登録支援機関

育成就労制度の転籍ルール|本人意向による転籍の要件・1〜2年の就労期間制限・調整

更新: 約7分で読めます

2027年(令和9年)4月1日に施行が予定されている育成就労制度では、技能実習制度では原則認められていなかった「本人の意向による転籍」が、一定の要件のもとで新たに認められる見込みです。一方で、転籍が無制限に認められるわけではなく、就労期間や技能・日本語能力などの要件が設けられ、転籍の調整は公的な窓口を通じて行う仕組みが整えられる予定です。本記事では、出入国在留管理庁・厚生労働省が公表している情報をもとに、育成就労制度における転籍ルールの考え方を整理します。なお、本制度は施行前ですが、関係政省令等は公布され、基本方針・分野別運用方針も閣議決定済みです。ただし、運用要領・分野ごとの上乗せ基準告示等は更新が続いているため、本記事では今後変更され得る事項については「予定」「見込み」として記載します。

育成就労制度における2種類の転籍

育成就労制度の転籍には、大きく分けて2つの類型が設けられる予定です。1つは「やむを得ない事情による転籍」、もう1つは「本人の意向による転籍」です。

  • やむを得ない事情による転籍:暴力やパワーハラスメントなどの人権侵害を受けた場合等、やむを得ない事情がある場合に認められる転籍です。これは技能実習制度から引き続き認められるものです。
  • 本人の意向による転籍:一定の要件を満たす場合に、育成就労外国人本人の意向で受入れ機関(育成就労実施者)を変更できる、育成就労制度で新たに設けられる仕組みです。

これら2つは要件が大きく異なります。やむを得ない事情による転籍は本人を保護するための仕組みであるのに対し、本人意向による転籍は、一定の就労期間や能力要件を満たしたうえではじめて認められる点が特徴です。

本人意向による転籍に求められる主な要件

本人の意向による転籍については、出入国在留管理庁が公表している情報によると、次のような要件が設けられる予定です。

  • 同一の業務区分内であること:転籍は、原則として同一の業務区分内に限られる見込みです。異なる分野・業務区分への転籍は想定されていません。
  • 一定の就労期間を経過していること:同一の育成就労実施者のもとで、分野ごとに定められる転籍制限期間(1年以上2年以下の範囲)を超えて就労していることが要件とされる予定です。
  • 技能・日本語能力の要件を満たすこと:分野別運用方針で定める一定水準の技能および日本語の能力を修得していることが求められる見込みです。
  • 民間の職業紹介事業者を利用していないこと:転籍にあたって、民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないことが要件とされる予定です。
  • 転籍先が優良な育成就労実施者であること:受入れ先となる育成就労実施者が、一定の基準を満たす優良な機関であることが求められる見込みです。
  • 転籍者の割合が一定以内であること:転籍先における本人意向転籍者の総数が、転籍後の育成就労外国人総数の3分の1を超えないことが求められます。また、転籍先が指定区域外の受入れ機関で、指定区域内から本人意向転籍者を受け入れる場合には、原則として6分の1を超えないこと等の要件も設けられています。

これらの要件は、育成就労が「人材育成」を目的とした制度であることを踏まえ、一定の期間と能力の修得を前提に転籍を認める設計になっています。

就労期間の制限が分野ごとに1〜2年とされる理由

本人意向による転籍が認められるための就労期間(転籍制限期間)は、育成就労産業分野ごとに「1年以上2年以下」の範囲で分野別運用方針により定められる予定です。原則は1年とされる方向で検討が進んでいますが、技能の修得に時間がかかると判断される一部の分野については、2年とする案が示されています。

