ツリーちゃん
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行政書士
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目次
時効とは、特定の期間が過ぎると、一部の法的権利や義務が消えてしまうというルールのことを言います。これは法律によって決まっています。なぜそんなルールがあるかというと、それは不確実な状態がずっと続くのを防ぐためです。
例えば、あなたが友達にお金を貸したとしましょう。しかし、友達がそのお金を返してくれないとします。この時、あなたは法律的にはそのお金を返してもらう権利があります。でも、その権利は永遠にあるわけではありません。一定の時間が過ぎると、それは時効により消滅させることができる状態になります。
そして、以下で説明する「時効援用」という手段を取ることによって、実際にその権利を消滅させることができます。
この一定の時間は何年かというと、それは借りたお金の種類や借りるときの約束によりますので、その種類ごとに時効が何年なのか確認をする必要があります。
ただし、時効には途中で止まったりリセットされることもあります。例えば、友達が途中で「お金を返すよ」と約束したり、「途中で返済すると」、その日から時効が再び始まります。
時効とは、例えお金を借りていたとしても特定の要件を満たすことによってお金を返さなくてもよくなる場合があります。この要件とはそのときの契約の種類によって異なるため専門家に確認をするのが確実です。
ただし、時効が完成していても「時効援用手続き」を行わなければ、相手方の請求権(お金を返せという権利)自体は消滅しません。
そのため本記事では「時効援用手続き」についても解説させていただきます。
【時効(援用)の具体例】
(1)Aさんは、B社(消費者金融会社)から、2023年の1月1日に、1か月後の2月1日に一括で返済するという約束で100万円を借りました。
(2) ところが、Aさんは返済しなければいけないことをすっかり忘れており、約束の2月1日に返済をしませんでした。 そのため、B社から2月2日以降、支払いをするように催促の連絡がありましたが、Aさんは仕事で忙しかったため、その後もB社に対して一切の連絡も支払いもすることができないまま、2028年の2月3日を迎えました。
(3) AさんはB社に対して、2028年の2月4日に、上記100万円について「消滅時効を援用する」との内容証明郵便を送付しました。
上記事例では、(2)の2028年の2月3日を迎えた時点で消滅時効を援用できる状態となっており、(3)の内容証明郵便の送付によって時効援用したと判断できるため、この時点をもってAさんはB社に対して上記100万円を返還する義務がなくなったといえます。
ただし、現実には、
・返済をしなかった時点でB社から裁判を起こされていたり
・B社からの支払いの催告の連絡に対して一部だけ支払っていたり
・「少しだけ返済を待ってください。」「〇月〇日までには支払います。」などと発言していたりすることが多く、その場合には下記で説明する「時効の更新」(権利の承認・債務の承認、民法第152条第1項)があったとみなされ、(2)の時点ではまだ消滅時効を援用できる状態となっておらず、したがって(3)の送付をしたとしても、いまだ上記100万円を返還する義務が残っているということが多いです。
時効が援用できるかどうかの判断は、一度専門家に相談されることをおすすめいたします。
時効援用をするためには、大きく分けて以下の2つの流れに沿って行う必要がございます。
①時効の援用ができる状態にあることを確認すること
②債権者(支払いの請求者・相手方)に対して、時効援用の意思表示をすること
(=相手方へ時効援用することを通知すること)(ex.内容証明郵便を送る)
上記のうち、特に①消滅時効の援用ができる状態にあることを正確に確認することが重要です。
時効援用の流れ―①時効の援用ができる状態にあることを確認すること
時効の援用ができる状態については、民法に定めがあります。(※)
民法第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。
このうち、貸金については
「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。」
「権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。」
という要件が重要となります。
