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任意後見人の辞任手続|任意後見契約に関する法律第8条・第9条・家裁の許可・後任候補の選定・任意後見契約解除との違い

約10分で読めます

任意後見契約に関する法律に基づく任意後見人は、就任後に病気・転居・本人との関係悪化等の事情で辞任を希望する場合、家庭裁判所の許可が必要です(任意後見契約に関する法律第9条)。本記事では、任意後見人の辞任手続、家庭裁判所の許可要件、後任候補の選定、任意後見契約解除(同法第9条)との違い、辞任後の引継ぎ、行政書士の業務範囲を整理します。

本記事の結論:

  • 任意後見人の辞任は家庭裁判所の許可が必要(任意後見契約に関する法律第9条)。「正当な事由」の存在が要件。
  • 辞任後は後任の任意後見人が必要。任意後見契約に後任指定がある場合は当該後任、ない場合は任意後見契約自体が終了する場合あり。
  • 任意後見契約の解除は、(1)任意後見監督人選任前は公証人の認証で可能(同法第9条第1項)、(2)選任後は家裁の許可が必要(同条第2項)。
  • 当事務所は任意後見契約書の原案作成(後任指定条項を含む)、辞任申立書の文案作成補助、事実関係整理書面の作成を担当します。

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任意後見人の辞任は「家裁の許可」と「後任の確保」がカギ

任意後見人として就任後に辞任を希望する場合、任意後見契約に関する法律第9条により家庭裁判所の許可が必要です。「正当な事由」(病気・転居・本人との関係悪化等)の存在と、辞任により本人の保護に支障が生じないこと(後任候補の確保)が許可の要件となります。任意後見契約に後任指定条項がある場合は当該後任に引き継ぎますが、後任指定がない場合は任意後見契約自体が終了し、法定後見への移行が必要となる場合があります。任意後見契約の解除(任意後見監督人選任前の公証人認証による解除)とは別の手続です。

根拠法令(2026年5月時点)

  • 任意後見契約に関する法律第2条(任意後見契約の定義)・第3条(任意後見契約の方式:公正証書必須)・第4条(任意後見監督人の選任)・第6条(任意後見人の義務)・第8条(任意後見監督人の解任)・第9条(任意後見契約の解除・任意後見人の辞任)
  • 民法第651条(委任の解除)・第654条(委任の終了後の処分)・第655条(委任の終了の対抗要件)
  • 民法第111条(任意代理権の消滅事由)
  • 民法第7条以下(成年後見・保佐・補助)
  • 家事事件手続法(任意後見人辞任申立て、任意後見監督人選任申立て)
  • 司法書士法第3条第1項第4号(裁判所提出書類の作成)
  • 弁護士法第3条(紛争代理)・第72条(非弁行為の禁止)
  • 行政書士法第1条の2第1項(権利義務・事実証明書類の作成)

1. 任意後見契約の概要

任意後見契約は、本人(委任者)が判断能力低下時に備えて、信頼する者(受任者=任意後見人候補)に財産管理・身上保護の代理権を付与する公正証書による契約です(任意後見契約に関する法律第3条)。本人の判断能力が低下したときに、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで、契約が発効し、任意後見人として活動を開始します(同法第4条)。

2. 任意後見人辞任の要件(任意後見契約に関する法律第9条)

2-1. 辞任の根拠条文

任意後見契約に関する法律第9条:「(任意後見契約の解除及び任意後見人の辞任) 任意後見監督人が選任された後においては、本人又は任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を解除することができる」

2-2. 「正当な事由」とは

家庭裁判所の許可における「正当な事由」の例:

  • 任意後見人の病気・高齢化により職務遂行困難
  • 任意後見人の遠方への転居により職務遂行困難
  • 任意後見人と本人または本人家族との関係悪化により職務遂行困難
  • 任意後見人の職業上の都合(多忙等)により職務遂行困難
  • 本人と任意後見人の利益相反の発生

2-3. 家庭裁判所の判断要素

  • 「正当な事由」の存在
  • 辞任により本人の保護に支障が生じないか(後任候補の有無)
  • 本人の利益を最優先する判断
  • 任意後見人の辞任後の引継ぎ計画

