確保することが目的とされています。また、本人意向による転籍についても、同一機関での一定期間の就労、技能・日本語の習得状況、転籍先の適正性などの要件のもとで認められる仕組みとして、関係省令・運用要領・告示等で具体化が進められています。
6. 育成就労制度の受入れ準備|企業・団体が今からできること
育成就労制度の施行は2027年(令和9年)4月1日の予定ですが、現行の技能実習制度からの移行をにらみ、受入れを検討される企業・団体では早めの情報収集と体制整備が有効です。具体的には、次のような観点があります。
- 自社の業種が育成就労の対象となる産業分野・業務区分に含まれるかの確認
- 監理支援機関(許可制)との連携体制の見直し・選定
- 転籍ルールを前提とした、待遇・職場環境・定着支援の整備
- 特定技能1号への移行を見据えたキャリアパス・育成計画の設計
- 特定技能制度の適正化(受入れ機関による支援体制等)への対応
当事務所では、行政書士の職域として、登録支援機関の登録申請・登録後の各種届出、支援計画の作成、在留資格に関する各種申請の取次などをご支援しています。なお、税務に関する事項は税理士、労使間の紛争など紛争性のある事項は弁護士へのご相談が必要となります。
育成就労制度への移行に向けた準備や、現行の技能実習・特定技能に関する手続については、行政書士法人Treeへお気軽にご相談ください。費用については個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。詳しくは特定技能・外国人材受入れサポートのご案内ページをご覧ください。
まとめ
育成就労制度は、2023年(令和5年)11月の有識者会議「最終報告書」を出発点として、2024年(令和6年)6月21日の改正法公布(令和6年法律第60号)を経て、2027年(令和9年)4月1日の施行が正式に決まった新制度です。技能実習制度の発展的解消、在留資格「育成就労」の創設、監理団体から監理支援機関への再編、外国人技能実習機構から外国人育成就労機構への移行など、枠組みが大きく変わります。創設の経緯と正式名称を正確に押さえ、施行に向けた関係法令・告示の整備状況を継続的に確認しながら、計画的に準備を進めていきましょう。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。