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「自分が亡くなった後、葬儀の手配や届出は誰がやってくれるのだろう」——身寄りのない方やご家族に負担をかけたくない方にとって、死後の事務手続きは切実な問題です。2024〜2025年にかけて国・自治体レベルで「おひとりさま支援」の議論が活発化しており、死後事務委任契約を公的に推進する自治体も増えています。「おひとりさま終活」を支える制度として、その重要性は年々高まっています。
結論から言えば、死後事務委任契約を結んでおけば、葬儀・火葬・行政届出・各種契約の解約・デジタル関連の整理・遺品整理まで幅広い事務を第三者に託すことができます。ただし、遺産の分配など「財産の承継」に関わる部分は遺言書の領域であり、死後事務委任契約では対応できません。
この記事では、死後事務委任契約で委任できる事務を7つのカテゴリに分けて一覧で整理し、委任できないことや遺言書との役割分担、契約時に見落としやすいポイントまで解説します。
「死後の手続きを誰に頼めばいいかわからない」「何を契約書に盛り込むべきか不安」という方は、行政書士法人Treeにご相談ください。おひとりさまの終活に詳しい行政書士が、必要な手続きを整理いたします。相談は何度でも無料です。
目次
死後事務委任契約で依頼できることの全体像
死後事務委任契約は、民法656条に基づく準委任契約の一種です。民法653条では委任者の死亡が委任終了事由とされていますが、最高裁平成4年9月22日判決により「死後の事務処理を目的とする委任契約は、委任者の死亡後も終了しない旨の合意を含む」と認められています。つまり、生前に契約を結んでおけば、本人の死後に受任者が契約に基づいて事務処理を進めることが法的に可能です。
委任できる事務の範囲は幅広く、主に以下の7カテゴリに分類できます。
| カテゴリ | 主な委任事項 |
|---|---|
| 1. 葬儀・火葬・埋葬 | 葬儀社手配、火葬許可申請、納骨・散骨 |
| 2. 行政への届出 | 死亡届提出、年金停止届、健康保険喪失届など |
| 3. 各種契約の解約 | 賃貸借、公共料金、携帯電話、保険など |
| 4. デジタル関連の整理 | SNS削除、メール・クラウドデータ整理 |
| 5. 費用の精算 | 入院費・施設費精算、未払い債務の弁済 |
| 6. 遺品整理・住居明渡し | 家財道具処分、原状回復、鍵の返却 |
| 7. その他 | ペット引渡し、関係者への連絡、供養関連 |
以下、各カテゴリの具体的な内容を詳しく説明します。
葬儀・火葬・埋葬に関する事務にはどのような内容が含まれる?
死後の手続きのなかでも、最も緊急性が高いのが葬儀・火葬に関する事務です。亡くなった直後から対応が必要になるため、契約書に具体的な希望を記載しておくことが重要です。
葬儀社の選定・手配
生前に希望する葬儀社を指定しておけば、受任者がその葬儀社に連絡して手配を進めます。「家族葬にしたい」「直葬(火葬のみ)にしたい」「特定の宗教形式で行いたい」といった葬儀の形式や規模の希望も、契約書に盛り込んでおくことが可能です。葬儀社を特定していない場合は、受任者が適切な葬儀社を選定して手配します。
通夜・告別式の手配と喪主代行
通夜や告別式の運営に関する手配も委任できます。参列者への連絡、会場手配、供花・供物の準備、会葬御礼品の手配、僧侶への読経依頼なども委任事項に含めることが可能です。おひとりさまの場合は喪主に相当する役割を受任者が担うケースもあります。
火葬許可申請・火葬の実施
火葬を行うには、市区町村に死亡届を提出し、火葬許可証の交付を受ける必要があります。この手続きの代行を委任できます。なお、墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)により、死亡後24時間を経過しなければ火葬できないとされています。
納骨・散骨・永代供養
遺骨の取扱いについても、契約書で具体的に指定しておくことができます。「先祖代々の墓に納骨してほしい」「永代供養墓に入れてほしい」「海洋散骨を希望する」といった内容です。散骨の場合は、散骨業者の手配やガイドラインの遵守も含めて委任することが一般的です。
行政機関への届出はどこまで任せられる?
