契約書

ストックオプション契約書の作り方|税制適格SO・有償SO・退職時取扱い・新株予約権登記を解説

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ストックオプション(SO)は、役員・従業員等の人材インセンティブ設計として活用される会社法上の新株予約権の付与制度で、税制適格SO・税制非適格無償SO・有償SO・信託型SO等の類型ごとに、税務取扱い・付与対象者・行使条件・株式管理スキームが大きく異なります。令和6年度税制改正により、税制適格SOの年間権利行使価額の限度額が引き上げられ(設立5年未満の株式会社は2,400万円、設立5年以上20年未満で非上場会社または上場後5年未満の上場会社は3,600万円)、スタートアップ・成長段階企業での活用が拡大しています。一方、信託型SOは国税庁Q&A(令和5年5月)により権利行使時の経済的利益は給与所得となると整理されたため、新規導入は慎重判断が必要です。本記事では、SOの主要類型、税制適格要件、契約書記載事項、退職時・組織再編時の取扱い、新株予約権発行登記・税務・インサイダー取引規制との関係を整理します。

本記事の結論

  • ストックオプションは会社法上の新株予約権として、発行要項・募集事項決定・株主総会/取締役会決議・割当契約・登記・税務確認を一体で設計する必要があり、契約書だけで完結するものではありません。
  • 税制適格SO(租税特別措置法第29条の2)は、要件を満たす場合に権利行使時の給与所得課税が繰り延べられ、株式売却時に譲渡所得(分離課税・20.315%)として課税される制度。令和6年度税制改正で年間権利行使価額限度額が引き上げ(原則1,200万円、設立5年未満2,400万円、設立5年以上20年未満で非上場/上場後5年未満は3,600万円)、株式管理スキームも発行会社自身による方式が一定要件下で認められました。
  • 税制非適格無償SOは権利行使時の経済的利益が給与所得として課税(源泉徴収義務あり)、有償SOは適正時価で取得した場合は購入時・行使時に課税関係が生じず売却時の譲渡益課税のみ。信託型SOは国税庁Q&A(令和5年5月)で行使時給与所得・源泉徴収義務と整理。
  • 当所はSO契約書・割当契約書・発行要項に向けた前提条件・条項案の整理を行政書士業務範囲(行政書士業務)で対応します。新株予約権発行登記は司法書士、税制適格要件判定・税務処理・源泉徴収は税理士、IPO準備上の資本政策・主幹事証券会社対応は弁護士・公認会計士・税理士・監査法人等と連携します。

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根拠法令・制度

  • 会社法第236条(新株予約権の内容)
  • 会社法第238条(募集新株予約権に関する募集事項の決定)
  • 会社法第239条(募集事項の決定の委任)
  • 会社法第911条第3項第12号(新株予約権の登記事項)・第915条(変更登記期間)
  • 租税特別措置法第29条の2(税制適格ストックオプションの特例)
  • 所得税法第28条(給与所得)・第33条(譲渡所得)・第183条(給与等に係る源泉徴収義務)
  • 金融商品取引法(インサイダー取引規制との関係)
  • 国税庁「ストックオプションに対する課税(Q&A)」(令和5年5月公表、令和6年6月改訂)
  • 令和6年度税制改正大綱(税制適格SOの年間権利行使価額限度額引上げ・株式管理スキーム拡充)
  • 行政書士業務(権利義務・事実証明に関する書類の作成)
  • 司法書士法第3条第1項第1号(登記申請の代理)
  • 税理士法第2条(税務代理・税務書類作成・税務相談)
  • 弁護士法第72条(法律事務の独占)

ストックオプション契約書だけでは発行手続は完了しない

ストックオプションは、会社法上の新株予約権として発行されるため、契約書だけを作成すれば完了するものではありません。発行要項、募集事項の決定、株主総会・取締役会決議、割当契約、登記、税務上の要件確認、株式管理スキームを一体で設計する必要があります。税制適格SOでは、権利行使価額、行使期間、年間権利行使価額の限度額、譲渡制限、大口株主等の特別関係者の除外、株式の保管・管理方法などを慎重に確認します。有償SOや信託型SOでは、時価評価・給与所得課税・源泉徴収・会計処理も問題となるため、契約書文案だけでなく、司法書士・税理士・弁護士・公認会計士等との連携が重要です。

