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「公共工事の入札で『建退共の加入有無』を問われた」「建設業で働く従業員の退職金制度を整備したい」——建設業に従事する現場労働者向けに、業界横断で退職金を積み立てる建設業退職金共済制度(建退共)があります。公共工事では建退共への加入・証紙貼付が事実上求められることがあり、建設業許可を有する事業者にとって実務上重要な制度です。この記事では、建退共の仕組み・加入方法・証紙の貼付方法・入札への影響を解説します。
結論として、建退共は勤労者退職金共済機構が運営する建設業労働者向けの退職金制度で、事業主が共済証紙(1日当たり320円)を労働者の共済手帳に貼付することで退職金の原資を積み立てます。公共工事では発注者から建退共への加入促進が求められるケースが多く、経営事項審査(経審)でも加入の有無が評価項目となっています。
「建退共の加入手続きが分からない」「公共工事の入札に向けて制度を整備したい」とお悩みの建設業者の方は、行政書士法人Treeにご相談ください。建設業許可の維持管理から建退共対応まで、総合的にサポートします。相談は何度でも無料・全国対応です。
目次
建設業退職金共済制度(建退共)の概要
制度の目的
建退共は、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する建設業従事者のための退職金共済制度です。建設業は現場を転々とする労働者が多いため、個別事業主による退職金制度では十分な備えができないという業界特有の事情に対応するために設けられました。
労働者(被共済者)が建設業に従事する限り、どの事業主の下で働いても継続して退職金原資が積み立てられるため、業界横断で退職金制度を機能させることができます。
制度の仕組み
- 事業主が建退共に加入し、共済契約者となる
- 建設業で働く労働者を被共済者として申込み、共済手帳を交付する
- 事業主は労働者の労働日数分の共済証紙を購入し、手帳に貼付する(または電子申請方式により電子納付)
- 労働者が建設業を引退(退職)すると、共済手帳の証紙貼付分に応じた退職金を請求できる
共済証紙の金額
共済証紙は、2021年10月1日の改定以降、1日当たり320円(改定前は310円)です。250日分貼付すると年額80,000円となります。事業主は日数に応じた枚数を購入し、賃金を支払う都度(少なくとも月1回)、労働者の手帳に貼付・消印します。
【予定運用利回り】
建退共の予定運用利回りは、2021年10月1日の改定で従来の3.0%から1.3%に引き下げられました。厚生労働省は2025年1月に、現行1.3%から1.5%への引き上げを発表しており、2026年10月を目途に適用開始予定です。
【掛金納付の時間単位ルール】
- 8時間未満の労働でも、賃金が発生すれば1日分の掛金を納付
- 2〜3時間の短時間勤務でも、1日分の掛金が必要
- 8時間を超える労働では、8時間ごとに1日分の掛金を追加納付
最新の単価・利回りについては建退共の公式サイトでご確認ください。
建退共への加入方法
Step 1: 事業主(共済契約者)の申込
建退共の本部または支部(都道府県ごと)で「共済契約申込書」を入手し、以下の書類とともに提出します。
- 共済契約申込書
- 建設業許可証の写し
- 法人の登記事項証明書(法人の場合)
- 事業主印鑑
加入に際しての手数料はかかりませんが、共済証紙は別途購入します。
Step 2: 被共済者(労働者)の申込
事業主は、建設業で常用される労働者について「被共済者申込書」を提出し、共済手帳を交付します。手帳は労働者が管理し、現場・事業所変更時にも継続利用されます。
【国による初回50日分の掛金助成】
新たに加入した被共済者の初回の共済手帳(1冊目)については、国が掛金の50日分を助成します。事業主は250日分のうち200日分の証紙を貼付すれば手帳が満了となるため、初期負担が軽減されます。
【被共済者となれない者】
以下の者は建退共の被共済者になれません。
- 法人の代表者・役員(役員報酬を受けている場合)
- 事業主本人(個人事業主)※ただし一人親方は任意組合を通じて加入可能
- 本社等で事務のみに従事する事務専用社員(建設現場の作業に従事しない者)
Step 3: 共済証紙の購入・貼付
事業主は、金融機関(銀行・商工中金・労働金庫の本・支店、一部の信用金庫・信用組合)の窓口で共済証紙を購入します。購入時には建退共から交付された「共済契約者証」の提示と「掛金収納書」への記入・銀行確認印が必要です。
【共済証紙の色分け】
共済証紙は事業規模により2種類に分かれます(掛金額・利率は同じ)。
- 赤色証紙: 中小事業主(労働者300人以下、または資本金3億円以下)
- 青色証紙: 大手事業主(労働者300人超かつ資本金3億円超)
【掛金収納書の保管】
掛金収納書は、経営事項審査の際の「建設業退職金共済事業加入・履行証明書」の申請に必要となるため、大切に保管してください。
購入した証紙は被共済者の労働日数に応じて共済手帳に貼付し、貼付時に消印(事業主名の押印)を行います。
公共工事と建退共の関係
