公開日:2026年5月18日
内縁関係(事実婚)のパートナーは、民法上の法定相続人ではないため、原則として相続権を有しません。しかし、長年連れ添った内縁配偶者には、判例上の準婚理論による救済として、特別縁故者財産分与申立て(民法第958条の2)、建物賃借権の承継(借地借家法第36条)、判例による相続人承継賃借権の援用(最判昭和42年2月21日)、遺族年金の受給、不当破棄時の慰謝料請求、生前解消時の財産清算等の選択肢があります。一方、相続権、配偶者居住権(民法第1028条以下)、配偶者短期居住権(民法第1037条以下)、特別寄与料(民法第1050条:被相続人の親族に限定)、税法上の配偶者控除等は原則として認められません。本記事では、内縁配偶者の法的地位、判例上の救済手段、生前準備としての公正証書遺言(「遺贈する」と記載)・死因贈与・任意後見契約・死後事務委任契約・生命保険金受取人指定の重要性、行政書士の業務範囲を整理します。
本記事の結論
- 内縁配偶者は法定相続人ではないため、遺言・死因贈与・生前贈与等の準備がない限り、原則として相続人として相続財産を取得することはできません。ただし、相続人不存在の場合の特別縁故者財産分与、生命保険金の受取人指定、死後事務委任契約等により、一定の救済・準備が可能です。
- 建物賃借権は借地借家法第36条により、相続人なしに死亡した場合に内縁配偶者の承継が認められる場合がありますが、相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に賃貸人へ反対の意思表示をした場合は承継しません(同条ただし書)。相続人がいる場合は内縁配偶者が承継するわけではなく、判例(最判昭和42年2月21日)により、相続人が承継した賃借権を援用して居住を主張できる場合があります。
- 遺言で内縁配偶者に財産を渡す場合、内縁配偶者は法定相続人ではないため「相続させる」ではなく「遺贈する」と記載します。法定相続人がいる場合、遺贈は遺留分侵害額請求の対象。遺留分の事前放棄は家庭裁判所の許可が必要で、家族会議や念書だけで請求を当然に排除できません。
- 当所は公正証書遺言・死因贈与契約・任意後見契約・死後事務委任契約・事実婚契約書の文案作成、事実婚関係・生計同一関係を示す資料整理を行政書士業務範囲(行政書士業務)で対応します。家庭裁判所への申立(特別縁故者財産分与申立等)は司法書士・弁護士、遺留分侵害額請求の交渉は弁護士、遺族年金の請求代理は社会保険労務士、相続税申告は税理士、相続登記は司法書士と連携します。
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目次
根拠法令・制度
- 民法第739条(婚姻の届出)・第748条(婚姻の効力)
- 民法第752条(同居・協力・扶助の義務、内縁関係には判例上類推適用)
- 民法第768条(離婚における財産分与、内縁解消時に類推適用。ただし最判平成12年3月10日により死亡解消時の類推適用は否定)
- 民法第887条・第889条・第890条(法定相続人の範囲)
- 民法第958条の2(特別縁故者財産分与・相続人不存在の場合。令和3年法律第24号により旧第958条の3から繰り上げ、令和5年4月1日施行)
- 民法第1028条以下(配偶者居住権・法律婚配偶者限定)・第1037条以下(配偶者短期居住権・法律婚配偶者限定)
- 民法第1042条以下(遺留分侵害額請求)
- 民法第1050条(特別寄与料・被相続人の親族に限定。内縁配偶者は親族でないため適用なし)
- 借地借家法第36条(居住用建物賃借権の承継・1か月以内の反対意思表示によるただし書)
- 厚生年金保険法第3条第2項(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を配偶者に含む)・第59条(遺族厚生年金の受給権者)
- 国民年金法第5条第7項(「配偶者」「夫」「妻」に事実婚を含む)
- 健康保険法第3条第7項(被扶養者の範囲。配偶者には事実婚を含む)
- 労働者災害補償保険法第16条の2(遺族補償給付の受給資格者の範囲。事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)
- 所得税法第83条(配偶者控除・民法上の配偶者に限定。内縁・事実婚は対象外)