3. 辞任手続の流れ

  1. 辞任理由の整理(「正当な事由」に該当する事実の整理)
  2. 後任候補の選定(任意後見契約の後任指定条項の確認、または新たな後任候補の検討)
  3. 本人・本人家族・任意後見監督人との事前協議
  4. 家庭裁判所への辞任許可申立て(家庭裁判所提出書類の作成は司法書士業務)
  5. 家庭裁判所の審理(書面審査・必要に応じて審問)
  6. 許可審判
  7. 引継ぎ(後任への財産目録・支援記録・連絡先等の引継ぎ)
  8. 任意後見監督人への引継ぎ完了報告

4. 後任候補の選定

4-1. 任意後見契約の後任指定条項

任意後見契約書に後任指定条項(第1順位の任意後見人辞任時の第2順位の任意後見人、第3順位の任意後見人等)を予め定めておくことで、辞任時の後任選定がスムーズになります。後任指定条項がない場合、任意後見契約自体が終了し、法定後見(成年後見・保佐・補助)への移行が必要となる場合があります。

4-2. 後任候補の選定基準

  • 本人との信頼関係
  • 居住地(本人の生活圏との距離)
  • 職業(行政書士・弁護士・司法書士・税理士・社会福祉士等の専門家)
  • 事業者性(個人または法人)
  • 欠格事由非該当(未成年者・破産者・行方不明者・本人に対する訴訟係属中の者等)

4-3. 専門家の任意後見人

家族・親族の中に適任者がいない場合、行政書士・弁護士・司法書士・税理士・社会福祉士等の専門家を任意後見人として選任することも検討されます。専門家後見人の報酬は月額数万円〜が一般的です。

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5. 任意後見契約解除と辞任の違い

5-1. 任意後見契約解除(任意後見契約に関する法律第9条第1項)

任意後見監督人が選任される前(任意後見契約が発効する前)の段階では、本人・任意後見人のいずれからも、公証人の認証を受けた書面(解除通知書)で任意後見契約を解除できます。家庭裁判所の許可は不要です。

5-2. 任意後見契約解除(同条第2項)

任意後見監督人が選任された後(任意後見契約が発効した後)は、本人または任意後見人が「正当な事由」がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て任意後見契約を解除できます。これが本記事の「任意後見人の辞任」に該当します。

5-3. 解除と辞任の用語整理

  • 解除(任意後見監督人選任前):公証人の認証で可能、家裁許可不要
  • 解除・辞任(任意後見監督人選任後):家裁の許可必要、「正当な事由」の存在が要件

6. 辞任後の引継ぎ

6-1. 引継ぎ事項

  • 財産目録(預貯金・有価証券・不動産・債権債務)
  • 収支報告書
  • 支援記録(本人の状況・支援内容・関係者連絡先)
  • 本人・関係者の連絡先一覧
  • 医療・介護・福祉サービスの利用状況
  • 未決事項・継続事項

6-2. 引継ぎ書類の作成

引継ぎ書類は後任の任意後見人および任意後見監督人に対し、辞任前任者の責任で作成・提出します。事実関係整理書面の作成は行政書士業務範囲で対応可能です。

6-3. 任意後見監督人への完了報告

引継ぎ完了後、任意後見監督人に報告し、辞任前任者の任務終了を確認します。

7. 任意後見人の任務終了事由

辞任以外の任務終了事由として、以下があります(任意後見契約に関する法律および民法)。

  • 任意後見人の死亡
  • 任意後見人の破産(民法第111条第1項第3号)
  • 任意後見人の後見開始の審判(民法第111条第1項第2号)
  • 任意後見人の解任(任意後見契約に関する法律第8条、不正の行為・著しい不行跡・任務に適しない事由がある場合)
  • 本人の死亡
  • 任意後見契約の合意解除

8. 業務範囲の整理

行政書士の業務範囲(行政書士法第1条の2第1項:権利義務・事実証明書類の作成)

  • 任意後見契約書の原案作成(後任指定条項を含む)
  • 公証役場との文案調整サポート
  • 事実関係整理書面の作成(辞任理由・正当な事由の整理)
  • 引継ぎ書類の作成補助
  • 本人・関係者連絡先一覧の整理
  • 収支報告書の作成補助

業務範囲外(連携先専門家)

