ものづくり補助金には、海外事業の強化を目的とする中小企業向けの特別枠「グローバル枠」が設けられています。第23次公募(2026年5月8日締切)では、補助上限額が最大4,000万円、補助率は要件達成時に2/3まで引き上げられる枠で、海外直接投資・海外市場開拓・海外事業者との共同事業・海外サプライチェーン構築の4類型が対象です。本記事では、グローバル枠の要件、必要書類、補助対象経費、海外旅費・渡航費の取扱い、JETROのF/S支援事業との併用関係、採択率を高めるための事業計画書の論点を実務目線で解説します。
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海外展開を伴うものづくり補助金グローバル枠は、通常枠と比べて事業計画書の論点が多く、海外現地調査・現地法人登記簿等の翻訳資料も求められます。当事務所では、第23次公募のスケジュールに合わせ、要件の整理から事業計画書のドラフト作成、加点項目の整備、jGrants類似の独自電子申請システムへの登録まで、行政書士業務範囲で伴走します。
料金プラン:完全成果報酬型・着手金0円・成功報酬8〜15%・不採択時は完全無料(補助金申請のため)
目次
1. ものづくり補助金グローバル枠とは|制度趣旨と第23次公募の位置付け
ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業の革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセス改善に必要な設備投資等を支援する制度です。グローバル枠は、これに加えて海外事業を強化する中小企業を対象とする特別枠で、補助上限額は通常枠(最大1,250万円〜2,500万円程度)よりも大きい最大4,000万円に設定されています。
第23次公募の特徴は、(1) 締切が2026年5月8日と従来より短サイクル化していること、(2) 採択公表が2026年8月上旬を予定していること、(3) 第23次公募をもって現行制度は一区切りとなり、2026年度から新事業進出補助金との制度統合が予定されていることです。グローバル枠での申請を検討する中小企業は、第23次公募が現行ルールで申請できる事実上のラストチャンスとなる可能性があります。
制度全体の採択率は、直近の公募では30%台で推移しており、「40〜60%」といった甘い見通しは現実と乖離しています。グローバル枠は通常枠よりも審査論点が多く、海外現地の実在性・取引実態の疎明資料の精度が採択可否に直結します。
2. 海外事業強化の4類型|どの類型で申請するかの選び方
グローバル枠は、以下の4類型のいずれかに該当する事業計画であることが必須要件です。複数類型に該当する場合は主たる類型を選定して申請します。
類型1:海外直接投資
海外現地法人の新規設立または既存拠点の拡張を伴う事業が該当します。具体的には、現地工場の新設、現地販売拠点の開設、現地子会社の生産設備増強等が典型です。日本国内の親会社が補助対象経費を支出し、その成果が海外現地法人に帰属する構造のため、現地法人登記簿・出資契約書・送金記録などで親子会社関係と資金の流れを明示する必要があります。
類型2:海外市場開拓(インバウンド需要獲得を含む)
海外市場への新製品・新サービスの投入、または訪日外国人観光客等のインバウンド需要を取り込む事業が対象です。海外見本市出展、海外ECサイト立ち上げ、多言語化対応、訪日客向けの体験型サービス開発等が含まれます。第23次公募ではインバウンド需要の取り込みも明確に類型2の対象として位置付けられています。
類型3:海外事業者との共同事業
海外の事業者と共同で行う製品開発・販売・サービス提供が対象です。OEM契約、共同研究開発契約、ライセンス契約、ジョイントベンチャー契約等の有効な契約関係が証憑として求められます。覚書(MOU)のみで実体のない計画は採択されにくく、契約書の英訳・現地語訳および日本語訳の整備が必要です。
類型4:海外サプライチェーン構築
海外調達・海外生産・海外物流のサプライチェーンを新規構築または再構築する事業が対象です。地政学リスク対応としての調達先多角化、ニアショアリング、フレンドショアリング等の文脈で申請するケースが増えています。原材料調達契約、物流契約、現地倉庫賃貸契約などで構築過程を疎明します。
3. 基本要件|付加価値額・給与支給総額・最低賃金の3要件