1. ストックオプションの主な類型

1-1. 税制適格ストックオプション(租税特別措置法第29条の2)

租税特別措置法第29条の2の要件を満たすSO。要件を満たす場合、権利行使時の経済的利益について給与所得課税が繰り延べられ、株式売却時に譲渡所得(分離課税・20.315%)として課税される制度です。スタートアップ・成長段階企業の人材インセンティブ設計として広く活用されています。

  • 権利行使期間:原則として付与決議日後2年を経過した日から10年以内。一定の設立5年未満の非上場会社については15年以内とされる場合がありますが、対象会社要件・契約内容・税務上の適用関係を個別に確認する必要があります
  • 年間権利行使価額の限度額:原則1,200万円。令和6年度税制改正により、設立5年未満の株式会社が付与するものは2,400万円、設立5年以上20年未満の株式会社で非上場会社または上場後5年未満の上場会社が付与するものは3,600万円に引き上げられました

1-2. 税制非適格無償ストックオプション

税制適格要件を満たさない無償SO。権利行使時の経済的利益が給与所得として課税され、発行会社には源泉徴収義務が生じます(所得税法第183条)。所得税の累進税率・住民税等により、税負担が大きくなる可能性があります。退職後の行使については退職所得課税となる場合があり、税理士との事前確認が必要です。

1-3. 有償ストックオプション

新株予約権を適正な時価で購入する有償発行。適正な時価で取得している場合、購入時・権利行使時には原則として課税関係が生じず、行使により取得した株式を売却した時点で株式譲渡益課税(分離課税・20.315%)の対象となります。役員・従業員以外の外部協力者(アドバイザー・業務委託先・取引先)にも付与可能です。時価評価が適切でない場合は給与所得課税となるリスクがあるため、第三者評価機関による時価算定が実務上重要です。

1-4. 信託型ストックオプション

受託者が新株予約権を一括取得し、後日付与対象者に交付する仕組み。国税庁Q&A(令和5年5月)では、信託型SOについて、役職員が権利行使して株式を取得した場合、その経済的利益は給与所得となり、発行会社は源泉所得税を徴収・納付する必要があると整理されています。そのため、新規導入や既存スキームの処理は、税理士等と慎重に確認する必要があります。

2. SO契約書の必須記載事項

SO契約書には、付与数・行使価格・行使期間・行使条件・退職時の取扱い・組織再編時の取扱い等を明確に定めます。会社法上の発行要項・募集事項決定・登記との整合も確認します。

2-1. 基本条項

  • 付与対象者(氏名・役職)
  • 付与する新株予約権の数
  • 1個あたりの目的株式数
  • 権利行使価格(1株あたり)
  • 権利行使期間(開始日・終了日)
  • 権利行使の条件(在籍要件・業績条件等)
  • 権利行使請求の方法(書面・電子)・払込方法

2-2. 退職時・組織再編時の取扱い

  • 退職時の失効・取得条項:自己都合退職、会社都合退職、定年退職、死亡・障害等の事由別に、行使可能性・失効・会社による取得を定める
  • 行使可能化・取得条項:組織再編やM&A時に、一定期間に限り行使を認める、会社が新株予約権を取得する、または代替新株予約権・金銭補償を行う設計があります。自動行使型(みなし行使)の設計は、払込・税務・会社法上の手続との整合を確認する必要があります
  • 譲渡制限:第三者への譲渡禁止・会社の承認を要する旨
  • 反社条項・誓約事項:反社会的勢力との関係がないこと・職務専念義務等

3. 税制適格SOの要件(租税特別措置法第29条の2)

