相続関連

内縁配偶者と相続|判例上の救済(特別縁故者・建物賃借権承継・遺族年金)と公正証書遺言の重要性

約9分で読めます

内縁関係(事実婚)のパートナーは、民法上の法定相続人ではないため、原則として相続権を有しません。しかし、長年連れ添った内縁配偶者には、判例上の救済として、特別縁故者財産分与申立て(民法958条の2)、建物賃借権の承継(借地借家法36条)、遺族年金の受給、内縁関係に基づく財産清算等の選択肢があります。本記事では、内縁配偶者が直面する相続上の論点、判例上の救済手段、生前準備としての公正証書遺言・任意後見・死後事務委任契約の重要性、行政書士の業務範囲を整理します。

本記事の結論:

  • 内縁配偶者は法定相続人ではないため、生前準備(公正証書遺言・任意後見・死後事務委任)なしには相続財産を承継できません。
  • 相続人不存在の場合のみ特別縁故者財産分与申立て(民法958条の2)の余地がありますが、相続人がいれば適用なし。
  • 建物賃借権は借地借家法36条により内縁配偶者の承継が認められる場合があり、被相続人と同居していた住居の継続居住が可能。
  • 当事務所は公正証書遺言の原案作成・死後事務委任契約書の作成を担当し、相続税申告は税理士、相続登記は司法書士、紛争性ある事案は弁護士をご紹介します。

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  • 内縁関係でも遺族年金の受給対象となるか確認したい
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根拠法令・主要判例(2026年5月時点)

  • 民法725条(親族の範囲)・752条以下(婚姻の効果)※内縁関係には直接適用なし
  • 民法887条以下(法定相続人)※内縁配偶者は法定相続人に該当しない
  • 民法958条の2(特別縁故者財産分与・相続人不存在の場合)
  • 借地借家法36条(建物賃借権の承継・内縁配偶者保護)
  • 厚生年金保険法3条2項(遺族年金の受給対象としての事実婚)
  • 国民年金法5条8項(事実婚を含む配偶者概念)
  • 健康保険法3条2項3号(被扶養者としての事実婚配偶者)
  • 所得税法83条(配偶者控除)※税法上は事実婚を配偶者として扱わない
  • 行政書士法1条の2第1項(権利義務に関する書類の作成)
  • 主要判例:最判昭和33年4月11日(内縁関係の準婚理論)、最判平成5年10月19日(建物賃借権の援用)等

1. 内縁配偶者の法的地位

内縁関係とは、婚姻届を提出せず事実上の夫婦関係にあるカップルを指します。判例(最判昭和33年4月11日等)は、内縁関係を「準婚関係」として、婚姻に類似する一定の法的保護を認めていますが、相続権は認めていません。

内縁配偶者に認められる権利

  • 同居協力扶助義務(民法752条の準用)
  • 貞操義務(不貞行為に対する慰謝料請求)
  • 内縁解消時の財産分与請求(民法768条の類推適用)
  • 遺族年金の受給(厚生年金保険法・国民年金法上の事実婚配偶者)
  • 健康保険の被扶養者該当(健康保険法)
  • 建物賃借権の承継(借地借家法36条)

内縁配偶者に認められない権利

  • 相続権(法定相続人に該当しない)
  • 配偶者居住権・配偶者短期居住権(民法1028条以下・配偶者限定)
  • 税法上の配偶者控除・配偶者特別控除
  • 外国籍パートナーの在留資格「日本人の配偶者等」(婚姻届が前提)

2. 内縁配偶者の相続を巡る論点

2-1. 相続人不存在の場合:特別縁故者財産分与申立て

被相続人に法定相続人がいない場合(独身・子なし・両親・兄弟姉妹等の親族もいない)、内縁配偶者は特別縁故者として財産分与を家庭裁判所に申し立てることが可能です(民法958条の2)。

申立て要件:

  • 被相続人と生計を同じくしていた者
  • 被相続人の療養看護に努めた者
  • その他被相続人と特別の縁故があった者

申立て期限は相続財産清算人の公告期間満了後3か月以内。家庭裁判所が事情を考慮して財産分与の額を決定します。なお、家事事件であるため、申立書類の作成は司法書士業務、代理は弁護士業務となります。

2-2. 相続人が存在する場合:原則救済なし

被相続人に法定相続人が1人でも存在する場合、特別縁故者制度は適用されません。内縁配偶者は相続財産の承継を受けられず、生前準備(遺言・贈与)なしでは無権利状態となります。

2-3. 建物賃借権の承継

被相続人と同居していた賃貸住宅について、借地借家法36条により内縁配偶者の賃借権承継が認められる場合があります。「相続人なし」が要件であり、相続人がいる場合は内縁配偶者は賃借権を承継できませんが、判例(最判平成5年10月19日等)により、賃借人の地位の援用が認められる救済もあります。

2-4. 遺族年金の受給

厚生年金保険法・国民年金法では、事実婚関係にある者も「配偶者」に含めるため、内縁配偶者も遺族年金の受給対象となります。受給要件:

  • 事実婚関係の継続性・公然性の立証(住民票上の続柄「妻(未届)」「夫(未届)」記載、生計同一性、社会的承認)
  • 年金受給権者の死亡時点で事実婚関係が継続
  • 受給者の収入要件(年収850万円未満等)

