公開日:2026年5月12日
性犯罪は被害者の心身に深刻な影響を与える重大犯罪です。2017年6月公布・7月13日施行の刑法改正により、強姦罪は「強制性交等罪」に名称変更され、親告罪が廃止されて被害者の告訴がなくても起訴可能となりました。さらに2023年6月23日公布・7月13日施行の刑法改正で「不同意性交等罪」(刑法177条)に名称変更され、構成要件が8類型で明確化されました。あわせて2023年6月23日施行の刑事訴訟法改正により、性犯罪の公訴時効が5年延長されています。
本記事の結論:
- 不同意性交等罪(刑法177条、2023年7月13日施行)は、暴行・脅迫、心身の障害、アルコール・薬物、恐怖・驚愕、地位利用等の8類型により同意しない意思を表明することが困難な状態での性交等を処罰する。
- 法定刑は5年以上の有期拘禁刑。2017年改正で非親告罪化され、被害者の告訴がなくても起訴可能だが、実務上は被害者の協力なしには証拠収集が困難なケースが多い。
- 公訴時効は不同意性交等罪が15年・不同意性交等致傷罪が20年・被害者死亡の場合は30年(2023年6月23日施行の刑事訴訟法改正後)。被害者が犯罪行為終了時に18歳未満の場合は18歳到達日までの期間が加算される(刑訴法250条4項)。被害直後は性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)、警察の性犯罪被害相談電話(#8103)、医療機関での安全確保・証拠保全を優先する。
- 警察署長宛て告訴状の作成は行政書士業務(行政書士業務:権利義務に関する書類の作成)。当所は告訴状の作成、事実関係の時系列整理、必要書類の整備をサポート。示談交渉・刑事訴訟代理・民事損害賠償交渉等は弁護士業務(弁護士法72条)であり、提携弁護士・被害者支援団体をご紹介します。
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目次
根拠法令
- 刑法 177条(不同意性交等罪、2023年7月13日施行)
- 刑法 176条(不同意わいせつ罪、2023年7月13日施行)
- 刑法 旧178条(準強制わいせつ罪・準強制性交等罪)は2023年改正で現176条・177条の構成要件に統合・再構成
- 刑法 181条1項(不同意わいせつ等致死傷)・2項(不同意性交等致死傷)
- 刑法 182条(16歳未満の者に対する面会要求等罪、2023年改正で新設)
- 刑事訴訟法 250条3項・4項(性犯罪の公訴時効・18歳未満被害者特例、2023年6月23日施行)
- 刑事訴訟法 321条の3(被害者供述記録媒体の証拠能力特則、2023年6月23日施行)
- 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影等処罰法、2023年7月13日施行)
- 2017年改正刑法(2017年6月公布・7月13日施行:親告罪廃止・強姦罪→強制性交等罪・刑の引上げ)
- 2023年改正刑法(2023年6月23日公布・7月13日施行:不同意性交等罪への名称・構成要件改正)
- 2023年改正法附則(5年後見直し規定)
- 2025年6月1日施行 改正刑法(懲役・禁錮を「拘禁刑」に一元化)
- 犯罪被害者等基本法/犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律
1. 性犯罪規定の改正経緯
1-1. 2017年6月改正
- 強姦罪→強制性交等罪に名称変更
- 対象行為に肛門性交・口腔性交を追加
- 被害者の性別を問わない(男性被害者も対象)
- 法定刑引上げ:3年以上→5年以上
- 親告罪廃止:被害者の告訴なくても起訴可能に
- 監護者性交等罪・監護者わいせつ罪新設
1-2. 2023年改正(2023年6月23日公布・7月13日施行)
- 強制性交等罪→不同意性交等罪に名称変更(刑法177条)
- 強制わいせつ罪→不同意わいせつ罪に名称変更(刑法176条)
- 旧178条(準強制わいせつ罪・準強制性交等罪)を現176条・177条の構成要件に統合・再構成
- 「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」の原因となる行為・事由を8類型で例示明確化
- 16歳未満の者に対する面会要求等罪(刑法182条)新設
- 性交同意年齢の引上げ(13歳未満→16歳未満。13歳以上16歳未満の被害者の場合は、行為者が5歳以上年長であることが処罰要件=5歳差要件。13歳未満は年齢差不問で一律処罰対象)
- 刑事訴訟法改正(2023年6月23日施行):性犯罪の公訴時効を5年延長/被害者が犯罪行為終了時に18歳未満の場合の特例(刑訴法250条4項)/被害者等の供述記録媒体の証拠能力特則新設(刑訴法321条の3)