税制適格SOとして給与所得課税の繰延べを受けるには、以下の要件を満たす必要があります。要件充足の判定・適用関係は税理士に確認することが必須です。

  • 付与対象者:会社または一定の関係会社の取締役、執行役、使用人等が中心。大口株主およびその特別関係者に該当する者は税制適格SOの対象から外れるため、持株比率・親族関係・関係会社の範囲を確認する必要があります。社外高度人材への付与については、認定制度・付与対象者の要件を個別に確認します
  • 権利行使価額:付与契約締結時の株式時価以上であること
  • 権利行使期間:原則として付与決議日後2年を経過した日から10年以内(一定の設立5年未満非上場会社は15年以内とされる場合あり)
  • 年間権利行使価額:原則1,200万円以下(設立5年未満の株式会社が付与するものは2,400万円、設立5年以上20年未満で非上場会社または上場後5年未満の上場会社が付与するものは3,600万円)
  • 譲渡制限:他者への譲渡禁止
  • 株式管理スキーム:権利行使により取得した株式について、証券会社等による保管委託等が必要となる場合があります。令和6年度税制改正により、譲渡制限株式については、一定の要件のもとで発行会社自身による株式管理スキームも認められるようになりました
  • 付与契約書・割当契約書・発行要項の整備

4. 新株予約権発行の会社法手続

SO発行は会社法上の新株予約権発行手続として、以下のステップで進めます。

  1. 取締役会決議:発行要項案の決定・株主総会への議案提出決議
  2. 株主総会決議:募集事項の決定(会社法第238条)、または取締役会への決定権限委任(会社法第239条)。公開会社・非公開会社、有利発行該当性により決議要件が異なる
  3. 取締役会決議(株主総会から委任を受けた場合):具体的な募集事項・割当先・行使条件等の決定
  4. 申込み・割当て:付与対象者からの申込書受領、割当決議、割当通知
  5. 払込み(有償SOの場合):払込期日までに発行価額の払込み
  6. SO契約書・割当契約書の締結
  7. 新株予約権発行の変更登記:会社法第911条第3項第12号の登記事項に該当するため、会社法第915条の変更登記の規律により、原則として効力発生日から2週間以内に変更登記が必要。登記申請は司法書士業務
  8. 税務署への調書提出(税制適格SOの場合):付与調書・行使調書の所轄税務署への提出

5. インサイダー取引規制との関係

上場会社・上場準備会社では、SOの付与・行使・行使後株式の売却について、金融商品取引法のインサイダー取引規制や役職員の売買管理規程との整合が必要です。特に行使後に取得した株式を売却する場面では、未公表の重要事実を知っていないか、売買可能期間(決算発表後の一定期間等)かを確認します。インサイダー取引違反は刑事罰(5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金)の対象となるため、上場準備段階から内部統制・売買管理規程を整備します。

6. 業務範囲の整理

6-1. 行政書士業務(契約書文案作成)

  • SO契約書(付与契約書)の文案作成(行政書士業務)
  • 割当契約書の文案作成
  • 発行要項作成に向けた前提条件・条項案の整理
  • 退職時・組織再編時の取扱条項の検討支援
  • 反社条項・誓約事項・譲渡制限条項の整備

※会社法上の発行手続、登記、税制適格要件判定、資本政策・IPO審査対応は、司法書士・税理士・弁護士・公認会計士等と連携

6-2. 業務範囲外(連携先専門家)

  • 新株予約権発行登記の申請代理(会社法第911条第3項第12号・第915条)→ 司法書士業務(司法書士法第3条第1項第1号)
  • 株主総会・取締役会議事録の作成:書類の目的に応じて行政書士・司法書士の業務範囲を確認。新株予約権発行登記に必要な議事録・添付書類の整備、登記申請は司法書士と連携
  • 税制適格要件の判定・税務処理・源泉徴収(租税特別措置法第29条の2)→ 税理士業務(税理士法第2条)
  • 新株予約権の時価評価・第三者評価(有償SO・信託型SO)→ 公認会計士・税理士・専門評価機関
  • IPO準備上の資本政策・SO発行履歴の整理・主幹事証券会社対応・監査法人対応 → 弁護士・公認会計士・税理士・司法書士・監査法人等と連携
  • 金商法・インサイダー取引規制対応・売買管理規程整備 → 弁護士・上場準備担当者
  • SO関連紛争(行使条件・無効主張等)の訴訟代理 → 弁護士業務(弁護士法第72条)

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FAQ|よくあるご質問

Q1. 税制適格SOと税制非適格SOはどちらが有利ですか?

