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威力業務妨害罪の告訴状の書き方|構成要件・証拠収集・記載例を解説

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威力業務妨害罪は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処される犯罪です(刑法第234条)。店舗への執拗な嫌がらせ電話、大声での営業妨害、SNSでの脅迫的な投稿など、「威力」を用いて他人の業務を妨害する行為が該当します。なお、大量の架空注文や虚偽予約は、行為態様によっては偽計業務妨害罪に当たることもあります。この記事では、威力業務妨害罪の構成要件、偽計業務妨害罪との違い、告訴状の記載例、証拠の集め方を解説します。

「営業妨害の被害を受けているが、威力業務妨害に当たるのかわからない」「刑事告訴できるのか知りたい」——そのようなお悩みは行政書士法人Treeにご相談ください。告訴状作成の専門家が、構成要件の整理から受理されやすい告訴状の作成までサポートいたします。相談は何度でも無料・全国対応です。

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威力業務妨害罪とは?構成要件と法定刑

威力業務妨害罪(刑法第234条)は、「威力を用いて人の業務を妨害した」場合に成立する犯罪です。構成要件は次の3つに分解できます。

構成要件 内容
①威力を用いること 人の意思を制圧するに足りる勢力を示すこと
②他人の業務 職業その他社会生活上の地位に基づき反復継続して行う事務・事業
③妨害すること 業務の遂行を困難にすること(実害の発生は不要。妨害のおそれで足りる)

「威力」とは何を指すのか?

判例上、「威力」とは人の意思を制圧するに足りる勢力をいいます(最高裁判決昭和28年1月30日)。物理的な暴力に限らず、怒号・脅迫的言動・多人数での圧力・器物損壊など、相手方の自由な意思決定や業務遂行を困難にする一切の勢力が含まれます。

具体的には次のような行為が「威力」に当たるとされています。

  • 店舗や事務所で大声を出す、怒鳴り続ける
  • 執拗な嫌がらせ電話・FAXを送り続ける
  • 店舗に物を投げ込む、商品を破壊する
  • SNS上で「店を潰す」等の脅迫的投稿をする
  • 威圧的な態様で大量注文や予約妨害を行う
  • 多人数で店舗前に押しかけて営業を妨げる
  • 従業員に対して威圧的な態度をとり業務を中断させる

「業務」の範囲はどこまで?

刑法上の「業務」は、営利活動に限定されません。職業その他社会生活上の地位に基づき反復継続して行う事務・事業を広く含みます。具体的には、企業の営業活動、飲食店の営業、NPOの事業活動、学校の授業運営、病院の診療業務などが該当します。

ただし、公務員が強制力を行使する権力的公務(逮捕・捜索など)は「業務」に含まれないとする判例があります。一方、選挙長の立候補届出受理事務のような非権力的公務は「業務」に該当するとされています(最決平成12年2月17日)。

法定刑と2025年刑法改正

威力業務妨害罪の法定刑は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されました。改正前の条文では「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」でしたが、現在は「拘禁刑」と表記されます。

威力業務妨害罪と偽計業務妨害罪の違い

業務妨害罪には「威力」によるもの(刑法第234条)と「偽計」によるもの(刑法第233条後段)の2つがあります。法定刑は同じですが、妨害の手段が異なります。

比較項目 威力業務妨害罪(第234条) 偽計業務妨害罪(第233条後段)
妨害手段 威力(人の意思を制圧する勢力) 偽計(人を欺き、又は人の錯誤・不知を利用する詐術的手段)
具体例 大声での妨害、脅迫、物の破壊、大量架空注文 嘘の通報、虚偽の噂を流す、食品への異物混入の虚偽情報
法定刑 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
公訴時効 3年 3年
犯行の外形 公然と行われることが多い 密かに・間接的に行われることが多い

両者の区別の基本は、相手方の自由意思を圧迫する勢力によるのが「威力」、相手方の不知や錯誤を利用するのが「偽計」という点にあります。公然性・隠密性は実務上の目安にはなりますが、それだけで機械的に区別できるわけではありません。たとえば、飲食店への大量の架空注文は、直接的な威圧を伴う場合は威力、匿名で行い店側が架空注文だと気づけない場合は偽計に該当する可能性があります。

告訴状の書き方と基本構成

威力業務妨害罪の告訴状には、次の項目を漏れなく記載します。

  1. 表題:「告訴状」
  2. 宛先:○○警察署長 殿(被害地を管轄する警察署)
  3. 告訴人の住所・氏名・連絡先(法人の場合は法人名+代表者名)
  4. 被告訴人の住所・氏名(不明な場合は「氏名不詳」でも可)
  5. 告訴の趣旨:適用条文と処罰意思を明記
  6. 告訴事実:5W1Hを具体的に記載
  7. 告訴に至る経緯:被害の背景事情と経過
  8. 証拠方法:添付する証拠の一覧
  9. 添付資料目録

告訴状の基本的な構成や書式の詳細は「告訴状の書き方ガイド|構成・書式・提出方法を解説」で解説しています。

威力業務妨害罪が成立しないケースとは?

