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非上場株式(同族会社株式)の相続|名義書換・配当請求権・取得請求権を解説

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非上場株式(同族会社株式)が遺産に含まれる相続では、上場株式と異なり市場での売却ができず、株主名簿の名義書換、配当請求権の整理、譲渡制限株式の取得請求権の処理など、会社法と民法が交錯する独特の論点が生じます。「父が経営していた会社の株式を兄弟で相続することになった」「株主としての権利行使はどうするのか」「譲渡制限株式を会社に買い取ってもらいたい」――こうした場面で、相続実務と会社法の双方を横断的に整理しないと、後日の議決権争い・配当未払い・名義書換拒否などのトラブルに発展します。本記事では、非上場株式の相続実務を、行政書士業務範囲(遺産分割協議書作成・名義書換に必要な戸籍等の収集・事実関係整理書面の作成)に絞って実務目線で解説します。

本記事の結論:

  • 非上場株式は遺産分割協議成立まで相続人全員の準共有となり、会社法106条により権利行使者を1人定めて会社に通知する必要がある。
  • 遺産分割協議成立後は株主名簿の名義書換を請求し、定款に売渡請求条項があれば会社法174条の相続人売渡請求の有無を確認する。
  • 非上場株式の評価は財産評価基本通達178以下に基づき、事業承継税制(特例措置)の適用判断は税理士の専門領域となる。
  • 当所は遺産分割協議書・相続関係説明図・株主名簿書換請求書の作成、戸籍収集を担当。株式評価・相続税は提携税理士、議決権争いの交渉は提携弁護士、登記は提携司法書士をご紹介します。

非上場株式を含む遺産分割協議書の作成サポート

同族会社株式の帰属を明確化する遺産分割協議書、相続関係説明図、戸籍収集など、相続人間で合意済みの内容を書面化する業務をサポートします。株式評価は提携税理士、議決権争いの代理交渉は提携弁護士、登記は提携司法書士をご紹介します。

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根拠法令

  • 民法898条(遺産共有)・906条(遺産分割の基準)・907条(遺産分割協議)
  • 会社法106条(共有株式の権利行使)・107条(譲渡制限)・139条(譲渡承認)
  • 会社法174条〜177条(相続人等に対する売渡しの請求)
  • 会社法121条〜130条(株主名簿)
  • 会社法453条〜458条(剰余金の配当)
  • 最判平成27年2月19日(共有株式の議決権行使)

非上場株式の相続で最初に整理すべき3つの論点

非上場株式が遺産に含まれる場合、相続開始から名義書換完了までの間に、(1) 株式が誰にどの割合で帰属するか、(2) 株主としての権利(議決権・配当請求権)を誰が行使するか、(3) 会社が株式の取得を希望する場合の対応、という3つの論点が並行して発生します。上場株式であれば証券会社の手続だけで完結しますが、非上場株式は会社法上の譲渡制限株式であることが多く、会社の承認・売渡請求権との関係を整理しないと先に進めません。

まずは定款を取り寄せ、(a) 株式に譲渡制限が付されているか、(b) 相続人に対する売渡請求の定め(会社法174条)があるか、(c) 種類株式の有無、を確認します。これらは会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)と定款で確認できます。

遺産共有と会社法106条(権利行使者の指定)

相続が開始すると、株式は遺産分割協議が成立するまでの間、相続人全員の準共有になります(民法898条)。この準共有株式の権利行使については、会社法106条が「権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない」と定めています。

つまり、遺産分割協議が長引くと、株主総会での議決権行使ができず、配当の受領者も決まりません。最判平成27年2月19日は、権利行使者の指定は持分の過半数で決定できると判示しており、相続人間で意見が割れた場合は法定相続分の過半数で権利行使者を選定し、会社に通知する運用が一般的です。ただし、議決権行使の内容について相続人間で対立がある場合は弁護士による交渉・代理が必要となり、行政書士の業務範囲外です。

権利行使者通知書の作成

相続人間で権利行使者が決まったら、会社宛に「権利行使者通知書」を提出します。通知書には、被相続人の氏名・死亡日、相続人全員の氏名・持分、権利行使者の氏名、相続人全員の実印と印鑑証明書を添付します。この通知書の作成は事実関係を整理する書面として行政書士業務に含まれます。

株主名簿の名義書換手続

遺産分割協議が成立し、特定の相続人が株式を取得した場合、会社に対して株主名簿の名義書換を請求します(会社法130条)。請求に必要な書類は次のとおりです。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍・改製原戸籍を含む)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書(相続人全員の実印押印・印鑑証明書添付)または遺言書
  • 株主名簿書換請求書(会社所定の様式または任意様式)
  • 新株主の住民票・印鑑証明書

名義書換が完了するまでは、会社は従前の株主(被相続人)を株主として扱う原則ですが、相続による承継は会社の承認を要しない(譲渡制限の例外)ため、名義書換請求は権利として行使できます。会社が正当な理由なく名義書換を拒否した場合、不当拒絶として民事上の請求が可能ですが、訴訟代理は弁護士業務(弁護士法72条)です。

譲渡制限株式と会社の取得請求(会社法174条)

非上場会社の多くは、定款で全株式に譲渡制限を設けています。譲渡制限株式が相続により承継された場合、会社の定款に「相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる」旨の定めがあれば、会社は相続人に対し売渡請求できます(会社法174条)。

