自動車メーカー等から所有者に届く「リコール」「改善対策」「サービスキャンペーン」は、製造段階の不具合等に対する無償の改修措置です。所有者は通知を受け取ったら、できるだけ早くメーカー指定の販売店・ディーラー・サービス工場等で改修を受ける必要があり、未対応のまま放置すると安全性に支障があるほか、車検(継続検査)の合格・中古車取引・売却時の評価に影響が生じる可能性があります。
本記事では、(1)道路運送車両法第63条の3に基づくリコール届出制度、(2)リコール・改善対策・サービスキャンペーンの3類型の違い、(3)国土交通省・自動車技術総合機構(NALTEC)の役割、(4)所有者への通知方法(ハガキ・登録情報経由)、(5)無償改修の範囲(部品代・工賃・代車費用)、(6)改修未対応車両の車検への影響、(7)中古車取引時の確認義務を、実務目線で解説します。
リコール対象車両の確認、中古車取引時のリコール未対応確認、抹消登録車両のリコール対応をご検討中の方へ。行政書士法人Treeでは、車両関連の各種登録・抹消・名義変更手続をサポートします(実際のリコール改修はディーラー・指定整備工場、リコール届出はメーカー、税務は税理士、紛争性のある事案は弁護士をご紹介します)。
目次
目次
- リコール制度の概要(道路運送車両法第63条の3)
- リコール・改善対策・サービスキャンペーンの3類型の違い
- 国土交通省と自動車技術総合機構(NALTEC)の役割
- 所有者への通知方法(ハガキ・登録情報経由)
- 無償改修の範囲(部品代・工賃・代車費用)
- 改修の流れと所要時間
- 改修未対応車両と車検(継続検査)の関係
- 中古車取引時のリコール確認
- 抹消登録車両・廃車車両のリコール
- 業務範囲|ディーラー・行政書士・国交省・NALTECの役割
- よくある質問
リコール制度の概要(道路運送車両法第63条の3)
リコール制度は、道路運送車両法第63条の3(基準不適合車両に係る届出等)に基づく制度で、自動車メーカー・輸入事業者等が、保安基準に適合しない、または適合しないおそれのある状態にある自動車について、その不具合の原因が設計・製造過程にある場合に、国土交通大臣に届け出たうえで、所有者に通知して無償で改修を行う制度です。
リコールの法的枠組み
- 道路運送車両法第63条の3(リコール届出制度)
- 道路運送車両法第63条の2(改善措置の勧告・命令)/第63条の4(報告及び検査)
- 道路運送車両法施行規則
- 国土交通省の通達・ガイドライン
対象となる不具合
リコールの対象は、保安基準(道路運送車両の保安基準)に適合しないか、適合しなくなるおそれがある状態で、その原因が設計または製造過程にあるものです。使用過程での通常の摩耗・経年劣化は対象外です。
リコール・改善対策・サービスキャンペーンの3類型の違い
メーカーから所有者に送られる無償改修通知には、似た名称で性質が異なる3類型があります。
| 類型 | 根拠 | 性質 | 不具合の重大性 |
|---|---|---|---|
| リコール | 道路運送車両法第63条の3 | 法令上の届出制度 | 保安基準不適合または不適合のおそれ |
| 改善対策 | 国土交通省通達に基づく届出 | 保安基準には規定されていないが、不具合が発生した場合に安全確保・環境保全上看過できない状態について行う改善措置 | リコールに準じる重要性 |
| サービスキャンペーン | メーカーによる任意の改善措置 | リコール・改善対策に該当しない不具合で、安全確保・環境保全とは直接関係しないもの | 商品性・快適性等に関する比較的軽微な不具合 |
3類型ともに「無償改修」
3類型はいずれも、対象となる改善措置の部品代・作業工賃についてはメーカー等の負担で無償対応されるのが通常です。ただし、代車、引取り・納車、対象外部品の同時整備等の扱いはメーカー・販売店により異なるため、予約時に確認が必要です。違いは、不具合の重大性と法的枠組みにあります。
国土交通省と自動車技術総合機構(NALTEC)の役割
国土交通省の役割
- リコール届出の受理・公表
- メーカーへの改善措置の勧告・命令(道路運送車両法第63条の2)
- リコール届出義務違反等に対する行政対応・必要に応じた告発等
- 国土交通省「自動車のリコール・不具合情報」ウェブサイトでの公開
自動車技術総合機構(NALTEC)の役割
- 自動車検査(車検)・新規検査等の実施
