ものづくり補助金(第23次公募)では、新品の機械装置だけでなく中古設備の購入も補助対象経費として認められています。一方で、中古設備は新品と異なる固有の要件(3者以上の見積、整備記録の確認、耐用年数の判定、対象外取引の除外など)が課され、これを満たさないと採択後でも対象外と判定されるリスクがあります。本記事では、ものづくり補助金で中古機械装置・工具器具備品を取得する際に押さえておくべき要件・実務上の落とし穴・採択後の確認事項を、現場で発生しがちな失敗事例とともに実務目線で解説します。
【お困りの方へ】行政書士法人Tree|ものづくり補助金 中古設備購入の申請サポート
本記事は実務目線で解説しますが、中古設備の見積要件・整備記録の整え方・対象外判定リスクの洗い出しは個別事情の比重が大きく、自己判断のままで申請すると交付決定後に経費が認められないケースがあります。当事務所のものづくり補助金申請サポートでは、設備の選定段階から見積・仕様書・耐用年数の確認まで実務上の論点整理に対応します。
料金プラン:完全成果報酬型・着手金0円・成功報酬8〜15%・不採択時は完全無料(リスクなくご相談いただけます)。
目次
1. ものづくり補助金における中古設備の位置付け(第23次公募)
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの改善に必要な設備投資を支援する制度です。第23次公募は2026年5月8日締切・2026年8月上旬採択公表予定で運用されており、2026年度以降は中小企業新事業進出補助金との統合が見込まれています。直近の採択率は30%台で推移しており、「40〜60%」と紹介されることがありますが、第22次までの実績ベースでは概ね3割前後と理解しておくのが実態に近いです。
補助対象経費の中心は「機械装置・システム構築費」で、ここに新品だけでなく中古設備の購入費も含まれます。中古設備が認められる背景には、限られた補助金原資で投資効果を最大化する観点、サプライチェーン上の現実的な調達事情(半導体不足等で新品納期が極端に長期化する場面)、そして再生・整備済み機械の流通市場が成熟していることがあります。ただし、新品にはない「品質のばらつき」「耐用年数の残存」「履歴の不透明さ」というリスクがあるため、公募要領上は新品より厳しい確認手続が課されています。
中古設備で対象となり得るのは、NC旋盤・マシニングセンタ・5軸加工機・プレス機・射出成形機・レーザー加工機・産業用ロボットなど、補助事業専用に使用される工作機械や生産設備、付随する治具・搬送装置等の工具器具備品、設備に組み込む専用ソフトウェア等です。一方、汎用パソコン・事務用品・車両(ナンバー付き)など、汎用性があり目的外使用になり得るものは原則として対象外です。3Dプリンター等も、補助事業のみに使用することが明らかでない場合は対象外となる可能性があるため、用途・設置場所・管理方法を個別に確認する必要があります。
2. 単価50万円以上要件と機械装置の考え方
ものづくり補助金の機械装置・システム構築費は、補助対象として計上する1台・1式あたりの単価が50万円(税抜)以上であることが原則要件です。これは新品・中古を問わず適用され、50万円未満の小物治具や消耗品的な工具を細切れで積み上げる申請は対象外と判断されます。中古設備でも、本体価格が50万円未満であれば原則対象外となるため、付帯設備の組合せやライン全体での「1式」整理を見積段階から意識する必要があります。
「1式」として整理する場合は、機能的・物理的に一体で運用される設備群(例:NC旋盤本体+自動送材機+ワークホルダー+制御盤ソフトウェア)を1つの仕様書で束ねるのが基本です。逆に、独立して稼働できる設備を恣意的に「1式」化すると、実績報告時に経費按分や対象外判定の論点になります。中古設備では特に、本体・整備費・輸送費・据付調整費の内訳を明示し、何が補助対象の取得価額に含まれるかを見積書段階で明確化しておくことが重要です。
なお、機械装置・システム構築費の中で「クラウドサービス利用費」「専用ソフトウェア・情報システム」も対象になりますが、これらは別建ての要件があり、中古ハードウェアとセットで導入する際は経費区分の整理が必須です。電子申請は公募回・手続段階ごとの公式案内に従う必要があり、採択後の交付申請・実績報告等ではjGrantsを利用する手続が案内されています。
3. 中古設備に固有の「3者以上の中古品流通事業者」相見積要件
ものづくり補助金では、単価50万円(税抜)以上の経費について原則2者以上の見積が必要ですが、中古設備の場合は「3者以上」の相見積が必須とされています。これは、中古市場では同一仕様・同一年式の機械であっても価格・状態にばらつきが大きく、適正価格の合理的根拠を担保するために通常より1社多い見積取得が求められるためです。
