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最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和6年1月〜12月)」によると、2024年12月末時点の成年後見制度の利用者数は約25万3,941人にのぼり、前年比で約1.8%増加しています。制度の利用にあたって多くの方が気になるのが「後見人への報酬はいくらかかるのか」という費用面の問題です。この記事では、法定後見・任意後見それぞれの報酬相場と、後見開始の申立てに必要な費用を具体的に解説します。
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目次
成年後見人の報酬の仕組み
成年後見人の報酬は、「法定後見」と「任意後見」で決まり方が大きく異なります。それぞれの仕組みを正確に理解することが、制度を安心して利用するための第一歩です。
法定後見人の報酬は家庭裁判所が決定
法定後見(後見・保佐・補助)における後見人の報酬は、民法第862条に基づき、家庭裁判所が審判によって決定します。後見人が自分で報酬額を決めることはできません。
報酬額は、後見人が管理する被後見人の財産の額や、実際に行った事務の内容を裁判所が総合的に考慮して算定します。報酬は被後見人の財産から支払われるため、後見人が自己負担する必要はありません。
報酬を受け取るには、後見人自身が家庭裁判所に「報酬付与の申立て」を行う必要があります。申立てをしなければ報酬は発生しないため、特に親族が後見人となる場合は無報酬のケースも少なくありません。
任意後見人の報酬は契約で自由に定められる
任意後見の場合、後見人の報酬は任意後見契約の中であらかじめ本人と後見人候補者が合意して定めます。法定後見とは異なり、裁判所の関与なく自由に報酬額を設定できます。
親族が任意後見人となる場合は無報酬とすることも多く、行政書士・弁護士などの専門家に依頼する場合は月額報酬を設定するのが一般的です。なお、任意後見が開始された後に選任される任意後見監督人の報酬は、家庭裁判所が決定します。
法定後見人の報酬相場
法定後見人の報酬額は法律で一律に定められているわけではなく、各家庭裁判所の裁量に委ねられています。ここでは、東京家庭裁判所が公表している「成年後見人等の報酬額のめやす」をもとに、具体的な報酬相場を解説します。なお、2025年4月以降、最高裁判所が全国統一の報酬付与申立書式を導入し、身上保護・意思決定支援に関する事情も報酬算定に反映されるよう改訂が行われました。最新の運用基準については管轄の家庭裁判所にご確認ください。
| 管理財産額 | 基本報酬(月額) |
|---|---|
| 1,000万円以下 | 月額2万円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 月額3〜4万円 |
| 5,000万円超 | 月額5〜6万円 |
※ 上記はあくまで東京家庭裁判所の運用基準であり、他の家庭裁判所では異なる場合があります。実際の報酬額は個別の事案ごとに裁判所が決定します。
基本報酬
基本報酬は、通常の後見事務(財産管理・身上監護)を行った場合に付与される報酬です。後見人が管理する被後見人の流動資産の合計額(預貯金・有価証券等)によって月額の目安が変わります。
たとえば、被後見人の預貯金が800万円の場合は月額2万円、年額にすると約24万円が報酬の目安となります。管理財産が3,000万円の場合は月額3〜4万円で、年額は約36〜48万円程度です。
なお、成年後見制度には後見・保佐・補助の3類型がありますが、保佐人や補助人の報酬も同様の基準で算定されます。
付加報酬(特別な事務)
後見人が通常の財産管理に加えて特別な事務を行った場合、基本報酬とは別に付加報酬が認められることがあります。東京家庭裁判所の基準では、身上監護等に特別困難な事情があった場合、基本報酬額の50%の範囲内で付加報酬が加算されます。
付加報酬が認められる主なケースは以下のとおりです。
- 被後見人の不動産の売却手続きを行った場合
- 遺産分割協議に参加した場合
- 訴訟や調停の対応を行った場合
- 被後見人の身上監護に特別な困難がある場合
付加報酬の額は事務の内容や難易度によって異なりますが、不動産売却や遺産分割のように被後見人の利益に直結する事務では、回収額や売却額に応じた報酬が認められるケースもあります。
報酬付与の申立て方法
法定後見人が報酬を受け取るためには、管轄の家庭裁判所に対して「報酬付与の申立て」を行います。申立ての流れは次のとおりです。
- 後見事務の報告書を作成する(対象期間中の事務内容・財産の変動を記載)
- 報酬付与申立書と添付書類(財産目録・収支報告書等)を家庭裁判所に提出する
- 裁判所が事務内容・管理財産を考慮して報酬額を審判で決定する
- 審判が確定した後、被後見人の財産から報酬を受領する
申立ての時期は通常、年1回(後見事務の定期報告に合わせて)です。報酬付与の申立てには収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が必要です。
