結論から言えば、育成就労法はまったくの新法ではなく、技能実習法(平成28年法律第89号)を令和6年法律第60号で改正し、題名ごと「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」に改めたものです。施行日は令和7年政令第340号により2027年(令和9年)4月1日と確定し、条文は目的・基本理念から責務規定、基本方針・分野別運用方針、計画認定・許可制度へと積み上がる構造を持ちます。本記事では、外国人の在留資格手続と受入れ体制整備を支援する行政書士の立場から、条文の骨格と入管法別表第一における「育成就労」の位置づけを整理します。労働社会保険の手続や就業規則の整備は社会保険労務士、紛争性のある事案は弁護士の職域であり、当法人は必要に応じて各専門家と連携しています。
目次
育成就労法の成り立ち――技能実習法の改正・改題と施行日
育成就労法は、「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号・2024年6月21日公布)により誕生します。施行期日は令和7年政令第340号(2025年10月1日公布)で2027年4月1日と正式に決定されました。条文はe-Gov法令検索の令和9年4月1日施行版で参照できます。関係法令の階層は次のとおりです。
| 階層 | 名称 | 公布・決定状況 |
|---|---|---|
| 法律 | 育成就労法(題名改正後の技能実習法) | 令和6年法律第60号/2027年4月1日施行 |
| 政令 | 施行期日を定める政令 | 令和7年政令第340号(2025年10月1日公布) |
| 主務省令 | 育成就労法施行規則 | 令和7年9月30日法務省令・厚生労働省令第4号 |
| 方針 | 基本方針(法第7条)・分野別運用方針(法第7条の2) | 基本方針は令和7年3月11日閣議決定 |
分野ごとの上乗せ基準告示等も順次公布されています。最新の整備状況は出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」で確認してください。
第1条(目的)――「人材育成」と「人材確保」の二本柱
法第1条は、基本理念と国等の責務を定め、育成就労計画の認定と監理支援機関の許可という二つの制度を設けること等により、入管法令や労働基準法・労働安全衛生法などの労働関係法令と相まって育成就労の適正な実施と育成就労外国人の保護を図り、もって育成就労産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有する人材の育成と、同分野における人材の確保を目的とすると定めます。
技能実習法第1条が人材育成を通じた国際協力を掲げていたのに対し、人材の育成と確保を正面から目的に据えた点が最大の転換です。「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」は特定技能1号と同じ表現で、同水準の人材育成という制度接続が目的規定に織り込まれています。
第2条(定義)と第3条(基本理念)
法第2条は用語の定義規定です。育成就労は、海外の関連事業所の職員を直接受け入れる「単独型育成就労」(第2条第2号)と、非営利法人の関与の下で行う「監理型育成就労」(同条第3号)に大別され、監理型には季節的業務を要する分野に限り労働者派遣等の形態(同号ロ)が認められます。「監理支援」(同条第10号)は雇用関係成立のあっせんと実施に関する監理を指し、監理支援機関(同条第11号)は法第23条第1項の許可を受けた非営利法人に限られます。
法第3条の基本理念は、育成就労が「技能の適正な修得を図り、かつ、育成就労外国人が育成就労に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行わなければならない」と定めます。技能実習法第3条第2項の「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」との文言は引き継がれず、人材確保目的と整合する理念に改められています。
第4条から第6条まで――国・関係機関・外国人本人の責務
続く3か条は、制度に関わる各主体の責務を定めます。
- 第4条:国は施策を総合的・効果的に推進し、地方公共団体は地域の実情に応じた施策の推進に努める
- 第5条:育成就労実施者(受入企業等)は就労環境の整備に努め、監理支援機関は監理支援の責任を適切に果たす。上部団体にも指導・助言の努力義務
- 第6条:育成就労外国人本人も、育成就労に専念して技能の修得に努める
特に第6条は実務上重要で、育成就労に専念すべき性質から、他所でのアルバイト等の資格外活動は認められません。出入国在留管理庁の育成就労制度運用要領も、この責務から、育成就労外国人が入管法上の資格外活動許可を得て他所で就労活動を行うことは認められない旨を明記しています。
第7条・第7条の2――基本方針・分野別運用方針と計画認定
法第7条に基づく基本方針は、令和7年3月11日に特定技能制度の基本方針と併せて閣議決定されました。法第7条の2の分野別運用方針は、主務大臣が分野所管省庁の長、国家公安委員会および外務大臣と共同して分野ごとに策定し、求められる人材の基準、育成に関する事項、受入れ見込数などを定めます。受入れ見込数は向こう5年間の受入れ上限として運用され、法第12条の2の育成就労認定の停止措置の根拠にもなります。
その下に、制度の入口である育成就労計画の認定(第8条・第9条)が置かれ、続けて本制度最大の新機軸である転籍(育成就労外国人による育成就労実施者の変更の希望の申出等)が第8条の2から第8条の5までに規定されています。認定には、育成就労の期間が3年以内であること(試験不合格など省令で定める相当の理由がある場合は最大1年延長可)、業務・技能・日本語能力の目標と内容、本人が送出機関に支払った費用額などの基準適合が必要です。細目は主務省令・告示等に委ねられ、改訂もあり得るため最新の公表内容の確認が欠かせません。
関係機関の役割と施行日前申請スケジュール|監理支援機関の許可・育成就労計画の認定
条文構造上、制度を動かす関係機関は次の三者に整理できます。
- 育成就労実施者:認定育成就労計画(法第11条第1項)に基づき育成就労を行わせる受入企業等
