相続関連

包括承継と特定承継の違い|相続・包括遺贈・特定遺贈・特定財産承継遺言を解説

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財産の承継には「包括承継」(権利義務を一体的に承継する形態)と「特定承継」(個別の権利を承継する形態)があります。相続実務では、相続・包括遺贈が包括承継、特定遺贈が特定承継として問題になります。会社法・M&Aの場面では、合併や会社分割は包括承継的な組織再編、事業譲渡は個別の権利義務を移転する特定承継として整理されます。場面ごとに、債務承継、対抗要件、登記、税務処理が異なります。

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包括承継と特定承継は、債務承継・登記・放棄手続・税務で違いが出る

目次

  1. 包括承継とは
  2. 特定承継とは
  3. 相続・包括遺贈・特定遺贈の違い
  4. 特定財産承継遺言(「相続させる旨の遺言」)との違い
  5. 不動産登記・対抗要件の注意点
  6. 会社分割・事業譲渡との違い
  7. 業務範囲
  8. FAQ

1. 包括承継とは

権利義務を一体的に承継する形態です。主な例:

  • 相続(民法第896条):相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継(一身専属権を除く)
  • 包括遺贈(民法第990条):包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する。ただし、包括受遺者は相続人そのものではなく、代襲相続や遺留分権利者性など、相続人と異なる場面がある
  • 合併(吸収合併・新設合併):消滅会社の権利義務を存続会社・新設会社が一体的に承継
  • 会社分割:分割契約又は分割計画で定めた事業に関する権利義務を、承継会社又は設立会社が包括的に承継する組織再編。もっとも、承継対象は分割契約・分割計画で定められた範囲に限られる

包括遺贈の承認・放棄(3か月の熟慮期間)

包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有し、積極財産だけでなく債務も承継する可能性があります。そのため、包括遺贈を受けたことを知った時から原則3か月以内に、承認するか放棄するかを検討する必要があります。債務超過の可能性がある場合は、家庭裁判所での放棄手続も含めて確認します。

2. 特定承継とは

個別の権利・財産を承継する形態です。対象財産ごとに、登記、引渡し、債権譲渡通知・承諾等の対抗要件を確認します。債務を移転する場合は、免責的債務引受・併存的債務引受などの方法を検討し、債権者の関与・承諾の要否を確認します。主な例:

  • 特定遺贈:特定の財産を対象として受遺者に取得させる遺贈。包括遺贈のように相続人と同一の権利義務を包括的に承継するものではない。ただし、負担付遺贈、債務引受、遺留分侵害額請求、相続債務の弁済原資等が問題となる場合があり、「債務が一切関係しない」とは限らない
  • 売買(民法第555条)
  • 贈与(民法第549条)
  • 事業譲渡:個別の資産・負債・契約関係を移転する取引行為。会社分割とは異なる

3. 相続・包括遺贈・特定遺贈の違い

項目 相続(民法896条) 包括遺贈(民法990条) 特定遺贈
承継者 相続人 包括受遺者 特定受遺者
承継対象 権利義務を包括的に承継 相続人と同一の権利義務を承継(割合的) 遺言で指定された特定の財産のみ
債務承継 あり 原則あり(割合に応じて) 原則なし(ただし負担付遺贈や債務引受の余地)
承認・放棄 3か月以内(民法915条) 3か月以内(民法915条準用) 遺言者死亡後いつでも放棄可(民法986条)
遺言例 遺言不要 「全財産を遺贈する」「全財産の2分の1を遺贈する」など割合で指定 「○○所在の不動産を遺贈する」「○○銀行の預金を遺贈する」など特定の財産を指定

4. 特定財産承継遺言(「相続させる旨の遺言」)との違い

相続人に対して特定の財産を取得させる遺言では、「遺贈」ではなく、民法第1014条第2項の特定財産承継遺言(いわゆる「相続させる旨の遺言」)として整理される場合があります。特定財産承継遺言は、相続人が当然に当該財産を承継する効果を持ち、特定遺贈とは登記手続・遺留分・税務上の取扱い等が異なります。

受遺者・受益者が相続人か相続人以外かによって、適切な遺言形式(特定遺贈・包括遺贈・特定財産承継遺言)の選択が変わります。

5. 不動産登記・対抗要件の注意点

  • 包括承継(相続・包括遺贈):死亡により権利義務の承継自体は包括的に生じます。ただし、不動産を第三者に対抗するには登記が問題となり、相続登記の申請義務(2024年4月施行)、遺贈登記相続分を超える権利取得の対抗要件(民法第899条の2)等を確認する必要があります。
  • 特定承継(売買・贈与・特定遺贈・事業譲渡等):対象財産ごとに、登記、引渡し、債権譲渡通知・承諾、契約上の地位移転の同意等を確認します。

特定遺贈の不動産登記(令和5年4月1日改正)

令和5年4月1日以降、遺贈により不動産を取得した受遺者が相続人である場合は、受遺者が単独で所有権移転登記を申請できます。一方、受遺者が相続人以外の場合は、原則として遺言執行者又は相続人との共同申請となります。登記申請は司法書士業務として整理します。

6. 会社分割・事業譲渡との違い

  • 合併・会社分割:会社法上の組織再編として、消滅会社・分割会社の権利義務を包括的に承継。承継対象は合併契約・分割契約・分割計画で定められた範囲
  • 事業譲渡:個別の資産・負債・契約関係を移転する取引行為。労務承継、債権譲渡通知、契約上の地位移転の同意、許認可承継等が個別に問題となる