任意後見人の報酬相場
任意後見における報酬は、法定後見とは異なり当事者間の契約で自由に取り決めることができます。依頼先によって報酬額は大きく変わります。
| 後見人の種類 | 月額報酬の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 親族(配偶者・子など) | 0円〜3万円程度 | 無報酬のケースが多い |
| 行政書士・司法書士 | 2万円〜5万円程度 | 管理財産額・業務量により変動 |
| 弁護士 | 3万〜5万円程度 | 訴訟対応が必要な場合は別途費用 |
| 社会福祉士・NPO法人 | 1万〜3万円程度 | 身上監護中心の場合 |
任意後見人の報酬は、管理する財産の額だけでなく、委任する事務の範囲(財産管理のみか、身上監護も含むか)によっても変動します。契約締結の段階で報酬の根拠と支払い方法を明確に定めておくことが重要です。任意後見人を誰に頼むかを検討する際は、報酬だけでなく対応できる業務範囲も含めて比較しましょう。
任意後見監督人の報酬
任意後見が開始されると、家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。任意後見監督人の報酬は、法定後見人の報酬と同様に家庭裁判所が決定します。
| 管理財産額 | 任意後見監督人の報酬(月額目安) |
|---|---|
| 5,000万円以下 | 月額1万〜2万円 |
| 5,000万円超 | 月額2万5,000円〜3万円 |
任意後見監督人の報酬も被後見人の財産から支払われます。任意後見人の報酬と合算すると月額の負担が大きくなるため、任意後見契約を検討する際は監督人の報酬も含めた費用計画を立てておきましょう。
任意後見契約の作成をサポートします
行政書士法人Treeでは、お客様の状況に合わせた任意後見契約書の作成をお手伝いします。法定後見に進むべきか、任意後見契約で備えるべきか迷っている段階からご相談いただけます。
- ✔ 報酬条項を含む契約書の原案作成
- ✔ 公証役場での公正証書作成手続きをサポート
- ✔ 相談は何度でも無料・全国対応
後見開始の申立て費用
成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てる必要があります。申立てにかかる費用の内訳は以下のとおりです。
| 費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 申立手数料 | 800円 | 収入印紙で納付 |
| 登記手数料 | 2,600円 | 収入印紙で納付 |
| 連絡用郵便切手 | 3,000〜5,000円程度 | 家庭裁判所により異なる |
| 鑑定費用 | 5〜10万円程度 | 医師による鑑定が必要な場合のみ |
| 診断書作成費用 | 数千円〜1万円程度 | 主治医に依頼 |
| 戸籍謄本・住民票・登記されていないことの証明書等 | 数百円〜数千円 | 市区町村窓口・法務局等で取得 |
鑑定が不要なケースでは、申立て費用の合計は1〜2万円程度に収まります。鑑定が必要となる場合は追加で5〜10万円程度の負担が生じますが、最高裁判所の統計では、鑑定が実施されるケースは近年5%前後です。
なお、弁護士や司法書士に申立ての代理を依頼する場合は、別途10〜30万円程度の専門家報酬がかかります。
費用を抑える方法
成年後見制度の利用にかかる費用の負担が難しい場合、公的な助成制度を利用できる可能性があります。
成年後見制度利用支援事業(市区町村の助成)
「成年後見制度利用支援事業」は、厚生労働省の施策に基づき市区町村が実施する助成制度です。経済的な理由で成年後見制度の利用が困難な方を対象に、以下の費用の全部または一部を助成します。
- 後見開始の申立てに要する費用(申立手数料・鑑定費用等)
- 後見人等への報酬
この事業は高齢者向け・障害者向けの2種類があり、高齢者向けについては全国のほぼすべての市区町村(厚生労働省の調査では98%以上)で実施されています。障害者向けは実施率がやや低い自治体もあるため、お住まいの市区町村でご確認ください。助成の対象者・上限額は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の福祉担当窓口に確認してください。
法テラスの利用
法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用すると、収入や資産が一定基準以下の場合に、弁護士・司法書士への申立て代理費用の立替えを受けられます。
法テラスの利用条件は以下の3点です。
- 収入・資産が法テラスの定める基準以下であること
- 勝訴の見込みがないとは言えないこと(成年後見申立ては原則該当)
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
立替えを受けた費用は原則として分割で返済しますが、生活保護を受給している場合でも、一定の要件を満たせば返済(償還)が免除されることがあります。まずは法テラスのサポートダイヤル(0570-078374)に相談してみてください。
成年後見人の報酬は誰が払う?