人が亡くなると、さまざまな行政機関への届出や手続きが必要になります。死後事務委任契約で委任できる主な届出を整理します。
死亡届の提出
戸籍法86条により、死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡した場合は3か月以内)に市区町村役場に提出する必要があります。届出義務者は、同居の親族・その他の同居者・家主等と定められています(戸籍法87条)。
ただし注意が必要なのは、死後事務受任者であるというだけでは、法律上の届出義務者や届出資格者にあたらない点です。実務上は、届出義務者に代わって届出書を役場窓口に持参すること(届出書の記入者と提出者は異なっても可)や、葬儀社が代行するケースが一般的です。契約書では「死亡届の提出を補助する事務」として定めておくことが多くなっています。
年金受給停止届
年金受給者が亡くなった場合は、日本年金機構に「年金受給権者死亡届(報告書)」を提出して受給を停止する必要があります。マイナンバーが年金機構に収録されている場合は届出が不要な場合もありますが、未支給年金の請求手続きが必要になるケースもあるため、受任者が状況を確認して対応します。
健康保険・介護保険の資格喪失届
国民健康保険の場合は市区町村に資格喪失届を提出し、保険証を返却します。後期高齢者医療制度の被保険者であった場合も同様です。介護保険被保険者証の返却手続きも忘れがちな項目ですが、委任事項に含めておけば漏れを防げます。
住民票の抹消届・世帯主変更届
住民票の死亡による消除は、死亡届の受理によって自動的に行われます。世帯主が死亡した場合で残りの世帯員が2人以上いるときは、14日以内に世帯主変更届の提出が必要です。
その他の届出
運転免許証の返納、パスポートの失効手続、マイナンバーカードの返納なども委任できます。これらは一律に法律上の返納義務が課されているわけではありません。なお、マイナンバーカードは死亡により自動的に失効し、返納義務はありませんが、悪用防止の観点から返納又は適切な廃棄を検討すると安心です。
各種契約の解約手続きではどのような契約が対象になる?
故人が生前に契約していたサービスの解約は、範囲が広く手間もかかる事務です。主な解約対象を整理します。
賃貸借契約の解約・明渡し
賃貸住宅に住んでいた場合は、賃貸借契約の解約手続きが必要です。家賃の精算、原状回復の手配、敷金の返還請求、鍵の返却まで一連の流れを委任できます。保証会社や連帯保証人への連絡も含まれます。
公共料金(電気・ガス・水道)の解約
電気・ガス・水道の各事業者に連絡し、契約者の死亡を届け出て使用停止・解約手続きを行います。未払い料金の精算も委任事務に含まれます。遺品整理の完了まで一定期間利用を継続する必要がある場合は、その期間の管理も受任者が行います。
携帯電話・インターネット回線
携帯電話の解約は、通信事業者ごとに必要書類や手続き方法が異なります。インターネットプロバイダーの解約、固定電話の休止・解約なども対象です。解約に伴う端末の返却や違約金の精算も含まれます。
保険契約関連
生命保険・医療保険等の保険会社への死亡連絡と保険金請求の補助を委任できます。ただし、保険金の受取そのものは保険金受取人が行う手続きであるため、受任者が直接保険金を受領するわけではありません。保険証券の確認や、保険会社への連絡・書類の手配といった事務的なサポートが委任の範囲です。
その他の契約解約
クレジットカード、各種サブスクリプションサービス、新聞購読、スポーツジム会員、NHK受信契約など、定期的な支払いが発生するすべての契約が解約対象になり得ます。これらを漏れなく処理するために、契約書作成時に「生前の契約一覧表」を作成しておくことが実務上有効です。
解約手続きの漏れが心配な方へ
行政書士法人Treeでは、死後事務委任契約書の作成時に、解約すべき契約の洗い出しから一緒に整理いたします。
- ✔ 契約一覧表の作成を丁寧にサポート
- ✔ 公正証書での作成にも対応
- ✔ 遺言書・任意後見契約との組み合わせ提案
- ✔ 相談は何度でも無料
デジタル関連の整理(デジタル終活)
近年重要性が増しているのが、デジタル関連の死後事務です。スマートフォンやパソコン内のデータ、オンラインサービスのアカウント管理は、従来の死後事務にはなかった項目ですが、契約書に明記しておくことで委任が可能です。
SNSアカウントの削除・追悼設定
Facebook、X(旧Twitter)、Instagram、LINEなどのSNSアカウントについて、削除または追悼アカウントへの移行を委任できます。各サービスによって手続き方法が異なるため、利用しているSNSのリストとログイン情報を安全な方法で受任者に引き継いでおく準備が必要です。
メール・クラウドデータの整理
メールアカウントの削除、クラウドストレージ(Google Drive、iCloudなど)のデータ整理・削除も委任事項になります。見られたくないデータの消去を希望する場合は、その旨を契約書に具体的に記載しておくことが大切です。
オンラインバンキング・電子マネー
