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ゴルフ会員権・リゾート会員権の相続|名義書換料・預託金返還請求・休会扱いの実務

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ゴルフ会員権・リゾート会員権を保有していた被相続人が亡くなった場合、相続人としては「会員権をどう承継するか」「名義書換料はいくらかかるか」「預託金は返還してもらえるか」「使わない場合は休会できるのか」といった具体的な疑問が次々に発生します。会員権は一見不動産のように高額資産に見える一方で、ゴルフ場経営会社の倒産・規約変更・市況下落により実勢価格が額面を大きく下回るケースも多く、相続放棄を検討すべき場合もあります。本記事では、ゴルフ会員権・リゾート会員権の相続実務について、名義書換料の相場・預託金返還請求の可否・休会扱いの選択肢まで、行政書士の業務範囲内で整理して解説します。相続税評価との関係も簡潔に触れますが、税務の具体的計算は税理士へ確認してください。

本記事の結論:

  • 預託金会員制は名義書換料(30〜200万円程度)と預託金証書の名義書換が必要、株主会員制は株式譲渡の手続を踏みます。
  • 預託金返還請求は据置期間経過後に可能だが、ゴルフ場経営会社の財務状況次第で全額返還されない場合あり。
  • 休会扱いは規約次第で年会費減額が可能。退会すると預託金返還請求権が確定するため慎重判断が必要。
  • 当所は遺産分割協議書・会員権承継書類の整理を担当、名義書換手続は会員権業者、相続税評価は税理士と連携します。

遺産分割協議書作成サポート(ゴルフ会員権・リゾート会員権を含む遺産整理)

ゴルフ会員権・リゾート会員権を含む遺産分割協議書の作成、戸籍収集による相続人確定、相続関係説明図の作成までを行政書士が文書作成の専門家として対応します。会員権の承継・名義書換そのものはゴルフ場運営会社・リゾート会社の規程に従って手続が必要です。

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根拠法令

  • 民法896条(相続の一般的効力)
  • 民法898条・899条(共同相続の効力)
  • 民法907条(遺産分割の協議)
  • 民法466条以下(債権譲渡)
  • 会社法127条以下(株式の譲渡)
  • 各ゴルフ場・リゾートクラブの会員権規程・会則
  • 相続税法22条・財産評価基本通達211(ゴルフ会員権の評価)

会員権の市場価値の現状

1980年代後半のバブル期には数千万円〜億単位の取引価格を付けたゴルフ会員権も、バブル崩壊・少子高齢化・ゴルフ人口減少により大幅に下落しました。現在の主な傾向は以下です。首都圏の名門クラブで数百万円〜1,000万円程度、中堅クラブで数十万円〜数百万円、地方クラブでは数万円〜数十万円と、ピーク時の数十分の一から数百分の一になった例も少なくありません。一方、海外名門クラブのリゾートメンバーシップやインターナショナルプレーの権利を含む高級会員権は、富裕層需要から相応の価格を維持しているケースもあります。相続承継の判断には、ゴルフ会員権相場誌(週刊ゴルフダイジェスト等)・専門仲介業者の査定価格を参考に、現実的な市場価値を把握することが重要です。

ゴルフ会員権・リゾート会員権の3類型

会員権は大きく3つに分類され、相続時の手続も異なります。

預託金会員制

日本のゴルフ場の多くが採用する形態で、入会時に預託金(保証金)を預け、会員資格と優先プレー権を得ます。預託金は据置期間(10〜30年程度)経過後に返還請求が可能です。相続時は会員権規程に従い名義書換手続を行います。預託金証書の名義変更と退会保留・継続会員の意思表示が必要になるケースが一般的です。

株主会員制

ゴルフ場運営会社の株式を保有することで会員資格を得る形態です。相続時は株式譲渡(相続による移転)の手続を踏み、株主名簿の書換を行います。会社法上の名義書換手続に加え、定款・会員権規程による会員資格承認が必要になります。

社団法人会員制(社員権)

一般社団法人がゴルフ場を運営し、社員(会員)として地位を相続する形態です。相続による地位の承継が認められるかは定款の規定次第で、認められない場合は退社処理となり退社時返戻金が支払われます。

名義書換料の相場と支払義務

名義書換料はクラブ毎に大きく異なり、首都圏の名門クラブでは100〜300万円、地方クラブでは10〜50万円程度が相場です。相続による名義書換は、第三者譲渡時より名義書換料が減額される(半額・3分の1等)クラブもあれば、同額のクラブもあります。会員権規程を必ず取り寄せて確認しましょう。名義書換料以外にも、年会費未納分・施設利用料未納分があれば引継債務として支払が必要になります。