7. 業務範囲の整理

行政書士の業務範囲

  • 遺言者本人の意思確認を前提とした、公正証書遺言原案・自筆証書遺言案の作成支援。包括遺贈、特定遺贈、特定財産承継遺言、遺言執行者指定等の文案整理
  • 贈与契約書・売買契約書(紛争性なし)の文案作成
  • 事業譲渡契約書(基本合意・覚書段階)の文案作成支援
  • 遺産分割協議書の作成、戸籍収集、相続関係説明図の作成

※相続人間で紛争がある場合、遺留分侵害額請求への対応、訴訟・交渉、相続税試算、不動産登記設計は、弁護士・税理士・司法書士と連携します。

業務範囲外(連携先専門家)

  • 司法書士業務:相続登記、遺贈登記、不動産登記、組織再編登記、商業登記
  • 税理士業務:相続税申告、贈与税申告、組織再編税制、税務代理
  • 弁護士業務:合併・会社分割・事業譲渡に関するスキーム設計、契約交渉、法的助言、相続紛争対応、遺留分侵害額請求の交渉・訴訟
  • 社会保険労務士業務:労務承継、社会保険手続

合併・会社分割・事業譲渡では、契約交渉・法的助言は弁護士、組織再編登記は司法書士、税務処理は税理士、労務承継・社会保険手続は社会保険労務士、許認可承継・変更届は行政書士業務として個別に確認します。

FAQ|よくあるご質問

Q1. 包括遺贈と特定遺贈、どちらが有利ですか?

一概にはいえません。包括遺贈は財産全体又は割合を承継させたい場合に有用ですが、債務承継や遺産分割参加、放棄手続の問題があります。特定遺贈は特定財産を明確に取得させたい場合に有用ですが、対象財産の特定、登記、遺言執行、遺留分、税務の確認が必要です。債務の有無だけでなく、相続人関係、財産内容、受遺者、遺留分、税務、登記実務を踏まえて選択します。

Q2. 特定遺贈で不動産登記は誰が行いますか?

令和5年4月1日以降、遺贈により不動産を取得した受遺者が相続人である場合は、受遺者が単独で所有権移転登記を申請できます。一方、受遺者が相続人以外の場合は、原則として遺言執行者又は相続人との共同申請となります。登記申請は司法書士業務として整理します。

Q3. 事業譲渡と会社分割の違いは?

事業譲渡は特定承継(個別資産負債の譲渡)で、譲渡対象ごとに対抗要件・契約上の地位移転の同意等を確認します。会社分割は会社法上の組織再編として、分割契約・分割計画で定めた事業に関する権利義務を包括的に承継します。労務承継、債権者保護手続、税務処理等も両者で異なります。

Q4. 「相続させる旨の遺言」と特定遺贈はどう違いますか?

相続人に対して特定の財産を取得させる遺言は、民法第1014条第2項の特定財産承継遺言(いわゆる「相続させる旨の遺言」)として整理される場合があります。特定財産承継遺言は、相続人が当然に当該財産を承継する効果を持ち、特定遺贈とは登記手続・遺留分・税務上の取扱い等が異なります。

Q5. 包括遺贈を受けたら必ず承継しなければいけませんか?

いいえ。包括受遺者は相続人と同様に承認・放棄の規律を受けます。包括遺贈を受けたことを知った時から原則3か月以内に、家庭裁判所での放棄手続を含めて承認・放棄を検討します。債務超過の可能性がある場合は特に慎重な判断が必要です。

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まとめ

相続実務では、相続・包括遺贈が包括承継、特定遺贈が特定承継として問題になります。会社法・M&Aの場面では、合併や会社分割は包括承継的な組織再編、事業譲渡は個別の権利義務を移転する特定承継として整理されます。包括承継は権利義務を包括的に承継しますが、不動産については相続・包括遺贈であっても登記等の対抗要件が必要となる場合があります。

包括遺贈では、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有し、債務も承継する可能性があるため、3か月以内の承認・放棄の検討が重要です。ただし、包括受遺者は相続人そのものではなく、代襲相続や遺留分権利者性など、相続人と異なる場面もあります。特定遺贈は特定財産を承継し、原則として債務承継はありませんが、負担付遺贈・債務引受の余地はあります。

相続人に対して特定の財産を取得させる遺言は、民法第1014条第2項の特定財産承継遺言(「相続させる旨の遺言」)として整理される場合があり、特定遺贈とは登記手続・遺留分・税務上の取扱い等が異なります。特定遺贈の不動産登記は、令和5年4月1日以降、受遺者が相続人の場合は単独申請可能ですが、相続人以外の場合は遺言執行者又は相続人との共同申請が原則です。

当事務所では、本人意思確認を前提とした遺言書(公正証書遺言・自筆証書遺言)の原案作成、贈与契約書・売買契約書・事業譲渡契約書(紛争性なし)の文案作成、遺産分割協議書作成、戸籍収集・相続関係説明図の作成を行政書士業務範囲で対応します。相続登記・組織再編登記は司法書士、相続税・贈与税申告は税理士、相続紛争・遺留分侵害額請求・合併等の法的助言は弁護士、労務承継は社会保険労務士の業務範囲として連携します。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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