- 性的姿態撮影等処罰法の制定・同時施行(盗撮等の処罰・押収物中の電磁的記録の消去等)
2. 不同意性交等罪(刑法177条)の構成要件
2-1. 8類型の行為
- 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれを受けたこと
- 心身の障害を生じさせること又はそれがあること
- アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること
- 同意しない意思を形成し、表明し、又は全うする時間がないこと
- 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し若しくは驚愕していること
- 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること
- 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること
2-2. 法定刑
5年以上の有期拘禁刑(刑法177条1項。2025年6月1日施行の改正刑法による拘禁刑表記)。被害者を死傷させた場合は、不同意性交等致死傷罪(刑法181条2項)として無期又は6年以上の拘禁刑となります(刑法181条2項に死刑の規定はありません)。
3. 親告罪廃止の意義
2017年改正前は、強姦罪等は親告罪(被害者の告訴がなければ起訴できない)でしたが、改正により非親告罪化されました。これにより:
- 被害者の告訴がなくても警察・検察は起訴可能
- 第三者からの告発も受理
- 家族の告訴なしでも捜査開始
ただし、被害者の意思を尊重した運用が原則であり、実務上は被害者の協力なしには証拠収集が困難なケースが多いです。
4. 不同意性交等罪の公訴時効|原則15年・致傷20年・死亡30年
2023年6月23日施行の刑事訴訟法改正により、性犯罪の公訴時効はそれぞれ5年延長されました。
- 不同意性交等罪(刑法177条):15年(刑事訴訟法250条3項2号)
- 不同意性交等致傷罪(刑法181条2項のうち負傷の場合):20年(刑訴法250条3項1号)
- 不同意性交等致死罪(刑法181条2項のうち死亡の場合):30年(刑訴法250条1項1号)
さらに、被害者が犯罪行為終了時に18歳未満であった場合は、上記の時効期間に「犯罪行為が終わった時から被害者が18歳に達する日までの期間」が加算されます(刑訴法250条4項)。これにより、未成年期に被害を受けた方が成人後に告訴する機会が確保される運用となっています。
5. 被害者の対応の流れ
5-1. できるだけ早い段階での対応(時間が経過していても相談可能)
- 身の安全確保
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891・全国どこからでも最寄りセンターに繋がる)への相談
- 警察への通報(110番または性犯罪被害相談電話 #8103)
- 医療機関での診察(証拠保全・緊急避妊・性感染症予防・心身ケア)
- 可能であればシャワー・入浴・着替え前に相談・診察を受け、衣服等は袋に入れて保管(証拠保全のため)。ただし、既にシャワー・着替えをしていても相談・診察・通報は可能
- 詳細はワンストップ支援センターまたは内閣府男女共同参画局の公式案内をご参照ください
5-2. 中期対応
- 弁護士相談(被害者参加制度・損害賠償請求)
- カウンセリング・心理的ケア
- 被害届・告訴状の検討
5-3. 長期対応
- 刑事手続への協力
- 民事損害賠償請求
- PTSD等の継続的な心理ケア
6. 業務範囲の整理|行政書士業務と弁護士業務
不同意性交等罪は被害者の心身に深刻な影響を及ぼす事案であり、心身ケア・刑事手続・民事損害賠償が並行することが多いため、行政書士の書面作成業務と弁護士の訴訟・交渉業務、ワンストップ支援センター等の被害者支援を組み合わせて対応することが望まれます。
6-1. 行政書士業務として対応可能な範囲
- 警察署長宛て告訴状の作成(行政書士業務:権利義務に関する書類の作成)
- 被害事実の時系列整理書面・事実証明に関する書類の作成(行政書士業務)
- 必要書類(陳述書・診断書取得案内・証拠資料リスト等)の整備サポート
- 被害者支援団体・提携弁護士・医療機関への取次ぎ
※ 行政書士が作成する告訴状の提出先は警察署長宛てに限ります。検察庁宛て告訴状の作成は司法書士業務(司法書士法3条1項4号「裁判所その他官公署に提出する書類」のうち裁判所提出書類)です。
6-2. 弁護士業務(連携が必要な範囲)
- 告訴代理・警察や検察との法的折衝・刑事手続上の代理対応
- 被害者参加制度に基づく意見陳述等
- 民事損害賠償請求(訴訟・示談交渉)
- 加害者・加害者代理人との示談交渉
- 不起訴処分に対する検察審査会申立て対応