名義書換手続の必要書類

クラブ毎に異なりますが、典型的には以下の書類が求められます。

  • 会員権名義書換申請書(クラブ所定様式)
  • 被相続人の出生から死亡までの連続戸籍・除籍謄本
  • 相続人全員の現在戸籍謄本
  • 遺産分割協議書(会員権の承継者を特定)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 会員権証書・預託金証書の原本
  • 承継者の入会申込書・身上書・写真
  • 承継者の住民票・印鑑証明書

クラブによっては承継者の理事会承認や面接が必要な場合もあります。承認されないリスクも想定し、不承認時の対応(退会扱い・預託金返還請求)も併せて検討します。

預託金返還請求の可否と実務

預託金は据置期間経過後に返還請求が可能ですが、現在の日本のゴルフ場経営会社の多くは預託金返還が困難な財務状況にあり、額面通りの返還が受けられないケースが多発しています。返還請求すると退会扱いとなり、ゴルフ場が分割払いでの返還を提案する・額面の数%〜数十%への減額返還を求めてくる・最悪の場合は会社更生・民事再生手続による大幅カットといった事態もあり得ます。預託金額・据置期間経過の有無・ゴルフ場の財務状況・市場での売却可能価格を比較し、相続人として最適な選択肢を検討します。市場で売却できる会員権であれば、名義書換後に売却する選択肢もあります。

休会扱い・継続保有の選択肢

すぐに利用予定がない場合、退会せずに休会扱いとすることで年会費の減額・免除を受けられるクラブもあります。休会期間は1〜5年程度が一般的で、休会期間中も会員資格は維持されます。ただし、休会扱いを認めないクラブ・休会期間の上限を厳格に運用するクラブもあり、規約確認が必須です。継続保有する場合、年会費(5〜30万円程度/年)が固定費として発生する点も考慮します。

相続放棄を検討すべきケース

会員権の市場価格が極端に低く、預託金返還も期待できず、年会費の継続支払が困難な場合、相続放棄も選択肢になります。ただし相続放棄は会員権だけを放棄することはできず、被相続人の遺産全体を放棄することになるため、預貯金・不動産等の他の遺産との比較で判断します。相続放棄は3か月の熟慮期間内に家庭裁判所への申述が必要で、手続については弁護士・司法書士へご相談ください。

相続税評価の考え方(概要のみ)

ゴルフ会員権の相続税評価は財産評価基本通達211に基づき、取引相場のある会員権は通常の取引価格×70%+名義書換料未払分等を加算して評価します。取引相場のない会員権は預託金等の精算により取得できる金額を評価額とします。具体的な評価額の算定・申告は税理士の業務範囲ですので、税務の具体的計算・申告書作成は税理士にご確認いただくか、提携税理士をご紹介します。

リゾート会員権特有の論点

リゾート会員権はゴルフ会員権と類似する預託金制度が中心ですが、特有の論点もあります。リゾートトラストのエクシブ・ベイコート倶楽部、東急ハーヴェストクラブ、ダイヤモンドソサエティ等の主要リゾートクラブはそれぞれ独自の会員権規程を有しており、相続による承継ルール、名義書換料、利用権の継承範囲が大きく異なります。共有持分型のリゾート会員権の場合、不動産登記上の持分移転手続が必要となるため司法書士に登記申請を依頼します。タイムシェア型は利用権の譲渡となり、運営会社所定の手続が中心です。海外リゾートの会員権は準拠法が外国法になるケースもあり、現地の弁護士・代理人を介した手続が必要となる場合があります。

承継後の会員権処分(売却)の選択肢

承継後に会員権を売却する場合、以下のルートが考えられます。

  • ゴルフ会員権仲介業者を介した売却:日本全国に専門業者があり、市場相場での売却が可能。仲介手数料は売買代金の3〜10%程度。
  • 個人間売買:知人・親族への譲渡。仲介手数料は不要だが、名義書換手続を当事者で実施する必要あり。
  • クラブへの返還(ゴルフ場買戻し):一部のクラブで会員権の買戻し制度あり。額面より大幅に低い金額となるケースが多い。