- 任意後見契約に関する法律(平成11年法律第150号)
- 公証人法第36条以下(公正証書)
- 行政書士業務(権利義務・事実証明に関する書類の作成)
内縁配偶者は法定相続人ではないため、遺言が最重要
内縁配偶者は、長年同居し生計を同じくしていたとしても、民法上の法定相続人にはなりません。そのため、財産を内縁パートナーに渡したい場合は、公正証書遺言で「相続させる」ではなく「遺贈する」と記載することが重要です。相続人がいない場合には特別縁故者財産分与の申立て、賃貸住宅については借地借家法第36条による建物賃借権承継(1か月以内の反対意思表示によるただし書あり)、年金については事実婚関係と生計維持関係を立証したうえで遺族年金の受給が問題となります。ただし、いずれも限定的な救済であるため、生前から遺言、死後事務委任契約、任意後見契約、生命保険金受取人指定等を組み合わせて準備することが重要です。
1. 内縁配偶者の法的地位
1-1. 判例上の準婚理論
内縁関係では、判例上の準婚理論(最判昭和33年4月11日等)により、婚姻に準じた法的効果が個別に認められる場合があります。ただし、法律婚と完全に同一ではなく、相続権、配偶者居住権、配偶者短期居住権、特別寄与料、税法上の配偶者控除などは原則として認められません。
1-2. 内縁配偶者に認められる場合がある権利
内縁関係では、判例上、以下のような権利・効果が問題となる場合があります。
- 同居・協力・扶助義務(民法第752条の類推適用)
- 貞操義務違反による不当破棄に対する慰謝料請求(不法行為)
- 内縁解消時の財産清算(民法第768条の類推適用。ただし生前解消の場合に限り、死亡解消時には最判平成12年3月10日により類推適用は否定)
- 遺族年金・健康保険被扶養者・労災遺族補償給付等の社会保険上の取扱い(事実婚関係+生計維持関係の立証が必要)
1-3. 内縁配偶者に認められない権利
- 法定相続権(民法第887条・第889条・第890条は法律婚配偶者・血族のみ)
- 配偶者居住権(民法第1028条以下、法律婚配偶者限定)
- 配偶者短期居住権(民法第1037条以下、法律婚配偶者限定)
- 特別寄与料(民法第1050条:被相続人の親族に限定されており、内縁配偶者は親族でないため適用なし)
- 税法上の配偶者控除・配偶者特別控除(所得税法第83条等:民法上の配偶者であることが必要)
- 相続税の配偶者の税額軽減(相続税法第19条の2)
2. 内縁配偶者の救済手段(判例上の準婚理論)
2-1. 特別縁故者財産分与(民法第958条の2)
被相続人に法定相続人がいない場合(独身・子なし・両親・兄弟姉妹等の親族もいない)、内縁配偶者は特別縁故者として財産分与を家庭裁判所に申し立てることが可能です。
特別縁故者財産分与は、内縁配偶者が相続人になる制度ではありません。相続人不存在が確定し、相続財産清算手続を経た後、家庭裁判所が相当と認める場合に、清算後残存する相続財産の全部または一部を分与する制度です。相続人がいる場合は適用されません。
この条文は、平成16年民法改正で第958条の3として導入され、令和3年法律第24号(令和5年4月1日施行)により第958条の2に繰り上げられました。同改正で相続財産管理人の名称も「相続財産清算人」に変更されています。
特別縁故者の要件
- 被相続人と生計を同じくしていた者
- 被相続人の療養看護に努めた者
- その他被相続人と特別の縁故があった者
申立て手続
特別縁故者財産分与の申立ては、相続財産清算人の選任後、相続債権者・受遺者への弁済手続や相続人捜索公告を経て、相続人不存在が確定した後の所定期間内に行います。期限を過ぎると申立てができないため、家庭裁判所の公告内容と期限管理が重要です。なお、家庭裁判所への申立書類の作成・申立代理は司法書士・弁護士の業務範囲です。
2-2. 建物賃借権の承継(借地借家法第36条)
借地借家法第36条により、居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合、その当時、賃借人と事実上夫婦または養親子と同様の関係にあった同居者は、建物賃借人の権利義務を承継します。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に賃貸人へ反対の意思表示をした場合は承継しません(同条ただし書)。
