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賃上げ促進税制の上乗せ要件|くるみん・えるぼし認定(令和8年4月以後)と教育訓練費廃止

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賃上げ促進税制の「上乗せ要件」を活用すると、給与増加分に対する税額控除率をさらに引き上げられます。もっとも、令和8年度(2026年度)税制改正により、令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは、教育訓練費の増加による上乗せ措置が中小企業向け・中堅企業向けともに廃止されました。一方で、くるみん認定・えるぼし認定など子育て支援・女性活躍に関する上乗せ(控除率5%加算)は引き続き利用できます。本記事では、現行の上乗せ要件の全体像と、認定取得に向けた実務のポイントを整理します。くるみん・えるぼし認定に関する申請・届出は社会保険労務士等の専門家と、税額計算・申告は税理士と連携して進める必要があります。

賃上げ促進税制と「上乗せ要件」の基本

賃上げ促進税制は、従業員の給与等を一定割合以上引き上げた企業が、その増加額の一部を法人税額(個人事業主は所得税額)から控除できる制度です。控除率は「基本の賃上げ要件」と、それに積み増しする「上乗せ要件」で構成されます。

企業区分は次のとおりで、区分によって要件や控除率が異なります。

  • 中小企業向け:資本金1億円以下の法人など(常時使用従業員1,000人以下の個人事業主を含む)
  • 中堅企業向け:資本金1億円超かつ常時使用従業員2,000人以下の法人など
  • 全法人(大企業)向け:上記以外の大規模法人。なおこの大企業向け措置は令和8年3月31日をもって廃止されています。

令和8年度改正で何が変わったか(教育訓練費の上乗せ廃止)

従来は、教育訓練費を一定割合以上増やすことで控除率を上乗せできました(中小企業は10%、中堅企業は5%の加算)。しかし令和8年度税制改正により、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、中小企業向け・中堅企業向けともに教育訓練費の増加による上乗せ措置は廃止されています。

この結果、中小企業向けの最大控除率は、改正前の45%から35%へと縮小しました(基本30%+認定による上乗せ5%)。教育訓練に取り組むこと自体は人材育成として有意義ですが、「教育訓練費を増やせば税額控除が増える」という設計は現在は使えない点に注意が必要です。

現行で使える上乗せ要件①:くるみん認定(子育て支援)

くるみん認定は、次世代育成支援対策推進法に基づき、子育てサポートに積極的な企業として厚生労働大臣の認定を受けた企業に与えられるものです。認定には「トライくるみん」「くるみん」、より高い水準の「プラチナくるみん」があり、不妊治療と仕事の両立に取り組む企業向けの「プラス」認定もあります。ただし、賃上げ促進税制の上乗せ要件では、トライくるみん・トライくるみんプラス認定は対象外です。

賃上げ促進税制では、中小企業の場合、適用事業年度中にくるみん認定・くるみんプラス認定を取得した場合、または適用事業年度末までにプラチナくるみん認定・プラチナくるみんプラス認定を保有している場合に、税額控除率に5%が加算されます。中堅企業の場合はプラチナくるみん認定・プラチナくるみんプラス認定が要件となります。認定の種類によって取得時期の判定基準が異なるため、いつ認定を受けるかが実務上の重要ポイントです。

現行で使える上乗せ要件②:えるぼし認定(女性活躍)

えるぼし認定は、女性活躍推進法に基づき、女性の活躍推進に関する状況が優良な企業に与えられる認定です。評価項目の達成数に応じて1段階目から3段階目まであり、さらに上位の「プラチナえるぼし」認定があります。

賃上げ促進税制の上乗せでは、企業区分により必要な段階が異なります。

  • 中小企業:えるぼし認定(2段階目以上)またはプラチナえるぼし認定 → 5%加算
  • 中堅企業:えるぼし認定(3段階目)またはプラチナえるぼし認定 → 5%加算

くるみん系とえるぼし系の上乗せは、いずれか一方を満たせば5%が加算されます(両方を満たしても加算は5%です)。

【令和8年4月以後】区分別の最大控除率と上乗せ要件

現行(令和8年4月1日以後開始事業年度を前提)の主な要件を整理すると、おおむね次のとおりです。

区分 基本の賃上げ要件と控除率 認定による上乗せ 最大控除率の目安
中小企業 1.5%以上で15%/2.5%以上で30% くるみん/えるぼし(2段階目以上)等で+5% 35%
中堅企業 4%以上で10%/5%以上で15%/6%以上で25% プラチナ認定・えるぼし3段階目等で+5% 30%