3者見積の実務的なポイントは次のとおりです。第一に、同等の仕様・性能・年式・整備状態を満たす設備で比較すること。スペックや年式が大幅に異なる見積を並べても、相見積として機能しないため公募要領違反と判断されるリスクがあります。第二に、同一グループ会社・関連会社からの見積は原則無効です。実質的に同じ事業主体内での価格操作とみなされ、最安値で採用しても対象外判定の可能性があります。第三に、見積書には機械の型式・製造年・シリアル番号(特定可能であれば)・整備状況・引渡条件を必ず記載してもらうこと。中古市場では同名機種でも個体差が大きいため、特定性が確認できないと採択後に「同一物件であることを証明できない」として論点になります。
中古設備については、3者以上の中古品流通事業者から、型式や年式が記載された同等の中古品の相見積もりを取得することが重要な要件です。3者見積の取得が困難な設備を検討する場合であっても、申請前に公募要領・事務局の案内を確認し、対象経費として認められる見込みがあるかを慎重に確認する必要があります。
4. 中古設備の対象範囲と対象外取引|対象外になりやすいケース
中古設備として補助対象になり得るのは、原則として事業として中古設備を扱う事業者(中古機械商社・整備済再生機販売業者・メーカー認定中古販売店等)から購入するケースです。これに対し、次のような取引は中古設備であっても補助対象外とされる典型例です。
第一に、個人間取引(オークション・フリマアプリ等の個人売買、知人・取引先の個人からの譲受等)。これは見積・契約・引渡しの形式が事業者間取引の標準を満たさず、適正価格・整備状況の客観的確認ができないためです。第二に、同一グループ内・関連会社からの購入(親会社・子会社・兄弟会社、代表者の親族が経営する会社等)。実質的に資金循環の形となるため、補助金の趣旨に反するとして除外されます。第三に、自社・自社代表者個人が既に保有していた設備の買戻し。第四に、リース・レンタル契約の譲受(残債を引き継ぐ形での所有権移転等は契約の本質が借入に近いため取扱いが慎重に判断されます)。
また、海外から個人輸入で中古設備を取得するケースは、輸入手続・通関・検疫等の論点に加えて、見積・整備状況の確認が困難になりやすいため、可能であれば日本国内の中古機械商社経由で調達するのが実務上は安全です。
5. 耐用年数・残存耐用年数の判定(簡便法)
中古設備を取得した場合、税務上の減価償却は法定耐用年数ではなく中古資産の耐用年数(簡便法)で計算するのが一般的です。具体的な計算方法・税額への影響は税理士の独占業務領域(税理士法2条)のため、本記事では詳細な計算例は扱いません。提携税理士または顧問税理士にご相談ください。
ものづくり補助金の公募要領上は、中古設備について3者以上の中古品流通事業者から型式や年式が記載された相見積もりを取得することが重要な確認事項として示されています。設備の老朽化程度や使用可能期間は、事業実施の合理性・継続性を説明するうえで実務上確認しておくべき事項ですが、税務上の中古資産の耐用年数や減価償却の判断とは区別する必要があります。
実務的には、購入予定の中古設備について、製造年・累積稼働時間・前回オーバーホール時期・主要部品の交換履歴を販売事業者から開示してもらい、「残存使用年数2年以上の見込み」が客観的に説明できる資料を申請段階で整えておくのが安全です。残存耐用年数の判定根拠は採択後の交付申請・実績報告でも確認される論点になります。
6. 整備状況証明・点検記録の確認
中古設備で実務上確認しておきたいのが、設備の特定性や状態を説明できる資料です。第23次公募要領では、3者以上の中古品流通事業者から型式や年式が記載された相見積もりを取得している場合には中古設備も対象になるとされています。これに加えて、販売事業者から整備状況や動作確認に関する資料を取得できれば、価格妥当性や事業実施可能性を説明する補足資料として有用です。
第一に、整備記録書(販売事業者が実施した分解整備・部品交換・調整内容の記録)。第二に、動作点検記録(稼働確認・精度測定・試運転結果)。第三に、製造年・型式・シリアル番号が記載された機械本体プレートの写真。第四に、主要部品(主軸・モーター・制御盤等)の交換履歴。第五に、保証条件(販売事業者が提供する保証期間・対象範囲)。