発注者からの建退共加入促進
国・地方自治体・公団等の公共工事発注者は、元請・下請業者に対して建退共への加入・証紙購入を促進しています。具体的には、以下のような運用が行われています。
- 契約時に建退共の加入履歴の提出を求める
- 契約金額に応じた証紙購入の目安額を発注者が算定し、購入を促す
- 工事完了後に証紙購入実績の提出を求める
経営事項審査(経審)での加点
建退共の加入・継続は、経営事項審査(経審)のW1(労働福祉点数、担い手の育成及び確保に関する取組の状況)の評価項目に含まれています。
【加点の効果】
- W1の素点で15点加点
- W評点計算(素点×10×190/200)を経て、総合評定値P点で約21点の加点効果
- W点は全業種に反映されるため、多業種許可の事業者には特に効果大
【加点には「加入履行証明書」が必要】
単に建退共に加入しているだけでは加点されません。経審申請時に「建設業退職金共済事業加入・履行証明書」を建退共支部で取得・提出する必要があります。この証明書を取得するには、以下の適正な履行が求められます。
- 労働者の就労日数に応じた証紙の貼付
- 決算期間内の手帳更新手続きの実施
- 共済証紙受払簿(様式41号)の整備・保管
経審の詳細は「経営事項審査(経審)とは?公共工事の入札に必要な手続き」をご参照ください。
税務上の取扱い
事業主側の税務メリット
事業主が負担する掛金(共済証紙代・退職金ポイント購入代金)は、全額損金算入または必要経費算入が可能です。
- 法人: 法人税法施行令第135条により全額損金に算入可能
- 個人事業主: 従業員のための掛金は全額必要経費に算入可能
この税務メリットは、建退共加入の大きな動機の1つです。
一人親方本人の掛金(注意点)
一方、一人親方が任意組合を通じて自分自身のために負担する掛金は、税務上は「個人的な積立」とみなされ、必要経費にも所得控除にも該当しません。この点は加入前に確認しておく必要があります。
同一人物の重複加入不可
建退共と中小企業退職金共済(中退共)は、同じ人物が同時に加入することはできません(勤労者退職金共済機構が運営する制度として重複加入不可)。現場労働者は建退共、事務員等は中退共というように、役割別に使い分けます。
退職金の請求
退職金の支給条件
被共済者が建設業の仕事から完全に引退した場合や、60歳以上で退職した場合、共済手帳の証紙貼付分に応じた退職金が支給されます。請求手続きは勤労者退職金共済機構に対して行います。
【支給要件:掛金納付月数12月以上】
退職金の支給には、共済手帳に貼り終わった共済証紙および電子申請による掛金納付日数の合計が12月以上(21日分を1ヶ月と換算)必要です。12月未満の場合は退職金は支給されません。
退職金額の計算
退職金額は、共済証紙の貼付日数や電子申請により掛金納付された日数を通算した掛金納付月数等に基づき、建退共の退職金表により算定されます。段階的な計算ルールは以下のとおりです。
| 掛金納付月数 | 退職金額の目安 |
|---|---|
| 12月未満 | 支給なし |
| 12月以上24月未満 | 掛金納付額の3〜5割程度 |
| 24月以上 | 満額(掛金320円×納付日数+予定運用利回りによる増額) |
※本人死亡による遺族請求の場合、12〜24月でも掛金相当額が支給されます。
退職金額の早見表(掛金日額320円・予定運用利回り1.3%の場合)
建退共の退職金額の目安は以下のとおりです(2021年10月1日以降の加入・途中制度改正なしの前提)。
| 納付年数 | 納付月数 | 退職金額(目安) |
|---|---|---|
| 1年 | 12月 | 約24,000円〜40,000円(3〜5割) |
| 3年 | 36月 | 約242,000円 |
| 5年 | 60月 | 約415,000円 |
| 10年 | 120月 | 約867,000円 |
| 20年 | 240月 | 約1,802,000円 |
| 30年 | 360月 | 約2,801,000円 |
| 40年 | 480月 | 約3,870,000円 |
※上記は目安です。正確な金額は建退共公式サイトの退職金額早見表でご確認ください。
支給までの期間
退職金請求書の提出後、通常1〜2か月程度で支給されます。
退職金受給時の税務メリット
建退共から支給される退職金は、税務上「退職所得」として扱われ、以下の優遇があります。
- 退職所得控除: 勤続年数に応じた控除額(20年以下は年40万円、20年超の部分は年70万円)
- 1/2課税: 控除後の残額の1/2のみが課税対象
- 分離課税: 他の所得と分けて計算されるため、給与等との合算による税率上昇がない
これらの優遇により、退職金受給時の税負担は大幅に軽減されます。請求時には「退職所得の受給に関する申告書」を提出してください。
建設業者向けの総合サポート
行政書士法人Treeでは、建設業許可から建退共対応まで、総合的にサポートしています。
【こんな方のご相談をお受けしています】
- 🏗 公共工事の入札に初めて参加する建設業者の方
- 📈 経審の点数アップを目指す建設業者の方
- 🆕 建退共加入手続きを代行してほしい方
- 📄 建退共加入履行証明書の取得サポートが必要な方