ネット銀行やネット証券の口座については、金融機関への死亡届出と口座凍結の連絡を委任できます。ただし、口座内の資産の引き出しや分配は相続手続きに該当するため、死後事務委任契約の範囲外となります。電子マネー(交通系ICカード等)の残高精算手続きの代行は委任可能です。
デジタル終活の詳しい進め方は「デジタル終活とは?スマホ・SNS・ネット銀行の死後の取扱い」でも解説しています。
費用の精算と遺品整理・住居明渡し
入院費・施設利用費の精算
亡くなる前に入院していた病院の医療費や、介護施設の利用料の精算を委任できます。高額療養費制度の還付手続きの補助も含めることが可能です。精算に必要な費用は、あらかじめ預けた預託金や、遺産から支払う精算型の仕組みで対応します。
未払い債務の弁済
生前の未払い家賃、水道光熱費、税金(固定資産税、住民税など)について、支払手続や関係機関との連絡・精算補助を委任することができます。実際の支払原資や精算方法については、契約書で明確に定めておくことが重要です。
遺品整理・家財道具の処分
居住していた住居内の家財道具・日用品の整理・処分を委任できます。遺品整理業者の手配、形見分けの品の分配、不用品の廃棄手続きなどが含まれます。特定の品物を特定の人に届けてほしいという希望がある場合は、契約書に具体的に記載しておきます。
住居の明渡し
賃貸住宅の場合は、遺品整理の完了後に原状回復を行い、貸主に住居を明け渡す手続きが含まれます。持ち家の場合は、不動産の売却や名義変更は相続手続きの領域になるため死後事務の範囲外ですが、住居の施錠管理や郵便物の転送手続きなどは委任可能です。
よくある不備・見落としやすいポイント
死後事務委任契約の実務において、契約内容が不十分であったり、そもそも委任できない事項を盛り込んでしまったりするケースがあります。契約書作成時に注意すべきポイントを整理します。
死後事務委任契約と遺言書の役割を混同しないこと
最も多い誤解が、死後事務委任契約で「財産を○○に渡してほしい」と定めてしまうケースです。遺産の分配・相続に関する事項は遺言書でしか法的効力を持ちません。逆に、遺言書に「葬儀は家族葬にしてほしい」と書いても法的な拘束力はありません。
| 項目 | 死後事務委任契約 | 遺言書 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 民法656条(準委任) | 民法960条以下(相続第7章) |
| 主な対象 | 事務処理(葬儀・届出・解約等) | 財産の承継・分配 |
| 効力の範囲 | 当事者間の合意内容すべて | 法定事項のみ(付言事項に法的拘束力なし) |
| 作成方法 | 当事者間の契約(公正証書推奨) | 自筆証書・公正証書・秘密証書 |
| 執行者 | 受任者 | 遺言執行者 |
両者の詳しい違いは「死後事務委任契約と遺言書の違い|両方必要な理由を行政書士が解説」で解説しています。
相続人がいる場合の注意点
死後事務委任契約を締結していても、相続人がその契約を解除しようとするケースがあります。東京高裁平成21年12月21日の裁判例では、「委任者の死亡後、その地位を承継した相続人が契約を解除することを許さない合意を包含する趣旨と解することが相当」として、一定の条件下で相続人による解除が制限されると判断されています。ただし契約内容が不明確または実現困難であったり、相続人への履行負担が加重な場合は解除が認められることもあります。相続人との紛争を防ぐためにも、契約内容を明確にし、公正証書で作成しておくことが重要です。
委任できないこと
死後事務委任契約で委任できない、あるいは注意が必要な事項があります。
- 財産の分配・処分: 不動産の名義変更、預貯金の分配、株式の売却など相続財産の処分は、遺言書または遺産分割協議によるべき事項です
- 相続放棄・限定承認の手続き: これらは相続人自身が家庭裁判所に申述する必要があり、死後事務受任者が代理することはできません
- 訴訟行為の代理: 相続に関する紛争の解決や訴訟の代理は弁護士法72条により弁護士の職域であり、死後事務受任者が行うことはできません
- 相続登記: 不動産の相続登記は司法書士の業務であり、死後事務委任契約には含められません
費用の精算方法を明確にしていない
死後事務の執行には実費がかかります。葬儀費用、遺品整理費用、各種解約手数料などの支払い原資をどう確保するかは、契約時に取り決めておく必要があります。
一般的な方法は以下の2つです。
- 預託金方式: 生前に一定額を受任者に預けておく方式。確実だが、高額の預託金が必要になる場合がある
- 精算型: 契約時の初期費用のみ支払い、実費は死後に遺産から精算する方式。預託金の負担が少ないメリットがある
契約内容が曖昧すぎる
「葬儀のことはお任せします」のような曖昧な記載では、受任者がどこまで対応すべきか判断できず、トラブルの原因になります。「葬儀は○○葬儀社に依頼し、仏式・家族葬で行い、費用は○○万円以内とする」のように、できるだけ具体的に記載することが大切です。