これらは中古機械商社であれば発行・提示を受けられることがありますが、簡易な転売を主業務とする業者の場合は整備記録自体が存在しないことがあります。整備記録がない場合でも直ちに公募要領上の対象外と断定できるわけではありませんが、設備の状態や価格妥当性の説明が難しくなる可能性があります。販売事業者の選定段階で、型式・年式が記載された相見積もりに加え、可能な範囲で整備状況や動作確認資料を取得できるか確認しておくことが重要です。
7. 採択後の確認事項と実績報告書での記載
採択・交付決定後、補助事業実施期間中の発注・契約・納品・検収・支払いと、補助事業終了後の実績報告書提出を経て、補助金額が確定します。中古設備固有の論点として、実績報告書では次の点が確認されます。
第一に、交付申請時までに整えた3者相見積もりと、実際に発注した相手・金額・仕様の整合。途中で発注先を変更した場合や仕様変更があった場合は、変更理由と整合性の説明が必要です。第二に、型式・年式・仕様・設置場所等を確認できる書類や写真の整理。第三に、必要に応じて、販売事業者から取得した整備状況・動作確認資料等の補足資料の保管。第四に、取得財産管理台帳への登録。中古設備も処分制限期間中は事務局承認なしに譲渡・廃棄・担保提供等の処分ができません。
実績報告書の作成については別記事「補助金申請の実績報告書の書き方|交付決定後の事業実施・証憑整理・補助金入金まで」で詳しく解説しています。中古設備固有の証憑(整備記録・点検記録)は、新品設備にはない追加書類として、補助事業実施期間中から原本管理を徹底することが重要です。
8. 中古設備購入で起こりがちな失敗事例
実際の申請現場で発生した代表的な失敗事例を整理します。
事例1:3者見積を2者しか取らずに申請。新品扱いと同じ2者見積で申請し、交付申請段階で対象外判定。原則に立ち返って3者見積を取り直す必要があり、補助事業開始時期が大幅に遅延しました。
事例2:個人間取引の中古機械を申請。代表者の知人個人から中古マシニングセンタを購入する形で計上したものの、事業者間取引の要件を満たさず対象外。改めて中古機械商社経由で同等品を調達する追加コストが発生しました。
事例3:同一グループ会社からの購入を計上。代表者が別途経営する会社から中古設備を購入する形で申請し、関連会社間取引として対象外判定。グループ内資金循環とみなされました。
事例4:整備記録のない設備を購入。価格優先でオークション系の中古業者から購入し、整備記録が存在しないため実績報告段階で証憑不足。取得価額の一部が対象外と判定され、補助金額が減額されました。
事例5:単価50万円未満の機械を細分化計上。中古工具器具備品を1点ずつ計上し、いずれも単価50万円未満で対象外。「1式」化の整理を見積段階で検討する必要がありました。
事例6:残存耐用年数の説明不足。製造年が古い設備を購入したものの、残存使用年数の合理的説明資料を準備しておらず、交付申請段階で追加資料の提出を求められて事業着手が遅延。
9. 申請段階で整えておくべき書類チェックリスト
中古設備をものづくり補助金で申請する際、申請書本体に加えて準備しておきたい書類は次のとおりです。事業計画書の書き方は別記事「補助金申請の事業計画書の書き方|採択率を上げる5つのポイント・記載例・加点要素」で解説しています。
第一に、3者以上の中古品流通事業者から取得した相見積書(型式・年式が記載され、同等の中古品として比較できるもの)。第二に、機械仕様書・カタログ写し。第三に、機械本体プレート写真(型式・製造番号・製造年が判読できるもの)。第四に、販売事業者の事業実態を示す資料(会社案内等、必要に応じて関連会社でないことを確認できる資料)。第五に、補足資料として、販売事業者が発行できる場合には整備記録書・点検記録・主要部品交換履歴等を取得しておくと、設備の状態や価格妥当性を説明しやすくなります。
これらを設備選定の早い段階で意識し、販売事業者に書類提供を依頼することが、採択後の実績報告段階で証憑不足に陥らないための最大の予防策です。「価格が安いから」だけで業者を選ぶのではなく、「補助金対応書類を整えられる業者か」を選定基準に含めることが、最終的な補助金確定額を守ることに直結します。
10. よくある質問(FAQ)
Q1. 中古設備でも賃上げ要件は新品と同じですか?
ものづくり補助金の基本要件(付加価値3.0%/年・給与1人あたり3.5%/年・最低賃金+30円)は、中古・新品の区別なく適用されます。賃上げ要件の達成計画は事業計画書に明記する必要があります。
Q2. 中古設備の購入費に消費税は補助対象になりますか?
ものづくり補助金は新品・中古を問わず消費税分は補助対象外です。本体価格(税抜)で50万円以上、補助対象経費の集計も税抜で行います。仕入税額控除等の税務処理は税理士に確認してください。
Q3. 海外から中古設備を輸入する場合の注意点は?