以下のような行為は、状況によっては威力業務妨害罪が成立しない(または立証が困難な)ケースとして知られています。

  • 一時的・軽微なクレームや苦情:単発の口頭クレームや、社会通念上許容される範囲の苦情申し入れは「威力」に当たらない場合があります
  • 正当な権利行使に基づく抗議:法的根拠のある権利行使(欠陥商品の返品要求など)は原則として違法性が阻却されます
  • 業務妨害の結果が生じていない:なお、妨害の「おそれ」があれば足り、現実の損害発生は不要です

どこまでが「許容される苦情」でどこからが「告訴できる威力」かは事案ごとに判断が異なります。判断に迷う場合は専門家へご相談ください。

告訴事実の記載で押さえるべきポイント

告訴事実は告訴状の中核であり、捜査機関が受理・不受理を判断する際に最も重視される部分です。威力業務妨害罪の場合、特に次の点を具体的に記載する必要があります。

  • 日時:「令和○年○月○日午後○時頃」のように特定する
  • 場所:「東京都○○区○○町○丁目○番○号 株式会社○○本社」等、住所を正確に記載
  • 威力の内容:「大声で怒鳴り散らした」「物を投げつけた」等、具体的な行為態様を描写する
  • 業務の特定:妨害された業務の内容を明確にする(「飲食店の営業」「通信販売業務」等)
  • 妨害の結果:「店舗を一時閉店せざるを得なくなった」「受注処理が停止した」等の被害状況

威力業務妨害罪の告訴状記載例

以下は、飲食店に対する威力業務妨害を想定した告訴事実の記載例です。実際の事案に応じて日時・場所・行為態様を書き換えてください。

告 訴 状

○○県○○警察署長 殿

告訴人
住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
氏名 ○○ ○○(株式会社○○ 代表取締役)
電話 ○○-○○○○-○○○○

被告訴人
住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
氏名 ○○ ○○

第1 告訴の趣旨

被告訴人の下記行為は、刑法第234条(威力業務妨害罪)に該当すると思料するので、捜査の上、厳重に処罰されたく告訴する。

第2 告訴事実

被告訴人は、令和○年○月○日午後○時頃から同日午後○時頃までの間、○○県○○市○○町○丁目○番○号所在の告訴人が経営する飲食店「○○」店内において、大声で「この店はまずい」「二度と来るか」等と繰り返し怒鳴り、テーブル上の食器を床に叩きつけて破損させるなどの威力を用いて、告訴人の飲食店営業を妨害したものである。

被告訴人の上記行為により、他の来店客○名が退店し、告訴人は同日午後○時から閉店時間まで営業を中断せざるを得なくなった。

第3 告訴に至る経緯

(被害に至る経緯・被告訴人との関係等を時系列で記載する)

第4 証拠方法

  1. 店舗内防犯カメラ映像(DVD-R 1枚)
  2. 被害状況の写真(破損した食器等)○枚
  3. 来店客○名の証言メモ
  4. 被害による売上減少を示す帳簿の写し

第5 添付資料目録

(上記証拠方法のとおり)

令和○年○月○日

告訴人 ○○ ○○  印

上記はあくまで一例です。SNSでの脅迫的投稿による業務妨害、電話による執拗な嫌がらせなど、行為態様に応じて告訴事実の記載内容は変わります。告訴状が不受理になる原因については「告訴状が受理されない5つの理由と対策」で詳しく解説しています。

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威力業務妨害罪の証拠はどう集める?

告訴状の受理率を高めるためには、威力行為と業務妨害の事実を裏付ける証拠を可能な限り準備することが重要です。

証拠の種類 具体的な内容 保全のポイント
防犯カメラ映像 店舗・事務所の防犯カメラに記録された威力行為の映像 上書き消去される前にDVD-R等に保存。日時が映り込む設定にする
通話録音 嫌がらせ電話の通話録音データ 通話録音アプリや自動録音機能で保存。着信日時のスクリーンショットも併せて保管
SNS・メールのスクリーンショット 脅迫的な投稿やメッセージの画面キャプチャ 投稿者のアカウント名・投稿日時・URLが確認できる状態で保存。削除に備え早期に取得
目撃者の証言 従業員・来店客など現場に居合わせた人の供述 記憶が新鮮なうちに日時・場所・行為内容を書面にまとめる
被害の記録 破損した物品の写真、営業中断の記録、売上帳簿 被害発生直後に写真撮影。修理費の見積書・請求書も保管
被害届・相談記録 警察への相談記録や受理番号 告訴前に警察へ相談した場合、相談日時と対応者名を記録