契約書の具体的な書き方は「死後事務委任契約書の書き方と記載例|公正証書での作成手順」で解説しています。
よくある質問
Q. 死後事務委任契約は誰に依頼できますか?
行政書士、弁護士、司法書士などの専門家のほか、信頼できる知人・友人、NPO法人、社会福祉協議会などに依頼できます。法律上の資格制限はないため個人間でも契約可能ですが、長期間にわたって確実に履行されるためには、法人格を持つ専門家に依頼するのが安心です。
Q. 死後事務委任契約の費用はどのくらいかかりますか?
契約書作成の報酬は依頼先によって異なりますが、行政書士への依頼で数万円程度、公正証書にする場合は公証役場の手数料が別途かかります(死後事務委任契約の公正証書手数料は目的価額に応じて異なり、正本・謄本の交付手数料も加算されます。2025年10月1日からは公証人手数料令の改定により正本・謄本交付手数料が1枚300円となりました。詳細は最寄りの公証役場にご確認ください)。これに加えて、実際の死後事務執行時の報酬と実費が発生します。費用の詳細は「死後事務委任契約の費用相場|行政書士・弁護士・NPOの料金比較」をご覧ください。
Q. 死後事務委任契約を結んだ後に内容を変更できますか?
委任者が判断能力を有している限り、いつでも内容の変更や契約の解除が可能です。ただし、公正証書で作成している場合は、変更時にも公正証書の作成が必要になる場合があります。住所変更や契約先の変更など、定期的な見直しをおすすめします。
Q. ペットの世話も死後事務委任契約で頼めますか?
はい、ペットの引渡しや新しい飼い主への引継ぎに関する事務は、死後事務委任契約で委任できます。具体的には、ペットを引き取ってくれる人や施設への引渡し手続き、当面の飼育費用の支払いなどが対象です。ペットに「財産を残す」場合は、負担付遺贈やペット信託など別の仕組みが必要になります。
Q. 死後事務委任契約と任意後見契約は同時に結べますか?
はい、同時に結ぶことが可能であり、実務上も推奨されています。任意後見契約は「生前の判断能力低下後」の財産管理・身上監護を担い、死後事務委任契約は「死亡後」の事務処理を担います。両方を組み合わせることで、判断能力の低下から死後の手続きまで切れ目なく備えることができます。
まとめ
死後事務委任契約では、葬儀・火葬の手配、行政届出、各種契約の解約、デジタルデータの整理、費用精算、遺品整理に至るまで幅広い事務を委任できます。一方で、遺産の分配など財産の承継に関する事項は遺言書の領域です。安心して老後を過ごすためには、死後事務委任契約と遺言書の両方を準備し、必要に応じて任意後見契約も組み合わせて備えることが大切です。
死後の手続きを安心して託したい方へ
| サービス | 料金 |
|---|---|
| 死後事務委任(初期費用) | 29,800円(税込)一律 |
| 自筆証書遺言(ミニ) | 32,780円(税込) |
| 自筆証書遺言(フルサポート) | 54,780円(税込) |
| 公正証書遺言(ミニ) | 43,780円(税込) |
| 公正証書遺言(フルサポート) | 65,780円(税込) |
| 任意後見契約 | 43,780円(税込) |
行政書士法人Treeの死後事務委任契約は、精算型を採用しています。初期費用29,800円(税込)のみで契約でき、葬儀費用・遺品整理費用などの実費は死後に遺産から精算します。高額な預託金は不要です。
- ✔ 委任事項の洗い出しから丁寧にサポート
- ✔ 遺言書・任意後見契約とのセットプランにも対応
- ✔ 精算型で初期費用の負担を軽減
- ✔ 相談は何度でも無料
※ 本記事の内容は2026年4月時点の民法・戸籍法・墓地埋葬法等に基づく一般的な解説です。死後事務委任契約の具体的な内容は個別の事情によって異なります。契約書の作成にあたっては専門家にご相談ください。公的機関の最新情報はe-Gov法令検索(民法)でご確認いただけます。


