公開日:2026-05-22
高圧受電設備等の自家用電気工作物を設置する事業者は、電気事業法第42条に基づき保安規程を定めて産業保安監督部へ届け出るとともに、同法第43条に基づき電気主任技術者の選任又は外部委託承認等により保安監督体制を整える必要があります。工場・大型商業施設・オフィスビル・病院等の高圧電力使用事業所が対象となります。本記事では、自家用電気工作物の対象・保安規程の届出・電気主任技術者の選任・外部委託承認制度・点検記録の管理・行政書士の業務範囲を整理します。なお、本制度は電気事業法に基づく産業保安分野の届出・承認手続であり、建設業許可とは別の制度です。
目次
目次
- 自家用電気工作物の対象(電気事業法第38条)
- 設置者が負う保安義務
- 保安規程の届出(電気事業法第42条)
- 電気主任技術者の選任・兼任・外部選任(電気事業法第43条)
- 外部委託承認制度(電気管理技術者・電気保安法人)
- 点検・検査・記録管理
- 使用開始届・工事計画届・変更届の確認
- 違反時の対応
- 業務範囲
1. 自家用電気工作物の対象(電気事業法第38条)
自家用電気工作物は、電気事業法第38条で「電気事業の用に供する電気工作物及び一般用電気工作物以外の電気工作物」と定義されます。具体的には次のような設備が該当します。
- 電力会社から600Vを超える電圧(高圧・特別高圧)で受電して電気を使用する設備(工場、大型商業施設、オフィスビル、病院、ホテル等)
- 構内に設置する一定の発電設備(小規模事業用電気工作物等を除く)。例:50kW以上の太陽電池発電設備、10kW以上の内燃力発電設備等
- 構外にわたる電線路を有する電気設備等
需要設備については、「単に受電容量50kW以上」ではなく、受電電圧(600V超)・設備内容・発電設備の有無で自家用電気工作物該当性を確認します。
2. 設置者が負う保安義務
自家用電気工作物の設置者は、電気事業法第39条の技術基準適合維持義務を負い、保安規程に基づく保安体制の整備、電気主任技術者の選任又は外部委託承認、点検・検査の実施、事故時の対応、記録管理等の義務を負います。
3. 保安規程の届出(電気事業法第42条)
設置者は、自家用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安を確保するため保安規程を定め、自家用電気工作物の使用開始前又は遅滞なく、設置場所を管轄する産業保安監督部に届け出る必要があります(主務大臣=経済産業大臣への届出。実務上の窓口は管轄の産業保安監督部)。保安規程には以下を規定します。
- 保安体制・業務分担
- 点検・検査計画
- 事故時の対応
- 主任技術者又は外部委託先との関係
- 記録の保存
保安規程を変更したときも届出が必要です。
4. 電気主任技術者の選任・兼任・外部選任(電気事業法第43条)
設置者は、自家用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安の監督をさせるため、電気主任技術者を選任し国(産業保安監督部)に届け出る必要があります(電気事業法第43条)。電気主任技術者免状は取り扱える範囲により次の3区分があります。
- 第一種電気主任技術者:すべての事業用電気工作物の保安監督(電圧の上限なし)
- 第二種電気主任技術者:電圧17万V未満の事業用電気工作物の保安監督
- 第三種電気主任技術者:電圧5万V未満の事業用電気工作物の保安監督(ただし出力5,000kW以上の発電所を除く)。一般的な高圧受電(6,600V等)の工場・ビル等では第三種で対応できることが多い
実際に必要な免状区分は、受電電圧、発電設備の有無・出力、設備構成により確認します。
5. 外部委託承認制度(電気管理技術者・電気保安法人)
一定の要件を満たす場合、主任技術者を自社で選任する代わりに、個人の電気管理技術者又は電気保安法人へ保安管理業務を外部委託し、所轄の産業保安監督部の外部委託承認を受けることができます。これは「主任技術者を選任しないことができる」制度であり、外部の電気主任技術者を自社の主任技術者として選任する「外部選任」や、複数事業場を担当する「兼任」とは別の制度です。
外部委託契約を締結しただけでは足りず、設備条件、委託先の資格・実務経験、点検頻度、到達時間、連絡責任者等の承認要件を確認する必要があります。承認申請は所轄の産業保安監督部に対して行います。
6. 点検・検査・記録管理
自家用電気工作物の設置者は、技術基準適合維持義務を負い、保安規程に基づいて点検、検査、事故時対応、記録管理を行います。
- 需要設備:保安規程や外部委託承認条件に基づく月次点検・年次点検等が行われます。点検頻度は、設備の種類、外部委託承認の有無、告示、保安規程により異なります。
- 発電設備等:使用前自己確認、使用前自主検査、定期事業者検査等が問題となる場合があります。
記録の保存期間は、点検記録、保安教育記録、事故記録、使用前自己確認、定期事業者検査等で異なるため、保安規程・法令・告示に従って整理します。点検は選任された電気主任技術者または外部委託先の責任において実施し、設置者は保安規程を遵守する義務を負います。
7. 使用開始届・工事計画届・変更届の確認
