登録支援機関

育成就労法の条文構造|目的・基本理念・関係機関の役割と入管法別表の位置づけ

約14分で読めます

2024年6月14日に成立した法律第60号により、技能実習制度は廃止され、新たに「育成就労制度」が創設されることが決まりました。新法は出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正と一体で組まれ、2027年4月1日の施行に向け、現在は政省令・告示の整備と運用通達の策定が進んでいます。本記事では、育成就労法の条文構造を章ごとに概観し、目的・基本理念・関係機関の役割、入管法別表における「育成就労」の位置づけ、特定技能との接続、技能実習からの経過措置までを実務目線で解説します。

【お困りの方へ】行政書士法人Tree|登録支援機関業務・育成就労制度対応

本記事は実務目線で解説しますが、育成就労制度への移行準備、新法下の受入機関・監理支援機関への対応、在留資格申請の取次については当事務所の登録支援機関業務でお手伝い可能です。技能実習から育成就労への切替、特定技能との接続設計までご相談ください。

料金プラン:登録支援機関業務 9,800円/月(税抜)/在留資格申請(認定・変更・更新) 25,000円〜(税別)

▶ 無料相談はこちら

1. 育成就労法成立の経緯と正式名称

2024年法律第60号の正式名称は「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律」です。同改正は、入管法本体の改正と、別途新法として整備される「育成就労法(仮称)」の制定を併せて行うパッケージとして国会審議されました。新法の正式名称は施行時に確定されますが、現時点では政府文書・有識者会議資料で「育成就労法」と通称されています。

背景には、1993年創設の技能実習制度が「国際貢献」を目的としつつ実態は労働力確保に偏っていたという長年の指摘があります。2022年に法務大臣の私的懇談会として設置された「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が2023年11月に最終報告書を提出し、「人材確保と人材育成」を目的に据える新制度への転換を提言しました。これを受けて閣議決定・国会提出を経て2024年6月に成立し、施行は公布日(2024年6月21日)から3年以内、すなわち2027年4月1日が予定されています。

旧外国人技能実習法(平成28年法律第89号)は、新法施行と同時に廃止される予定で、廃止までの間に在留している技能実習生については、後述の経過措置により実習期間満了まで在留継続が認められます。

2. 条文構造の概観:6章構成と各章の射程

育成就労法は、旧技能実習法と同様に章立てで構成されますが、各章のタイトルと配列に新法独自の整理が見られます。条文番号は施行時に確定するため本記事では章名のみを示します。

第1章 総則:法の目的・定義・基本理念を定める章で、新制度の哲学的根幹を示します。「人材確保」と「人材育成」を併記した目的条項、日本人と同等の労働条件を保障する基本理念、関係者の責務などが規定されます。

第2章 育成就労計画の認定:受入機関が個別の外国人について作成する育成就労計画を、後述の「外国人育成就労機構(仮称)」が認定する仕組みを定めます。旧法の技能実習計画認定制度を発展的に継承しつつ、業務範囲の柔軟化、転籍制度の整備などが盛り込まれます。

第3章 受入機関・監理支援機関の許可・届出:旧法の「実習実施者の届出」「監理団体の許可」をそれぞれ拡張し、受入機関には届出制を維持しつつ要件を強化、監理支援機関(旧監理団体)は許可制への一本化が図られます。

第4章 育成就労外国人の保護:労働条件の確保、人権侵害行為への対応、相談・通報窓口、保護施策などを定める章で、新制度の最重要ポリシーである「人権尊重」を担保します。

第5章 監督・指導:報告徴収・立入検査・改善命令・許可取消し等の行政処分手続を規定します。

第6章 罰則:違法な人権侵害・無許可営業・虚偽申請等への刑事罰を定めます。

3. 目的条項の転換:「国際貢献」から「人材確保と人材育成」へ

旧外国人技能実習法第1条は「人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進する」と規定し、目的を「国際貢献」に限定していました。しかし実態としては国内の人手不足を補う労働力として運用されてきたという批判が長年寄せられていました。

新法では、目的条項に「人材確保」と「人材育成」を併記することが法案要綱で明示されています。これにより、外国人材の活用は労働力確保のための制度であることが法律上正面から認められ、同時に育成も明確な目的とされます。特定技能制度(2019年創設)が「人材確保」を目的としていたのに対し、育成就労制度はその前段階として「3年間で特定技能1号水準まで育成」する位置づけが与えられます。