グローバル枠でも、ものづくり補助金共通の3つの基本要件を満たす事業計画である必要があります。これらは事業計画期間(通常3〜5年)にわたって達成すべき数値目標として申請書に明記します。
(1)付加価値額:事業計画期間において、付加価値額の年率平均+3.0%以上の伸び。付加価値額は「営業利益+人件費+減価償却費」で算出します。(2)給与支給総額:従業員1人あたりの給与支給総額が年率平均+3.5%以上の伸び(役員報酬・役員賞与は分母分子とも除外)。(3)最低賃金:事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の水準を維持すること。
給与支給総額要件は「総額」ではなく「1人あたり」での算定に注意が必要です。雇用増による総額アップだけでは要件未達となるため、賃上げの裏付けとなる賃金規定や賞与制度の改定資料も整備しておくと採択審査で有利に働きます。
4. 補助対象経費|機械装置費・技術導入費・専門家経費等
グローバル枠の補助対象経費は、通常枠とほぼ共通ですが、海外事業特有の経費項目も認められます。
- 機械装置・システム構築費:単価50万円(税抜)以上の設備が原則。中古設備の場合は3者以上からの見積書取得が必要
- 技術導入費:知的財産権導入に必要な経費。ライセンス契約に基づくロイヤリティ含む
- 専門家経費:海外現地調査、海外法務、技術指導等の外部専門家への謝金
- 運搬費:機械装置の運送費(海外輸送費は別枠扱い)
- クラウドサービス利用費:補助事業期間中の利用分
- 原材料費:試作品開発に直接必要な原材料
- 外注費:開発の一部を外注する場合の費用
- 知的財産権等関連経費:特許出願、商標登録等
- 海外旅費:グローバル枠特有。海外現地調査・現地法人設立・海外見本市出展等のための渡航費
- 通訳・翻訳費:契約書・市場調査資料等の翻訳費用
- 広告宣伝・販売促進費:海外市場開拓のための販促活動費
海外旅費は、グローバル枠で新たに認められる経費項目です。ただし、渡航目的・訪問先・成果報告の整合性が交付決定後の実績報告で厳しくチェックされます。航空券は普通席(エコノミー)原則、宿泊費は規程内単価、現地交通費は領収書添付が必須です。私的旅行と業務渡航の混在は不可で、業務日報・面談記録・現地視察報告書での疎明が求められます。
5. 必要書類|グローバル枠特有の追加資料を中心に
グローバル枠の申請書類は、通常枠の必須資料(事業計画書・直近2期分の決算書・労働者名簿・賃金台帳・GビズIDプライムアカウント等)に加えて、海外展開を疎明する以下の書類が追加で求められます。
- 海外展開戦略書:海外事業の市場性・競合分析・販売計画・収益計画を体系的にまとめた書面。事業計画書本体とは別建てで求められるケースが多い
- 現地市場調査資料:JETRO・現地調査会社・現地コンサル等が作成した市場規模・競合・規制環境のレポート。発行元・調査年月・サンプル数を明示
- 現地法人登記簿謄本(類型1で既設の場合):現地語+日本語訳。原本性の疎明として現地公証人認証または領事認証を要求されるケースあり
- 海外取引先契約書(類型3で必須):契約相手方の登記簿、契約締結日、契約期間、対価条件、知的財産権の帰属が確認できるもの
- 海外サプライチェーン構築計画書(類型4で必須):調達先・物流ルート・在庫管理・品質管理体制の図表化
- 海外子会社との出資関係を示す書類:出資契約書・送金記録・株主名簿等
- 輸出入関係書類:インボイス、B/L、輸出許可証等(既に取引実績がある場合)
- 海外事業の責任者の経歴書:海外勤務歴・語学力・現地ネットワーク等
翻訳資料は、社内翻訳でも認められる場合がありますが、契約書・登記簿等の法的書類は専門翻訳業者の翻訳証明付きが安全です。翻訳費は申請前のコスト(補助対象外)と、申請後の補助対象経費としての翻訳費を区別して管理します。
6. 海外法人設立支援との関係|JETROのF/S支援事業との併用可否
グローバル枠の申請を検討する中小企業の多くは、並行してJETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)の支援メニューを利用しています。代表的なものとして、グローバル・アクセラレーション・ハブ(海外起業家コミュニティへのアクセス支援)、F/S支援事業(海外進出可能性調査の費用補助)、新興国進出支援等があります。