  • 家庭裁判所への辞任許可申立書の作成(司法書士法第3条第1項第4号、司法書士業務)
  • 家庭裁判所での代理人活動・審問対応(弁護士法第3条、弁護士業務)
  • 任意後見人としての就任活動(弁護士・司法書士・行政書士・税理士・社会福祉士等が個別事案で対応)
  • 任意後見監督人の選任申立書の作成(家庭裁判所提出書類、司法書士業務)
  • 本人と任意後見人の紛争代理(弁護士業務)
  • 相続関連の登記(司法書士業務)
  • 税務(税理士法第2条、税理士業務)

FAQ|よくあるご質問

Q1. 任意後見人を辞任したいが、後任が見つからない場合は?
A. 後任候補が見つからない場合、家庭裁判所は辞任を許可しても任意後見契約自体が事実上機能しなくなるため、辞任許可と同時に法定後見(成年後見・保佐・補助)への切替を検討する必要があります。法定後見の開始申立て(家庭裁判所への申立て、書類作成は司法書士業務)を並行して行うのが一般的です。

Q2. 任意後見契約に後任指定条項を入れていない場合、辞任時はどうなりますか?
A. 後任指定条項がない場合、辞任により任意後見契約自体が終了します。本人の判断能力が低下している場合は、法定後見への移行が必要となり、家庭裁判所への成年後見開始申立てを行います。任意後見契約の段階で後任指定条項を整備しておくことが、将来の辞任時の混乱回避に重要です。

Q3. 任意後見監督人選任前の任意後見契約解除は簡単ですか?
A. はい、比較的簡単です。本人または任意後見人のいずれからも、公証人の認証を受けた書面(解除通知書)で任意後見契約を解除できます(任意後見契約に関する法律第9条第1項)。家庭裁判所の許可は不要です。ただし、相手方への通知が必要で、双方の合意による解除がスムーズです。

Q4. 「正当な事由」が認められないとどうなりますか?
A. 家庭裁判所が「正当な事由」がないと判断した場合、辞任許可は下りず、任意後見人として職務を継続する必要があります。「正当な事由」の判断は個別具体的なため、申立て前に医師の診断書・転居の証明等で正当事由を客観的に立証する準備が重要です。

Q5. 辞任後、任意後見監督人としての地位は残りますか?
A. 任意後見監督人は別の者が家庭裁判所により選任されている独立の地位です。任意後見人の辞任により任意後見契約自体が終了する場合は任意後見監督人も任務終了となりますが、後任の任意後見人が選任されて任意後見契約が継続する場合は、任意後見監督人は引き続き監督業務を行います。

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まとめ

任意後見人の辞任は、任意後見契約に関する法律第9条第2項により、家庭裁判所の許可が必要です。「正当な事由」(病気・転居・本人との関係悪化・職業上の都合・利益相反等)の存在が要件で、家庭裁判所は本人の保護に支障が生じないか(後任候補の有無)を含めて判断します。

辞任後は後任の任意後見人が必要となるため、任意後見契約書に後任指定条項(第1順位・第2順位・第3順位の任意後見人指定)を予め定めておくことが重要です。後任指定条項がない場合、辞任により任意後見契約自体が終了し、法定後見(成年後見・保佐・補助)への移行が必要となる場合があります。

任意後見契約の解除は、任意後見監督人選任前(契約発効前)は公証人の認証で可能で家裁許可不要、選任後(契約発効後)は家裁の許可が必要で「正当な事由」が要件と区別されます。これが「任意後見人の辞任」に該当します。

辞任手続は、(1)辞任理由の整理、(2)後任候補の選定、(3)本人・関係者との事前協議、(4)家庭裁判所への辞任許可申立て、(5)許可審判、(6)引継ぎ、(7)任意後見監督人への完了報告の流れで進みます。引継ぎ事項は財産目録・収支報告書・支援記録・関係者連絡先・医療介護福祉サービス利用状況等です。

当事務所では任意後見契約書の原案作成(後任指定条項を含む)、公証役場との文案調整、事実関係整理書面の作成、引継ぎ書類の作成補助、収支報告書の作成補助を行政書士業務範囲(行政書士法第1条の2第1項)で対応します。家庭裁判所への辞任許可申立書の作成は司法書士業務(司法書士法第3条第1項第4号)、家裁での代理人活動は弁護士業務(弁護士法第3条)、紛争代理は弁護士業務、登記は司法書士業務、税務は税理士業務です。任意後見人の辞任をご検討中の方は、後任候補の選定と引継ぎ準備を含めて、ぜひ一度ご相談ください。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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