売却益が出た場合は譲渡所得として所得税・住民税が課税されるため、税理士への確認が必要です。

会員権規程・会則の確認ポイント

会員権規程・会則はクラブ毎に細部が異なり、相続実務では以下のポイントを必ず確認します。

  • 承継可能な相続人の範囲:配偶者・子に限定するクラブ、相続人全般を許可するクラブで扱いが異なります。
  • 承継時の名義書換料:通常譲渡時の何割か(半額・3分の1等)が標準的ですが、クラブにより異なります。
  • 承継申請の期限:被相続人死亡から3か月・6か月・1年等の期限を設けるクラブもあります。期限超過すると会員権が失効する規程もあります。
  • 理事会承認の要否:承継者の年齢・職業・社会的属性で理事会承認を求めるクラブもあります。
  • 休会扱いの可否と条件:休会期間の上限、休会中の年会費減額率、復会条件。
  • 退会時の預託金返還条件:据置期間、返還可能な金額、分割払いの条件、ゴルフ場の財務状況による減額条項。

承継手続を始める前に、ゴルフ場の事務局へ連絡し、最新の会員権規程・会則を取り寄せて読み込むことが実務上の必須ステップです。

遺産分割協議書での会員権の記載例

会員権を含む遺産分割協議書では、会員権を一意に特定できる情報を明記します。記載例は以下です。「○○ゴルフ倶楽部 会員権(種別:預託金会員制 会員番号 第○○○号 預託金額 金○○○万円 被相続人○○○○名義)について、相続人○○○○が取得し、名義書換料・年会費等の引継ぎに伴う一切の費用は同人が負担する。」 名義書換料の負担者を協議書に明記しておくことで、相続人間の後日のトラブルを予防できます。

業務範囲の整理

行政書士業務範囲(Tree対応):戸籍収集による相続人確定、相続関係説明図の作成、ゴルフ会員権・リゾート会員権を含む遺産分割協議書の作成、預金・有価証券等の財産目録作成、法定相続情報一覧図の取得申出書類の作成。

業務範囲外:ゴルフ場運営会社・リゾート会社との会員権承継交渉(紛争性ある場合は弁護士業務)、預託金返還請求の代理交渉(弁護士業務)、株主会員制の株式名義書換登記手続(司法書士業務)、相続税申告書の作成・税務相談(税理士業務)、相続放棄申述書の家庭裁判所への提出代理(弁護士・司法書士業務)。

FAQ|よくあるご質問

Q1. ゴルフ会員権の相続税評価は額面通りですか?
A. 取引相場のある会員権は取引価格×70%が基本で、額面とは異なります。具体的な評価額は税理士にご確認ください。

Q2. 預託金は必ず返還されますか?
A. 据置期間経過後に返還請求は可能ですが、ゴルフ場の財務状況により全額返還されないケースも多発しています。

Q3. 名義書換料は誰が負担しますか?
A. 通常は会員権を承継する相続人が負担します。遺産分割協議で負担者を明確に定めておくとトラブルを防げます。

Q4. 休会中の年会費は支払う必要がありますか?
A. クラブ規約により異なります。減額・免除されるクラブと、通常通り発生するクラブの両方があります。

Q5. 会員権を相続せずに売却できますか?
A. いったん名義書換を行ってから売却するのが原則です。名義書換料と売却費用の合計が市場価格を上回らないか試算が必要です。

Q6. リゾート会員権も同じ扱いですか?
A. 預託金会員制の場合は基本構造が同じです。リゾートトラストのエクシブ等、運営会社毎に独自規程があるため個別確認が必要です。

Q7. 配偶者と子で会員権を共有することはできますか?
A. クラブ規約により異なります。共有名義を認めるクラブと、単独名義のみ認めるクラブの両方があります。

Q8. 名義書換料を払わずに承継だけ済ませることはできますか?
A. 名義書換料の支払と名義書換は一体の手続が原則です。未払のまま放置すると会員権の効力が停止するリスクがあります。

Q9. ゴルフ場が経営破綻した場合、会員権はどうなりますか?
A. 会社更生・民事再生手続により預託金が大幅にカットされる可能性があります。新しいスポンサー・運営会社による会員権の再編成が行われるケースもあります。

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まとめ

ゴルフ会員権・リゾート会員権の相続は、会員権の種類(預託金会員制・株主会員制・社団法人会員制)により手続が大きく異なります。預託金会員制では名義書換料の支払と預託金証書の名義書換、株主会員制では株式譲渡手続が中心となります。預託金返還請求は据置期間経過後に可能ですが、ゴルフ場経営会社の財務状況により全額返還されないリスクがあります。休会扱いの活用、市場での売却、相続放棄まで、複数の選択肢を比較検討することが重要です。会員権を含む遺産分割協議書の作成・戸籍収集・相続関係説明図の作成は行政書士の業務範囲ですので、相続全体の整理を行政書士にご相談いただき、税務・登記・紛争対応は各専門家と連携して進めることをおすすめします。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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