売渡請求は、会社が相続を知った日から1年以内に株主総会の特別決議を経て行う必要があります(会社法175条・309条2項3号)。売買価格は当事者間の協議で定め、協議が調わないときは20日以内に裁判所に価格決定の申立てをします(会社法177条)。この価格決定は非訟事件であり、申立ては当事者本人または弁護士が行います。

売渡請求された場合の対応

会社から売渡請求を受けた相続人は、(1) 提示価格に納得すれば応じる、(2) 価格に不服があれば裁判所に価格決定を申立てる、のいずれかを選択します。価格決定の申立てや交渉は弁護士業務であり、行政書士は対応できません。事前に株式評価を税理士に依頼し、合理的な価格水準を把握しておくことが重要です。

配当請求権・剰余金分配請求権の取扱い

相続開始時点で既に基準日が到来し配当が決議されている場合、配当請求権は具体的金銭債権として相続財産に含まれます。一方、相続開始後に基準日を迎える配当については、株式の準共有者として権利行使者を通じて受領することになります。

配当が複数年分滞留している場合や、未払配当の取扱いに争いがある場合は、相続人間での清算が必要です。具体的金銭債権については、最判平成17年9月8日が「相続開始時に当然に分割され各相続人に帰属する」としていますが、実務上は遺産分割協議の対象に含めて整理することが多くなっています。

非上場株式の評価と相続税

非上場株式の相続税評価は、財産評価基本通達178以下に基づき、(a) 類似業種比準方式、(b) 純資産価額方式、(c) これらの併用方式、(d) 配当還元方式のいずれかで算定します。会社規模・株主区分(同族株主か少数株主か)により評価方法が異なり、評価額が大きく変動します。

非上場株式の評価・相続税申告・事業承継税制(特例事業承継税制を含む)の適用判断は税理士業務(税理士法2条)であり、行政書士は計算・試算・節税アドバイスを行えません。相続税が課税される可能性がある場合は、必ず提携税理士をご紹介します。

事業承継税制(特例措置)の概要

後継者が非上場株式を相続した場合、一定の要件を満たすと相続税の納税猶予・免除を受けられる「事業承継税制(特例措置)」があります。特例承継計画を都道府県に提出し、認定を受けるなどの手続が必要で、要件は複雑です。

事業承継税制の適用判断・特例承継計画の作成支援は税理士・公認会計士の専門領域であり、行政書士は概要説明にとどめ、具体的な適用判断は提携税理士に委ねます。

業務範囲の整理

行政書士業務として対応可能な範囲:

  • 非上場株式を含む遺産分割協議書の作成(合意済み内容の書面化)
  • 相続関係説明図の作成(行政書士法1条の2「事実証明書類の作成」)
  • 被相続人の戸籍収集・相続人調査(職務上請求)
  • 株主名簿書換請求書・権利行使者通知書の作成(事実関係整理書面)
  • 定款・株主名簿・登記簿謄本の取得サポート

行政書士業務範囲外:

  • 株式評価・相続税申告・事業承継税制の適用判断(税理士業務)
  • 会社の売渡請求への対応交渉・価格決定申立て(弁護士業務)
  • 議決権行使内容に関する相続人間の代理交渉(弁護士法72条)
  • 不動産・株式譲渡に伴う登記手続(司法書士業務)
  • 家庭裁判所への遺産分割調停・審判申立書類の作成(司法書士法3条1項4号)

FAQ|よくあるご質問

Q1. 非上場株式の名義書換は会社が拒否できますか。
A. 相続による承継は譲渡制限の例外であり、会社は正当な理由なく名義書換を拒否できません。拒否された場合の法的手続は弁護士にご相談ください。

Q2. 権利行使者は相続人全員の同意が必要ですか。
A. 最判平成27年2月19日により、持分の過半数で決定できます。ただし議決権の行使内容に争いがある場合は弁護士による交渉が必要です。

Q3. 売渡請求された場合、必ず売却しなければなりませんか。
A. 売渡請求があれば売却義務が生じますが、価格に不服があれば裁判所に価格決定を申立てできます。価格決定申立は弁護士に依頼します。

Q4. 株式評価額はどのように算定しますか。
A. 財産評価基本通達に基づき、類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式等で算定します。算定は税理士業務であり、提携税理士をご紹介します。

Q5. 配当金の受領は誰が行いますか。
A. 権利行使者として会社に通知した相続人が受領し、後日相続人間で清算します。受領後の分配方法は遺産分割協議で取り決めます。

Q6. 事業承継税制は誰でも使えますか。
A. 特例承継計画の提出・経営承継期間中の継続要件など、要件が複雑です。適用判断は税理士の専門領域であり、必ず税理士にご確認ください。

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まとめ

非上場株式(同族会社株式)の相続は、遺産分割・名義書換・譲渡制限・配当請求権・税務評価が複雑に絡み、複数の専門家の協働が必要となる典型的な領域です。行政書士は遺産分割協議書の作成、相続関係説明図、戸籍収集、名義書換に必要な事実関係整理書面の作成を担当します。株式評価・相続税申告は税理士、登記は司法書士、会社との価格交渉や議決権争いは弁護士と、適切な役割分担を行うことで、相続人間および会社との関係を円滑に整理できます。同族会社株式の相続でお困りの場合、まずは無料相談で状況を整理し、必要に応じた専門家連携をご提案します。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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