相続人がいる場合の判例上の救済(賃借権の援用)
相続人がいる場合、内縁配偶者は借地借家法第36条により賃借人の地位を承継するわけではありません。ただし、判例上、同居していた内縁配偶者が、相続人が承継した賃借権を援用して、賃貸人に対して居住を主張できる場合があります(最判昭和42年2月21日等)。
賃借人名義の変更、賃料支払義務、相続人との関係は個別に整理が必要です。なお、援用法理には限界があり、相続人と賃貸人との間で合意解除がなされた場合や、相続人が賃料滞納により解除された場合には、内縁配偶者の援用は困難になります。
2-3. 遺族年金(厚生年金保険法・国民年金法)
厚生年金保険法(第3条第2項)・国民年金法(第5条第7項)では、事実上婚姻関係と同様の事情にある者も「配偶者」に含まれるため、内縁配偶者も遺族年金の受給対象となり得ます。ただし、受給には、社会通念上夫婦としての共同生活と認められる事実婚関係と、死亡当時の生計同一・生計維持関係の立証が必要です。
遺族年金の受給要件
- 死亡した被保険者と事実婚関係にあったこと
- 死亡当時、被保険者によって生計を維持されていたこと
- 収入要件:前年の収入が年額850万円未満(または所得が655.5万円未満)であること
事実婚関係の立証
- 住民票(同一世帯・住民票上の続柄「妻(未届)」「夫(未届)」等)
- 健康保険被扶養者の登録
- 賃貸借契約書(同居実態)
- 公共料金・口座引落しの共有
- パートナーシップ証明書(自治体発行・任意)
- 共同生活を示す写真・親族・知人の証言
事実婚関係・生計同一関係を示す資料整理は行政書士の業務範囲(事実証明書類の作成)です。年金事務所への遺族年金の請求代理・提出代行は社会保険労務士業務となります。
2-4. 健康保険・労災保険上の取扱い
- 健康保険:健康保険法第3条第7項により、配偶者には事実婚を含むため、内縁配偶者も被扶養者となり得ます
- 労災保険(遺族補償給付):労働者災害補償保険法第16条の2により、事実上婚姻関係と同様の事情にある者も受給資格者の範囲に含まれます
- 国民年金保険料の第3号被保険者:事実婚配偶者も対象となり得ます(国民年金法第5条第7項)
3. 内縁配偶者のための生前準備
3-1. 公正証書遺言(民法第969条)
被相続人が内縁配偶者に財産を承継させる旨の遺言を公正証書として作成します。内縁配偶者は法定相続人ではないため、遺言では「相続させる」ではなく「遺贈する」と記載します。包括的に財産を渡す場合は「包括遺贈」、特定財産を渡す場合は「特定遺贈」として設計します。
記載例:「遺言者の有する一切の財産を、内縁の妻○○○○(生年月日:○年○月○日、住所:○○)に遺贈する。」
公正証書遺言の証人要件
公正証書遺言の作成には証人2人以上の立会いが必要です(民法第969条第1号)。推定相続人・受遺者・これらの配偶者および直系血族は証人になれません(民法第974条)。内縁配偶者が受遺者となる場合、内縁配偶者本人は証人にはなれません。
遺留分対策
法定相続人がいる場合、内縁配偶者への遺贈は遺留分侵害額請求の対象となることがあります(民法第1042条以下)。遺留分相当額を残す、生命保険・生前贈与・死因贈与との組合せを検討するなどの対策が必要です。なお、遺留分の事前放棄は家庭裁判所の許可が必要(民法第1049条)であり、単なる家族会議や念書だけで遺留分侵害額請求を当然に排除できるわけではありません。
3-2. 死因贈与契約(民法第554条)
被相続人の死亡を停止条件として効力を生じる贈与契約。遺言と異なり双方の合意で成立し、契約書として残せるため証明力が高い場合があります。公正証書化することで執行力を確保できます。死因贈与にも遺留分侵害額請求の対象となる点に注意が必要です。
3-3. 生命保険金の受取人指定
生命保険金は受取人固有の財産であり、原則として相続財産には含まれません。受取人を内縁配偶者に指定することで、確実に保険金を渡すことができます(受取人として「妻」「配偶者」と記載するのではなく、氏名で指定することが重要)。生命保険金は遺留分侵害額請求の対象となるかについて判例上の議論はあるものの、原則として遺留分算定の対象外と整理されており、紛争予防策として有効です。
3-4. 任意後見契約(任意後見契約に関する法律)
