相続関連

ゴルフ会員権を相続したらどうする?名義変更・預託金返還・相続税評価を行政書士が解説

更新: 約14分で読めます

ゴルフ会員権・リゾート会員権を保有していた被相続人が亡くなった場合、相続人としては「会員権をどう承継するか」「名義書換料はいくらかかるか」「預託金は返還してもらえるか」「使わない場合は休会できるのか」といった具体的な疑問が次々に発生します。会員権は一見不動産のように高額資産に見える一方で、ゴルフ場経営会社の倒産・規約変更・市況下落により実勢価格が額面を大きく下回るケースも多く、相続放棄を検討すべき場合もあります。本記事では、ゴルフ会員権・リゾート会員権の相続実務について、名義書換料の相場・預託金返還請求の可否・休会扱いの選択肢まで、行政書士の業務範囲内で整理して解説します。相続税評価との関係も概要のみ触れますが、財産評価基本通達211に基づく具体的な評価額の算定・相続税申告書の作成は税理士の独占業務(税理士法2条)であるため、税理士へご確認ください。

本記事の結論:

  • 預託金会員制は名義書換料(クラブにより数十万円〜数百万円と幅広く、相続時は減額・免除される場合あり)と預託金証書の名義書換が必要、株主会員制はゴルフ場運営会社の株式を相続承継し株主名簿の名義書換と会員資格承認手続を行います。
  • 預託金返還請求は据置期間経過後に可能だが、ゴルフ場経営会社の財務状況次第で全額返還されない場合あり。
  • 休会扱いは規約次第で年会費減額が可能。退会すると預託金返還請求権が確定するため慎重判断が必要。
  • 当所は遺産分割協議書・会員権承継書類の整理を担当、名義書換手続は会員権業者、相続税評価は税理士と連携します。

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根拠法令

  • 民法 896条(相続の一般的効力)
  • 民法 898条・899条(共同相続の効力)
  • 民法 907条(遺産分割の協議)
  • 民法 915条1項(相続放棄・限定承認の熟慮期間:相続の開始を知った時から3か月)
  • 民法 466条以下(債権譲渡)
  • 会社法 127条以下(株式の譲渡)・133条以下(株主名簿の名義書換)
  • 各ゴルフ場・リゾートクラブの会員権規程・会則
  • 相続税法 22条(相続財産の時価評価)
  • 財産評価基本通達 211(ゴルフ会員権の評価)・211但書(プレー権のみは評価しない)
  • 所得税法 33条(譲渡所得)
  • 租税特別措置法(平成26年度税制改正によるゴルフ会員権譲渡損失の損益通算不可、2014年4月1日以降の譲渡)

ゴルフ会員権は相続財産になるのか?

ゴルフ会員権・リゾート会員権は、預託金返還請求権、会員資格、株式、施設利用権などの権利内容に応じて、相続財産に含まれるか、どのように承継できるかが異なります。預託金会員制であれば預託金返還請求権と会員資格、株主会員制であれば株式と会員資格、共有持分型リゾート会員権であれば不動産共有持分と利用権が問題になります。一方、規約上、譲渡・相続承継が認められず、返還を受ける預託金等もない単なる利用資格に近い会員権では、承継や相続税評価の取扱いが異なる場合があります(財産評価基本通達211但書により、プレー権のみの会員権は評価しない取扱い)。

会員権の市場価値の現状

1980年代後半のバブル期には数千万円〜億単位の取引価格を付けたゴルフ会員権も、バブル崩壊・少子高齢化・ゴルフ人口減少により大幅に下落しました。2026年時点の一般的傾向として、首都圏の名門クラブでは高値を維持する会員権もある一方、中堅クラブ・地方クラブでは市場価格が大きく下落しているものも少なくありません。会員権の価値はクラブの経営状況、譲渡可否、名義書換料、年会費、市場の買い手の有無により大きく変動するため、相続時には複数の会員権仲介業者から査定を取得し、現実的な売却可能額を確認することが重要です。一方、海外名門クラブのリゾートメンバーシップやインターナショナルプレーの権利を含む高級会員権は、富裕層需要から相応の価格を維持しているケースもあります。

ゴルフ会員権・リゾート会員権の3類型

会員権は大きく3つに分類され、相続時の手続も異なります。

預託金会員制

日本のゴルフ場の多くが採用する形態で、入会時に預託金(保証金)を預け、会員資格と優先プレー権を得ます。預託金は据置期間(10〜30年程度)経過後に返還請求が可能です。相続時は会員権規程に従い名義書換手続を行います。預託金証書の名義変更と退会保留・継続会員の意思表示が必要になるケースが一般的です。