いずれの区分でも、税額控除額は当期の調整前法人税額の20%が上限です。また、中堅企業向け措置は継続雇用者給与等の引上げ幅要件などの見直しを経たうえで令和9年3月31日をもって廃止され、中小企業向け措置は令和9年3月31日までに開始する事業年度が当面の適用対象です。最新の数値は必ず税理士または国税庁の公表資料でご確認ください。

中小企業向けの5年間繰越控除|赤字年度でも活用可能

中小企業向けには、令和6年度改正で導入された5年間の繰越控除があります。当期が赤字などで控除しきれなかった分(繰越税額控除限度超過額)を、翌期以降5年間にわたり繰り越して控除できる仕組みです。ただし、繰越控除を使う各事業年度においても、雇用者給与等支給額が前年を上回っている(賃上げを継続している)ことが要件とされています。賃上げの努力をした年度に課税所得が少なくても、将来の黒字化時に取り戻せる余地がある点は、中小企業にとって大きなメリットです。

認定取得から税制活用までの実務の流れ

上乗せを受けるには、まず認定を取得することが出発点になります。一般的な流れは次のとおりです。

  • 自社の状況把握(女性比率・育児休業取得状況・労働時間など評価項目の確認)
  • 一般事業主行動計画の策定・届出、社内体制の整備
  • くるみん/えるぼしの認定申請(厚生労働省・都道府県労働局への申請は、社会保険労務士等の専門家と連携して進める)
  • 認定取得後、賃上げ要件を満たす事業年度で税額控除を適用(税務処理は税理士が担当)

くるみん・えるぼし認定や一般事業主行動計画に関する申請・届出は、社会保険労務士等の専門家と連携して進める必要があります。賃上げ要件の判定や税額控除の計算・申告は税理士の業務分野です。当事務所では、必要に応じて関係専門家との連携窓口として、制度活用に向けたご相談をお受けします。

くるみん・えるぼし認定の取得支援や、賃上げ促進税制を見据えた社内体制づくりをお考えの事業者様は、行政書士法人Treeへ補助金・助成金サポートのページからお気軽にご相談ください。税務面は提携税理士と連携してご案内します。料金は事案により異なりますので個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。

まとめ

賃上げ促進税制の上乗せ要件は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から大きく変わりました。教育訓練費の上乗せは廃止され、くるみん・えるぼし認定による5%加算が現行の中心です。中小企業は基本30%+認定5%で最大35%、さらに5年間の繰越控除も活用できます。認定取得は計画的な準備が必要ですので、早めの体制づくりが有効です。認定申請は行政書士が、税務は提携税理士が担う形で連携してご支援します。

賃上げ促進税制の上乗せ要件に関するよくある質問

Q:教育訓練費を増やせば、まだ税額控除を上乗せできますか。

A:いいえ。教育訓練費の増加による上乗せ措置は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から廃止されています。現行で使える上乗せは、くるみん・えるぼしなどの認定による5%加算です。

Q:くるみんとえるぼしの両方を取得すれば、上乗せは10%になりますか。

A:いいえ。子育て支援(くるみん系)と女性活躍(えるぼし系)のいずれかを満たせば5%が加算され、両方を満たしても加算は5%です。

Q:認定はいつ取得していれば上乗せの対象になりますか。

A:認定の種類によって判定時点が異なります。中小企業向けでは、くるみん・くるみんプラス・えるぼし認定(2段階目以上)は適用事業年度中の取得、プラチナくるみん・プラチナくるみんプラス・プラチナえるぼし認定は適用事業年度末までの保有が要件とされています。取得時期が要件に直結するため、申請のスケジュール管理が重要です。具体的な税務上の判定は税理士にご確認ください。

Q:中小企業の上乗せには、えるぼしの何段階目が必要ですか。

A:中小企業はえるぼし認定の2段階目以上(またはプラチナえるぼし)が要件です。中堅企業はえるぼし3段階目またはプラチナ認定が必要となり、区分により基準が異なります。

Q:赤字の年でも賃上げをしておく意味はありますか。

A:あります。中小企業向けには5年間の繰越控除があり、当期に控除しきれなかった分を翌期以降に繰り越せます。ただし繰越控除を使う各年度でも賃上げの継続が要件となります。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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