これらJETRO支援とものづくり補助金グローバル枠は、原則として同一の経費を二重に補助されない範囲で併用可能です。例えば、JETROのF/S支援で現地市場調査の費用補助を受け、その調査結果をベースにものづくり補助金グローバル枠で実際の設備投資・販売拠点構築を申請する、という時系列の併用は一般に問題ありません。
ただし、同一の現地調査費用について、JETROとものづくり補助金の両方で補助を申請することは補助金等適正化法に反する重複受給となり得るため、経費区分を明確に管理する必要があります。事業計画書には他制度の活用状況を正直に記載し、経費の切り分けを明示することが、審査での信頼性向上にもつながります。
関連する公的支援としては、中小機構の海外展開支援、貿易保険機関(NEXI)の保険、現地政府のインセンティブ制度等もあり、これらと組み合わせた立体的な資金計画が事業計画書の説得力を高めます。
7. 採択率向上のための事業計画書作成のポイント
ものづくり補助金の採択率は直近で30%台、グローバル枠はその中でも審査論点が多い枠です。採択されるための事業計画書の論点を、実務目線で整理します。
第一に、海外事業の必然性を明確に示すことです。「なぜ国内ではなく海外なのか」「なぜその国・地域なのか」を、市場規模・競合状況・自社の競争優位の3点から論理的に説明します。一般論ではなく、数値と固有名詞で記述することが重要です。
第二に、革新性の定義です。ものづくり補助金は「革新的な」サービス開発・試作品開発が前提のため、既存事業の単純な海外展開では採択されません。海外市場特有のニーズに応える新製品・新サービス、または海外現地での生産プロセス革新等、明確な革新性が必要です。
第三に、収益見通しの数値根拠です。3〜5年の事業計画期間で付加価値額+3.0%、給与+3.5%を達成するシナリオを、為替変動リスクや現地税制リスクも織り込んで作り込みます。楽観シナリオだけでなく中位・悲観シナリオも併記すると説得力が増します。
第四に、加点項目の積み上げです。経営革新計画承認、賃上げ加点、女性活躍推進、デジタル化基盤整備等の加点項目を可能な限り取得して申請時に揃えます。加点項目の詳細は別記事で整理しています。
事業計画書の書き方の基礎は 補助金申請の事業計画書の書き方|採択率を上げる5つのポイント・記載例・加点要素 で詳しく解説しているほか、加点項目10種類は ものづくり補助金の加点項目10種類 をご参照ください。
8. 申請の電子手続|独自システムとGビズIDプライム
ものづくり補助金の電子申請は、他の補助金で広く使われているjGrantsではなく、ものづくり補助金独自の電子申請システムを利用します。アクセスにはGビズIDプライムアカウントが必須です。GビズIDプライムは、オンラインでの即日取得が可能になりました(従来は印鑑証明書を郵送する方式で2〜3週間要していた)。GビズID自体の取得方法は 補助金の電子申請jGrants使い方ガイド|GビズIDの取得方法・申請フロー・差戻し対応・採択後手続 で解説しています。
申請から採択までのスケジュールは、第23次公募で締切2026年5月8日 → 採択公表2026年8月上旬です。採択後は交付申請、交付決定、事業実施、実績報告、確定検査、補助金請求、入金、事業化状況報告(5年間)と続きます。グローバル枠は、海外取引・海外送金・現地法人での経費執行など、事業実施段階での経理証憑が複雑になりやすいため、申請段階から実績報告を見据えた経費管理体制の設計が重要です。
9. 不採択時の対応|次回公募・他補助金併願の選択肢
第23次公募で不採択となった場合、現行制度は第23次で一区切りとなる可能性が高いため、2026年度の新事業進出補助金との統合後の制度での再挑戦、または海外展開系の他補助金への切り替えを検討することになります。
海外展開支援は、ものづくり補助金グローバル枠以外にも、JETROの各種支援、中小機構の支援、新規輸出1万者支援プログラム等が存在します。これらの選択肢は 海外展開の補助金・支援策|JETRO・中小機構・新規輸出1万者支援プログラム・販路開拓を解説 で整理しています。
また、ものづくり補助金そのものは、グローバル枠以外にも省力化(オーダーメイド)枠・製品サービス高付加価値化枠等の通常枠が存在し、要件が合えば通常枠での再申請も選択肢です。ものづくり補助金一般の制度概要は ものづくり補助金申請代行|2026年第23次公募・最大4,000万円・必要書類と賃上げ要件 をご覧ください。
10. よくある質問(FAQ)
Q1. 海外現地法人がまだ設立されていない段階でもグローバル枠を申請できますか?