- リコール技術検証部による不具合原因の技術的検証(原因が設計又は製作過程にあるかの確認支援)
- 国土交通省のリコール行政を技術面から支援
不具合情報の通報窓口
自動車に不具合があると感じた場合、国土交通省「自動車のリコール・不具合情報」ウェブサイトを通じて不具合情報を通報することができます。蓄積された情報がメーカーへの調査依頼やリコール届出の端緒となることがあります。
所有者への通知方法(ハガキ・登録情報経由)
通知の流れ
- メーカーが国土交通大臣にリコール届出を提出
- メーカーが対象車両を特定(製造番号・車台番号で抽出)
- メーカー等が、法令・所定手続に基づき、自動車検査登録情報等を用いて対象車両の所有者・使用者への通知先を確認
- メーカーから所有者宛にハガキ・郵送で改修通知が送付される
- ディーラー・指定整備工場で無償改修を実施
通知が届かないケース
- 転居後に登録住所を更新していない(住所変更登録)
- 所有者変更後に名義変更(移転登録)を行っていない
- 中古車購入時に前所有者が登録情報を更新していない
通知が確実に届くようにするには、転居・所有者変更時に速やかに登録手続を行うことが重要です。
リコール対象かの自分での確認方法
- 国土交通省「自動車のリコール・不具合情報」ウェブサイトで車台番号を入力して検索
- JASPA(日本自動車整備振興会連合会)の車両リコール状況確認サービスで検索
- 各メーカー公式サイトのリコール情報ページで車台番号検索
- ディーラー・指定整備工場に車検証を持参して確認
無償改修の範囲(部品代・工賃・代車費用)
リコール・改善対策・サービスキャンペーンによる改修のうち、対象となる部品代・作業工賃は、原則としてメーカー等の負担で無償対応されます。
無償の範囲
- 部品代:交換部品・修理材料の費用(対象となる改善措置については原則無償)
- 工賃:ディーラー・指定整備工場での作業工賃(対象となる改善措置については原則無償)
一方、代車、引取り・納車、対象外部品の同時整備等の扱いは、メーカー・ディーラー・作業内容により異なります。無料対応の有無、予約の必要性、期間は予約時に事前確認が必要です。
無償の対象外
- 所有者が自費で先行修理してしまった場合の遡及補償(事案によりメーカー判断)
- リコール起因の事故による損害賠償(製造物責任の問題として別途検討)
- リコール対象部品以外の同時整備(任意の追加整備として有料)
改修の流れと所要時間
- 通知ハガキを確認、ディーラー・指定整備工場に予約
- 車両を整備工場に持ち込み(または引取り)
- 改修作業(部品交換・プログラム書換等。所要時間は内容により1時間〜数日)
- 改修完了の確認、車両受領
- 整備記録簿、リコール実施済みの控え、メーカー・ディーラーの改修履歴等を保管・確認(次の車検時の確認に重要)
所要時間の目安
- プログラム書換等の軽微な改修:1〜2時間
- 部品交換(ブレーキ・エアバッグ等):半日〜1日
- エンジン関連・大規模改修:数日〜1週間
改修未対応車両と車検(継続検査)の関係
リコール未対応であることだけで直ちに全ての車両が車検不合格となるわけではなく、車検の合否は保安基準への適合性を中心に判断されます。ただし、タカタ製エアバッグ等、国土交通省が特に危険性が高いとして車検停止措置の対象としている未改修車両については、改修を受けるまで車検を通すことができません。その他の影響も含め、次の点に注意してください。
車検時の確認・案内
- 車検実施時に、整備工場側でリコール未対応を確認し、所有者に通知・改修案内
- 部品在庫・作業体制が整っていれば車検と同時に改修できることがある(メーカー指定の販売店での作業や部品取り寄せが必要な場合は別日対応となることがある)
- 整備工場によっては、リコール未対応車両の車検入庫を断る場合もある
事故時の責任
リコール対象であることを知りながら長期間放置し、保安上の不具合を原因として事故が発生した場合には、道路運送車両法第47条(使用者の点検・整備義務)や民事上の過失が問題となる可能性があります(整備管理者の選任義務は同法第50条で、主に一定台数以上の自動車を使用する事業者等が対象の別制度です)。また、事故原因・リコール不具合との因果関係・リコール通知を認識していたか・保険契約の内容等により、過失割合や保険会社の判断に影響する可能性があります(具体的には保険会社又は弁護士にご確認ください)。リコール通知を受けたら速やかに改修を受けることが重要です。