法定後見人の報酬は被後見人(本人)の財産から支払われます。任意後見人の報酬も、任意後見契約で定めた方法に従って本人の財産から支払うのが一般的です。
後見人の報酬が払えない場合は?
被後見人の財産が少なく報酬の支払いが難しい場合は、市区町村の成年後見制度利用支援事業による助成を受けられる可能性があります。自治体ごとに対象者や上限額が異なるため、窓口確認が必要です。
費用シミュレーション例
任意後見制度を利用する場合のトータルコストの目安を示します(行政書士が任意後見人の場合)。
- 任意後見人の報酬: 月額3万円
- 任意後見監督人の報酬: 月額1〜2万円(家庭裁判所が決定)
- 月額合計: 約4〜5万円(年間48〜60万円)
親族が無報酬で任意後見人を務める場合でも、監督人の報酬(月額1〜2万円程度)は発生します。制度の利用を検討する際は、長期にわたる費用負担を見据えた計画が重要です。
よくある質問
Q. 後見人は途中でやめることができますか?
法定後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます(民法第844条)。正当な事由の例としては、病気・転居・被後見人との関係悪化などが挙げられます。ただし、後見人が辞任する場合は原則として後任の後見人候補者を家庭裁判所に提案する必要があります。後見人の地位はいつでも簡単に辞められるわけではないため、就任前に十分に検討することが重要です。
Q. 成年後見人の報酬は誰が払うのですか?
法定後見人の報酬は被後見人(本人)の財産から支払われます。後見人が家庭裁判所に報酬付与の申立てを行い、裁判所が審判で報酬額を決定した後、被後見人の口座から後見人の口座へ振り込む形で受領します。任意後見人の報酬も、任意後見契約に定められた方法で本人の財産から支払われるのが一般的です。
Q. 親族が後見人になった場合も報酬をもらえますか?
はい、親族が法定後見人に選任された場合でも、家庭裁判所に報酬付与の申立てを行えば報酬を受け取ることができます。ただし、親族後見人の場合は報酬を請求しないケースも多く、実際に申立てを行うかどうかは後見人本人の判断に委ねられています。
Q. 後見人の報酬が払えない場合はどうすればよいですか?
被後見人の財産が少なく報酬の支払いが困難な場合は、お住まいの市区町村が実施する「成年後見制度利用支援事業」による助成を受けられる可能性があります。この制度では、後見人への報酬の全部または一部を自治体が助成します。まずはお住まいの市区町村の福祉担当窓口に相談してください。
Q. 法定後見人と任意後見人の報酬に違いはありますか?
法定後見人の報酬は家庭裁判所が管理財産額や事務内容を考慮して審判で決定するのに対し、任意後見人の報酬は任意後見契約で当事者が自由に定めることができます。法定後見人の報酬は東京家庭裁判所の運用基準で月額2〜6万円が目安とされていますが、任意後見人は契約内容次第で無報酬から月額5万円以上まで幅があります。
Q. 後見人の報酬に税金はかかりますか?
後見人が受け取る報酬には所得税が課税される可能性があります。専門家(行政書士・弁護士・司法書士等)が受け取る報酬は事業所得となることが多いですが、親族が後見人として報酬を受け取る場合の税務上の取扱いは個別事情によって異なるため、必要に応じて税理士等に確認してください。なお、給与所得者が後見人報酬を雑所得として受け取る場合、年間の雑所得が20万円を超えるときは原則として確定申告が必要です。たとえば月額2万円(年額24万円)の報酬を受ける場合は、確定申告の対象となります。
まとめ
- 法定後見人の報酬は家庭裁判所が審判で決定(月額2〜6万円が目安)
- 任意後見人の報酬は契約で自由に定められる(専門家は月額2〜5万円程度)
- 後見開始の申立て費用は鑑定なしで1〜2万円程度
- 費用負担が難しい場合は市区町村の助成制度や法テラスを活用
- 将来に備えるなら任意後見契約で報酬を事前に取り決めておくと安心
任意後見契約はプロにお任せください
| サービス | 料金 |
|---|---|
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- ✔ 死後事務委任契約もあわせて対応可能
- ✔ 相談は何度でも無料・全国対応
※ 現在、成年後見制度の見直しに向けた検討が進んでいます。最新情報は厚生労働省・法務省のウェブサイトでご確認ください。
※ 本記事の内容は2026年4月時点の民法・家事事件手続法に基づく一般的な解説です。後見人の報酬額は家庭裁判所の裁量により個別に決定されます。具体的な手続きは弁護士・司法書士にもご相談ください。法定後見人の報酬目安は東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」を参照しています。民法の条文はe-Gov法令検索(民法)で確認できます。成年後見制度の詳細は裁判所 後見ポータルサイトをご覧ください。