一般に税制適格SOが有利です。要件を満たす場合、権利行使時の給与所得課税が繰り延べられ、株式売却時に譲渡所得(分離課税・20.315%)として課税されるためです。税制非適格無償SOは権利行使時の経済的利益が給与所得として課税され、発行会社に源泉徴収義務が生じ、所得税の累進税率・住民税により税負担が大きくなる可能性があります。ただし、税制適格要件の充足には付与対象者・行使価額・行使期間・年間限度額・株式管理スキーム等の厳格な要件があり、税理士との事前確認が必須です。

Q2. 信託型SOは新規導入できますか?

信託型SOは、税務上の取扱い・源泉徴収・既存付与者対応が非常に複雑です。国税庁Q&A(令和5年5月)では、権利行使時の経済的利益は給与所得となると整理されているため、新規導入は慎重に判断し、既存スキームについても税理士等と対応を確認する必要があります。税制適格SO・有償SOへの設計変更を検討するケースが増えています。

Q3. SO発行には登記が必要ですか?

はい。新株予約権は会社法第911条第3項第12号の登記事項です。新株予約権を発行した場合は、会社法第915条の変更登記の規律により、原則として効力発生日から2週間以内に変更登記が必要となります。登記申請は司法書士業務です。

Q4. 退職した従業員のSOはどうなりますか?

契約書の退職時取扱条項に従います。一般的には、自己都合退職・会社都合退職・定年退職・死亡・障害等の事由別に、行使可能性・失効・会社による取得を定めます。税制適格SOでは「権利者が役員・従業員等であること」が要件のため、退職後は税制適格要件を満たさなくなる場合があり、契約条項と税理士確認が重要です。

Q5. M&Aや組織再編時にSOはどう扱われますか?

組織再編やM&A時の取扱いとして、一定期間に限り行使を認める「行使可能化条項」、会社が新株予約権を取得する「取得条項」、代替新株予約権の交付、金銭補償、失効等を定めることがあります。いわゆるみなし行使・強制行使型の条項は、払込手続、税務、会社法、金商法、権利者保護の観点から慎重に設計します。SO契約書に組織再編時の取扱条項を事前に明記しておくことが重要です。

Q6. 上場準備会社でのSO付与の注意点は?

上場準備会社では、SO付与・行使・行使後株式の売却について、金融商品取引法のインサイダー取引規制や役職員の売買管理規程との整合が必要です。特に行使後株式の売却タイミング(決算発表後の売買可能期間等)、未公表重要事実の管理、IPO審査上の資本政策(潜在株式数・希薄化率)が問題となります。主幹事証券会社・監査法人・弁護士・公認会計士等と連携して進めます。

Q7. 有償SOの時価評価はどうやって行いますか?

有償SOの公正な時価評価は、ブラック・ショールズ・モデル、二項モデル、モンテカルロシミュレーション等の評価モデルを用いて、第三者評価機関(公認会計士・税理士・専門評価機関)が算定します。適正時価で取得していない場合は給与所得課税のリスクがあるため、第三者評価機関による時価算定書の取得が実務上重要です。

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まとめ

ストックオプション(SO)は、会社法上の新株予約権として発行されるため、契約書だけで完結せず、発行要項・募集事項決定・株主総会/取締役会決議・割当契約・登記・税務確認・株式管理スキームを一体で設計する必要があります。

税制適格SO(租税特別措置法第29条の2)は、要件を満たす場合に権利行使時の給与所得課税が繰り延べられ株式売却時に譲渡所得課税となる有利な制度で、令和6年度税制改正により年間権利行使価額の限度額が引き上げられ(設立5年未満は2,400万円、設立5年以上20年未満で非上場/上場後5年未満は3,600万円)、株式管理スキームも発行会社自身による方式が一定要件下で認められました。

一方、税制非適格無償SOは権利行使時の給与所得課税・源泉徴収義務、有償SOは適正時価取得時の課税繰延・売却時譲渡益課税、信託型SOは国税庁Q&A(令和5年5月)で行使時給与所得・源泉徴収義務と整理されており、新規導入は慎重判断が必要です。

SO契約書には付与数・行使価格・行使期間・行使条件・退職時の取扱い・組織再編時の取扱い等を必須記載し、会社法上の発行手続・登記との整合を確認します。上場準備会社では金商法のインサイダー取引規制・売買管理規程との整合も必要です。

SO契約書・割当契約書の文案作成・前提条件整理は行政書士の業務範囲(行政書士業務)として対応可能です。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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