中古車取引時のリコール確認
中古車の購入・売却・名義変更時には、リコール対応状況の確認が重要です。
購入時の確認
- 販売店(中古車販売業者)にリコール対応状況を確認
- 車検証・整備記録簿でリコール改修記録を確認
- 自分でも国土交通省・メーカーサイトで車台番号により対象有無を検索
- 未対応がある場合は、納車前または納車後速やかにディーラーで改修
売却時の通知
- 過去のリコール対応状況を購入者に正確に説明
- 未対応のリコールがある場合は、取引相手に重要事項として説明し、納車前後にどちらが改修対応を行うかを明確にする
- 整備記録簿で改修記録を引き継ぐ
リコール隠し・未告知のリスク
販売店がリコール対応状況を認識しながら重要な事実を説明しなかった場合、表示内容・契約条件・危険性・故意の有無等により、契約不適合責任、消費者契約法上の不実告知、景品表示法上の表示問題、場合によっては刑事上の問題が検討される可能性があります。具体的な請求・交渉は弁護士にご相談ください。
抹消登録車両・廃車車両のリコール
一時抹消登録車両
一時抹消登録中の車両は通知が届きにくい場合があるため、再登録・中古車販売・公道復帰の前に、車台番号でリコール対象の有無を確認し、未改修があればディーラー等で対応するのが安全です。特に車検停止措置の対象となる未改修リコールがある場合は、改修しないと検査で問題となります。
永久抹消登録(廃車)車両
永久抹消登録され公道復帰しない車両については、通常、所有者がディーラーでリコール改修を受ける場面は想定されません。ただし、部品取り・輸出・中古部品流通・解体時に特別な処理を要する部品(電池・燃料系統等)がある場合は、メーカー案内や解体業者の対応を確認します。
業務範囲|ディーラー・行政書士・国交省・NALTECの役割
- 自動車メーカー・輸入事業者:リコール届出、所有者通知、改修費用負担
- ディーラー・指定整備工場:実際のリコール改修作業
- 国土交通省:リコール届出の受理・公表、業務改善命令、不具合情報の集約
- 自動車技術総合機構(NALTEC):自動車検査(車検)の実施、リコール技術検証部による不具合原因の技術的検証
- 運輸支局:自動車登録情報の管理、所有者・使用者情報の提供(リコール通知のため)
- 行政書士(行政書士法人Tree):自動車の登録(新規・移転・変更)、抹消登録、車庫証明、名義変更等の運輸支局手続
- 弁護士:リコール起因の事故による損害賠償、製造物責任、リコール隠しを巡る紛争
中古車取引・名義変更・抹消登録の際のリコール対応確認、抹消登録後の再登録に伴う車両整備の整理は行政書士法人Treeにご相談ください。リコール改修自体はディーラー・指定整備工場、リコール起因の損害賠償は提携弁護士、税務処理は提携税理士をご紹介します。
よくある質問
Q1. リコール・改善対策・サービスキャンペーンの違いは何ですか。
リコールは道路運送車両法第63条の3に基づき保安基準不適合(又はそのおそれ)を改修する制度です。改善対策は、保安基準には規定されていないものの、安全確保・環境保全上看過できない不具合を改修するものです。サービスキャンペーンは、リコール・改善対策に該当しない不具合で、安全確保・環境保全とは直接関係しない比較的軽微なものについて行う改善措置です。3類型いずれも、対象となる部品代・工賃はメーカー等の負担で無償対応されるのが通常です。
Q2. リコール通知が届かない場合はどうしますか。
転居・名義変更時の登録更新がされていないと通知が届かないことがあります。国土交通省「自動車のリコール・不具合情報」ウェブサイト、JASPAの車両リコール状況確認サービス、各メーカー公式サイトで、車台番号により対象有無を検索できます。確実な通知のため、転居時の住所変更登録、所有者変更時の移転登録を速やかに行ってください。
Q3. リコール対象車両は車検に通りませんか。
リコール未対応であることだけで直ちに全ての車両が車検不合格となるわけではありません。ただし、タカタ製エアバッグ等、国土交通省が車検停止措置の対象としている未改修車両は、改修を受けるまで車検を通すことができません。車検前に国土交通省・メーカー・整備工場で対象有無を確認することが重要です。
Q4. リコール改修は本当に無料ですか。