この目的転換は、単なる文言修正にとどまらず、後述する基本理念(日本人と同等の労働条件、転籍の柔軟化、キャリアアップ支援等)の根拠を提供する点で実務上も極めて重要です。労働関係法令の適用範囲、行政指導の運用基準、罰則の解釈すべてが新目的を起点に再構成されます。

4. 基本理念:人権尊重・同等待遇・段階的育成

新法の基本理念条項は、(1)外国人の人権の尊重、(2)日本人と同等の労働条件の確保、(3)育成計画に基づく段階的な技能習得、の三本柱で構成される見込みです。

人権の尊重については、強制労働・人身取引・パスポート取り上げ・違約金徴収などを明確に禁止し、違反には許可取消し・刑事罰を伴う厳格な姿勢が示されます。旧制度で問題となった失踪・人権侵害事案への反省を踏まえた規定です。

日本人と同等の労働条件については、賃金(最低賃金法はもちろん、同一労働同一賃金原則を含む)、労働時間、休日、安全衛生の各面で日本人労働者と差別的取扱いをしないことが求められます。送出機関や監理支援機関が手数料・管理費の名目で外国人本人から実質的に賃金を控除することは厳しく制限されます。

段階的育成については、3年間の育成期間中に技能検定基礎級相当から特定技能1号水準まで段階的に到達することを計画として明示し、進捗を定期的に評価する仕組みが導入されます。育成計画は受入機関が作成し、外国人育成就労機構が認定します。

5. 関係機関の役割分担

育成就労制度は、複数の行政機関と民間機関が役割を分担する重層的なガバナンス構造を持ちます。

法務省(出入国在留管理庁)は、在留資格「育成就労」の付与・更新・取消し、入管法に基づく在留管理を所管します。在留資格認定証明書交付申請(COE)、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請の窓口は地方出入国在留管理局です。

厚生労働省は、労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法・労働者災害補償保険法等の労働関係法令の適正運用を担当し、都道府県労働局・労働基準監督署を通じて受入機関を監督します。育成就労外国人も日本人と同等に労働関係法令の保護を受けます。

外国人育成就労機構(仮称)は、旧外国人技能実習機構(OTIT)の業務を承継しつつ拡張した認可法人で、育成就労計画の認定、受入機関への実地検査、監理支援機関の許可審査・監督、相談援助業務などを担います。本部・地方事務所体制で全国的に展開されます。

受入機関は、育成就労外国人と直接雇用契約を結び、賃金支払い・社会保険加入・育成計画の実施を担う事業者です。届出制で機構に登録します。

監理支援機関は、旧監理団体に相当する位置づけで、受入機関への育成支援、相談援助、計画適正実施の監査などを担います。許可制となり、業界横断的な支援が求められます。

6. 入管法別表第一の二における「育成就労」の位置づけ

育成就労制度のもう一つの柱は、入管法本体の改正です。改正後の入管法別表第一の二には、新たな在留資格として「育成就労」が追加されます。旧「技能実習1号・2号・3号」の3区分構造は廃止され、原則として3年間の単一区分に整理されます。

在留期間は1年単位で更新する運用が予定され、最長3年(特例措置を除く)です。3年経過時に技能検定3級相当または特定技能1号評価試験に合格した外国人は、在留資格を「特定技能1号」に変更することができます。これにより、育成就労(3年)→特定技能1号(最長5年)→特定技能2号(在留期間更新可能・家族帯同可能)というキャリアパスが法律上明示されました。

「育成就労」は別表第一の二(就労資格)に位置づけられるため、技能・技術系の在留資格(技術・人文知識・国際業務、技能、特定技能等)と同じく就労を目的とする資格として整理されます。旧技能実習が別表第一の二の「技能実習」として設けられていた構造は維持されますが、目的と運用が大きく変わります。

7. 特定技能制度との接続

育成就労制度は、特定技能制度との接続を強く意識した設計になっています。具体的には次の点で連動します。

第一に、分野の整合です。育成就労の対象分野は、特定技能1号の対象分野と整合的に設定される見込みで、原則として「人手不足が深刻で、外国人材の受入れが必要と認められる分野」に限定されます。新分野の追加・既存分野の見直しは、分野別運用方針として閣議決定されます。

第二に、業務範囲の柔軟化です。旧技能実習では「移行対象職種」が細かく限定されていましたが、育成就労では同一分野内であれば業務範囲が柔軟に認められる方向で整理されます。これにより、3年間の育成過程で複数業務に従事させ、特定技能1号で求められる幅広い技能を習得させることが可能になります。

