契約書

委任契約・準委任契約・請負契約の違い|業務委託の法的性質を徹底比較

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「委任契約」と「準委任契約」は、いずれも民法上の委任に関する契約類型ですが、対象となる事務の性質が異なります。業務委託契約を締結する際には、その内容が委任・準委任・請負のいずれに該当するかを正確に把握しておくことが重要です。この記事では、委任契約と準委任契約の違い・法的効果・契約書作成のポイントを解説します。

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委任契約と準委任契約の違い

比較項目 委任契約 準委任契約
民法上の根拠 第643条 第656条(委任の規定を準用)
対象事務 法律行為の委託 法律行為でない事務の委託
具体例 弁護士への訴訟委任、不動産売買の代理委託 コンサルティング、システム運用保守、ITエンジニアリング(SES)
受任者の義務 善管注意義務(民法第644条) 善管注意義務(第644条を準用)
報酬の発生 特約がなければ無償(第648条1項) 同左(第656条で準用)
解除 各当事者がいつでも解除可能(第651条) 同左
成果完成型 2020年改正で追加(第648条の2) 同左

最大の違いは「法律行為の委託かどうか」です。法律行為とは、契約締結・訴訟行為など、権利義務の変動を生じさせる行為を指します。法律行為以外の事実行為(データ分析、清掃、コンサルティング等)を委託する場合は準委任に該当します。実務上、「業務委託契約」の多くは準委任に分類されます。

請負契約との違い

委任・準委任と混同されがちなのが請負契約(民法第632条)です。請負は「仕事の完成」が義務であるのに対し、委任・準委任は「事務の処理」が義務です。

比較項目 委任・準委任 請負
義務の対象 事務処理の遂行 仕事の完成
不完成時の報酬 履行割合型なら処理した割合に応じて請求可能 原則として未完成なら報酬なし
契約不適合責任 原則なし あり(民法第559条・第562条〜)
再委託 原則として受任者本人が処理(復委任は制限あり) 特段の定めなければ下請け可能(下請け自由の原則)

請負契約書の書き方については「請負契約書の書き方|委任契約との違いと必須記載事項」で詳しく解説しています。合意書と契約書の使い分けについては「合意書と契約書の違い」も参照してください。

2020年民法改正のポイント

成果完成型の委任(第648条の2)

2020年4月施行の民法改正により、「成果完成型」の委任契約が明文化されました。成果完成型では、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払う旨を定めることができます。成果が得られなければ報酬は発生しませんが、①委任者の責めに帰することができない事由により成果が得られなくなった場合や②委任が解除された場合には、すでに履行した部分のうち委任者が利益を受ける割合に応じた報酬を請求できます(第648条の2第2項・第634条準用)。

履行割合型との違い

改正前から存在する「履行割合型」は、事務処理の遂行度合いに応じて報酬が発生するタイプです。成果の達成は要件ではなく、善管注意義務を尽くして事務を処理すれば報酬を請求できます。

準委任契約書の必須記載事項

1. 委託業務の内容

何の事務を委託するのかを具体的に記載します。「コンサルティング業務」だけでなく、「月次の経営会議への出席および経営戦略に関する助言」のように範囲を明確にします。

2. 報酬の類型と支払条件

履行割合型か成果完成型かを明記し、報酬額・支払時期・支払方法を定めます。月額固定型・タイムチャージ型・成功報酬型などの報酬体系も明確にしておきます。

3. 契約期間と更新条件

契約の始期・終期を定め、自動更新の有無・更新拒絶の通知期限を記載します。

4. 中途解除の条件

委任契約は各当事者がいつでも解除できるのが原則です(民法第651条)。ただし、相手方に不利な時期の解除はやむを得ない事由がない限り損害賠償責任を負います。契約書では解除の通知期間(「30日前の書面通知」等)を定めるのが一般的です。

5. 秘密保持義務

受任者が業務遂行上知り得た秘密情報の取扱いについて定めます。

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よくある質問

Q. SES契約は委任?準委任?請負?派遣との違いは?

SES(システムエンジニアリングサービス)契約は、エンジニアの労務提供を目的とするため、一般的に準委任契約に分類されます。もっとも、成果物の完成を約束する場合は請負に該当する可能性があり、また、発注者がエンジニアを直接指揮命令している実態がある場合には労働者派遣との関係が問題となるため、契約書の文言だけでなく実態を含めて判断する必要があります。

なお、2024年11月1日に施行されたフリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)により、フリーランス(個人事業主等)との準委任委託でも、業務の内容・報酬額・支払期日等を書面または電子メール等で明示する義務が課されました。SES契約でフリーランスエンジニアを活用する場合はこの法律の適用に注意が必要です。

Q. 委任契約で成果が出なくても報酬を支払う必要がある?

履行割合型の委任契約では、善管注意義務を尽くして事務処理を行っていれば、成果の有無にかかわらず報酬が発生します。一方、成果完成型(第648条の2)では、成果が得られなければ原則として報酬は発生しません。

Q. 準委任契約の印紙税は?

単発の準委任契約書は印紙税法上の課税文書に該当しないため、収入印紙は原則不要です。ただし、継続的に準委任事務を委託する基本契約書(月次コンサルティング契約等で契約期間が3か月超・自動更新条項あり等の要件を満たすもの)は、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に分類され、一律4,000円の印紙が必要になる場合があります。これに対し、請負契約書は第2号文書として契約金額に応じた印紙税が課されます。

Q. 業務委託契約書で「委任」「準委任」を明記すべき?

明記することをおすすめします。「本契約は民法第656条に基づく準委任契約とする」のように記載することで、請負との混同を防ぎ、責任の範囲を明確にできます。

まとめ

  • 委任は法律行為の委託、準委任は法律行為でない事務の委託
  • 2020年改正で成果完成型の委任が明文化された
  • 単発の準委任契約書は印紙税不要(継続的基本契約書は第7号文書に該当する場合あり)
  • 契約書では委任・準委任・請負の類型を明記するのが重要

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※ 本記事の内容は2026年4月時点の民法等の法令に基づく一般的な解説です。個別の契約内容については専門家にご相談ください。民法の条文はe-Gov法令検索(民法)で確認できます。

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