証拠収集の詳しい方法は「告訴状に必要な証拠の集め方|種類別のポイントと注意点」をご覧ください。

告訴状作成でよくある不備と失敗

告訴事実が抽象的すぎる

「被告訴人は威力を用いて業務を妨害した」という法律の条文をなぞっただけの記載では、捜査機関が事件の内容を把握できず、受理されにくくなります。「いつ・どこで・どのような行為を行い・どの業務が・どのように妨害されたか」を事実に基づき具体的に記載することが不可欠です。

威力と偽計の区別が不明確

被害態様によっては威力と偽計のどちらに該当するかが曖昧な場合があります。告訴状には適用条文を明記する必要があるため、行為態様を正確に分析して適切な罪名を選択しなければなりません。判断に迷う場合は、両罪の適用可能性を検討したうえで告訴状を作成することが望ましいとされています。

証拠が不十分なまま提出している

告訴状の内容を裏付ける証拠が乏しいと、捜査機関が立件困難と判断して受理を見送る場合があります。防犯カメラ映像・録音データ・スクリーンショット等の客観的な証拠をできる限り多く添付することが、受理率の向上につながります。

公訴時効(3年)を過ぎてしまっている

威力業務妨害罪の公訴時効は3年です(刑事訴訟法第250条第2項第6号)。被害から3年を過ぎると検察官が起訴できなくなるため、告訴状を提出しても実質的に処罰を求めることができません。被害を受けたら速やかに告訴の準備を進める必要があります。

よくある質問

Q. 威力業務妨害罪は親告罪?告訴がなくても処罰される?

威力業務妨害罪は親告罪ではありません。被害者の告訴がなくても、捜査機関が認知すれば捜査・起訴が可能です。ただし、実務上は被害者からの告訴・被害届が捜査の端緒になることがほとんどです。

Q. 電話やメールでの嫌がらせも威力業務妨害になる?

脅迫的な内容を含む電話やメールを執拗に送り続けて業務を妨害した場合、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。一方、無言電話を繰り返すような行為は偽計業務妨害罪に該当する場合もあり、行為態様によって適用される罪名が異なります。

Q. 口コミサイトへの悪質な投稿は威力業務妨害罪になる?

口コミサイトへの投稿内容が脅迫的・威圧的であり、それによって業務が妨害された場合は威力業務妨害罪が成立する可能性があります。虚偽の事実を流布して信用や業務を害した場合は、偽計業務妨害罪や信用毀損罪(刑法第233条前段)が問題となることもあります。

Q. 威力業務妨害罪の公訴時効は何年?

公訴時効は3年です。法定刑が「長期5年未満の拘禁刑」に該当する犯罪であるため、刑事訴訟法第250条第2項第6号により公訴時効は3年と定められています。起算点は犯罪行為が終了した時点です。

Q. 告訴状の提出先は警察署と検察庁のどちら?

告訴状は警察署・検察庁のいずれにも提出できます(刑事訴訟法第241条)。実務上は、まず被害地を管轄する警察署に提出するのが一般的です。告訴状の提出から捜査開始までの流れについては「告訴状の提出から捜査開始までの流れ」で詳しく解説しています。

なお、威力業務妨害行為は不法行為(民法709条)として民事上の損害賠償請求の対象にもなります。営業中断による売上減少・信用毀損による逸失利益・対応にかかった人件費等は損害として認められる余地があり、刑事告訴と民事請求は並行して行うことが可能です。民事請求の代理は弁護士の業務範囲となるため、刑事告訴と並行して民事請求も検討する場合は弁護士への相談を併せて行うのが実務的です。

まとめ

  • 威力業務妨害罪は威力を用いて業務を妨害した場合に成立(刑法第234条)
  • 法定刑は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金、公訴時効は3年
  • 偽計業務妨害罪との違いは妨害手段(公然の威圧 vs 密かな欺罔)
  • 告訴状には5W1Hを具体的に記載し、客観的な証拠を添付する
  • 防犯カメラ映像・録音データ・SNSスクリーンショットは早期に保全する

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※ 本記事の内容は2026年4月時点の刑法・刑事訴訟法等の法令に基づく解説です。告訴・告発の受理判断は捜査機関の裁量による部分があります。具体的な事案は弁護士にもご相談ください。刑法の条文はe-Gov法令検索(刑法)で確認できます。

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