つまり、権利行使できることを知った時を基準に5年間が経過したか、権利行使できる時を基準に10年が経過したことのいずれかがあれば、原則として時効の援用ができる状態にあるといえます。
※注意点
上記の民法の規定は、いわゆる改正後の新民法の規定(平成29年法律第44号による改正後の民法)です。
新民法が適用されるのは2020年4月1日以降に成立した法律関係についてのみです。
(例:契約日が2020年5月1日のもの)
そのため、債権の発生した時点が2020年4月1日より前(=2020年3月31日以前)の場合には、改正前の旧民法の規定が適用されることとなります。
(例:契約日が2015年4月30日のもの)
旧民法第167条
1 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
2 債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。
また、同様に、いわゆる商事債権についても、債権の発生した時点が2020年4月1日より前(=2020年3月31日以前)の場合には、改正前の旧商法(平成29年法律第45号による改正前の商法第522条)の規定が適用されることとなります。
旧商法第522条
商行為によって生じた債権は、この法律に特段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に5年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。
したがって、簡単に整理すると以下のような関係になります。
・契約日が2020年3月31日以前の場合の債権⇒旧民法又は旧商法の適用あり
・契約日が2020年4月1日以降の場合の債権⇒新民法の適用あり
本稿執筆時点(2023年7月)では、時効援用をご検討される多くの方については旧民法又は旧商法に従い判断することとなるかと存じます。
具体的に時効援用できるか否かの判断は、専門家にご相談されることをおすすめいたします。
②債権者(支払いの請求者・相手方)に対して、時効援用の意思表示をすること(=相手方へ時効援用することを通知すること)
すでにご説明したとおり、仮に時効の援用ができる状態にあるとしても、時効によって債務を消滅させるためには「時効」を「援用」をすることが必要となります(民法第145条)。
その方法としてはポイントとなるのは、
相手方(債権者)に対して、特定の債権について「時効を援用します」という意思を表示するという点です。
具体的な意思表示の方法については、法律で決められているわけではありません。
しかしながら、単に電話(口頭)で伝えたり、普通郵便で通知した場合は、「相手方に対して時効援用の意思表示をした」という事実を客観的に証明することが困難といえます。そのため、本当に意思表示をしたのか?ということで後々トラブルとなり、水掛け論となって、時効の援用が認められないという可能性が非常に高いです。
そこで、「相手方に対して時効援用の意思表示をした」という事実を客観的に証明する手段として、内容証明郵便を利用するという手段が安全で確実です。
内容証明郵便に書くべき内容としては、債権の特定した上で時効援用の意思表示をすることが重要となります。
弊所では1件当たり、基本料金9,800円にて内容証明郵便の作成から送付まで承っておりますので、お気軽にご相談ください。http://office-tree.jp/naiyousyoumei
「自分の場合は契約した日から何年も経っているから時効の援用ができそう。」
そう考えるのは少し早いかもしれません。
もしも仮に民法又は旧商法上の時効期間が経過していたとしても、その間に以下のような事実がある場合には、いわゆる「時効の更新」があったとして、時効が完成していないと判断され、時効の援用が認められない場合があります。
・話し合いに応じれば未払分の一部を減額するという内容の通知書が届き、これに電話をし、「〇月〇日に支払います。」と発言した。
・上記のような通知書が届き、これに対して一部だけ返済した。
・債権者から裁判を起こされ、確定した。
・強制執行された。
「時効の更新」とは、債務者が法律に定める事由に該当する行為を行った場合、その行為の時点から新たに時効の進行が開始するという場合をいいます。すなわち、時効の更新に当たる行為を行った時点で、それまで進行していた時効の期間がなかったものとしてみなされ、新たに1から時効の計算をすることとなります。
時効の更新があるかどうかの判断は、個々のケースごとに判断するものとなります。また、判断が難しいケースもあることから、一度専門家にご相談することをおすすめいたします。