株主会員制

ゴルフ場運営会社の株式を保有することで会員資格を得る形態です。相続は包括承継であり、譲渡(売買等)とは異なります。相続時は、株式を相続により承継し、会社の株主名簿の名義書換(会社法133条以下)を行います。これに加え、定款・会員権規程に基づき、会員資格の承認・届出・名義書換料の支払等のクラブ所定の手続が必要となる場合があります。

社団法人会員制(社員権)

一般社団法人等が運営するクラブでは、会員資格が社員権・会員資格として構成されている場合があります。この場合、相続による地位承継が認められるかどうかは、定款・会則・会員権規程の定めによって異なります(会員資格の一身専属性が強く、相続による当然承継が否定される設計もあります)。承継が認められない場合は、退社処理や返戻金の精算が問題となります。

名義書換料の相場と支払義務

名義書換料はクラブごとに大きく異なります。目安として、首都圏の名門クラブでは100万円を超えることもあり、地方クラブでは数万円〜数十万円程度にとどまることもあります。相続による名義書換は、第三者譲渡時より名義書換料が減額・免除されるクラブもあれば、同額のクラブもあります。最新の会則・料金表・クラブ事務局への確認が必須です。名義書換料以外にも、年会費未納分・施設利用料未納分があれば引継債務として支払が必要になります。

名義書換手続の必要書類

クラブ毎に異なりますが、典型的には以下の書類が求められます。

  • 会員権名義書換申請書(クラブ所定様式)
  • 被相続人の出生から死亡までの連続戸籍・除籍謄本
  • 相続人全員の現在戸籍謄本
  • 遺産分割協議書(会員権の承継者を特定)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 会員権証書・預託金証書の原本
  • 承継者の入会申込書・身上書・写真
  • 承継者の住民票・印鑑証明書

クラブによっては承継者の理事会承認や面接が必要な場合もあります。承認されないリスクも想定し、不承認時の対応(退会扱い・預託金返還請求)も併せて検討します。

預託金返還請求の可否と実務

預託金は据置期間経過後に返還請求が可能ですが、現在の日本のゴルフ場経営会社の多くは預託金返還が困難な財務状況にあり、額面通りの返還が受けられないケースが多発しています。預託金返還請求を行うと退会扱いとなり、会員資格(優先プレー権・施設利用権等)は同時に喪失します。ゴルフ場が分割払いでの返還を提案する・額面の数%〜数十%への減額返還を求めてくる・最悪の場合は会社更生・民事再生手続(会社更生法・民事再生法)による大幅カットといった事態もあり得ます。返還請求は不可逆的な意思表示となるため、預託金額・据置期間経過の有無・ゴルフ場の財務状況・市場での売却可能価格を慎重に比較した上で判断します。市場で売却できる会員権であれば、名義書換後に売却する選択肢もあります。

休会扱い・継続保有の選択肢

すぐに利用予定がない場合、退会せずに休会扱いとすることで年会費の減額・免除を受けられるクラブもあります。休会期間は1〜5年程度が一般的で、休会期間中も会員資格は維持されます。ただし、休会扱いを認めないクラブ・休会期間の上限を厳格に運用するクラブもあり、規約確認が必須です。継続保有する場合、年会費(5〜30万円程度/年)が固定費として発生する点も考慮します。

相続放棄を検討すべきケース

会員権の市場価格が極端に低く、預託金返還も期待できず、年会費の継続支払が負担となる場合でも、まずは退会・休会・売却・クラブへの返還相談・相続人間での承継者調整などを検討します。相続放棄は会員権だけを放棄する制度ではなく、被相続人の遺産全体を放棄する手続です。そのため、預貯金・不動産・負債・会員権の維持費等を含めた相続全体が債務超過かどうかを確認したうえで、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(民法915条1項。「死亡時から3か月」ではなく「相続開始を知った時から3か月」が起算点)の熟慮期間内に慎重に判断する必要があります。家庭裁判所への申述手続については弁護士・司法書士へご相談ください。

相続税評価の考え方(概要のみ)