第三に、転籍の柔軟化です。旧技能実習では原則として実習先変更が認められませんでしたが、新制度では一定期間(おおむね1〜2年)経過後、同一分野内での転籍が本人の意向で可能となります。これにより、不適切な受入機関からの脱出可能性が高まり、人権侵害の予防効果が期待されます。

第四に、試験の整合です。育成就労修了時の技能検定または評価試験合格が、特定技能1号への在留資格変更要件と接続します。日本語要件(N5相当→N4相当)も段階的に設定されます。

8. 受入機関の要件と義務

受入機関は、育成就労外国人と直接雇用契約を結ぶ事業者です。新法では次の要件・義務が課されます。

適合要件として、過去5年以内に労働関係法令の重大な違反がないこと、社会保険の適正な加入、財務的健全性、育成体制(指導員の配置等)の整備が求められます。届出は外国人育成就労機構に提出し、機構が形式審査と実地確認を行います。

義務としては、(1)育成計画の作成・実施、(2)日本人と同等以上の賃金支払い、(3)社会保険・労働保険への加入、(4)安全衛生教育の実施、(5)定期的な進捗報告、(6)機構・監督官庁の検査への協力、(7)転籍希望者への適正な対応、などが規定されます。

違反があった場合、機構による改善指導・是正命令・受入停止処分が行われ、悪質な場合は刑事罰が科されます。許可取消し相当の事案は機構が公表します。

9. 監理支援機関(旧監理団体)の許可制への変更

旧技能実習法では、監理団体は「一般監理事業」と「特定監理事業」の二区分の許可制でしたが、新法ではこれが「監理支援機関」として一本化され、より厳格な許可要件が課されます。

主な変更点は次のとおりです。第一に、許可要件の強化として、財産的基礎、外部監査体制、専門知識を有する役職員の配置、相談・苦情処理体制が求められます。第二に、業務範囲の明確化として、受入機関への育成支援、外国人への相談援助、定期監査、機構への報告などが法定業務として整理されます。第三に、独立性の確保として、特定の受入機関への過度な依存を抑制し、業界横断的な支援機能が期待されます。

許可取消し事由として、人権侵害事案への関与、虚偽報告、財務的破綻、業務遂行能力の喪失などが規定され、機構の監督権限が強化されます。

10. 技能実習からの経過措置

新法施行(2027年4月1日予定)時点で在留している技能実習生については、経過措置により、技能実習計画認定の有効期間満了まで現行制度の下で在留継続が認められます。すなわち、技能実習1号(1年)、2号(2年)、3号(2年)の各期間は、施行後も継続されます。

新規の技能実習計画認定は、施行日以後は受け付けられません。施行日以降に来日する外国人は、すべて「育成就労」の在留資格で来日することとなります。

監理団体については、新法施行時に既存の許可が一定期間(経過期間中)有効とされる経過措置が予定されています。経過期間中に新法の監理支援機関許可を取得する必要があり、取得できない場合は経過期間満了時点で業務継続ができなくなります。

受入企業の実務としては、(1)現在の技能実習生を継続育成する計画、(2)新規受入は育成就労として準備する計画、(3)監理団体との契約見直し、(4)就業規則・賃金規程の見直し、(5)特定技能との接続を踏まえた中長期人材計画、を並行して進める必要があります。

11. 申請取次行政書士と登録支援機関の業務範囲

育成就労制度の運用にあたり、行政書士は二つの異なる業務範囲で関与します。

申請取次行政書士は、出入国在留管理庁長官が指定する研修を修了し、地方出入国在留管理局長から申請取次の届出を受理された行政書士です。在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請等を本人に代わって取り次ぐことができます。育成就労の在留資格申請も、所定の研修を経て対応可能となる見込みです。なお、申請取次は「取次」であって「代理」ではなく、申請内容の決定権限は本人にあります。

登録支援機関は、特定技能1号外国人に対する支援計画の実施を委託される機関で、出入国在留管理庁に登録された事業者が該当します。義務的支援10項目(事前ガイダンス、空港送迎、住居確保支援、生活オリエンテーション、公的手続同行、日本語学習機会の提供、相談・苦情対応、日本人との交流促進、転職支援、定期面談)を実施します。なお、登録支援機関の対象は特定技能であり、育成就労については監理支援機関(旧監理団体に相当)が同様の機能を担います。

当事務所は申請取次行政書士として在留資格申請を扱うとともに、特定技能の登録支援機関として支援業務を提供しています。育成就労施行後は、新制度の運用通達を踏まえ、特定技能との接続も含めた継続的な対応を予定しています。

12. 関連記事

育成就労制度・特定技能・登録支援機関について、より詳細を知りたい方は以下の記事もご覧ください。

13. よくある質問(FAQ)

Q1. 育成就労法はいつ施行されますか?