- 🔄 証紙貼付方式から電子申請方式への移行を検討中の方
【経審点数アップの「3点セット」とは】
経審のW評点で大幅加点を得るための3つの制度:
- 建退共(W1で+15点)
- 退職一時金制度または企業年金制度(W1で+15点)
- 法定外労働災害補償制度(W1で+15点)
この3制度を導入するだけでP点が約60点アップし、公共工事の格付けランクアップにつながります。
【行政書士法人Treeのサポート内容】
- ✔ 建設業許可の新規・更新・変更届
- ✔ 建退共加入手続き・加入履行証明書取得サポート
- ✔ 経審・入札資格審査の書類作成
- ✔ 社会保険・退職一時金・法定外労災の整備サポート
- ✔ 相談は何度でも無料・全国対応
電子申請方式(電子ポイント方式)の動向
電子申請方式の導入(2020年10月1日〜)
2020年10月1日に改正中小企業退職金共済法が施行され、建退共の掛金納付方式として、従来の「証紙貼付方式」に加えて「電子申請方式」が追加されました。事業主は両方式から選択できます(併用も可)。
電子ポイント方式の仕組み
電子申請方式は、以下の2つのツール・サイトで構成されます。
- 就労実績報告作成ツール(デスクトップ用アプリケーション): 建退共公式サイトから無償でダウンロードし、就労実績ファイルを作成
- 電子申請専用サイト(Webサイト): 作成した就労実績ファイルを提出し、退職金ポイント(電子掛金)を充当
事前にペイジーまたは口座振替で「退職金ポイント」を購入し、月に一度、被共済者の就労日数を電子申請専用サイトに登録することで、ポイントが掛金として納付されます。共済証紙の購入・貼付・消印が不要となり、業務効率が大幅に向上します。
CCUS(建設キャリアアップシステム)との連携
建設キャリアアップシステム(CCUS)と電子申請方式を連携させることで、CCUSに蓄積された技能者の就業履歴を就労実績報告作成ツールに自動取り込みできます。カードリーダーで記録された就業履歴がそのまま掛金納付に活用でき、手入力の手間が大幅に削減されます。
よくある質問
Q. 建退共と中小企業退職金共済(中退共)の違いは何ですか?
中退共は中小企業全般の従業員向け退職金制度で、建退共は建設業労働者に特化した制度です。建設業の現場労働者については、日雇い・臨時雇用の形態が多いため、事業主変更時も継続利用できる建退共が適しています。中退共は社員全員が同一事業主で長期雇用される形を前提とする点で違いがあります。
Q. 建退共の加入は義務ですか?
法令上の加入義務はありませんが、公共工事で事実上求められるほか、経審での加点項目となるため、多くの建設業者が加入しています。
Q. 現場事務所の事務員や設計担当者も建退共の対象ですか?
建退共の対象は、建設業の現場で働く労働者です。現場で働く大工・左官・とび・土工・電工・配管工・塗装工・運転工・現場事務員などは対象になり得ますが、事業主、役員報酬を受けている方、本社等で事務のみに従事する事務専用社員などは対象外とされています。対象外の従業員には、別途中退共等の退職金制度を整備することが検討されます。
Q. 共済証紙を貼り忘れた日があります。後から追加できますか?
原則として就労日数分の証紙を貼付するのがルールですが、事業主の事情で後追いで貼付することも実務上は可能です。ただし、労働者に証紙の貼付漏れがないか定期的に確認するのが重要です。
Q. 個人事業主(一人親方)は建退共に加入できますか?
一人親方本人も「任意組合」を通じて建退共に加入できます。任意組合は建設業の個人事業主が集まった組合で、建退共の支部と提携しています。加入の詳細は地域の任意組合にお問い合わせください。
まとめ
- 建退共は建設業労働者向けの業界横断退職金制度
- 事業主は共済証紙(1日320円)を金融機関で購入・貼付して掛金を拠出
- 公共工事で加入が事実上求められ、経審のW1評点で15点・P点約21点の加点
- 電子申請方式(電子ポイント方式)が2020年10月1日から導入。CCUS連携で業務効率化
- 本社等の事務専用社員などは対象外で、中退共等との組合せを検討する必要がある
- 掛金納付月数12月以上で退職金支給(12〜24月は3〜5割)
- 予定運用利回りは現行1.3%、2026年10月を目途に1.5%へ引き上げ予定
建設業の社会保険加入は「建設業の社会保険加入義務と未加入リスク」、経審は「経営事項審査(経審)とは?」、配置技術者は「建設業の配置技術者|主任技術者と監理技術者の違いと配置基準」をご参照ください。
建設業の各種手続きはお任せください
| サービス | 料金 |
|---|---|
| 建設業許可 新規(知事許可) | 100,000円(税込) |
| 建設業許可 更新(知事許可) | 50,000円(税込) |
| 変更届出 | 27,500円(税込) |
- ✔ 建設業許可取得から維持管理までワンストップ
- ✔ 経審・入札資格審査の書類作成
- ✔ 相談は何度でも無料・全国対応
※ 本記事の内容は2026年4月時点の中小企業退職金共済法・建退共運用に基づく一般的な解説であり、個別の加入・退職金請求の判断をお約束するものではありません。