7. 被害者支援制度
7-1. 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)
全国どこからでも電話可能。最寄りのセンターに繋がり、医療・カウンセリング・法律相談・警察相談等の総合支援が受けられます。
7-2. 性犯罪被害相談電話(#8103)
警察庁の性犯罪被害相談窓口。匿名相談も可能。
7-3. 犯罪被害者等給付金
犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律に基づく国の給付金制度です。要件を満たす場合、重傷病給付金・障害給付金・遺族給付金等の対象となります。
7-4. 日本司法支援センター(法テラス)
性犯罪被害者向けの法律相談、犯罪被害者法律援助、民事法律扶助、被害者参加制度における国選被害者参加弁護士制度等について案内を受けられます。
8. 民事的措置との連携
刑事告訴と並行して、民事損害賠償請求(慰謝料・治療費・休業損害・逸失利益等)を検討できる場合があります。請求額や認容額は、被害の態様、傷害の有無、継続性、年齢、証拠関係、加害者側の事情等により大きく異なるため、断定的な相場の提示は避けます。具体的な請求・交渉は弁護士業務であるため、提携弁護士をご紹介します。
FAQ|不同意性交等罪の告訴・公訴時効・被害者支援のよくあるご質問
Q1. 被害者が告訴しなくても起訴されますか?
2017年改正で親告罪廃止となったため、被害者の告訴なしでも起訴可能です。ただし、被害者の協力なしには証拠収集が困難なため、実務上は被害者の意思を尊重した運用が原則です。
Q2. 不同意性交等罪と強制性交等罪は何が違いますか?
2023年改正で「強制性交等罪」が「不同意性交等罪」に名称変更され、「同意しない意思を表明することが困難な状態」を8類型で明確化しました。準強制との区別も撤廃。
Q3. 被害から数年経過してから告訴できますか?
2023年6月23日施行の刑事訴訟法改正により、不同意性交等罪の公訴時効は15年、不同意性交等致傷罪は20年、被害者死亡の場合は30年に延長されました。さらに、被害者が犯罪行為終了時に18歳未満である場合は、18歳に達する日までの期間が時効期間に加算されます(刑訴法250条4項)。時効内であれば告訴を検討できます。
Q4. 民事の損害賠償請求の時効は?
不法行為に基づく損害賠償請求権は、原則として損害および加害者を知った時から3年(民法724条1号)、不法行為時から20年(同条2号)です。人の生命又は身体を害する不法行為に該当する場合は、知った時からの起算が5年となります(民法724条の2、2020年4月施行)。性犯罪被害では事案により起算点や時効完成猶予等の検討が必要となるため、具体的判断は弁護士にご確認ください。
Q5. 被害者の名前は公表されますか?
被害者の人権保護のため、報道機関は通常名前を伏せて報道します。刑事手続でも被害者特定事項の秘匿措置(刑事訴訟法290条の2等)が利用可能です。
Q6. 加害者から示談を求められたら?
独自対応は危険です。必ず弁護士に相談し、被害者支援団体(ワンストップセンター・法テラス等)の支援も活用してください。
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告訴状作成について、行政書士法人Treeで対応します。スタンダード 38,280円(税込)/お急ぎ特急 49,280円(税込)/不受理時対応オプション +33,000円(税込)。
まとめ
不同意性交等罪(刑法第177条、2023年7月13日施行)は、強制性交等罪の名称変更・構成要件明確化により、被害者保護の強化が図られた重要犯罪です。法定刑は5年以上の有期拘禁刑で、不同意性交等致傷罪は刑法第181条第2項により無期又は6年以上の拘禁刑となります。
公訴時効は2023年6月23日施行の刑事訴訟法改正により、不同意性交等罪15年・不同意性交等致傷20年・被害者死亡30年に延長され、犯罪行為終了時に被害者が18歳未満の場合は18歳到達日までの期間が加算されます(刑訴法第250条第4項)。2017年改正で親告罪が廃止され、被害者の告訴がなくても起訴可能です。
性犯罪は紛争性が極めて高く、行政書士の業務範囲は限定的で、被害者支援団体・医療機関との連携が中心となります。当事務所は警察署長宛て告訴状の作成・事実関係整理書面の作成のみを行政書士業務として承ります。
被害者は性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)、性犯罪被害相談電話(#8103)、法テラス等の支援制度を活用してください。一人で抱え込まず、早期の専門家相談が回復の鍵です。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