2024年法律第60号の公布日(2024年6月21日)から3年以内、すなわち2027年4月1日施行予定です。施行に向けて政省令・告示・運用通達が順次整備されています。

Q2. 旧技能実習法はいつ廃止されますか?

育成就労法の施行と同時に廃止される予定です。ただし、施行時点で在留している技能実習生は、経過措置により実習計画認定の有効期間満了まで現行制度のまま在留継続できます。

Q3. 技能実習生は育成就労に自動的に切り替わりますか?

自動切替えはありません。経過措置により技能実習計画認定の期間満了まで現行制度が継続し、その後の継続在留を希望する場合は育成就労または特定技能への変更手続が必要です。

Q4. 育成就労外国人は転籍できますか?

一定期間(おおむね1〜2年)経過後、同一分野内での本人意向による転籍が認められる方向です。具体的な期間・要件は施行までに政省令・告示で確定します。

Q5. 監理団体は監理支援機関へどう移行しますか?

既存の監理団体許可は経過期間中有効とされる予定で、経過期間中に新法の監理支援機関許可を取得する必要があります。要件が強化されるため早期準備が推奨されます。

Q6. 育成就労から特定技能への移行要件は?

3年間の育成期間修了時に、技能検定3級相当または特定技能1号評価試験への合格、および日本語要件(N4相当)の充足により、在留資格を特定技能1号に変更できます。

【記事のまとめに代えて】行政書士法人Tree|育成就労・特定技能の在留資格申請と支援業務

本記事で解説した育成就労法の条文構造・関係機関・特定技能との接続について、当事務所では申請取次行政書士による在留資格申請と、特定技能の登録支援機関業務を中心にサポートしています。育成就労施行(2027年4月1日予定)に向けた移行準備、現行技能実習からの切替設計、特定技能への接続もご相談ください。

料金プラン:登録支援機関業務 9,800円/月(税抜)/在留資格申請(認定・変更・更新) 25,000円〜(税別)

▶ 無料相談・お見積りはこちら

まとめ

条文構造の核心:育成就労法は総則・育成就労計画認定・受入機関/監理支援機関の許可届出・外国人保護・監督指導・罰則の6章構成で、入管法本体改正と一体パッケージで2024年法律第60号として成立しました。施行は2027年4月1日が予定されています。

目的転換の核心:旧法の「国際貢献」から「人材確保と人材育成」へと目的が抜本転換されました。これにより労働力確保が法律上正面から認められ、同時に育成も明確な目的となり、特定技能との接続が制度設計に組み込まれました。

関係機関と入管法の核心:法務省(在留管理)、厚生労働省(労働関係法令)、外国人育成就労機構(仮称・認定/監督)、受入機関(雇用/育成)、監理支援機関(許可制・業界横断支援)の役割が再整理され、入管法別表第一の二に新在留資格「育成就労」が追加されます。原則3年・転籍柔軟化・特定技能への接続が法律上明示されました。

経過措置と実務対応の核心:現在在留中の技能実習生は計画期間満了まで現行制度が継続し、新規受入は施行日以降「育成就労」となります。監理団体は経過期間中に監理支援機関への許可切替が必要です。受入企業は中長期人材計画の見直しが急務です。

当事務所は申請取次行政書士として育成就労・特定技能の在留資格認定証明書交付申請、変更申請、更新申請の取次業務を行うとともに、登録支援機関として特定技能1号外国人への義務的支援10項目を実施しています。育成就労施行に向けた制度移行の準備、現行技能実習からの切替設計、特定技能への接続まで、まずは無料相談からお問い合わせください。

※ 本記事は執筆時点(2026年5月)の法令・政省令案・運用通達案に基づきます。育成就労法は2027年4月1日施行予定で、施行前後で政省令・告示・運用通達が順次確定・改定される可能性があります。個別のご相談はお問い合わせください。

行政書士法人Tree