公開日:2026年5月12日
性犯罪は被害者の心身に深刻な影響を与える重大犯罪です。2017年6月の刑法改正により、強姦罪は「強制性交等罪」に名称変更され、親告罪が廃止されて被害者の告訴がなくても起訴可能となりました。さらに2023年7月の刑法改正で「不同意性交等罪」(刑法177条)に名称変更され、構成要件が明確化されました。
本記事の結論:
- 不同意性交等罪(刑法177条、2023年7月13日施行)は、暴行・脅迫、心身の障害、アルコール・薬物、恐怖・驚愕、地位利用等の8類型により同意しない意思を表明することが困難な状態での性交等を処罰する。
- 法定刑は5年以上の有期拘禁刑。2017年改正で非親告罪化され、被害者の告訴がなくても起訴可能だが、実務上は被害者の協力なしには証拠収集が困難なケースが多い。
- 公訴時効は10年(強制性交等致死傷罪は30年)。被害直後は性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)、警察(#8103)、医療機関での証拠保全を優先する。
- 性犯罪被害の告訴・告発は紛争性ある事案として弁護士業務(弁護士法72条)です。当所は事実関係の時系列整理など行政書士業務範囲のサポートに限り、提携弁護士・被害者支援団体をご紹介します。
性犯罪被害の告訴状作成は弁護士業務 ─ 提携弁護士をご紹介
性犯罪被害の告訴・告発は、被害者の心身ケアと法的対応を並行して進める必要があり、紛争性ある事案として弁護士業務(弁護士法72条)です。当所では行政書士業務範囲内のサポート(事実関係の時系列整理等)と提携弁護士・性犯罪被害者支援団体のご紹介を承ります。
目次
根拠法令
- 刑法 177条(不同意性交等罪、2023年7月13日施行)
- 刑法 176条(不同意わいせつ罪、2023年7月13日施行)
- 刑法 178条→削除(準強制性交等罪は177条に統合)
- 刑法 181条(強制性交等致死傷罪)
- 2025年6月1日施行 改正刑法(懲役・禁錮を「拘禁刑」に一元化)
- 2017年6月17日改正刑法(親告罪廃止・強姦罪→強制性交等罪・刑の引上げ)
- 2023年6月公布・7月13日施行 改正刑法(不同意性交等罪への名称・構成要件改正)
- 犯罪被害者等基本法
1. 性犯罪規定の改正経緯
1-1. 2017年6月改正
- 強姦罪→強制性交等罪に名称変更
- 対象行為に肛門性交・口腔性交を追加
- 被害者の性別を問わない(男性被害者も対象)
- 法定刑引上げ:3年以上→5年以上
- 親告罪廃止:被害者の告訴なくても起訴可能に
- 監護者性交等罪・監護者わいせつ罪新設
1-2. 2023年6月改正(7月13日施行)
- 強制性交等罪→不同意性交等罪に名称変更
- 強制わいせつ罪→不同意わいせつ罪に名称変更
- 準強制との区別撤廃(177条に統合)
- 「同意しない意思を表明することが困難な状態」を8類型で明確化
- 面会要求等罪(刑法182条の3)新設
- 16歳未満との性交等の処罰拡大(年齢差5歳以上)
2. 不同意性交等罪(刑法177条)の構成要件
2-1. 8類型の行為
- 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれを受けたこと
- 心身の障害を生じさせること又はそれがあること
- アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること
- 同意しない意思を形成し、表明し、又は全うする時間がないこと
- 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し若しくは驚愕していること
- 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること
- 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること
2-2. 法定刑
5年以上の有期拘禁刑(2025年6月改正刑法による拘禁刑表記)。被害者の傷害・死亡があれば強制性交等致死傷罪(刑法181条)として無期または6年以上の拘禁刑、または死刑または無期拘禁刑。
3. 親告罪廃止の意義
2017年改正前は、強姦罪等は親告罪(被害者の告訴がなければ起訴できない)でしたが、改正により非親告罪化されました。これにより:
- 被害者の告訴がなくても警察・検察は起訴可能
- 第三者からの告発も受理
- 家族の告訴なしでも捜査開始
ただし、被害者の意思を尊重した運用が原則であり、実務上は被害者の協力なしには証拠収集が困難なケースが多いです。
4. 公訴時効
不同意性交等罪(5年以上の拘禁刑)の公訴時効は、刑事訴訟法250条1項4号により10年(長期20年未満の拘禁刑)です。強制性交等致死傷罪(無期含む)の公訴時効は、刑事訴訟法250条1項2号により30年です。
5. 被害者の対応の流れ
5-1. 直後の対応(24時間以内)