- 監理支援機関:技能実習制度の監理団体に代わる許可制(法第23条第1項)の機関。外部監査(法第25条第1項第5号)が許可要件となり、受入企業と密接な関係を有する役職員の業務関与禁止など独立性が強化された
- 外国人育成就労機構:外国人技能実習機構に代わる機関で、育成就労計画の認定等の事務のほか、転籍支援、1号特定技能外国人への相談援助を担う
このほか、制度所管省庁が地域協議会を組織できる仕組みも設けられます。実務は既に動き出しており、監理支援機関の許可の施行日前申請は2026年4月15日に受付が始まり、育成就労計画の認定の施行日前申請は2026年9月1日から始まる予定です。
入管法別表第一における「育成就労」の位置づけ
在留資格「育成就労」は、改正入管法により入管法(昭和26年政令第319号)別表第一の二の表に追加され、技能実習の在留資格は廃止されます。同表は経営・管理や特定技能など就労可能な活動類型を列挙する表で、育成就労も就労系在留資格として位置づけられます。なお、施行日前から技能実習を行っている外国人には経過措置が設けられ、施行日後も技能実習計画の認定期間の満了まで技能実習を継続でき、要件を満たせば次の段階の技能実習に進むことも認められます。育成就労への自動的な切替えはなく、その後も在留を続けるには育成就労または特定技能への在留資格変更手続が必要です。
注目すべきは、育成就労法第2条が「特定産業分野」を入管法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第1号から引用している点です。育成就労産業分野は特定産業分野の中から主務省令で定められるため、育成就労から特定技能1号へのキャリアパスが別表のレベルで接続されています。あわせて改正入管法では、企業内転勤2号の創設や、不法就労助長罪の罰則引上げ(5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金・併科可)も行われ、この罰則強化も育成就労法と同じ2027年4月1日に施行されます。
当事務所のサポート
行政書士法人Treeは、技能実習・特定技能から育成就労への移行準備、施行後の育成就労計画認定申請や在留諸申請に関わる入管手続を行政書士の職域として支援します。特定技能の登録支援業務にも対応しており、登録支援機関へ支援を委託する場合の委託費は業界平均で1人あたり月額2万〜3万円程度(税込)が目安です。料金は案件内容により税込で個別にお見積りします。人材紹介はグループ会社の株式会社TreeGlobalPartners(有料職業紹介事業許可13-ユ-317879)が担当し、行政書士業務と明確に区分して対応します。詳細は就労ビザサポートのご案内をご覧ください。ご相談は何度でも無料です。
【監理団体・受入れ機関の方へ】行政書士法人Tree|監理支援機関の許可申請代行・外部監査人就任
行政書士法人Treeでは、育成就労制度の監理支援機関 許可申請の書類作成・提出代行から、許可要件として求められる外部監査人への就任・月次外部監査まで、行政書士法人がワンストップでお引き受けしています。外部監査人は監理支援機関から独立した中立の立場で監査を行う必要があるため、外部の専門家に委任する方法が実務的です。施行日前申請の受付は2026年4月15日から2027年3月31日までですが、申請は監理支援事業を開始する6か月以上前までに行う必要があるため、施行日(2027年4月1日)から監理支援事業を行うには2026年9月30日までの申請が求められています。
料金プラン:監理支援機関 許可申請代行 198,000円(税抜/税込217,800円)/外部監査人就任+月次外部監査 29,800円/月(税抜/税込32,780円・監理支援事業所1か所、受入れ機関20社まで)/育成就労計画 認定申請 29,800円/人(税抜/税込32,780円・2〜9人目19,800円、10人目以降14,800円)。月次外部監査を12ヶ月同時にご契約の場合、許可申請代行を148,000円(税抜/税込162,800円)に割引し、初年度セットは505,600円(税抜/税込556,160円)です。不許可時の再申請は無料です。全国オンライン完結です。
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まとめ
育成就労法は技能実習法を改正・改題した法律で、2027年4月1日に施行されます。条文は、目的(第1条)→基本理念(第3条)→責務(第4条〜第6条)→基本方針・分野別運用方針(第7条・第7条の2)→計画認定(第8条・第9条)→転籍(第8条の2〜第8条の5)→監理支援機関の許可(第23条)→外国人育成就労機構という積み上げ型の構造を持ち、在留資格「育成就労」は入管法別表第一の二の表に位置づけられます。細部は政省令・告示等に委ねられるため、骨格を押さえたうえで最新資料を確認する姿勢が重要です。
育成就労法の条文構造に関するよくある質問
Q:育成就労法はまったく新しい法律ですか。
A:いいえ。技能実習法(平成28年法律第89号)を令和6年法律第60号で改正し、題名を改めたものです。法律番号は変わらないため、e-Gov法令検索では施行日別の版を選んで参照します。
Q:施行日はいつですか。それまでは何もできないのですか。
A:一部の規定を除き2027年(令和9年)4月1日です(令和7年政令第340号)。施行日前の準備行為は認められており、監理支援機関の許可申請は2026年4月15日に受付開始済み、育成就労計画の認定申請は2026年9月1日受付開始予定です。
Q:第3条の基本理念には何が定められていますか。
A:育成就労は、技能の適正な修得を図り、かつ、育成就労外国人が育成就労に専念できるよう保護を図る体制が確立された環境で行わなければならない、と定められています。
Q:監理支援機関と登録支援機関は同じものですか。
A:別の制度です。監理支援機関は育成就労法第23条第1項の許可を受けて監理型育成就労のあっせん・監理を行う機関、登録支援機関は特定技能制度で1号特定技能外国人の支援を受託する機関です。
Q:在留資格「育成就労」は入管法のどこに規定されますか。
A:入管法別表第一の二の表に追加されます。特定技能などと同じ就労系の活動類型に位置づけられ、これに伴い技能実習の在留資格は廃止されます。施行時に技能実習で在留中の人には経過措置があります。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