類型1(海外直接投資)であれば、補助事業期間内に現地法人を新規設立する計画でも申請可能です。設立予定地、設立スケジュール、出資構造、現地代理人との折衝記録等で計画の具体性を示します。設立済の場合は登記簿、未設立の場合は設立準備資料を疎明書類とします。
Q2. JETROのF/S支援を受けた調査結果を事業計画書の根拠として使えますか?
はい、可能です。むしろ独立した調査機関による調査結果は、事業計画書の信頼性向上に大きく寄与します。ただし、F/S支援で補助を受けた調査費用そのものを、ものづくり補助金の補助対象経費として申請することはできません(重複補助の禁止)。経費区分を明確に分け、申請書類に他制度活用状況を記載します。
Q3. 海外旅費は誰の渡航費まで補助対象になりますか?
補助事業に直接従事する者の渡航費が対象です。代表取締役・補助事業担当役員・現地責任者・通訳等が典型例です。同行する家族・私的目的の同行者の渡航費は対象外で、業務目的の明確化と日報・面談記録での疎明が求められます。航空券はエコノミー原則、ビジネスクラス利用は別途合理的説明が必要です。
Q4. 為替変動で事業計画の数値が大きくぶれた場合、計画変更は認められますか?
補助事業期間中の重要な変更は、事務局への計画変更承認申請が必要です。為替変動で経費の総額が変動した場合、補助対象経費の範囲内であれば対応可能なケースもありますが、補助金額の増額は原則として認められません。事業化状況報告期間(5年間)における付加価値額目標も為替影響を理由とした未達は減額返還の対象になり得るため、事業計画段階で為替リスクを織り込んだ保守的な目標設定が望まれます。
Q5. 補助金にかかる税金や会計処理について教えてください。
補助金の税務上の取扱い(消費税不課税・法人税法上の益金算入・圧縮記帳の可否等)は税理士の専門領域のため、本記事では解説できません。当事務所では提携税理士のご紹介が可能です。一般的な制度の概要のみ 補助金に税金はかかる?|消費税不課税・法人税法42条圧縮記帳・所得税法42条総収入金額不算入・インボイス・住民税国保への影響 でご覧いただけますが、具体的な税額計算・申告は税理士にご確認ください。
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本記事で解説したものづくり補助金グローバル枠について、要件整理・事業計画書のドラフト作成・海外展開戦略書の構成・必要書類の整備・電子申請手続を、行政書士業務の範囲で伴走します。第23次公募は2026年5月8日締切のため、5月中の動き出しが現実的なラインです。税務上の取扱いについては提携税理士をご紹介します。
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まとめ
グローバル枠の枠組み:ものづくり補助金グローバル枠は、補助上限額最大4,000万円・補助率2/3(要件達成時)の特別枠で、海外直接投資・海外市場開拓・海外事業者との共同事業・海外サプライチェーン構築の4類型のいずれかに該当する中小企業が対象です。第23次公募は2026年5月8日締切、採択公表は8月上旬を予定しており、現行制度での申請は事実上のラストチャンスとなる可能性があります。
基本要件と経費の特徴:付加価値額年率+3.0%、給与1人あたり年率+3.5%、最低賃金+30円の3要件は通常枠と共通です。補助対象経費はグローバル枠特有の海外旅費・通訳翻訳費が認められる一方、機械装置は単価50万円以上、中古設備は3者見積必須、海外現地法人での経費執行は親子会社関係の疎明が前提です。
必要書類と他制度との関係:海外展開戦略書、現地市場調査資料、現地法人登記簿、海外取引先契約書等の追加書類が必要で、契約書類は専門翻訳業者の翻訳証明が安全です。JETROのグローバル・アクセラレーション・ハブやF/S支援事業とは、同一経費の二重補助とならない範囲で時系列の併用が可能で、事業計画書での経費区分の明示が信頼性を高めます。
採択率と事業計画書の論点:制度全体の採択率は直近30%台と「40〜60%」のような見方は実態と乖離しており、グローバル枠ではさらに海外事業の必然性・革新性の定義・収益見通しの数値根拠・加点項目の積み上げが採択可否を分けます。事業計画書のドラフトは申請締切の2か月以上前から着手するスケジュール感が現実的です。
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※ 本記事は執筆時点(2026年5月)の法令・通達・公募要領・運用に基づきます。公募回ごとの要件変更、制度統合等により内容が変わる可能性があります。個別のご相談はお問い合わせください。