- 身の安全確保
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)への相談
- 警察への通報(110番または性犯罪被害相談電話 #8103)
- 医療機関での診察(証拠保全・緊急避妊・感染症予防)
- シャワー・着替え前の証拠保全
5-2. 中期対応
- 弁護士相談(被害者参加制度・損害賠償請求)
- カウンセリング・心理的ケア
- 被害届・告訴状の検討
5-3. 長期対応
- 刑事手続への協力
- 民事損害賠償請求
- PTSD等の継続的な心理ケア
6. 行政書士の業務範囲(限定的)
性犯罪は紛争性が極めて高く、被害者の心身ケアと法的対応を並行する必要があるため、原則として弁護士・性犯罪被害者支援団体・医療機関との連携が中心となります。
6-1. 行政書士が対応可能な範囲
- 事実関係の時系列整理
- 被害者支援団体・弁護士への取次ぎ
- 関連書類の整理サポート
6-2. 弁護士業務(連携必須)
- 告訴状の作成・代理提出
- 被害者参加制度での意見陳述
- 民事損害賠償請求
- 加害者との示談交渉
- 被害者の刑事手続協力支援
7. 被害者支援制度
7-1. 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)
全国どこからでも電話可能。最寄りのセンターに繋がり、医療・カウンセリング・法律相談・警察相談等の総合支援が受けられます。
7-2. 性犯罪被害相談電話(#8103)
警察庁の性犯罪被害相談窓口。匿名相談も可能。
7-3. 犯罪被害者等給付金
犯罪被害者等基本法に基づく国の給付金制度。重傷病・障害・遺族給付金等が支給されます。
7-4. 日本司法支援センター(法テラス)
性犯罪被害者の法律相談・弁護士費用立替制度(被害者参加制度・国選被害者参加弁護士)等を提供。
8. 民事的措置との連携
刑事告訴と並行して、民事損害賠償請求(慰謝料・治療費・逸失利益等)が可能です。慰謝料の相場は事案により大きく異なりますが、強姦・性交等で200万〜800万円、性的虐待事案では1,000万円超のケースもあります。具体的判断は弁護士にご相談ください。
FAQ|よくあるご質問
Q1. 被害者が告訴しなくても起訴されますか?
A. 2017年改正で親告罪廃止となったため、被害者の告訴なしでも起訴可能です。ただし、被害者の協力なしには証拠収集が困難なため、実務上は被害者の意思を尊重した運用が原則です。
Q2. 不同意性交等罪と強制性交等罪は何が違いますか?
A. 2023年改正で「強制性交等罪」が「不同意性交等罪」に名称変更され、「同意しない意思を表明することが困難な状態」を8類型で明確化しました。準強制との区別も撤廃。
Q3. 被害から数年経過してから告訴できますか?
A. 不同意性交等罪の公訴時効は10年(強制性交等致死傷罪は30年)。時効内であれば告訴可能です。
Q4. 民事の損害賠償請求の時効は?
A. 不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から3年(民法724条1号)、不法行為時から20年(同条2号)。性犯罪の場合は2020年改正で「人の生命又は身体を害する不法行為」として知った時から5年に延長(民法724条の2)。
Q5. 被害者の名前は公表されますか?
A. 被害者の人権保護のため、報道機関は通常名前を伏せて報道します。刑事手続でも被害者特定事項の秘匿措置(刑事訴訟法290条の2等)が利用可能です。
Q6. 加害者から示談を求められたら?
A. 独自対応は危険です。必ず弁護士に相談し、被害者支援団体(ワンストップセンター・法テラス等)の支援も活用してください。
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性犯罪被害の告訴・告発は、被害者の心身ケアと法的対応を並行して進める必要があり、紛争性ある事案として弁護士業務(弁護士法72条)です。当所では行政書士業務範囲内のサポート(事実関係の時系列整理等)と提携弁護士・性犯罪被害者支援団体のご紹介を承ります。
まとめ
不同意性交等罪(刑法177条、2023年7月13日施行)は、強制性交等罪の名称変更・構成要件明確化により、被害者保護の強化が図られた重要犯罪です。法定刑は5年以上の有期拘禁刑、致死傷の場合は無期拘禁刑または死刑(刑法181条)。2017年改正で親告罪廃止、被害者の告訴なくても起訴可能。性犯罪は紛争性が極めて高く、行政書士の業務範囲は限定的で、弁護士・性犯罪被害者支援団体・医療機関との連携が中心となります。被害者は性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)、性犯罪被害相談電話(#8103)、法テラス等の支援制度を活用してください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