ゴルフ会員権の相続税評価は財産評価基本通達211に基づき行われます。取引相場のある会員権は、課税時期(相続開始日)における通常の取引価格の70%相当額で評価します。この場合、取引価格に含まれない預託金等があるときは、(a)直ちに返還を受けることができる預託金等の金額、または(b)一定期間経過後に返還を受けることができる預託金等の複利現価相当額を加算します(名義書換料を評価額に加算する規定は存在しません)。

取引相場のない会員権は、会員権の種類により評価方法が異なります。

  • (1) 株主でなければ会員となれない会員権:財産評価基本通達の定めにより評価した課税時期における株式の価額(非上場株式の評価方法)
  • (2) 株主であり、かつ、預託金等を預託しなければ会員となれない会員権:株式部分(非上場株式評価)+預託金部分(直ちに返還を受けることができる金額または複利現価)の合計額
  • (3) 預託金等を預託しなければ会員となれない会員権:預託金等の評価方法(直ちに返還を受けることができる金額または複利現価)

なお、財産評価基本通達211但書により、株式の所有を必要とせず、譲渡もできず、返還を受けることができる預託金等もない、単なるプレー権のみの会員権は評価しない(0円評価)とされています。具体的な評価額の算定・相続税申告書の作成は税理士の独占業務(税理士法2条)ですので、税理士にご確認いただくか、提携税理士をご紹介します。

リゾート会員権特有の論点

リゾート会員権はゴルフ会員権と類似する預託金制度が中心ですが、特有の論点もあります。主要リゾートクラブ(リゾートトラスト系列、東急系列、その他リゾート運営会社系列等)はそれぞれ独自の会員権規程を有しており、相続による承継ルール、名義書換料、利用権の継承範囲が大きく異なります。承継手続前に各クラブの最新の会員権規程・運営状況を確認することが必須です。共有持分型のリゾート会員権の場合、不動産登記上の持分移転手続が必要となるため司法書士に登記申請を依頼します。タイムシェア型は利用権の譲渡となり、運営会社所定の手続が中心です。海外リゾートの会員権は準拠法が外国法になるケースもあり、現地の弁護士・代理人を介した手続が必要となる場合があります。

承継後の会員権処分(売却)の選択肢

承継後に会員権を売却する場合、以下のルートが考えられます。

  • ゴルフ会員権仲介業者を介した売却:日本全国に専門業者があり、市場相場での売却が可能。仲介手数料は売買代金の3〜10%程度。
  • 個人間売買:知人・親族への譲渡。仲介手数料は不要だが、名義書換手続を当事者で実施する必要あり。
  • クラブへの返還(ゴルフ場買戻し):一部のクラブで会員権の買戻し制度あり。額面より大幅に低い金額となるケースが多い。

売却益が出た場合は譲渡所得(所得税法33条)として所得税・住民税が課税されます。所有期間5年以下は短期譲渡所得・5年超は長期譲渡所得として課税されます。なお、2014年4月1日以降に行われたゴルフ会員権の譲渡による損失は、他の所得との損益通算ができなくなった点に注意が必要です(平成26年度税制改正)。税理士への確認が必要です。

会員権規程・会則の確認ポイント

会員権規程・会則はクラブ毎に細部が異なり、相続実務では以下のポイントを必ず確認します。

  • 承継可能な相続人の範囲:配偶者・子に限定するクラブ、相続人全般を許可するクラブで扱いが異なります。
  • 承継時の名義書換料:通常譲渡時の何割か(半額・3分の1等)が標準的ですが、クラブにより異なります。
  • 承継申請の期限:被相続人死亡から3か月・6か月・1年等の期限を設けるクラブもあります。期限超過すると会員権が失効する規程もあります。
  • 理事会承認の要否:承継者の年齢・職業・社会的属性で理事会承認を求めるクラブもあります。
  • 休会扱いの可否と条件:休会期間の上限、休会中の年会費減額率、復会条件。
  • 退会時の預託金返還条件:据置期間、返還可能な金額、分割払いの条件、ゴルフ場の財務状況による減額条項。

承継手続を始める前に、ゴルフ場の事務局へ連絡し、最新の会員権規程・会則を取り寄せて読み込むことが実務上の必須ステップです。

遺産分割協議書での会員権の記載例

会員権を含む遺産分割協議書では、会員権を一意に特定できる情報を明記します。記載例は以下です。「○○ゴルフ倶楽部 会員権(種別:預託金会員制 会員番号 第○○○号 預託金額 金○○○万円 被相続人○○○○名義)について、相続人○○○○が取得し、名義書換料・年会費等の引継ぎに伴う一切の費用は同人が負担する。」 名義書換料の負担者を協議書に明記しておくことで、相続人間の後日のトラブルを予防できます。