被相続人の判断能力低下時に内縁配偶者を後見人とする契約を、公正証書で作成します。任意後見契約は法律婚配偶者でない内縁配偶者でも締結可能で、判断能力低下後の財産管理・身上監護を任せることができます。任意後見監督人選任の申立は家庭裁判所への申立であり、司法書士・弁護士業務となります。
3-5. 死後事務委任契約
死後事務委任契約は、葬儀・火葬・納骨・行政手続・住居解約・遺品整理等の死後事務を委任する契約であり、内縁配偶者に財産を取得させるための制度ではありません。財産承継は、公正証書遺言、死因贈与契約、生前贈与、生命保険金受取人指定等と組み合わせて設計します。公正証書化により確実性が高まります。
3-6. 事実婚契約書(パートナーシップ契約書)
内縁関係であることを公的に立証するための契約書。財産の共有・分与、生活費の負担、解消時の取扱い、医療同意権、葬儀の取り決め等を明文化します。同性パートナーシップでも有効な手段で、自治体のパートナーシップ証明書制度と併用することで立証力が高まります。
4. 業務範囲の整理
4-1. 行政書士業務(書類作成)
- 公正証書遺言(「遺贈する」型)の文案作成・公証役場との調整
- 死因贈与契約書の文案作成
- 任意後見契約書(公正証書化前提)の文案作成
- 死後事務委任契約書の文案作成
- 事実婚契約書(パートナーシップ契約書)の文案作成
- 事実婚関係・生計同一関係を示す資料整理、事情説明書案の作成補助
- 相続関係説明図・財産目録の作成
- 戸籍収集(行政書士業務:権利義務・事実証明に関する書類の作成)
4-2. 業務範囲外(連携先専門家)
- 特別縁故者財産分与申立書の作成・申立代理(家庭裁判所提出書類)→ 司法書士法第3条第1項第4号(裁判所提出書類の作成)または弁護士業務
- 相続財産清算人選任申立書の作成・申立代理 → 司法書士または弁護士業務
- 遺留分侵害額請求の交渉・訴訟代理(弁護士法第72条:法律事務の独占)→ 弁護士業務
- 賃借権承継の交渉・訴訟代理(賃貸人との紛争)→ 弁護士業務
- 遺族年金の請求代理・年金事務所への提出代理(社労士法第2条第1項第1号・第1号の2)→ 社会保険労務士業務
- 相続税申告(税理士法第2条)→ 税理士業務(内縁配偶者は配偶者税額軽減の対象外・基礎控除外であり、相続税負担が重くなる場合あり)
- 相続登記・不動産名義変更登記(司法書士業務)→ 司法書士業務
- 会社の商業登記(代表取締役変更・株式承継等)→ 司法書士業務
遺言書作成サポート
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FAQ|よくあるご質問
Q1. 内縁配偶者は法定相続人になりますか?
法律婚の配偶者と異なり、内縁配偶者は法定相続人になりません(民法第890条は「被相続人の配偶者」を法定相続人と規定し、判例・通説では法律婚の配偶者に限定されます)。長年同居し生計を同じくしていても同様です。財産を渡したい場合は、公正証書遺言(「遺贈する」型)、死因贈与契約、生前贈与、生命保険金受取人指定等の生前準備が必須です。
Q2. 内縁配偶者が遺族年金を受給するには何が必要ですか?
厚生年金保険法第3条第2項・国民年金法第5条第7項により、事実婚関係+生計維持関係(収入年額850万円未満または所得655.5万円未満)の立証が必要です。立証手段として、住民票(同一世帯・続柄「妻(未届)」「夫(未届)」)、健康保険被扶養者登録、賃貸借契約書(同居実態)、公共料金の共有、自治体のパートナーシップ証明書、親族・知人の証言、共同生活を示す写真等を整備します。事実婚関係・生計同一関係を示す資料整理は行政書士業務、年金事務所への請求代理・提出代行は社会保険労務士業務です。
Q3. 借地借家法第36条で内縁配偶者は必ず賃借権を承継できますか?
いいえ。借地借家法第36条による承継は、(1)賃借人が「相続人なしに死亡」したことが要件で、相続人がいる場合は適用されません。また、(2)相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に賃貸人へ反対の意思表示をした場合は承継しません(同条ただし書)。相続人がいる場合は、判例(最判昭和42年2月21日)により相続人が承継した賃借権を援用して居住を主張できる場合がありますが、賃貸人と相続人との合意解除や相続人の賃料滞納による解除では援用が困難です。
Q4. 特別縁故者財産分与は確実に認められますか?