通関・関税・輸送費の取扱い、現地販売事業者の事業実態確認、整備記録の現地語書類の翻訳など、新たな実務論点が多数発生します。可能であれば国内中古機械商社経由が安全です。やむを得ず海外調達する場合は、商社経由か直接輸入かで証憑要件が異なるため、申請前に事務局相談窓口で個別確認することを推奨します。
Q4. 中古設備とソフトウェアをセットで導入する場合の経費区分は?
機械装置に組み込まれた制御ソフトウェアであれば本体価格に含めて計上、独立した汎用ソフトウェア(生産管理システム等)は「専用ソフトウェア・情報システム」区分で別計上が原則です。仕様書段階で区分を明確にしておくことが重要です。
Q5. 採択後に中古設備の販売事業者を変更できますか?
原則として、申請時の見積と異なる発注先への変更は事務局への変更承認申請が必要です。中古設備は個体差が大きいため、「同等品」と認められるかは個別判断となります。変更が必要な場合は早期に事務局に相談することが必須です。
Q6. ものづくり補助金以外で中古設備が対象となる補助金はありますか?
中小企業新事業進出補助金については、既に複数回の公募が実施されており、対象経費や中古設備の取扱いは各回の公募要領で確認する必要があります。詳細は別記事「中小企業新事業進出補助金(新事業進出促進補助金)申請代行|事業再構築補助金後継・最大9,000万円・第4回公募中」をご参照ください。
【記事のまとめに代えて】行政書士法人Tree|ものづくり補助金 中古設備購入の申請サポート
本記事で解説した中古設備の3者見積要件・整備記録の確認・耐用年数の判定・対象外取引の除外について、当事務所のものづくり補助金申請サポートでは申請書類の作成・事業計画書のブラッシュアップ・電子申請の補助に対応します。中古設備固有の証憑要件は事前準備で大きく差がつく領域で、申請後・採択後のリスクを最小化するためにも、設備選定の早い段階でご相談いただくのが最も効果的です。詳しくは「ものづくり補助金申請代行|2026年第23次公募・最大4,000万円・必要書類と賃上げ要件」もご参照ください。
料金プラン:完全成果報酬型・着手金0円・成功報酬8〜15%・不採択時は完全無料。料金体系の詳細は「補助金申請代行の完全成果報酬型|着手金0円・成功報酬8〜15%・不採択時は完全無料」をご覧ください。
まとめ
中古設備購入の基本要件の核心:ものづくり補助金(第23次公募)では中古設備も対象経費に含まれますが、単価50万円(税抜)以上の機械装置という基本要件に加え、中古固有の追加要件が課されます。新品と同じ感覚で申請すると交付決定後に対象外判定を受けるため、設備選定の段階から要件を意識した準備が重要です。
3者見積と取引相手の核心:中古設備では3者以上の相見積が必須で、同等仕様・年式・整備状態の比較が前提です。個人間取引・同一グループ会社からの購入・自社買戻しは原則として対象外取引となり、中古機械商社等の事業者から購入することが基本となります。販売事業者の選定段階で書類対応力を確認することが、後の証憑不足リスクを下げる最大のポイントです。
整備記録と耐用年数の核心:中古設備固有の論点として、整備記録書・点検記録の取得と、残存耐用年数2年以上の説明資料の整備が重要です。これらは新品設備にはない確認項目で、実績報告段階で証憑不足となると補助金額の減額に直結します。製造年・累積稼働時間・主要部品交換履歴を販売事業者から書面で取得しておくことを徹底してください。
採択後の手続と実績報告の核心:採択後は申請時の見積と実際の発注の整合、整備記録原本の添付、機械現物の確認、取得財産管理台帳への登録が求められます。中古設備も処分制限期間中は事務局承認なしに譲渡・廃棄等ができない点に留意し、補助事業実施期間中の証憑管理を徹底することが、最終的な補助金確定額の確保につながります。
行政書士業務範囲と次の一歩:行政書士法人Treeでは、ものづくり補助金の申請書類作成・事業計画書のブラッシュアップ・電子申請の補助・中古設備固有の証憑要件の整理を業務範囲として対応します。税務処理(中古資産の減価償却・圧縮記帳等)は税理士の独占業務のため、必要に応じて提携税理士をご紹介します。中古設備の購入を検討中で「3者見積をどう揃えるか」「整備記録の確認はどこまで必要か」など個別の論点がある方は、設備選定の早い段階で当事務所までお問い合わせください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