時効の援用が認められた場合は、時効の起算日にさかのぼって債権(債務)が消滅することとなります(民法第144条)。
そして、債権者(相手方)が以下のような信用情報機関に加盟している場合は、各機関に対して借入情報等の変更の手続きを行うこととなります。
①JICC(日本信用情報機構)の場合
JICCは原則として、時効援用手続きを行うと、事故情報は時効の起算日にさかのぼって削除されます。つまり、JICC上において初めから延滞がなかったのと同じ状態となります。
ただし、時効援用をしてから事故情報が削除されるまでには、手続き上の問題で1か月前後かかります。
②CIC(割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関)の場合
CICの場合は、時効援用をすると【返済状況】の欄に「完了」という表記に変更されることが一般的です。
例外的に、事故情報が削除されるケースもございますが、原則としては時効援用から5年間の間は、事故情報が掲載されるケースが多いです。
その間に借り入れなどを利用できるかどうかは、各貸金業者やカード会社の審査次第となります。
③KSC(全国銀行個人信用情報センター)の場合
KCSの場合は、お客様からの未払いが発生した時点で保証会社が債権会社に対して代位弁済をおこない、代位弁済に関する事故情報が登録されております。
代位弁済に関する事故情報は、時効援用によって修正されることはありません。
したがって、事故情報の抹消には、代位弁済から5年間が経過するのを待つ必要があります。
信用情報会社によって上記のような特徴はあるものの、JICCとCICに登録された延滞の事故情報は、延滞解消から5年が経過するまで削除されないのが原則です。そのため時効援用手続きを行わなければ、JICCとCICのデータベースには「延滞」という事故情報が残り続けます。
つまり借り入れやクレジットカードの審査を考えているのであれば、時効援用手続きは早急に行ったほうが望ましいと言えます。
既に時効が完成しているにもかかわらず、債権者から支払いを求める裁判や支払督促を起こされている場合があります。
現在進行形でこれらの手続きが行われている場合には、裁判の場合、裁判所から「口頭弁論期日呼出状」や「答弁書催告状」等と書かれた書類が届き、その中には「答弁書」と書かれた書面が同封されています。
また、支払督促の場合、裁判所から「支払督促」等と書かれた書類が届き、その中には「督促異議申立書」と書かれた書面が同封されています。
「答弁書」と「督促異議申立書」は必ず提出する必要がある書類となるため、指定されている期日までに必要事項を記入して提出する必要があります。
これから時効援用をしようとする場合には、「答弁書」と「督促異議申立書」の所定の欄に以下のような内容を記載して提出するとよいでしょう。※あくまで一例です。実際に記入・提出する前に専門家に一度相談してください。
〇「答弁書」の場合
「私(被告)の言い分」の欄に「本件債権については消滅時効が完成しており、今現在、内容証明郵便にて時効援用手続を進めております。したがって、本件債務は存在しないと考えます。」と記載する。
※こちらの文言はあくまで実際に時効援用の手続に着手している場合の記載例となります。実際に時効援用の手続に着手していない場合は虚偽の記載となりますので、絶対にお止めください。
〇「督促異議申立書」の場合
「異議申立理由」の欄に、「本件債権については消滅時効が完成しており、今現在、内容証明郵便にて時効援用手続を進めております。したがって、本件債務は存在しないと考えます。」と記載する。
※こちらの文言はあくまで実際に時効援用の手続に着手している場合の記載例となります。実際に時効援用の手続に着手していない場合は虚偽の記載となりますので、絶対にお止めください。
時効は法律上認められた制度の一つです。
時効は個人の日常生活からビジネスシーンまで、様々な場面で発生する「権利」一般に広く妥当するものといえます。時効は、法律関係が永遠に続かないようにするとともに、古い債権や債務の追求を防ぐことで社会生活の安定を図る目的を持っています。
もちろん、支払うべきものは支払う必要があるのが当然であり、大前提ですが、本来支払う必要のないものまで支払う必要はありません。
支払う必要のない部分については、適切に時効の援用をすることで過度な負担を軽減することができます。
もし時効の援用をご検討されている場合には、ぜひ一度弊所まで、お気軽にご相談ください。
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