これは、受入れ機関が育成のために行った初期投資や、一定期間の人材育成を前提とした受入れ体制を保護する趣旨と、外国人本人のキャリア選択の自由とのバランスを図るための仕組みです。転籍制限期間は、分野別運用方針等により、当面、介護、建設、工業製品製造業、造船・舶用工業、自動車整備、飲食料品製造業、外食業、資源循環の8分野では2年、ビルクリーニング、リネンサプライ、宿泊、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、林業、木材産業の9分野では1年と整理されています。ただし、分野ごとの上乗せ基準や運用要領は更新される可能性があるため、最新の公表内容を確認する必要があります。

転籍の調整・支援を行う窓口

本人意向による転籍では、悪質な仲介事業者を排除しつつ円滑な転籍を実現するため、監理支援機関、外国人育成就労機構、ハローワーク等の制度上認められた機関・窓口を通じて、転籍の調整・支援を行う仕組みが予定されています。主な担い手として、次の機関が想定されています。

  • 監理支援機関:育成就労外国人と受入れ機関との間に立ち、関係機関との連絡調整等の役割を担うことが想定されています。
  • 外国人育成就労機構:育成就労制度を運営・支援するために設けられる機構で、転籍に関する支援も担うことが想定されています。
  • ハローワーク(公共職業安定所):転籍先を探す際の職業紹介を行う公的窓口として活用される予定です。

これらの制度上認められた機関・窓口が連携することで、民間の職業紹介事業者による介在を抑制し、外国人本人が不当な負担を負うことなく転籍できる環境を整えることがねらいとされています。

技能実習からの移行と経過措置

現行の技能実習制度から育成就労制度への移行にあたっては、経過措置が設けられる予定です。施行日である令和9年(2027年)4月1日の時点ですでに来日している技能実習生や、施行日前までに技能実習計画の認定申請がなされた技能実習生については、原則として引き続き従前の認定計画に基づいて技能実習を継続できる方向で整理されています。

そのため、すべての在留外国人が施行日から一斉に育成就労へ切り替わるわけではなく、当面は技能実習と育成就労が併存する期間が生じる見込みです。受入れ機関としては、自社の受入れ計画が施行前後のどちらに該当するかを確認し、転籍ルールの適用関係を整理しておくことが重要になります。

受入れ機関・支援機関として準備しておきたいこと

育成就労制度の転籍ルールは、受入れ機関の体制づくりにも影響します。本人意向による転籍が認められることを前提に、就労環境の整備や処遇の改善、適切な支援体制の構築が、外国人材の定着につながる重要な要素となります。また、転籍先となるためには「優良な育成就労実施者」としての基準を満たすことが求められる見込みであるため、早めに自社の体制を点検しておくことが有効です。

具体的には、育成就労計画の作成、監理支援機関との連携、監理支援機関の許可申請に関する準備、在留資格に関する各種申請手続の整理などが必要になります。これらの手続は、育成就労計画の認定申請や在留資格申請の取次など、行政書士が対応できる業務とも密接に関わります。

育成就労制度の転籍ルールは施行前の段階ですが、関係政省令や分野別運用方針は既に公表されており、今後も運用要領・上乗せ基準告示等の更新に注意する必要があります。当事務所では、育成就労計画の認定申請、監理支援機関の許可申請に関する準備、在留資格に関する申請取次など、外国人材の受入れに関する手続をサポートしております。料金については、個別にお問い合わせください。ご相談は何度でも無料です。詳しくはこちらからお問い合わせください。

まとめ

育成就労制度では、技能実習制度では原則認められていなかった本人の意向による転籍が、同一業務区分内であること、分野ごとに定める1年以上2年以下の転籍制限期間を超えていること、一定の技能・日本語能力を満たすことなどの要件のもとで、新たに認められる見込みです。転籍の調整は監理支援機関・外国人育成就労機構・ハローワーク等の制度上認められた機関・窓口を通じて行う仕組みが予定されており、民間の職業紹介事業者の介在は抑制される方向です。本制度は2027年4月1日施行予定であり、今後も運用要領・上乗せ基準告示等が更新される可能性があるため、受入れ機関・支援機関としては最新の公表情報を確認しながら準備を進めることが大切です。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

行政書士法人Tree