いいえ。特別縁故者財産分与(民法第958条の2)は、(1)相続人不存在が確定し、(2)相続財産清算人による弁済手続・相続人捜索公告を経た後、(3)家庭裁判所が相当と認める場合に、清算後残存する相続財産の全部または一部を分与する制度です。相続人がいる場合は適用されません。また、家庭裁判所の裁量が広く、内縁配偶者であれば必ず認められるわけではありません。生前準備(遺言・死因贈与等)が確実な対策です。
Q5. 内縁配偶者は特別寄与料(民法第1050条)を請求できますか?
いいえ。特別寄与料の請求権者は「被相続人の親族」に限定されており(民法第1050条第1項)、内縁配偶者は親族でないため、特別寄与料の請求はできません。被相続人の療養看護に長年従事していたとしても、特別寄与料制度の対象外となります。生前準備での対応が必要です。
Q6. 内縁配偶者に配偶者居住権・配偶者短期居住権は認められますか?
いいえ。配偶者居住権(民法第1028条以下)と配偶者短期居住権(民法第1037条以下)はいずれも法律婚の配偶者に限定されており、内縁配偶者には適用されません。同居住宅についての保護を確保するには、被相続人による遺言(住宅を遺贈する旨)、生前贈与、または被相続人が賃借権者の場合の借地借家法第36条の活用、判例による賃借権援用法理(最判昭和42年2月21日)等の手段を検討する必要があります。
Q7. 内縁配偶者が亡くなった場合、財産分与(民法第768条類推適用)を相手方相続人に請求できますか?
できません。判例(最判平成12年3月10日)は、内縁関係が死亡により解消した場合に、財産分与の規定(民法第768条)を類推適用することを否定しています。生前解消(離別等)の場合は財産清算が認められる可能性がありますが、死亡解消時には適用されません。死亡解消時の財産取得は遺言・死因贈与・生命保険金受取人指定等の生前準備によることが必要です。
Q8. 同性パートナーシップでも本記事の救済は適用されますか?
民法上の内縁配偶者の救済(民法第958条の2の特別縁故者・借地借家法第36条の建物賃借権承継等)は、判例上、男女の事実婚関係を前提として発展してきました。同性カップルへの適用については議論があり、自治体のパートナーシップ証明書制度の活用、遺言・死因贈与・任意後見契約・事実婚契約書(パートナーシップ契約書)等の生前準備による対応が現実的かつ確実です。社会保険上の取扱い(遺族年金等)も含め、最新の運用は専門家にご確認ください。
Q9. 内縁配偶者への遺贈に相続税はどう課税されますか?
内縁配偶者が遺贈により財産を取得した場合、相続税の課税対象となります。法律婚の配偶者と異なり、相続税法第19条の2の配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分相当額までの非課税)は適用されません。また、相続税法第18条の2割加算(被相続人の一親等の血族および配偶者以外の者)の対象となり、税額が2割加算されます。具体的な相続税計算・申告は税理士業務です。
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まとめ
内縁配偶者は民法上の法定相続人ではないため、原則として相続権を有しません。
判例上の準婚理論による救済として、相続人不存在の場合の特別縁故者財産分与申立(民法第958条の2、令和3年改正で繰り上げ)、建物賃借権の承継(借地借家法第36条、1か月以内の反対意思表示によるただし書あり)、相続人がいる場合の賃借権援用(最判昭和42年2月21日)、遺族年金の受給(厚生年金保険法第3条第2項・国民年金法第5条第7項、生計維持850万円要件)、生前解消時の財産分与類推適用(民法第768条、ただし最判平成12年3月10日により死亡解消時は否定)等がありますが、いずれも限定的で、相続人がいる場合は適用されない救済も多くあります。
さらに、配偶者居住権(民法第1028条以下)・配偶者短期居住権(民法第1037条以下)・特別寄与料(民法第1050条:被相続人の親族に限定)・税法上の配偶者控除・相続税の配偶者税額軽減は原則として内縁配偶者には適用されません。
内縁配偶者が相続上の不利益を回避するためには、生前準備が決定的に重要で、公正証書遺言(「相続させる」ではなく「遺贈する」と記載)、死因贈与契約、生命保険金受取人指定、任意後見契約、死後事務委任契約、事実婚契約書(パートナーシップ契約書)を組み合わせた総合的な備えが推奨されます。遺贈は遺留分侵害額請求の対象となるため、遺留分相当額の確保や遺留分事前放棄(家庭裁判所の許可必要)の検討も重要です。
これら契約書の文案作成・事実関係整理は行政書士業務(行政書士業務)として対応可能です。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・社会保険労務士等の専門家にご確認のうえご判断ください。