自家用電気工作物を新設する場合は、保安規程を定め、電気主任技術者を選任し、所轄の産業保安監督部へ遅滞なく届け出ます。実務上は、受電開始・使用開始前に、保安規程届出、主任技術者選任届出、外部委託承認申請、使用開始届、工事計画届、使用前自己確認等の要否を事前確認します。
8. 違反時の対応
保安規程の未届、主任技術者の未選任、技術基準適合維持義務違反、事故報告義務違反、命令違反等、違反内容に応じて、産業保安監督部からの指導・報告徴収・立入検査・命令、電気事業法上の罰則が問題となる場合があります。具体的な罰条・処分は違反態様ごとに最新の電気事業法で確認します。
9. 業務範囲
行政書士の業務範囲(行政書士業務:官公署に提出する書類の作成・第1条の3第1項第1号:提出代理)
- 保安規程の届出書類・変更届出書類の作成・提出
- 電気主任技術者の選任・解任の届出書類の作成・提出
- 外部委託承認申請書の作成・提出
- 関連する官公署提出書類(使用開始届、工事計画届等)の作成支援
※主任技術者の資格・実務経験・設備適合性、保安管理業務の内容、点検頻度、技術基準適合性、外部委託承認の技術的要件は、電気主任技術者、電気管理技術者、電気保安法人、電気工事会社等と確認します。
業務範囲外(連携先専門家)
- 電気主任技術者試験の受験(本人)
- 保安管理業務の実施(外部委託先である電気管理技術者・電気保安法人等)
- 電気設備の工事(電気工事会社、登録電気工事業者)
- 労務管理・社会保険手続(社会保険労務士)
- 税務(税理士)
FAQ|よくあるご質問
Q1. 外部委託でも主任技術者選任義務を果たせますか?
一定要件を満たし、所轄の産業保安監督部から外部委託承認を受けた場合は、主任技術者を選任しないことができます。これは、外部の電気主任技術者を自社の主任技術者として選任する「外部選任」や、複数事業場を担当する「兼任」とは別の制度です。委託先は電気保安法人だけでなく、個人の電気管理技術者の場合もあります。
Q2. 月次点検は誰が行いますか?
点検は、選任された電気主任技術者、兼任・外部選任された主任技術者、又は外部委託承認を受けた電気管理技術者・電気保安法人等が、保安規程、外部委託承認条件、経済産業省告示等で定められた頻度・内容に従って実施します。点検頻度は設備内容により異なるため、必ず保安規程と承認内容を確認します。
Q3. 違反した場合はどうなりますか?
保安規程の未届、主任技術者の未選任、技術基準適合維持義務違反、事故報告義務違反、命令違反等、違反内容に応じて、産業保安監督部からの指導・報告徴収・立入検査・命令、電気事業法上の罰則が問題となる場合があります。具体的な罰条・処分は違反態様ごとに確認します。
Q4. 一般家庭の電気設備も自家用電気工作物ですか?
該当しません。一般家庭の電気設備(低圧100V/200V受電)は、電気事業法上の「一般用電気工作物」に該当し、自家用電気工作物の保安規程・主任技術者選任の対象外です。自家用電気工作物は600Vを超える電圧で受電する設備等が該当します。
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まとめ
自家用電気工作物(電気事業法第38条)は、電力会社から600Vを超える電圧で受電する工場・大型商業施設・オフィスビル・病院等の高圧受電設備のほか、50kW以上の太陽電池発電設備等の発電設備が該当します。「受電容量50kW以上」は需要設備の自家用電気工作物該当性の独立基準ではなく、受電電圧・設備内容・発電設備の有無で判断します。
設置者は、電気事業法第42条に基づき保安規程を定めて所轄の産業保安監督部に届け出(実務上は経済産業省の地方機関である産業保安監督部が窓口、都道府県への届出ではない)、同法第43条に基づき電気主任技術者を選任して届け出る必要があります。電気主任技術者の区分は、第一種=すべての事業用電気工作物(電圧上限なし)、第二種=17万V未満、第三種=5万V未満(出力5,000kW以上の発電所を除く)です。一般的な高圧受電(6,600V等)の工場・ビル等では第三種で対応できることが多くなっています。
一定の要件を満たし所轄の産業保安監督部から外部委託承認を受けた場合は、主任技術者を選任せず、個人の電気管理技術者又は電気保安法人へ保安管理業務を外部委託することができます。外部委託承認制度は、外部の主任技術者を選任する「外部選任」や複数事業場を担当する「兼任」とは別の制度です。
点検・検査・記録管理は、保安規程、外部委託承認条件、経済産業省告示等で定められた頻度・内容に従って実施します。点検記録の保存期間は保安規程・関係省令の定めによります。違反内容に応じて産業保安監督部からの指導・報告徴収・立入検査・命令、電気事業法上の罰則が問題となります。
当事務所では、保安規程の届出書類・変更届出書類、電気主任技術者の選任・解任の届出書類、外部委託承認申請書、関連する官公署提出書類の作成・提出を行政書士業務範囲(行政書士業務・第1条の3第1項第1号)で対応します。電気主任技術者試験は本人、保安管理業務の実施は電気管理技術者・電気保安法人、電気設備工事は電気工事会社(登録電気工事業者)、労務は社労士、税務は税理士の業務範囲として連携します。本制度は電気事業法に基づく産業保安分野の届出・承認手続であり、建設業許可とは別の制度です。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