対象となる改善措置の部品代・作業工賃は、原則としてメーカー等の負担で所有者の費用負担はありません。一方、代車、引取り・納車、対象外部品の同時整備等の扱いはメーカー・ディーラー・作業内容により異なります。無料対応の有無や予約の要否は事前に確認してください。
Q5. リコール対象車両を放置した状態で事故が発生したら責任はどうなりますか。
リコール対象であることを知りながら長期間放置し、保安上の不具合を原因として事故が発生した場合には、道路運送車両法第47条の使用者の点検・整備義務や民事上の過失が問題となる可能性があります。また、事故原因・因果関係・通知の認識・保険契約の内容等により、過失割合や保険会社の判断に影響する可能性があります。具体的には保険会社又は弁護士にご相談ください。
Q6. 中古車を購入する際、リコール対応は確認すべきですか。
重要です。販売店にリコール対応状況を確認するとともに、車検証の車台番号で国土交通省・JASPA・メーカーサイトでリコール対象を検索してください。未対応がある場合は、納車前後にどちらが改修対応を行うかを明確にし、速やかにディーラー等で改修を受けます。
Q7. 抹消登録した車両のリコールはどうなりますか。
一時抹消登録中の車両は通知が届きにくいため、再登録・中古車販売・公道復帰の前に車台番号で対象有無を確認し、未改修があれば対応するのが安全です(車検停止措置の対象は改修しないと検査で問題となります)。永久抹消登録され公道復帰しない車両は、通常リコール改修を受ける場面は想定されませんが、部品取り・輸出・解体時に特別な処理を要する部品はメーカー案内・解体業者の対応を確認します。
Q8. 古い車両でもリコール対応はできますか。
リコール改修は、通知から長期間経過していてもメーカー・ディーラーで対応されることが一般的です。ただし、製造から長年経過した車両では、部品在庫・代替部品・作業方法等が個別対応となる場合があるため、車台番号を伝えてディーラーにご確認ください。
まとめ
リコールは道路運送車両法第63条の3に基づき、保安基準に適合しない、または適合しなくなるおそれがある状態にある自動車について、その不具合の原因が設計または製造過程にある場合に、メーカーが国土交通大臣に届け出たうえで所有者に通知して無償で改修を行う制度です。改善対策(保安基準には規定されていないが安全確保・環境保全上看過できない不具合)、サービスキャンペーン(リコール・改善対策に該当しない比較的軽微な不具合についての任意の改善措置)と合わせ、3類型とも対象となる部品代・工賃はメーカー等の負担で無償対応されるのが通常です。
所有者には自動車登録情報を経由してメーカーから通知ハガキが送付されますが、転居・名義変更時の登録更新が滞っていると通知が届かないことがあります。国土交通省「自動車のリコール・不具合情報」ウェブサイトで車台番号により対象有無を検索することで自分でも確認できます。
リコール未対応であることだけで直ちに車検不合格となるわけではありませんが、タカタ製エアバッグ等、国土交通省が車検停止措置の対象とする未改修車両は改修するまで車検を通すことができません。また、リコール対象であることを知りながら放置した状態で事故が発生すると、道路運送車両法第47条の使用者の点検・整備義務や民事上の過失が問題となる可能性があり、過失割合や保険会社の判断に影響することもあります。通知を受けたら速やかに改修を受けることが重要です。中古車取引時はリコール対応状況の確認・説明が重要で、認識しながら重要な事実を説明しなかった場合、契約不適合責任・消費者契約法・景品表示法上の問題等が検討される可能性があります。
自動車の登録・抹消登録・名義変更時のリコール対応確認、抹消登録後の再登録に伴う車両整備の整理は行政書士法人Treeにご相談ください。リコール改修自体はディーラー・指定整備工場、リコール起因の事故による損害賠償は提携弁護士、税務処理は提携税理士をご紹介します。
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※ 本記事は執筆時点の法令(道路運送車両法・同施行規則等)・国土交通省・NALTECの公表情報・運用実務に基づき作成しています。リコール・改善対策・サービスキャンペーンの個別対象車両・改修内容はメーカー・ディーラーの案内によります。リコール起因の事故による損害賠償・製造物責任は事案により異なるため、弁護士へのご相談をお願いいたします。