業務範囲の整理

行政書士業務範囲(Tree対応):戸籍収集による相続人確定、相続関係説明図の作成、ゴルフ会員権・リゾート会員権を含む遺産分割協議書の作成、預金・有価証券等の財産目録作成、法定相続情報一覧図の取得申出書類の作成。

業務範囲外(提携専門家を紹介):ゴルフ場運営会社・リゾート会社との会員権承継交渉(紛争性ある場合は弁護士業務)、預託金返還請求の代理交渉(弁護士業務)、株主会員制における株主名簿書換・会員資格承認手続は運営会社所定の手続に従いますが、これに伴い商業登記・不動産登記が必要となる場合は司法書士業務、相続税申告書の作成・税務相談(税理士業務)、相続放棄申述書の作成・家庭裁判所提出手続への関与(弁護士・司法書士の業務範囲。代理人としての対応は弁護士業務)。

FAQ|よくあるご質問

Q1. ゴルフ会員権の相続税評価は額面通りですか?

取引相場のある会員権は、課税時期(相続開始日)の通常の取引価格×70%で評価するのが基本です(財産評価基本通達211)。取引価格に含まれない預託金等がある場合は、直ちに返還を受けられる金額または複利現価相当額を加算します。額面とは異なる評価額となるため、具体的な評価額は税理士にご確認ください。

Q2. 預託金は必ず返還されますか?

据置期間経過後に返還請求は可能ですが、ゴルフ場の財務状況により全額返還されないケースも多発しています。

Q3. 名義書換料は誰が負担しますか?

通常は会員権を承継する相続人が負担します。遺産分割協議で負担者を明確に定めておくとトラブルを防げます。

Q4. 休会中の年会費は支払う必要がありますか?

クラブ規約により異なります。減額・免除されるクラブと、通常通り発生するクラブの両方があります。

Q5. 会員権を相続せずに売却できますか?

クラブ規程や仲介業者の実務により異なります。相続人名義への名義書換後に売却する方法のほか、遺産分割協議書・戸籍関係書類・相続人全員の同意書等を整えて、相続人から第三者への譲渡を同時に進める方法が認められる場合もあります。いずれの場合も、名義書換料・仲介手数料・年会費未納分等が市場価格を上回らないか試算することが重要です。

Q6. リゾート会員権も同じ扱いですか?

預託金会員制の場合は基本構造が同じです。リゾートトラストのエクシブ等、運営会社毎に独自規程があるため個別確認が必要です。

Q7. 配偶者と子で会員権を共有することはできますか?

実務上の原則は「1ゴルフ場の会員権は1人が単独承継」であり、共有名義を認めるクラブは例外的です。複数の相続人がゴルフを楽しみたい場合でも、いずれか1人を承継者として遺産分割協議で定めるのが一般的です。クラブ規約で共有名義を認めている場合のみ共有承継が可能ですが、共有持分の管理・年会費負担・意思決定等で実務上の難しさがあるため、単独承継が推奨されます。

Q8. 名義書換料を払わずに承継だけ済ませることはできますか?

名義書換料の支払と名義書換は一体の手続が原則です。未払のまま放置すると会員権の効力が停止するリスクがあります。

Q9. ゴルフ場が経営破綻した場合、会員権はどうなりますか?

会社更生・民事再生手続により預託金が大幅にカットされる可能性があります。新しいスポンサー・運営会社による会員権の再編成が行われるケースもあります。

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まとめ

ゴルフ会員権・リゾート会員権の相続は、会員権の種類(預託金会員制・株主会員制・社団法人会員制)により手続が大きく異なります。預託金会員制では名義書換料の支払と預託金証書の名義書換、株主会員制では株式譲渡手続が中心となります。預託金返還請求は据置期間経過後に可能ですが、ゴルフ場経営会社の財務状況により全額返還されないリスクがあります。休会扱いの活用、市場での売却、相続放棄まで、複数の選択肢を比較検討することが重要です。会員権を含む遺産分割協議書の作成・戸籍収集・相続関係説明図の作成は行政書士の業務範囲ですので、相続全体の整理を行政書士にご相談いただき、税務・登記・紛争対応は各専門家と連携して進めることをおすすめします。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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