3. 生前準備の重要性

内縁配偶者が相続上の不利益を回避するためには、生前準備が決定的に重要です。

3-1. 公正証書遺言

被相続人が内縁配偶者に財産を承継させる旨の遺言を作成。公正証書遺言は公証人が関与するため、自筆証書遺言より無効リスク・紛失リスクが低く、内縁配偶者向けに特に推奨されます。

記載例:「遺言者の有する一切の財産を、内縁の妻○○○○(生年月日:○年○月○日、住所:○○)に遺贈する。」

注意:法定相続人がいる場合、内縁配偶者への遺贈は遺留分侵害額請求の対象となり得ます(民法1042条以下)。遺留分相当額を残すか、相続人との事前合意(家族会議)を行うことが紛争予防になります。

3-2. 死後事務委任契約

被相続人の死亡後の葬儀・火葬・遺品整理・行政手続・住居解約等を、内縁配偶者または第三者に委任する契約。公正証書化により確実性が高まります。

3-3. 任意後見契約

判断能力低下後の財産管理・身上監護を、内縁配偶者または第三者に委ねる契約。公正証書での作成が法律上必要(任意後見契約法3条)。

3-4. 事実婚契約書(パートナーシップ契約書)

内縁関係の存在・財産関係・生活費分担・解消時の取扱い等を契約書化。相続関係の整理にも活用できます。

4. 内縁関係解消時の財産清算

内縁関係解消時には、民法768条(財産分与)の類推適用により、内縁期間中に形成された財産の清算が可能です。判例も内縁関係の財産分与を認めています。

ただし、内縁関係解消は離婚と異なり戸籍上の手続が不要で、関係の終了時点が不明確になりやすいため、解消合意書を作成して財産整理を明確化することが推奨されます。

5. 業務範囲の整理

行政書士の業務範囲

  • 公正証書遺言の原案作成・公証役場での嘱託準備
  • 死後事務委任契約書の作成(公正証書化サポート)
  • 任意後見契約書の原案作成(公正証書化)
  • 事実婚契約書(パートナーシップ契約書)の作成
  • 内縁関係解消合意書の作成
  • 遺族年金請求書類の整備サポート(社労士業務と区別)

業務範囲外(連携先専門家)

  • 特別縁故者財産分与申立書の作成(家事事件・司法書士または弁護士業務)
  • 遺留分侵害額請求の代理交渉(弁護士法72条)
  • 相続税申告・税額計算(税理士業務)
  • 相続登記・不動産名義変更(司法書士業務)
  • 遺族年金請求の代理申請(社会保険労務士業務)
  • 相続人との紛争・調停・訴訟(弁護士業務)

FAQ|よくあるご質問

Q1. 内縁配偶者でも遺言で財産を承継できますか?
A. はい、可能です。被相続人が公正証書遺言で内縁配偶者を受遺者として指定すれば、財産を遺贈できます。ただし、法定相続人がいる場合は遺留分侵害額請求の対象となり得るため、遺留分相当額を残すか事前合意することが紛争予防になります。

Q2. 内縁配偶者は遺族年金を受給できますか?
A. 厚生年金保険法・国民年金法上、事実婚関係にある者も配偶者に含まれるため受給対象となります。事実婚関係の継続性・公然性(住民票上の続柄記載、生計同一性、社会的承認等)の立証が必要です。

Q3. 被相続人と内縁配偶者の住んでいた賃貸住宅はそのまま住み続けられますか?
A. 借地借家法36条により、相続人がいない場合は内縁配偶者の賃借権承継が認められます。相続人がいる場合は、判例上の救済として賃借人の地位の援用が認められるケースもあるため、弁護士にご相談ください。

Q4. 特別縁故者財産分与は誰でも申し立てられますか?
A. 被相続人に法定相続人が1人もいない場合のみ申立て可能です。配偶者・子・親・兄弟姉妹・甥姪等の親族が1人でもいれば、特別縁故者制度は適用されません。

Q5. 内縁関係を法的に証明する方法は?
A. 住民票上の続柄「妻(未届)」「夫(未届)」、共同生活の事実、生計同一性、社会的に夫婦として認識されている事実、事実婚契約書の存在等、複数の証拠を組み合わせて立証します。

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まとめ

内縁配偶者は民法上の法定相続人ではないため、原則として相続権を有しません。判例上の救済として、相続人不存在の場合の特別縁故者財産分与申立て(民法958条の2)、建物賃借権の承継(借地借家法36条)、遺族年金の受給(厚生年金保険法・国民年金法)、内縁関係解消時の財産分与(民法768条類推適用)等がありますが、いずれも限定的で、相続人がいる場合は適用されない救済も多くあります。内縁配偶者が相続上の不利益を回避するためには、生前準備が決定的に重要で、公正証書遺言・死後事務委任契約・任意後見契約・事実婚契約書を組み合わせた総合的な備えが推奨されます。これら契約書の文案作成は行政書士業務として対応可能ですが、特別縁故者財産分与申立書は司法書士・弁護士、遺留分侵害額請求の交渉は弁護士、相続税申告は税理士、相続登記は司法書士、遺族年金請求は社会保険労務士と、各専門家チームで対応することが安全で確実な相続対策につながります。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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